信長公戦記 〜 提督へ 〜 作:山田太郎
「殿、お逃げください!」から始まる艦これ小説があったら面白いなって思ったのと、「ラヂオ……とな?」なんて、現代機器にクエスチョン飛ばす信長が見たかっただけ……。
でも先見の明があった彼なら、それなりになんとかしてしまいそう。そんな期待をしてしまう。
別の艦これ小説が一段落するまで、こちらは進捗ないかも。
「殿! ここはもう保ちませぬ。お逃げください!」
炎、炎。
辺り一面火の海だ。
苛烈な人生を送ってきたと思う。ならばこそ、その幕引きは潔く。
「もはや手遅れよ」
人間五十年、下天のうちを比ぶれば、か。
後悔はあるのだろう。しかし、おかしな話だが、長らく曇っていたものが晴れたかのような、そんな気持ちも確かにあった。
「やりおるわ、光秀」
満足感にも似た気持ちを抱え、そう呟く。
そうして俺は、この戦乱の世での生を終えた。
───── 信長公。提督へ─────
戦の喧騒も、火に焼かれた戦さ場の匂いもしない。
身を優しく包む温もりと静寂の世界。これが死ぬということか……。
いや、音は聞こえる。
これは……、鳥のさえずりか? 耳を澄ませてみると、人々の生活する雑多な音が世界を満たしていることに気が付く。
「おぉ、気付いたか?」
起きた気配を悟ったのだろうか、そのような声がかかる。どうやら側には誰かついているようだ。
ゆっくりと目を開けると、真っ白な天井が目に入った。
「ここは……俺は……」
「無事なようじゃな、吾輩肝を冷やしたぞ」
声のするほうへ顔を向けるとそこには見知らぬ
無礼な、と思ったが、その表情には心配の色を強く浮かべてもいた。なに、怒鳴り散らすほどでもないわ。
「俺は、本能寺で……」
寝台から身を起こし、辺りを見渡す。そこは見慣れぬ調度品に囲まれたなんとも面妖な部屋だった。
「ここはどこだ?」
「なんじゃ、藪から棒に。ここは鎮守府じゃ。お主が行き倒れておったのでな、吾輩が運んできてやったのじゃ」
鎮守府。聞き慣れぬことを言う。
まぁよい。どうにかして、俺は生き延びたというわけだな。
ならば良し、あの金柑頭のことは柴田か猿めがケリをつけるだろう。
余計なことで時間を取られたが、それももう良い。毛利なぞ、今さらどうとでもできよう。
まずは、そうだな。
やっておかねばならんことがある。
「そうか、お前が運んでくれたのだな。まずはそのことに感謝しよう。なにか褒美も考えねばな、希望があるなら言うてみい」
俺がそう言うと、
「急になんじゃ、吾輩は礼が欲しくて助けたわけではないぞ?」
欲のないやつだ。
この
天下布武と唱えたところで、民の心まで思うがままにはいかぬようだ。
「しかしそうじゃな、それなら一つ頼みたいことがある」
なにやら思いついたように、その女子は手を打ってみせた。
「うむ、言うてみい」
そして女子は、真っ直ぐに俺の目を見て言ったのだった。
「吾輩の提督になってはもらえぬか?」
さて、どこの鎮守府でしょう。
最初の構想では、信長公に合わせるなら日本美人的な……ヒロインは扶桑かな? と思って書き始めたのですが、場所柄に利根も有りかな? と思った次第。
相方に利根を持ってくるなら、いっそ信長に普通言葉を喋らせたほうが利根の吾輩じゃ言葉と合わせて面白いかも。なんて、そんなこんなでお相手は利根に。