仁王とどうぶつの森の新作が出ちゃったからね、仕方ないね
「そらっ!」
霧夜の拳で人型のノイズが炭化して朽ちる。
霧夜と響が二課に加入してから1ヶ月程度だったが、依然として響と翼の険悪なムードは続いていた。険悪と言うよりは翼が一方的に響を突っぱねていると言った方が正しいか。
「これで5体目…俺結構頑張れてる方じゃね?そりゃ防人さんに比べたら全然だけどさ…」
1ヶ月ノイズと戦い、最初の頃に比べると動けるようになって来た霧夜はもう一体のノイズを殴り倒す。流石に大型のノイズは手が出せないが小型であれば倒せるようになってきた。
「響ー!そっちはどうだー!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!それどころじゃないよぉぉぉぉ!」
響の方に目をやるとノイズに追いかけ回されていた。
「飛び降りてこっち来い!2人でならなんとかなる!」
「わかったぁぁぁ!」
飛び降りた響を追って大量のノイズが霧夜の元へと降り注ぐ。それを何とか避けて響と共に一体ずつ確実に倒していくが、響が吹き飛ばされ自動車に激突し気を取られた霧夜も殴られて吹き飛ばされてしまう。
炭化しないとはいえ、威力そのものが消える訳では無いためシンフォギアを纏っていない霧夜にとっては一撃が命取りになりかねない。
「いってぇ…」
その後すぐに翼が2人のカバーに入り、残ったノイズを全て撃破して今回の任務は終了した。
「霧夜!大丈夫?」
「ああ…心配すんな。あんたもありがとな、助かったよ」
「…自分の身を第一に考えなさいと言ったはずよ」
霧夜にそう吐き捨て響を人睨みしたあと去ってしまった。
初出動の日から翼はこのように2人に辛く当たっている。
「ごめん霧夜…私のせいで食らっちゃったんだよね」
「ちげぇよ、俺が避け損ねただけだ」
「それに…あの夜も私のせいで翼さんに」
「それもお前のせいじゃなくて俺が突っかかってボコられただけ、はいこの話終わり。さっさと帰ろうぜ」
今にも泣きだしそうな顔をする響の頭をぐしゃぐしゃっと撫でて事後処理を待った。
◆◆◆
1か月前
霧夜と響が現場に駆けつけた時には既に翼がノイズと戦っていた。
巨大なノイズの攻撃を食らいそうになった翼を霧夜が庇い、響が飛び蹴りを食らわせる。そして体勢を整えた翼はノイズを切り裂きノイズを全滅させた。
「わりぃ、出しゃばったよな」
「貴方はシンフォギアを纏っていない、炭化しないとはいえ攻撃は命取りになるはずよ。だから装者を庇うのはやめなさい」
「ですよね…」
睨みながら怒られる事に居心地の悪さを感じながら平謝りをする霧夜を他所に響は笑顔で翼に歩み寄る。
「翼さん!私、今はまだ足手まといかもしれないけれど、一生懸命頑張ります!だから、一緒に戦ってください!」
「そうね…戦いましょうか。貴女と私」
その瞬間、剣を突きつけられる響を庇うように霧夜が前に出る。
それでも翼は剣を退けることはしない。
「すみません、こいつバカなんで空気読めないんすよねぇ。ほら響?あの人今お忙しいみたいだから、また今度話そうな?」
「ふぇ?ちょっと?」
「待ちなさい」
その場から状況の分かっていない響を連れて退散しようとした霧夜を凛とした声が止める。素人が背を向けていても分かる敵意に背筋にゾワッと悪寒が走った。
「私は彼女に言っているの、貴方は下がってなさい」
「いや、マジですみませんでした。こいつにはきつく言っときますんで今回は勘弁してもらえないっすか?」
「あ、あの!私、翼さんに何か失礼な事を言っちゃいましたか?」
「違うわ。私が貴女と戦いたいだけよ」
「どうしてですか!」
「私はあなたを受け入れることが出来ない、貴女と力を合わせて戦うなど…風鳴翼が許せるはずがない」
