魔銃使いは異界の夢を見る 作:魔法少女()
原作『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』
作者『貴志部 矢賀』
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個性的な戦闘狂なタイプで目新しい感じ。
置かれているのは机と二脚の椅子、それ以外には家具らしいものが何一つ配置されていない殺風景な室内。
壁紙も質素、天井に取り付けられた照明の光が室内を照らしていた。
窓から覗く景色は閑散とした街並み。人の気配は無く、ともすればもの寂しさを感じる静寂に包まれている。
「まぁた、夢か……」
軽い溜息を吐いたのは、背丈は100cm程しかない
長い金髪を揺らし、左右で異なる色合いの瞳には幼い容姿に似合わぬ冷静沈着な色を宿している。
机を挟んだ対面にもまた、人影があった。
その人影もまた小人族のようであった。黒コートに黒フード、表情は闇の中で見えない。全く話さないのはその者の特性であろうか、よく分からないものである。
「……面倒なことになったものだな」
辛うじて出されたような声。フードを外すとその顔が顕になった。どこに隠していたのかも分からない黒い長髪。青い瞳に表情筋が仕事をしていないように思える無表情。
こんな状況には慣れている彼女は目の前の人物に目をやる。ああ、と頭をかくが困惑したような表情も雰囲気も見せていない。
「困ったものだと思わないかね。なぁ、名前も知らない君」
仰々しい仕草はするものの顔はいつだって無表情。仕草よりも顔に目がいくかもしれないが本人にとっては頑張って母を演じているのである。母は表情が豊かでなんとも愉快な人であった。本人もそれを模倣しているつもりなのであるが表情筋だけは仕事をしてくれないためにこうなっている。
「自己紹介でもすれば良いのかしらね。【魔銃使い】ミリア・ノースリスよ」
肩を竦めて曖昧に笑みを浮かべたミリアが二つ名と名を名乗る。
仕草こそ仰々しいが、張り付けた様な無表情の人物に人形っぽさを感じながらも、ミリアが机の上の羊皮紙を指さし、示す。
殺風景な部屋で一際浮いている茶器一式と、その横に置かれている『異界と交わる夢、語り合え、目覚めのその時まで』と書かれた、不可思議な一枚の羊皮紙。ミリアが時折見る、不可思議な夢。
「ここは夢の中らしいわ。目覚めたら忘れる、ひとときの夢。まあ気軽にお喋りしてたら目覚めるわ」
ミリアは若干の警戒心を抱きながらも目の前の人物に微笑みかけた。
「夢。夢か!いいね、そりゃあいいなぁ。だがお喋りかぁ」
これほどの声を出すならば普通なら表情が揺れ動くはずであるがそれでも動かない。
机の上の羊皮紙を手に取るとそれを読み込む。ミリアの説明通りである、と確信する。
彼女のミリアへの印象はただ一つ。怪しいというものだった。オラリオに入ってからの知り合いのうち、小人族っぽい見た目の人間は大概普通ではなかったからである。ミリアはこの場所について知っている、そう確定づけると初めて自己紹介をする気になる。まあ危害を与えられたら殺せばいいし。
しかしながら彼女は会話が得意ではない。既に仰々しい仕草はやめている。あのテンションは維持するのに疲れてしまうのだ、インパクトを与えてみたかっただけだった。
「取り敢えず自己紹介でもするとしよう。私は紫桜 和平、気軽にアリスと呼んでくれたまえ」
和平、アリスの方が呼んでもらう方が彼女にとっては好都合である。急須を触るが手袋をしていることを忘れていて何も感じられなかった。外して触ってみると既に中にはお湯が入っているようで確認すると茶葉も入っている。湯呑みも綺麗な状態だ。ふむ、と声を零すと湯呑みにお茶を入れる。匂いは大丈夫、バイザーを展開して成分を分析してみても毒成分はなし。
彼女の好みはラーメン、と同等に緑茶である。種類によって味は変わるが久々の緑茶である。楽しみであることには変わりないのだ。
「随分と、まあ……おかしな名前ね、極東出身にしてはアレだし」
ミリアは訝し気に久保を傾げつつ、容姿に見合わない男言葉の少女、アリスの行動に片目を瞑る。
