ワルプルギスの夜を越え、早二ヶ月。
魔法少女たちは日常を楽しんでいた。特に何かが変わるわけでもない、平穏な日常。
しかし、そんな中、ある一人の少女は決断する。

「あなたが…好きです。」

「ごめんなさい…。」

そして、もう一人の少女は苦悩する。

「恋って…何?」

答えを見つけ出すため、多くの人の力を借りるもう一人の少女。

果たして、二人の関係は…一体何なのか。

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まず、別の作品になってしまうのですが…【暁美ほむらの心は、弱い。】をお読みになっていらっしゃる皆様に、お詫びをしなければなりません。
現在、更新が滞っていますが、それはこれが原因です。
本当に申し訳ございません…。思いつきでちょっとずつちょっとずつ…と完成はあっちがもう何話か進んだ頃を予定していたのですが…こっちに夢中になってしまいました。
すぐに!書き上げてしまいますので、もう暫くお待ちください。

さて、謝罪は程々に…今回も、まどほむです。
…どうしてでしょうか、身体がほむらをデレデレ甘えん坊にしたくて止められないのです。
じゃあってことで、今回は少し、異色なまどほむになっています。
両思い?…さあ、それはどうでしょうか。

では、前置きで飽きてしまわないように、本編、どうぞ。




あなたが好きです。/ 恋ってなんですか?

「大好きなの…。」

 

 

 

 

「おはよう!さやかちゃん!仁美ちゃん!」

 

時間はまだ8時前。いつぞやのようにパンを咥えて、などということはなく、待ち合わせ場所に向かっていた。

 

「おはよー、まどか!」

 

「おはようございます、まどかさん。」

 

今から二ヶ月前なら、もう学校に向かっていただろうが、今は違う。

だって、もう一人待ち合わせをしている人がいるから。

 

「おはよう、まどか、さやか、仁美。」

 

黒い髪をなびかせて、どこか大人びた笑みを浮かべながら挨拶をする人物。

 

「おはよう、ほむらちゃん!」

 

そう、ほむらちゃんだ。…いつも始めに私の名前を呼んでくれるのがちょっぴり嬉しいのは内緒の話。

 

「おはよー、ほむら!今日も…美人だねぇ…。」

 

「いきなりなんなのよ…。でも、お世辞が上手なのね、さやか。」

 

「ほむらさんは本当に美人ですわ。きっと、さやかさんもお世辞なんかではないと思いますわ。」

 

「そう言われてもね…。自分では、ありふれたような顔だと思うけど。」

 

「そんなことないよ!ほむらちゃんはすっごく美人さんだよ!」

 

私が惚れてしまうくらいには、と心の中で付け足す。

 

「ありがとう、まどか。…さぁ、あまりもたもたしていると遅れてしまうわ。」

 

「おわっと…そうだね。あたし、宿題やってないんだよね…。早く学校でやらないと!」

 

「はぁ…私が教えてあげるわ。どこが分からないの?」

 

「問題2の連立方程式のところ…。文章のは苦手なんだって…。」

 

「そこは私も苦戦しましたわ。さやかさん、私も教えます。」

 

「私も…力になれるかわからないけど、手伝うよ!」

 

「ありがとう!あたし、いい親友をもったなぁ…!」

 

相変わらずの親友に、皆は当然のように手を差し伸べる。やっぱり、優しい。

 

「さて、と。」

 

ほむらちゃんは一区切り、といった感じに声を出して下駄箱を開ける。そこには、手紙は一通、二通ほど入っていた。

 

「また…。」

 

「ほむら、それ何通目よ?」

 

「今月で…十二通目ね。」

 

彼女たちが話しているのは…。

 

「ラブレター、かぁ…。」

 

そう、恋文だ。

 

「まどかさん、憧れていましたものね。」

 

「え?あ、うん、そうだね…。でも、今は…。」

 

私は、ほむらちゃんの方を自然と見る。私の瞳には、手紙を嬉しいが、複雑、といった気分で一枚一枚確認しているほむらちゃんが映った。

私が欲しいのは、ほむらちゃんからのラブレターだけ。

それ以外の人のはいらない。

 

「今は…?まさか、まどかにも春が!?」

 

親友の言葉に胸がチクリと痛む。そんなことはないと分かってはいるが、ほむらちゃんに知られたら…そう思うと否定の言葉しか考えつかなかった。

 

「ち、違うよぉ!そ、そんな人いないよ!」

 

「本当か〜?怪しい…。」

 

「ほ、本当に違うってば!」

 

「さやか、そのくらいにしておいてあげなさい。まどかが困っているわ。」

 

「むぅ…なーんか釈然としないなぁ…。」

 

さやかちゃんの諦めの言葉を聞いてホッとする一方で、私の心臓はドキドキしている。

ほむらちゃんが庇ってくれた。それが嬉しかった。

 

「はぁ…断るのも楽じゃないのに。」

 

「お、愚痴ですかい?」

 

「そういうわけじゃないのだけど…やっぱり、気持ちを受け取ってあげられないのは辛いし、大変だし…。

皆との時間も減ってしまうし…。」

 