剣を構えて響を射殺さんというほど睨みつける翼、響は憧れの人間から殺意にも近しい感情を向けられて恐怖で身が竦んで震え出す。その響を庇うように霧夜は恐怖を抑えて前に出る。
「貴女もアームドギアを構えなさい、それともそのまま彼の後ろに隠れているつもり?」
「響、このまま少しずつ離れていけ」
「でもっ!」
「話が出来る状態じゃねぇだろうが!離れてろ」
「それは常在戦場の意思の体現。 あなたが、何者をも貫き通す無双の一振り、ガングニールのシンフォギアを纏うのであれば、胸の覚悟を構えて御覧なさい!」
「か、覚悟とかそんな私、アームドギアとか分かりません!分かってないのに構えろなんて…それこそ全然分かりません!」
「アホかお前!火に油を注いでどうすんだ!」
「だって、分からないものは分からないよ!」
半泣きになりながらそう答える響に、ついに我慢の限界が来たのか翼の雰囲気が一気に変わる。先程までの怒りとは違う、明確な殺意
「覚悟持たずにノコノコと遊び半分に戦場に立つ貴女が奏の…奏の何を継いでいるの!」
「逃げろ響!」
翼が行動する前に咄嗟にその場にあった鉄パイプで霧夜は彼女を殴り付けるが、その鉄パイプは翼の手によってあっさりと両断されてその場に転がる。
「立ちふさがるのならば!」
「幼馴染に剣向けられて逃げられるかよ!」
両断された鉄パイプの残りを翼に投げつけて駆け出す。
もちろん彼女に勝てると思っているほど霧夜は能天気な人間ではない。何をどうやったとしても勝てないのは明白だ。
だが、響が襲われそうになっているのを黙って見てはいられなかった。
「そんな動きで勝てるとでも!」
「くっそ!」
霧夜は彼女に向かい拳を放つ。
しかしそんな素人の拳など翼にとってはなんの脅威でもなく危なげなく避けて霧夜の懐に入って彼の顔面を剣の柄で強打した。まともに顔面を硬いもので殴られ目の前がチカチカと点滅し体がぐらりと傾く。彼女の殴打は気絶するほどではないが人間が倒れるくらいには十分な威力を持っていた。
それでも、倒れられない。
「ぐぉぉぉぉぉ!」
がむしゃらに拳を振るうもそれら全ては容易によけられてその度に手痛い反撃をもらう。これまての人生で喧嘩慣れはそれなりにしていたつもりではあったが、そのへんにいる不良とは訳が違う。相手は今までノイズを1人で葬ってきた猛者、そんな人間に普通の高校生がやけくそになったとしても勝てる道理などない。
数分経つ頃にはもう既にフラフラで立っているのがようやくの状態になっていた。
「ここまでね。貴方はもう限界よ」
「アホか…まだまだっ…」
ついに体が限界を迎えた霧夜はその場に倒れ込む。それを見た響は咄嗟に霧夜の前に出て翼に頭を下げる。
「すみません!私が悪かったのなら謝ります!霧夜が突然殴りかかったのも謝ります!だから…もうやめてください」
「貴方はノイズにもそうやって頭を下げるつもり?」
「私はただ…奏さんの代わりに…翼さんのそばに居られたらって!」
その言葉を聞いた瞬間、翼は空中へ飛び上がり巨大な剣を出現させる。
「戦う覚悟もない…守る覚悟もない貴女が…奏の代わりになどなれるはずがない!」
その巨大な剣を、響に向かい蹴り飛ばした。
何とかしなければ、なんとかして響だけでも逃がさなければと身体を必死に動かそうとするがどれほど力を込めても動かない。
霧夜が霞む目で最後に見たのは、弦十郎何かが巨大な剣を受け止めて破壊する姿だった。
◆◆◆
その後病室で目を覚ました霧夜は弦十郎から事の顛末を聞き、翼の事に対しての謝罪を受けた。
「本当に済まなかった。この件に関しては俺からキツく言っておく」
「いや、先に手を出したのは俺だから気にしないでくれ。むしろ俺が謝らなきゃいけない立場だからさ、向こうは怪我とかしなかったか?」
「ああ、問題ない。響君にも特に怪我はなかった」
「そっか、よかった」