「アリス、ねえ……まあ良いけど、貴方はオラリオ出身で良いのかしら。それとも全くの無関係?」
過去、一度だけ異世界、文字通り別の世界の人物との交流を行った記憶から、目の前の人物が自身と同じ異界生まれの迷宮都市暮らしなのか。手近な話題を引っ張りだして口にする。
おかしな名前、少女の言葉に少しショックを受ける。一応アリスにとっては誇りある名前であるのだが。
「ああ、そうだなぁ。オラリオには住んでいるよ」
アリスの境遇は特殊であると本人は理解している。目の前の少女に理解してもらえるとは思えないことではあるが変人だと思われているのかもしれない。それに再三だが彼女は慣れているようだ。
「ちょいと見てほしいんだが、いいかね?驚いた顔が見たい」
まあ返答などは待たない。動きには制限はもたらされてはいないようなので湯呑みにはいったお茶を飲み干すと立ち上がる。そして黒コートを脱いだ。普通なら中に服を着込んでいるものだがアリスは別、知り合いであるクオンお手製の義体が丸見えになる。全身タイツのような黒い肢体であった。
彼女には承認欲求がある。それが理性を越えることはないがどうせ一夜の夢だ。
「たまには換装するのもいいかねぇ」
と独り言をこぼしてもう椅子に座る。黒コートは膝の上に置くことにした。ハンガーやクローゼットは残念ながらない。それを恨めしく思うが言葉は心の中に留めるとミリアの様子を伺う。
「あら……人形だったのね。ドールズ型の……いや、違うか」
僅かながらの驚愕と、納得が交じり合った表情を浮かべたミリアはしみじみと彼女の肢体を眺め、自らの知る『ミリカン』と言うゲームに登場した
もしミリアの知るゲームのキャラクターであったのなら、少なくともドラゴニュート型の
「どういう原理で動いているのかしらね。魔法? 本体は別の場所にでもあるのかしら。……人形も夢を見るのね」
「人形、か。少し違うな、私はサイボーグだよ」
詳細を話そうと思ったがそれはやめる。ミリアの基準はアリスとは違うようだ。これでもアリスは元々紫桜和平としての人間で、脳さえあれば義体を変えても生存し続けることができる。ドールズ型、という言葉、どんなものかは知らないが人形を動かす技術があるようだ。無人機のようなものだろうか。
「まあ原理は色々と、な。私でもよく分からないのだよ」
ハッハッハ、という高笑いは声の波長こそは変わり、それに対応した表情にはならない。
「サイボーグ、って事は元々人間? ……オラリオだと悪目立ちしそうね」
物珍しいモノに目の無い神々が数多く暮らすオラリオおいて、目の前のサイボーグはかなり注目を浴びるのは想像に難くない。そこまで考えた所でミリアはいくつかの疑問を覚えた。
「そもそもサイボーグが珍しく無いのかしら? それに、
「恩恵は問題なく。サイボーグは珍しいらしいよ、でも協力者のおかげで問題なく過ごせているな」
アリスは換装型、今の義体はオラリオでも動きやすいように体を変えたものである。元々も全身鎧のように見えていたようで問題なかった。
バレたらどんな目に遭うかは逆に想像できない。だからこそ秘匿には最大限の力を使ってもらっている。
「秘匿、ねぇ……」
存外、冒険者の情報網は馬鹿にできない。妙な噂が立てば神々が探りにくるだろう事を想像して眉を顰めつつ、協力者という人物が相当に優秀なのだろうと頷き、ミリアは吐息を零す。
「そっちが相当特殊なのは理解したわ。なんか面倒そうね」
「今はそんなに面倒なこともないぞ。うちは零細だからな」
有名になったら噂もたつだろうがまだ零細なのでそんな価値はない。そう思ってまだ安心はしているが大きくなっていって露呈すると面倒なのには変わりない。
飲み干した湯呑みにもう一度緑茶を注ぎ、もう一方の湯呑みに目を向ける。まだお茶を注いですらいない湯呑みを見て急須を手に取るが一度置いてミリアを見る。
「まあ、大きい所とは関係は持てるから問題ない。お茶は飲まないのか?美味くはないが不味くもない」
「お茶……まあ、一応貰うわ」
湯呑を手に取り、注いで貰ってから一口だけ舌先で転がして味を確かめ、眉を顰める。