「まぁ、仕方のないことよね…。」

 

こんなことを考えているほむらちゃんは本当に優しい。

その優しさを全部私に向けてほしい。そんな風に思うこの頃だった。

 

「ごめんなさい、私、返事をしに行かなきゃいけないから、また教室で。」

 

そう言うと、また黒髪をなびかせながら行ってしまった。ただの廊下のはずなのに、ランウェイにみえてくる。

 

「くぅ〜!これが贅沢な悩みってやつか〜!」

 

「ほむらちゃん、すごく人気だよね。」

 

「ね〜。広報委員のアレ、見たでしょ?」

 

「【学校で一番付き合いたいと思う人は?】ランキング一位でしたものね、ほむらさん。」

 

「学校で、って結構すごくない?マミさんが一位かと思ってたけど、そんなに高くはなかったよね。」

 

「ほむらちゃんが圧倒的過ぎたんだよ。学校の男子の半分の人がほむらちゃんに投票してたし。」

 

「あのランキングを見たときのほむらの顔、面白かったなぁ…もう今はなれたみたいで、あんな顔しないけど。」

 

さやかちゃんが言っているのは、くちをパクパクさせて、顔を真っ赤にしていたほむらちゃんのこと。

私もまた見たいと心の中では思っていたが、さやかちゃんもだったか…。

 

「でもさ、ほむらってどうして誰とも付き合わないんだろうね?」

 

「確かに…前、学校一の男子と言われている辰巳さんの告白を断りましたのもね…。」

 

「誰か…好きな人がいるのかな。」

 

それが私だったら…いいのにな。などと、ありえないことを心の中でつぶやく。

 

「ほむらの好きな人ね…。案外、まどかかもよ?」

 

「うぇ!?わ、私!?」

 

親友の唐突な言葉に思わずたじろいでしまう。

反応だって不自然なものになってしまうわけで。

 

「あ、ありえないよ!もし、そうだったらすごく嬉しいけど…私、なにいってるんだろ…と、とにかくありえないよ!」

「ほーう…。そういうことか…。」

 

「な、なに、どうしたの?」

 

「いーや…そういえば、ほむらって女子にモテてるらしいよ。」

 

この親友は何を言い出すんだ!いきなり、そんなことを言って…。

 

「ふ、ふーん…そうなんだ。」

 

「そうなんだよ、女子に!モテてるんだよ。」

 

「なんで女子に、を強調するの!」

「だって、まどかってほむらのこと好きでしょ?」

 

「なっ、そ…そんな…わけ…。」

 

親友の的確な指摘に対して、否定しようとするが、語尾が尻すぼみになってしまう。

 

「やっぱりか!薄々そうなんじゃないかと思ってたけど、好きだったかぁ…おめでとう。」

 

「まどかさん…頑張ってください!私も応援いたしますわ!」

 

「…な、なんでバレたの…?」

 

「いやー、まどかって、嘘が下手じゃん?親友だからすぐに分かっちゃうんだよね。」

 

「うぅ…恥ずかしぃ…。」

 

「いいじゃん!まどかとほむらならお似合いだよ!」

 

「私とまどかが、どうかしたのかしら?」

 

「おわぁ!?」

 

「わぁっ!?」

 

「な、なによ。そんなにおどろくことないじゃない…。」

 

「い、いやぁ…いきなりだったからさ…たはは…。」

 

「そ、そうだよ。いきなり来るからびっくりしちゃったんだよ…うん。」

 

本当はそんなことはないけど、仕方のないことだ。

ドキドキしているところに、ーそれに、ほむらちゃんには聞かれたくない話でーほむらちゃんが来たら…。

 

「そういうものかしら…。まぁ、いいわ。」

 

ほむらちゃんが折れてくれてほっとする。これ以上追求されるとぼろが出てしまっていただろう。

 

私達はどこか浮ついた空気で(ほむらちゃんはそんなことないかもしれないが)教室に向かっていた。

 

「おっはよー!」

 

「「暁美さ~ん!」」

 

さやかちゃんの元気のいい声は、クラスのみんなの黄色い声にかき消される。

 

「おはよう、みんな。」

 

「暁美さんに挨拶されちゃった〜!」

 

「…なんだろう、この複雑な気分。」

 

私はさやかちゃんの数十倍は複雑だ。だって…ほむらちゃんには私だけを見ていて欲しいのに…。

 

「はぁ…。」

 

「今日の一時間目は…」

 

「体育です!内容はバスケです!」

 

「ありがとう、優しいのね。」

 

ほむらちゃんは普通の人なら惚れてしまう笑みを向けます。

 

「はぅ…あ、ありがとうございます!」

 

「あー!ずるーい!」

 

「…なんでほむらってこんな人気になったのかね。」

 

「うーん…格好良くて、美人で、優しくて、頼りになって…当たり前だと私は思うな。」

 

「まぁ、ワルプルギスの夜を超える手前くらいで段々変わってきてはいたけどね…。」

 

「はーい!ホームルームの時間ですよ!席に着いて!」

 