ベッドに横になりほっと一息着く。しかし後を引くと思うと少しげんなりしてしまう。
「君は優しいな、殴られた相手のことまで気遣うとは」
「そもそも俺が殴ったのが原因だし、それにあいつが怒るのも無理ないかなって思って」
「というと?」
「そりゃ死んだ相棒の形見を持って、なんの経験もしてない素人が馴れ馴れしく接してきたら気分悪いだろ。響は人当たりが良すぎるから、そういうのが苦手な人間にはちょっとな」
それが響のいい所でもあるんだけどな、とクスクスと笑う。響の笑顔に霧夜自身何度も救われてきた。だから、今度は自分が守る。あの日そう決めた。
「これから迷惑かけるかもしれないけど、よろしくなおっちゃん」
「ああ、これからよろしく頼む」
そう言って霧夜と弦十郎は握手を交わした。
◆◆◆
その日から響と翼の亀裂は決定的なものになってしまった。かと言って霧夜と翼の関係が良いという訳では無いが。
「だから、悪かったって言ってるだろ?気づかなかったんだって」
『それ前も言ってたじゃない!最近ノイズが頻繁に出てるから心配で電話してるのに…』
響と別れた後、予想通り未来からの着信(15件)があったためかけ直すと予想通り大激怒されてしまった。もちろんノイズと戦っていたなどとは口が裂けても言えず、学校が忙しかったとしか言えなかった。
「ごめんな心配かけて、でもほんとに大丈夫だ」
『霧夜がそう言う時って大抵嘘ついてるんだよね…』
「俺未来さんに嘘ついたことないっす」
『真顔で嘘つかない』
何故電話越しなのに表情が分かったのだろうか。
『そう言えば最近響の帰りが遅いんだけど何か知らない?』
「彼氏でも出来たんじゃねぇの?」
『それは無いよ。響だもん』
「お前は響をなんだと思ってんだ…」
響の事を知られる訳にはいかないためシラを切る。未来に伝えたい気持ちもあるが、そのせいで彼女を危険にさらすわけにはいかなかった。
それに心配も掛けたくない。もう既に少し心配をかけてしまっているが命のやり取りをしているなどと知ったらもっと心配するだろう。
「あ、そうだ。未来に伝えなきゃいけないことがあったんだけどさ」
『なになに?生活費足らないの?』
「だとしても流石に幼馴染に集らねえわ。そうじゃなくてさ、この度めでたく彼女が出来ましたー」
話を逸らすために適当に嘘をついたが、その瞬間未来が目の前にいないにもかかわらず周囲が凍りつくような感覚に襲われた。そして、電話越しの未来の声が普段よりも重く、低くなる。
『どこの人?』
「えっと、クラスメイトなんだけど…」
『どっちから告白したの?霧夜?それとも向こう?なんで付き合ったの?どこが好きになったの?クラスメイトってことはまだ知り合って1ヶ月くらいだよね?なんでそんなに早く決めちゃうの?恋人はもっと慎重に決めなきゃいけないんじゃないかな』
予想した反応と180度違う反応を示す未来になぜか冷や汗が止まらなくなる。この場にいないにもかかわらず心臓を鷲掴みにされたように霧夜はその場から動けなくなった。ノイズと相対した時も、翼と戦った時にも感じなかった明確な恐怖が襲う。
霧夜はてっきり「はいはい、見栄はらなくていいから」とか「えっ!?どんな子なの!?」など嘘と見抜いて相手にしないか信じて興味津々になるかどちらかと思っていた。
今も興味津々と言えるが気迫が違う。
「な、なーんつって。嘘ぴょーん」
『…ほんとに?』
「な、なんか未来の元気がないからびっくりさせてやろうかなぁ〜って思っただけです…はい」
『……霧夜』
「はい?」
『面白くないからやめて』
「はい」
ノイズよりも、シンフォギア装者よりも未来の方がよっぽど怖いと思った霧夜は二度と未来にこの話題は振らないと心に誓った。
翼と霧夜の戦闘シーンぶっちゃけ影縫いで良かったかもしれない説。
でもまあ霧夜の見せ場ということでご容赦くださいm(*_ _)m