「文字通りというか、美味しくもないけど不味くもないわね。本当に日本茶だわ」
オラリオで普及していない
「さて、こちらから聞いてばかりでは不平等でしょうし、そちらから質問とかは無いのかしら?」
答えられる事はそこまで多くないけれど、とミリアが冗談めかして微笑む。
「質問、ねぇ。君のことについては色々聞きたいが」
ここは本当に語らうための場所なのだろう。元ではあるが【戦争屋】であるアリスは目の前の彼女と戦いたくて堪らない。異界であるとしても修羅場を乗り越えてきたのならば彼女は強い。協力者によってサイボーグでありながら魔力を宿したアリスには彼女の中身も見えている。
だが、駄目だと何かに命じられた。それで収まるほど彼女は理性が強くないが大義がない。見たところ彼女は過去にトラウマを抱えているようだ。よほど何かをやらかしたか、冗談めかした笑みの奥に何があるのか想像しただけでも吐き気がする。
「君はどこのファミリアに属しているんだ?」
まずは当たり障りのないところから質問していく。オラリオで二つ名をもっているならばファミリアには属しているはず。
「【ヘスティア・ファミリア】よ。女神ヘスティアが主神を務める……一ヶ月前は零細派閥だったところよ」
自らの派閥を明かし、肩を竦めつつもミリアは捕捉する様に説明を口にした。
「まあ、貴女も同じ所の場合は、アレよ、平行世界って奴ね。“異界”の通り、別の世界の事よ」
「パラレルか。確かにミリアなんて名前は知らん」
並行世界、クオンから色々と聞いていていつかは行くことになるかもなぁと笑い飛ばしていたのを覚えている。え、これもしかしてあいつの仕業かという可能性が頭をよぎるが忘れるしどうでもいいとすぐに思考をシャットアウトした。
「にしても【ヘスティア・ファミリア】か。となるとベルはいるのか?ならとんだ災難に巻き込まれてるだろうな」
例えばミノタウロスに襲われるとか、と付け加える。ミリアが様々なことに巻き込まれる様を想像しようとするが今生きているということは何とか乗りきってきたのだろう。恐らくはその災難にはアリスも巻き込まれると思われる。
「ミノタウロスには襲われたし、【アポロン・ファミリア】には襲撃されるし……いまは『
面倒事を背負い込みたければ【ヘスティア・ファミリア】に入団すべき。そう言える程の苦労の数々にミリアが虚ろな目で苦笑する。
「と、言うとそっちはまだミノタウロスに襲われた所なのね」
過去を回顧する様に遠くを見つめ、自らの経験から目の前のアリスに忠告を行いつつ、てミリアが溜息を零す。
「まあ、黒いゴライアスに気を付けなさい」
「やっぱりなんだなぁ、楽しそうだ。あんたとも殺りあえたら楽しそうなんだがなァ」
今はブレードも持っていない。だから殺しあうのは分が悪いし、ミリアも望んでいないだろう。黒いゴライアス、恐らくはゴライアスの異常個体なのだろう。ミリアの虚ろな目にさらに高揚感が増していく。
「今はリリルカに説教くれてやったところさ。殺しがいのある奴はまだ居なくてな」
ミノタウロスも正直弱かった。顔が綻ぶことはないが自然と高笑いが出る。
「ああ、貴女も
眉間を揉みつつ、目の前の人物が
「敵対する相手を選ばないと、悪目立ちするわよ」
まあ目立つのならば意図せずとも敵がわらわら湧き出てくるが、と内心で呟きつつもミリアは曖昧に笑った。
「戦闘狂?失敬な、私は自分より強い者を殺したいんだ。虐殺なんぞ趣味じゃない。それにさぁ、オラリオってバベルへし折れるくらいの力持つやついるの?」
義体のパワーアシストと恩恵の力は偉大だ。今ならばメタルギアレイくらい片手で放り投げられるくらいの自信がある。ミリアならばアリスより世情は詳しいだろう。
ミリアに戦闘狂であることを指摘されて思い出したことはアリスの強さだ。正直、ゴライアスくらいまでなら投げ飛ばせる自信がある。
「ベートとかいう奴は加減したのに一発で気絶しやがったもん」
クオンという強敵はいるもののそれ以外に存分に殺しあえる存在は今のところはいないと断言できる。
ミリアの内心は理解できるがこれは性だ。サイボーグとして在るならば逃れようもない。