和子先生の号令で全員が席に着く。

どういう因果なのか、前回の席替えで私はほむらちゃんの横を引き当てた。その時の喜びは計り知れないものだった。

 

「ふぅ…。」

 

「お疲れだね、ほむらちゃん。大丈夫?」

 

「ええ。ああやっているのも疲れるけど、楽しいから。」

 

「ふーん、そっか。楽しいんだ。」

 

「え、ええ。」

 

「…バカっ…。」

 

「…? 何か言ったかしら、まどか?」

 

「…なにも言ってないよ。」

「でも…」

 

「なにも言ってないってば!」

 

「あ…ごめんなさい、まどか…。」

 

やってしまった。勝手に嫉妬して、八つ当たりしてしまった。ほむらちゃんが交友を持つことは大切なのに、それに嫉妬して…バカみたい。

 

「…一時間目は体育だから、先に行っているわ。」

 

ほむらちゃんは急ぎ足で更衣室へと行ってしまった。

 

「まどか、ほむらにあんな事言っていいの?どんどん離れて行っちゃうよ?」

 

「…わかってるけど、仕方ないだもん…。」

 

「仕方ない、の一言で片付けていいの?」

 

「…。」

 

「あたしはもっと別の理由があると思うな。それをまどかが気づいてるかどうかは知らないけどさ。」

 

「ま、がんばんなさい。あたしももう行くから。」

 

仕方ない。仕方ないって…何?

親友のさやかちゃんには分かってしまうか。

私も薄々気がついていた。これは仕方がないんじゃない。…私のわがままなのだ。

でも。どうしようもない。好きな人を目の前に、おっかなびっくりになることは避けられない。それを克服しなければ、一歩先には進むことはできないだろう。

…頭では分かっても、体が分からないのが人間だ。

私は…。

 

私が更衣室に向かう最中、ほむらちゃんとさやかちゃんとすれ違った。すれ違うだけで、会話はしなかった。

ほむらちゃんは何か言いたげだったが、私がそれを拒んだのだ。…気持ちが追いつかない。

 

 

「試合、開始!」

 

ほむらちゃんとさやかちゃんは同じチーム。私は、仁美ちゃんと同じチームで、二人とは違うチームだ。

ほむらちゃんのチームは今、試合をしている。私のチームは審判だ。しかし、私を含めて審判などやっている人はほとんどいない。やっている人も無理やり、といった感じだ。

 

「くっそー…塞がれた…。」

 

今はさやかちゃんがボールを持っている。しかし、相手のディフェンスに攻めあぐねていた。

 

「さやか!」

 

「なるほど!ほむら、パス!」

 

さやかちゃんの放ったボールは弧を描き、ほむらちゃんの胸へと飛んでいく。ほむらちゃんはそのボールをキャッチし、ゴールへと進む。

 

一人、二人、三人と、相手ディフェンスの間をドリブルで抜けていく。さやかちゃんとパスをしあいながら進む。途中、見事なターンを見せつつ、シュートをする。

 

その瞬間、体育館には歓声が響いた。

 

「ナイスシュー、ほむら。さっすが!」

 

「ナイスパス、さやか。あなたのアシストのおかげよ。」

 

二人は息ぴったりのプレーを見せてくれた。私は羨ましいな、と思うばかりで。親友にも嫉妬してまったのだった。

 

「あ、暁美さん!さっきはすごかったです!こ、これ、使ってください!」

 

その子がほむらちゃんに差し出したのはタオルだった。

 

「あら、いいの?嬉しいけど、私の汗がついたタオルなんて返されてもいやでしょう?」

「い、いいえ!むしろ、嬉しいです!」

 

「え、えっと…?よく分からないけど、使わせてもらうわね。ありがとう。」

 

またほむらちゃんはあの笑みを浮かべ、お礼を言う。

 

「い、いえ!私はこれで失礼します!」

 

「…モテモテじゃん、ほむら!」

 

そのタオルで汗を拭きながら、ほむらちゃんはため息をつきます。

 

「なんというか、チヤホヤされるのはいいけど、こう騒がれるとまた、ね。嬉しいのだけど、なんというか。」

 

「私はまどか、さやか、仁美…あとはマミに杏子といるほうが楽しいわ。」

 

ほむらちゃんの言葉を聞いた瞬間、心にかかった靄が晴れていくように、気持ちが溶けていく。私の…真の気持ち。そして、私はほむらちゃんに謝罪をしていた。

 

「ほむらちゃん…あ、あのね、謝りたいことがあるの!」

 

「え?」

 

「さっきは、あんな事言ってごめんなさい!」

 

「あ、ああ…。あのことね。大丈夫、私は気にしていないから。まどかが怒っていないのなら、良かったわ。」

 

「あんな事で私達の関係が崩れることはないと思うけど…良かった。」

 

ほむらちゃんはさっきの子に向けた笑顔よりもすごく優しくて、かっこいい笑みを向けてくれた。

そのことがすごく嬉しくて。

 

「ほむらちゃぁん!」

 

つい抱きついてしまった。

 

「わっ…と。もう、いきなり抱きついたら危ないわよ。

まどかならいつでもいいから、次からは声をかけて、ね?」

 

「ねぇねぇ、あたしは?」

 

「さやかだって別にいいけど…まどかよりは下ね。」

 

「ひどい…。」

 

「さやかだって大切な親友よ?あなたがいなくなってしまったら私は悲しいわ…。」

 

「…分かってる。あたしだってそう簡単に死ねないからね。守りたい人も…街だってあるんだから…。」

 

「絶対よ…。苦しんで、もがいて、ようやく掴み取った世界なんだから…約束…絶対に守って…!」

 

「うん…絶対に守る。だから、泣かないでよ…。あたしまで泣きそうになるじゃん…。」

 

「だって…!だって…!怖いのよ…この楽しくて、幸せな日常がまた崩れてしまったら…そう考えると、怖くて怖くてたまらないのよ…!」

 

「ほむらちゃん、大丈夫だよ!私たちはずっといっしょ。もう、一人で闘う必要なんてないんだよ?」

 

「だって、私はほむらちゃんが大好きだもん!」

 

自分の気持ちに素直になれた。ほむらちゃんの涙を見て、私の気持ちも目覚めた。

 

「まどか…ありがとう…。いつもあなたに助けられてばかりね…。」

 

「やっぱり、まどかは私の最高の友達ね…!」

 

でも、ほむらちゃんは本当の気持ちには気づかなくて。

あくまで友達として。そういう意味には受取ってくれない。

 

「…うん!私も、ほむらちゃんは最高の友達だよっ!」

 

私も、こう返すことしかできなかった。

 

お昼休み。

 

「はぁ…。」

 

「そんなに落ち込まないの、まどか。ほむらが鈍感なのは分かってることでしょ?」

 

「でも、流石に鈍感が過ぎるかな。あの雰囲気であんなこと言われたら少しは意識してもいいと思うんだけど。」

 

「ほむらさんは恋というものがなんなのか、よく理解していないのだと思いますわ。ましてや女の子同士の恋…。もっと理解に苦しむでしょうから。」

 

「女同士なんてあたしが親だったら止めてるね。まぁ…今もすこーし、反対だけどね…。」

 

「もう…美樹さん、鹿目さんが決めたことなんだから、そんなこと言わないの。」

 

「すいません…。でも、ほむらもまったく鈍感ですよねー。」

 

「そうねぇ…あんなに告白されてるのに、気づかないなんてねぇ。これはしっかりと気持ちを伝えないといけないわね、鹿目さん?」

 

「はい…。でも、私、自信ないです…。さっきはそういう雰囲気だったから言えたけど、もう…。」

 

「こーら。そうやってへこたれないの。そんなじゃ、暁美さんを振り向かせられないわよ?」

 

「マミ先輩の言うとおりですわ。もっと自信をもってください。」

 

「そーよ。あたしだって、恭介に告白するのは怖かったけど、告白したから今があるんだよ?」

 

「…わかりました。頑張ってみます。」

 

そう言ってみたものの、そんなふうに割り切れないのは私がおかしいの?やっぱり、緊張するし、さやかちゃんみたいに気持ちだけで突っ走ることは怖いし…。

何より、ほむらちゃんは困ってしまうだろう。

そんな顔、見たくない。させたくない。

そして、自分が、告白して振られていく人たちと同じになりたくない。ほむらちゃんの一番でいたい。…妄想のなかだけでもいいから。

 

「ごめんなさい、遅れてしまって…。」

 

ほむらちゃんが帰ってきた。告白の返事をしていて遅れたのだ。

 

「大丈夫、そんなに待ってないからさ。さて、ほむらも来たことだし…。」

 

「「いただきまーす!」」

 

「「「いただきます。」」」

 

「わぁ、ほむらちゃんのお弁当、美味しそう!」

 

「そう?昨日の残りものばかりだけど…嬉しいわ。」

 

「いやー、手作りなんて憧れちゃうなぁ…。」

 

「美樹さん、私が教えてあげましょうか?すぐにできるようになるわよ。」

 

「マミさんのお料理教室か…今度教えてください!」

 

「私も教えてさしあげましょうか、さやかさん?こう見えても料理は得意ですのよ?」

 

「仁美はなんかきびしそう…。」

 

「当たり前ですわ。ビシバシいかないと体に染み込みませんから。」

 

「マミさ〜ん!仁美が怖いです〜!」

 

「そうね…志筑さんの意見も一理あるわね。」

 

「マミさんまで!?」

 

「ふふっ、冗談ですわ。」

 

「そうよ、美樹さん。冗談よ。」

 

「じょ、冗談に聞こえなかったよ…。」

 

「…相変わらず、楽しそうね。」

 

「そうだね…三人って仲いいよね。」

 

「私とまどかだって仲はいいじゃない。…まどかとさやかには負けるかもしれないけど。」

 

「そ、そんなことないよ!私は…ほむらちゃんが…。」

 

一番好き、なんて言えるわけがない。

 

「…? 私が…?」

 

「な、なんでもないっ!は、早くご飯食べないと時間なくなっちゃうよ!」

 

「変なまどか…。」

 

「…はぁ。」

 

その後のさやかちゃんのため息がやけに耳に残った。

 

「次は音楽ね。何をするのかしら。」

 

「確か…合唱の練習とか言ってたような…?」

 

「とりあえず行ってみようよ。少し早いけど、向こうでなんかしてればいいんだし。」

 

合唱か…どんな曲を歌うんだろ?