「強敵との戦闘を望むのも戦闘狂と言うのよ」
若干の呆れ混じりに指摘しつつも、溜息を零してこれまでの夢で出会った異界の者達を思い浮かべる。
「米狂い、【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】を短期襲撃、様々なVRゲームトラブルに巻き込まれた少年、
「サイボーグだもんぅぅ。仕方ないじゃないか!」
ミリアの指摘に机に顔を突っ伏す。心にダイレクトアタックしてくるその指摘は確実に心を抉られる。
「ん、米狂い?米無かったら普通発狂しない?米ほどの万能食材ないだろ」
ミリアの言葉の一つに反応する。日本人にとって米などの食文化は生命線である。フグやらなんやら、毒のある生物を何とかして食っている時点でお察しだ。かくいうアリスも大好物がない生活など想像できなかった。
「それに私はマトモな方だろうよ。これでも元少年兵なんだぞ」
精神崩壊っぽい反応を見せたが数秒後には完全に立ち直る。不安をまだ吐き出しただけなので問題はない。
ミリアの呆れ顔は絵になるし、なんか可哀想な目で見られてる気がする。全くもって遺憾である。
「あー、本人を前にこう言うのもなんだけど、情緒不安定だと思うわ」
「自分で自分の事をマトモだと口にする奴がマトモな事って無いわよ……?」
「すまんな、一夜限りの夢だからはっちゃけたいんだ。あと、その言葉には同意するよ。私がマトモだなんて世界は滅んだ方がいい」
戦場で死んだのだろうことはまだいい。しかしそれから転生からの性転換、それにこの身体は和平にとって特別なもの。
ミリアの様子には思わず笑いが出る。世界には和平以上に恵まれない奴は無限にいる。戦争なんてもんはクソ喰らえ、しかしそれが無ければアリスは存在し得なかった。
「‥‥‥ちっ。スマンが戦闘狂って言葉は発さないでくれ。もう人撃つ時の感覚は味わいたくない」
戦闘狂とは昔の呼び名だった。ガンパウダーによる麻薬成分の摂取や毎日のご飯、離れるに離れられなかったし育ての親には特別な教育が与えられた。その末についたのがミリアの口に出した名前。銃は扱いたくない、そんな思いから刀に手を出した。
ため息をつくと背もたれのない椅子でもあるようにもたれかかる。
「それは昔の呼び名でな、それ聞いただけで全部思い出しちまうんだ。だから虐殺は悦楽にしたくない」
トラウマ呼び起こさせられて平静保てるか?とミリアに問う。煙草はないかと探ってみるがどこにもない。
ここでやっと表情が嫌悪感に染まる。
「ああなるほど……それは悪い事をしたわね。謝るわ、ごめんなさい」
戦争経験、と言えば架空の
ただ、どちらかと言えば空襲に怯えたり等、死の恐怖方面ではなく殺害に対する忌避感の辺り少し変ではあるなとミリアは内心で呟きつつ、それを隠して微笑みを浮かべる。
「ま、人の事を言えないぐらい私もおかしいしね。人を騙して堕とすのは得意よ、誇る事ではないけれど」
「ウチの世界じゃあ戦争経済なんてもんがあって、ああそんなことはどうでもいいか」
表情はすぐに無に戻る。殺し自体に忌避感はないが弱者を殺すのが大嫌いなのだ。自分の剣は【活人剣】であることが彼女の誇りの一つである。
【愛国者達】だとか【PMC】だとかそんなものに踊らされて殺しをやらされるなんぞは真っ平御免、自分の理想は自分で決める。
それにミリアの人格はまだマトモな方のようだ。
「死は怖くなかった。私は弱者を救いたかっただけ。うん、変だな。騙す、かぁ私の場合騙されたって分かったら殺すからな。大体は初見で殺してる」
そもそもサイボーグである和平に接してくる人物などあまりいなかった。和平の正義の概念は結構曖昧であるのだ。
もう一度タバコか日本酒がないかと探してみるがやっぱりないので変わりに緑茶を飲む。
「まあ、詐欺師相手に話を聞く方がおかしいか……」
騙してくる相手は問答無用で殺害。ある意味わかりやすい解答に顔を引き攣らせつつも納得して頷く。
ある意味、現在も『猫被り』しているので、騙していると言えるが口にしない方が吉だろう、とミリアは話題を逸らす事にした。
「そういえば、ステイタスについて聞いても良いのかしら?」