 

「ここが音楽室…初めて来たわ。」

 

「そういえば、うちの学校って音楽の授業全然ないよね。」

 

「大きいピアノ…。」

 

「どうしたの、ほむら?」

 

「これって、弾いてもいいのかしら?」

 

「う、うん。別にいいと思うけど…ほむらちゃんってピアノ弾けたの?」

 

「ええ。ずっと病院暮らしで体を動かすことも禁止されていたから、ピアノばっかり弾いていたら、少し、ね。」

 

「さて…身体が覚えているといいのだけど…。」

 

そういうとほむらちゃんはピアノを弾き始めた。

その姿はまるで絵画のよう。その部分だけが現実から切り離されたようで。

つい、見とれてしまった。

 

ほむらちゃんが演奏を終えると、拍手が巻き起こっていた。

「あら、ありがとう。」

 

「うーん…この曲なんだっけ…聞いたことがあるような…?」

 

「スピッツのチェリーよ。かなり有名だと思うのだけど。」

「んー…?聞いたことがあるような…?」

 

「ほむら、歌ってよ!」

 

「はぁ…?まぁ、いいわ。弾き語り、っていうのかしらね、これ。」

 

そう言うと、ほむらちゃんはもう一度鍵盤に手を置いて、演奏をしながら歌いだした。

 

まるで、女神の歌声。透き通っていて、すごく上手。

ずっと…いつまでも聞いていたいな…。

 

「ふぅ…どうだったかしら。歌はあまり得意ではないのだけど…って、え?どうしてみんな硬直しているの?」

 

「ほむら…あんた歌うますぎ。やばいよ。」

 

「あ、ありが…とう…?」

 

そういうほむらちゃんは案外満更でもなさそうに見えたのは

 

「それでは…私は稽古がありますから、ここで。」

 

「バイバーイ!また明日!」

 

帰りは私、さやかちゃん、ほむらちゃんの三人になってしまった。マミさんは受験が近いということで補習を受けているそう。

 

「大変だねぇ、仁美も。庶民でよかったわぁ…。」

 

「だねぇ。私も庶民でよかったよぉ。こうやってみんなと帰れないなんて嫌だもん。」

 

「そうね…仁美とはあまり一緒にかえったことがないわね。」

「さて、あたしたちはあたしたちで寄り道でもしてきますか!」

 

「そうね。と、言ってもまたショッピングモールなんでしょう?」

 

「仕方ないよ。中学生向きな場所っていったらそこしかないもん。」

 

「そーなんだよね…もっとこう、いい感じの場所がないかなぁ…。」

 

「まぁ、そんなことを嘆いていてもどうしようもないのだけどね。さ、早く行きましょう。」

 

「それもそうだね。」

 

ほむらちゃんとさやかちゃんは私を置いて先に行ってしまう。

ひどいなぁ…。

 

「ま、待ってよぉー!おいていかないでー!」

 

そんなこんなで、ショッピングモールに到着した私達は、いつものハンバーガーショップに来ていた。

 

「さてと、あたしはなににしようかな…。」

 

「まどかはなにか食べたいものある?」

 

「うーん…私はあんまりお腹空いてないんだ。それに、最近体重が増えた気がして…。」

 

「そう、体重が…私はそんなの気にしたこともなかったわね。」

 

「あたしも魔法少女するようになってからはそんなの気にしなくなったかな。」

 

「はぁ…普通の女の子の悩みのはずなのに、疎外感を感じるよぉ…。」

 

「いいじゃない、私からしたら体重で悩むなんて憧れに近いものだもの。」

 

「…今までのことがあると余計、ね…。」

 

「そっか、そうだよね…ごめんね、無神経だったね…。」

 

そう。ほむらちゃんは入院をずっとしていて、ワルプルギスの夜を倒すために頑張っていたのだからそんなことを気にすることすらできなかったのだ。

それを私は分かっていながら、無神経な発言をした。

 

「気にしなくていいの。もう、縛られる必要なんてないのだから。」

 

「それでも…ごめんね。」

 

この収集がつかなくなった空気を壊したのは、さやかちゃんだった。

 

「…さーて!あたしは何にするか決めたから注文してくるね!」

 

「…いってらっしゃい、さやか。」

 

「…。」

 

「さ、さて。私達も注文しましょうか?」

「そうだね…。」

 

「えーっと…私は、これにしようかしら。」

 

「…私は…これにしよう。」

 

「じゃ、じゃあ、注文に行きましょう!」

 

「うん…。」

 

いつまでもさっきのことを引きずっている私を元気づけようと明るく積極的に話しかけてくれるのに、私はいつまでたっても暗いまま。

…最低だ。私って。

 

「…まどか、さっきのことは本当に気にしなくていいの。私は今が幸せだから…。」

 

そう言うほむらちゃんに私はただ、うん、と返すことしかできなかった。

 

注文を終えた私たちは席に戻る。

そこではさやかちゃんがすでに食べ始めていた。

 

食事中、私たちの間には会話はなかった。

そして、沈黙を破ったのはさやかちゃんだった。

 

「…まどか、いつまでも落ち込んでるの?いい加減にしなよ。」

 

「ちょ、ちょっと、さやか…。」

 

「ほむらは黙ってて。ほむらが元気づけようと頑張ってるのに、あんたはいつまでもうじうじしててさ。」

 

「ほむらに失礼だと思わないの?」

 

「…。」

 

さやかちゃんの的確な指摘に私は黙り込んでしまう。

 

「なんか言いなさいよ!」

 

「さやか…やめてあげて…。」

 

「…わかってるもん…。そんなの…。」

 

「は…?」

 

「ほむらちゃんが、私のことを元気づけようとしてくれてるって…わかってる…!」

 

「じゃあ…どうしてそんななのさ!?もっと…もっと、態度で示しなよ!」

 

「仕方ないじゃん…!私はさやかちゃんみたいに簡単に割り切れないよ!そうやって…。」

 

「だからって…!」

 

そんな時、ほむらちゃんが弱々しい声で割って入ってくる。

 

「もう…やめて…!」

 

「喧嘩なんて…しないでよ…!二人とも…仲良くしてよ…!」

 

「どうして?どうして私なんかのせいで喧嘩するの…?」

 

「私は二人が喧嘩してるところなんて見たくないよ…!」

 

「私が原因なら…謝るから…喧嘩、しないでよぉ…。」

 

「ほむらちゃん…。」

 

「…ごめん。」

 

「まどか、本当に私は気にしていないから…元気を出して…。」

 

「あなたが悲しそうだと…心配になるの…。」

 

「さやか、あなたが私のことを庇ってくれたのはすごく嬉しかった…。」

 

「でも、まどかとそのことで喧嘩するなんて、私は嫌…。」

 

「私が原因で、あなた達を引き裂いてしまったなんてことになったら、私はすごく悲しいわ…。」

 

「…本当に、ごめん。まどか、仲直りしよっか。」

 

「…うん!そうだね!」

 

ほむらちゃんがこんなにも悲しんでいるのに、私がいつまでもうじうじしている場合じゃない。

 

「さ、早く食べよっか!時間なくなっちゃうし!」

 

「…そうね。早く食べてしまいましょう。」

 

なんとかさやかちゃんとも仲直りできて、ほむらちゃんも元気になってみたいで良かった。

 

そんな私達が次に向かったのはいつものCDショップだった。

 

「ここが…CDショップ…。」

 

「あれ、ほむらちゃんと来るのは始めてだったけ?」

 

「ええ…。私は普段はハンバーガーショップに寄ってしまったら、夕飯の支度のために帰っていたから。」

 

「そういえばそうだったね。あれ、今日はいいの?」

 

「今日は朝から作り置きしてあるから、問題ないわ。」

 

「はぇー…。なんか、同級生とは思えないねぇ…。」

 

「それ、どういう意味かしら…!?」

 

「わわっ!ち、違うんだよ、ほむらちゃん!もうそんなことが考えられるって凄いな、大人だな、ってことだよ!ね、さやかちゃん!」

 

「う、うん!そうそう!そういうことだよ!あはは…。」

 

「なにか釈然としないものがあるけど…まぁいいわ。」

 

「さてさて、あたしは、と…。」

 

さやかちゃんはどこかへ行ってしまった。

 

「はぁ…本当に落ち着きがないわね…。」

 

「それがさやかちゃんのいいところだよ。」

 

「それはそうなのだけどね…。」

 

「じゃあ、私たちも探そっか。」

 

「ええ。」

 

私たちは特に何を聴くわけでもなく、ぶらぶらとしていた。しかし、その時間がとても心地良い。

 

「あ…。」

 

ほむらちゃんの足が止まる。

 

「どうしたの?」

 

私がほむらちゃんの向く方へと目線を動かすと、

 

「スピッツ…特集…。」

 

確か、音楽の時間に弾いていた曲を歌っているグループのはずだ。

 

「懐かしいわね…。」

 

「ほむらちゃん、このグループ好きなの?」

 

「ええ…。ループしているときに、スピッツの曲に何度も救われたの…。」

 

そう言うほむらちゃんの顔はどこか悲しそうだった。

 

「特にこの曲が好きなのよね…。」

 

ほむらちゃんが手に取ったのは、【群青】という曲だった。

 

「この曲は私が今こうやっているのも、この曲のおかげかもしれないわね。」

 

「『優しかった頃の心取り戻せ 嘘つきと呼ばれていいから』とか、『明日とか未来のことを好きになりたいな 少しでも』っていう歌詞が心にささったのかしらね…。」

 

「この曲のおかげでみんなに話すことができたの。勇気をもらったのよ。」

 

…ほむらちゃんが好きな曲、か…。

 