悪意を込めて騙してくるなら殺るが悪意がないならどうでもいいと流す。今の状況はそれにあたるだろう。
「ステイタス?ああ、どうだったっけ」
ステイタスって確か、と頭を悩ませる。それって確かヘスティアに背中に刻まれたアレ、更新なんてほとんどしなかったから存在自体忘れかけてた。ベルは毎回更新してもらっているようだ、それが普通だな。
ミリアの引きつった笑顔をみて内心でニヤニヤと笑う。大体は心情を読み取れて筒抜けであることを知らない人を眺めるのは愉快なものである。
「しまったな、更新なんてほとんどしてないぞ」
愉快な感情は捨ておいて本気で思い悩む。最初に羊皮紙もらって、その項目を見たんだった。記憶は朧げだがデータとしては残っているはずだ。
「更新せずに戦ってるの? いや、まあ生身の人間じゃないから案外いけるのかしら」
アンドロイド、人体を機械に置き換えて増強を図った人間だからこそ出来る芸当なのかと呆れて肩を竦める。
加えて随分と独特な会話調子と情緒不安定、会話慣れしていないのか非常に疲れる相手だと内心で呟きつつ、はて次の話題は何を出すべきかミリアは片目を閉じた。
「まあ別に良いけど、恩恵更新はした方が良いわよ。周囲から不自然に思われるでしょうし」
「だよなぁ。今までは忙しかったもんでね、次からはちゃんとやるよ。おデータ見つけた」
記憶容量内のデータを探っていると一応保存しておいたと自動保存されている中から自身のステイタス情報を見つける。ミリアには見えないだろうがメニューを操作してその画像を閲覧する。
元とは違う身体ではないからか、それと元々仕事に注力しすぎていたからか、こういうなんの打算もない会話が苦手だ。
「んー、ステイタス情報って何が知りたいんだ?一応転生者だからかスキルと魔法はあるけど」
「てんせ……いや、まあ教えてくれるならスキルも魔法も気になるけど、さらっと重要情報零すのは心臓に悪いわ」
アンドロイド、元人間。その認識はしていたものの、よもや転生者。己と同じ境遇だとは考えていなかったミリアが眉間を揉んで溜息を零す。
「君も転生してきたんだろう?大体の考えは読めるものでね」
戦場に身を置く以上、知性体と戦うことがほとんどだ。無人機には効かないが読心術は生き残るための必須テクでもあるのだ。いつの間にか相手の心を読めるようになったのはありがたい話である。
それにそのおかげで苦手な方の人間であるミリアとも会話ができている。
「よし、簡単に説明するとしようか」
視界の隅にでている写真データ、それを見ながら要約して話していく。
まず、育て親の影響によって発現したのが【至高の少女《アリス》】早熟スキルであり身体のメンテナンスが不要になる効果、そしてこれまでの経験による【機械兵士】感情の抑制と人型、大型の敵と戦う時のステイタス補正。魔法は召喚系のもの、自分が使える兵器の類を出す。消費魔力は出すものによって変わる。
そんなものであった。
「ざっとこんなもんか。で、評価の程と感想は?」
視界の隅の写真データの出現を一旦不可視にするとミリアを見る。
「まあ、素で読心されてるのはまあ良いでしょう。評価は、宝の持ち腐れかしらね。感想と言われても、兵器を召喚なんて馬鹿みたいに目立つ魔法は使い勝手が悪そう、ぐらいかしらねぇ」
早熟スキルと聞いて、ステイタスの更新を行っていないのなら無意味なスキルでは?と小首を傾げつつ、随分とはちゃめちゃな魔法とスキルだなぁと他人事の様に呆れながらもミリアは緑茶を啜った。
「それは君もだろう。君も私と同じことができると見える、兵器ではなくこんなものも出せるぞ?」
来たれ、と詠唱を挟んだ後に道具名を言う。この場合は【ムラサマブレード】であった。達人といえる男が用いた名刀を高周波加工した刀である。
小さい魔法陣が形成された後にゴトリ、と机の上に物体が落ちた。銃のような機構を採用し引き金がある鞘が特徴的なものだ。
「正確には私の使える武器といえるもの、が正しい。私が扱えば正しく兵器になるから変わらんがな」