「そう…なんだ。ねぇ、他におすすめの曲はないの?」

 

「え?えっと…この曲とか…。」

 

次にほむらちゃんが手に取ったのは【魔法のコトバ】という曲だった。

 

「なんというか…凄く元気になるのよ。落ち込んでいるときに聴くと、ああ、頑張ろうってなるの。」

 

「人によって捉え方は変わるかもしれないけど、ラブソングっぽいのだけど、ラブソングじゃないような気がするの。」

 

「人の心を慰めてくれるような…とにかくいい曲なの。」

 

そう語るほむらちゃんは凄く楽しそう。そんなほむらちゃんを見ていると、スピッツってどれだけ凄いのだろうと気になる。

 

「そっか…。私、スピッツのCD何枚か買ってみるよ!」

 

「え?」

 

「二曲じゃ寂しいから、もう二、三曲買おうかな。なにかおすすめの曲って他にある?」

 

「そうね…。」

 

ほむらちゃんが差し出してきたのは、チェリーとロビンソン、空も飛べるはず、という曲だった。

 

「この曲はスピッツの中でも特に人気なの。だから、苦手ということはないでしょうけど…。」

 

「スピッツって、かなり好みが分かれるのよ。この三曲は万人受けするのだけど…そういう曲のほうが珍しいわ。」

 

「じゃあ、私は買ってくるよ。ほむらちゃんはもう少し見てて?」

 

私が精算を済ませ、もとの場所に戻ると、ほむらちゃんはさやかちゃんと楽しそうに談笑していた。

私はまた、その姿に嫉妬する。しかし、そんな黒い気持ちを奥に押し込み、いつもの鹿目まどかになる。

 

「ただいまー!ごめんね、待たせちゃって。」

 

「いいえ、気にしていないわ。」

 

「さって、と!もう遅いし帰ろっか!」

 

「もうこんな時間なのね…。楽しい時間は直ぐに過ぎてしまうわね…まどかもそう思わない?」

 

「え!?えっと、うん。私もそう思うな!」

 

楽しい時間。その言葉が私の頭の中をぐるぐると回る。

楽しいって言ってくれたことがすごく嬉しい。

そして、自惚れでなければ私たち…ううん、私と一緒にいれると楽しいって言う意味にも感じられた。

 

「ふふっ、私と同じでよかった。」

 

ほむらちゃんは私を笑顔で見つめてくる。

ドキドキしている私のことなど露知らず、ほむらちゃんはさらに追撃をしてきた。

おでこにほむらちゃんのひんやりとした手が置かれる。

 

「まどか、顔が赤いわよ?大丈夫?」

 

全然大丈夫じゃないよ。主にほむらちゃんのせいで。

 

「だ、大丈夫!心配しなくていいよ!」

 

「そう?ならいいのだけど…。」

 

この短い時間でほむらちゃんにドキドキさせられっぱなし。

 

「あー…お楽しみ中悪いんだけど…早く帰りません?」

 

「ひゃあ!さ、さやかちゃん!?」

 

「あら…さやか、ごめんなさい。」

 

さやかちゃんが居ることを完全に忘れていた。二人きりだと思ってたのに…。

…でも、さやかちゃんのおかげで助かったのだから、文句など言えない。

 

「…まどか、ほむらといい感じじゃん!」

 

さやかちゃんは小声でそんなことを言ってくる。

 

「そ、そうかなぁ…えへへ…。」

 

「あーもう、デレデレしちゃって!」

 

「だ、だってぇ…。」

 

「まぁ、頑張んなさいよ。ほむらも楽しそうだったし。」

 

「そ、そうかなぁ…だったら嬉しいなあ。」

 

「…私を放って二人きりで内緒話だなんて、仲がいいのね。やっぱり私は二人の仲には敵わないわ。」

 

ほむらちゃんの少し鋭く、悲しそうな声が私たち二人の間に響く。

 

「あ…と。」

 

そんなことないって言ってあげられない自分が情けない。

 

「私、こっちだから失礼するわね。また明日。」

 

そういうとほむらちゃんはやや早足で去ってしまった。

別れ際のあの、凄く悲しそうな顔はいつまでも忘れることはないのだろうなと、そう直感が言っている。

 

「…悲しそうだった、ほむらちゃん。」

 

「ほむらって案外、嫉妬深いのかな。」

 

「そういうことじゃないんだよ、さやかちゃん…。」

 

「え?」

 

「さやかちゃんはそんなことする友達がいなかったからわからないかもしれないけど、自分以外の友達だけで内緒話をしてたら気分が悪くなっちゃうんだよ…。」

 

「そっか…そういうもんなんだ…。」

 

私もそんなことをされたことはないけど、なんとなく分かる。

…なぜかなんて分からない。でも、分かってしまう。

いいや、分かってなんかいないのかもしれない。ただ、私の中の何かがそう私に教えているだけで、ほむらちゃんはもっと別のことで悲しんでいたのかもしれない。

 

でも、そんなことを幾ら並べても変わらない事実が一つある。

ほむらちゃんは間違いなく悲しんでいた。

 