ミリアの呆れ顔とは対称にアリスの雰囲気は得意げだ。アリスはムラサマブレードを手に取ると完全に鞘から刀身を引き抜く。太刀といえる刀身の長さと真紅の刀身はアリスにとっていつ見ても惚れ惚れするものであるのだ。アリスの様子は友達にものを自慢する子供のようだ。
「正直これ使えばバベルぶった斬るくらいは可能なんだよな」
自分に使う資格はないけど、と続けてムラサマブレードを机に置き直すと透明化して消えていく。
そうだ、と思い出したようにアリスはミリアに尋ねる。
「君のステイタス情報はどんなものなんだ?換装みたいなことはできると思うのだが」
「貴女は言葉を選ぶべきだと思うわ。もしくは話題選びの仕方……普段からそんな風に無遠慮に相手のステイタスまで言及してると悪目立ちするわ……いや、まあこの夢の事は忘れるから注意するだけ無駄よね」
溜息交じりに独特の
「【クラスチェンジ】……まあ、
「複数ステイタス、ああそういうことか」
これまでの会話からある程度彼女の過去について推測する。ああ、私より悲惨なものであることは分かる。
ミリアの指摘についてはアリスの痛いところであったので胸に留めつつ次の話題は何にすべきかと頭を探る。
「そっちじゃあ【魔術】いや恩恵以外に魔力活用する手段ってあるのか?」
必死に絞り出した質問がこれ。やはり会話は苦手だとは歯噛みする。
「恩恵、以外に……一応、
小首を傾げつつもアリスの質問に答えた所で、ミリアは窓の外が霧に包まれているのに気が付く。
当初は無人の街並みが見えていたその窓は、今や濃霧によって真っ白な
「あら、もう時間みたいね。もうすぐ目覚めるみたいよ」
肩を竦めたミリアが、対面のアリスに告げた。
「そうか、今度でも会いに行かせてもらおう」
覚えていたら、の前提がつくがと補足する。しかしながら不可能ではない。
「世界移動できる知り合いならいるんだ。それじゃあまた今度」
この会話がデータに保存されていたら面白い。てか恐らく保存されているだろう。
ミリアの言葉を聞くと席をたって黒コートを羽織る。
「あー、まあ、会いに来られても私は覚えてないのだけれど……まあ、それなりに楽しめたわ。それじゃあ、さようなら」
覚えている手段があるのかと首を傾げつつ、ミリアが別れの言葉を呟いた。
直後、壁をすり抜ける様に濃霧が部屋の中を染め上げていく。直ぐ近くに居た筈の互いの姿すら見えなくなり、声も遠く離れていく。
ベッドで身を起こしたままぼんやりとしていたミリアは、ふと窓の外に広がる朝早の静寂に満ちた街並みを見てから、溜息を一つ零した。
「あぁ、今日は商会からの
今日の予定を呟いてから、眉間を揉んでもう一度窓の外に視線を向ける。
「…………なんか、寝た筈なのにやけに疲れてる気がするわ」
なんとなく、独特の会話テンポに合わせようとして失敗し、体力を過剰に消費させられた。そんな感覚を覚えつつも、ミリアはようやくベッドから這い出て着替える為に
起きると白色の天井が見える。そして直近のデータになにやら残っているようで視界の隅でお知らせのマークが点滅していた。
「お、換装終わってる。ん、他にもあるな、夢?」
窓のない地下室、アリス専用の個室、そこでアリスは換装用のポッドで眠っていたようだ。クオンに【改良型】の義体が完成したとか言われて換装していたところであった。
「これは、クオンに話してみるか!」
この世界にアリスに干渉できるものは存在しない。つまりこれは真実の記録なのだ。いずれ会いにいってみるか、と心に決めて入口の自動ドアを開ける。
作者:魔銃使い() あとがき
コラボの方ありがとうございましたー。ちょくちょく時間かかってしまって申し訳なかったです。
非常に個性的なオリ主で此方のオリ主にどう対応させるか結構迷いましたねぇ。
それでもコラボはとても楽しかったです。重ね重ねお礼の方を、本当にありがとうございました。
作者:貴志部 矢賀様 あとがき
生きる目的をひとつ果たしました。コラボありがとうございました。
やっぱり癖強いよね、アリス。戦闘狂ではあるんですけどね、知識欲はそれ以上なものでこんな感じになりました。本編で出てない設定も出ましたね。
私のような若輩者とコラボしていただいて、本当にありがとうございました!