「はぁ…私って、本当にほむらちゃんの邪魔ばっかりしてるなぁ…。」

 

「まどか…そんなこと言わないの。」

 

「だって、さっきだってそうだし、今までだって、何度ほむらちゃんのことを苦しめたか…。」

 

「はぁ…いつまでもその事を引きずってると、ほむらだって離れてっちゃうよ?」

 

「それは…そうなんだけど…。」

 

「私と一緒にいるのって、本当に楽しいのかなって。」

 

「私とじゃなくて、さやかちゃんとだからなんじゃないかって…。」

 

「迷惑な存在なんだって、そう思うと止まらなくて…。」

 

「もっと自分に自信を持ちなよ。少なくともほむらはあたしよりも、まどかのほうが好きだと思うよ。」

 

「じゃなきゃ、あそこまで頑張ってこれないよ。」

 

「…そうなのかな。」

「うん。あたしはそう思うけどね。」

 

「…って、もうこんな時間!?あたし、もう帰らなきゃ!じゃあね!」

 

さっきもこんなことを思ったのだが、さやかちゃんは本当に落ち着きがない。でもやっぱり、そこがいいところなのだ、と思う。

 

「…私も帰ろ。」

 

もう季節も冬。時間的にはそんなにも遅いというわけではないのだが、日に日に明るい時間が減っていくこの時期なので、辺りはもう街灯が付き始めていた。

そんな中、壊れているのか、ぱちぱちと点滅をしている街灯があった。その様子が私にはとても情けなく見えた。周りから浮いていて、役立たずの街灯。

それはまるで、今の私みたい。

 

ふうっ、と溜め息を吐いて家へと歩いていく。

もうすぐそこまで、というところでママと出会う。

 

「ん?まどか、まだ帰ってなかったのか?」

 

「あ…うん。ちょっとね。」

 

「もう周りも暗いんだから少しは考えろよ。あんまり遅くまで出歩いてるようなら、お小遣いのことも考えなくちゃいけなくなるからね。」

 

「ごめんなさい、ママ。」

 

「ん、分かればよろしい。」

 

「「ただいまー!」」

 

「おかえり、ママ、まどか。もうご飯できてるよ。」

 

「んー!今日も疲れた!」

 

「はは。ママ、仕事お疲れ様。はい、これ。」

 

「ん、ありがと。」

 

「ところで、まどかの持ってるそれ、またCDなのか?」

 

「あ、うん。スピッツっていうグループのなの。」

 

「へぇ、まどかもスピッツが好きだったのか。知らなかったなぁ。」

 

「ううん、スピッツを知ったのは今日なんだけど…友達がおすすめしてくれたの。」

 

「ふーん…まさか、例のほむらちゃんかい?」

 

「え!?どうしてわかったの!?」

 

「いやー、まどかがほむらちゃんのこと話してる顔にそっくりだったからさ。」

 

「そ、そうなんだ…。」

 

じゃあ、いつもそんなに分かりやすい顔をしてたの?

…恥ずかしい。

 

「なんの曲のCDをおすすめされたの?」

 

「えっと…これだよ。」

 

「ほーう…。定番の曲と…この二曲か…。」

 

ママはうんうんと、大きく頷いた。

 

「こりゃ、あたしとほむらちゃんは趣味が合いそうだ。」

 

「スピッツってのは本当に好みが分かれるからねえ。まあ、全部好きって奴も多いけどね。」

 

「ママ、ほむらちゃんお同じこと言ってる。」

 

「やっぱり、趣味が合うんだよ。あたしとほむらちゃんは。」

 

私も…ママみたいにほむらちゃんと同じ趣味とかが見つかるといいな…。

なんて、少しママに嫉妬して情けないな、と思ってしまったのだった。

 

次の日。

特にいつもと代わり映えしない日々だった。

ほむらちゃんも昨日の別れ際のことはそんなに気にしていない…いや、意図的にそらしているよう。

だいたいいつも通りの日常を過ごして、また明日。そうなるはずだったのに、事件は起きた。

 

「ごめんなさい、今週は忙しくて…また帰ることができないんですの。」

 

「まあ、仁美が忙しいことはあたしたちみんな知ってるし、大丈夫だよ。」

 

「そうだよ、仁美ちゃん。気にしなくていいよ!」

 

「本当にごめんなさい。それでは、また明日。」

 

「さようなら、仁美。」

 

「んー…あたしたちはどうしよっか…。」

 

「ごめんね…私、昨日のでもうお小遣いちょっとしか残ってないんだ。」

 

「あ、ごめんなさい…私が五曲も勧めてしまったから…。」

 

「ううん、いいの。いい曲だなって、楽しかったから。」

 

「ならいいのだけど…。」

 

そんな話をしていると、ほむらちゃんの人気を再確認…ライバルの多さを思い知ることになる。

 

「あ、あのっ!これ、受け取ってください!」

 

私達よりも背格好が低い(私と同じくらいかな?)女の子が手紙を差し出してきた。

 

「これは…?」

 

「よ、読んでみてくださいっ!」

 

ほむらちゃんは丁寧に便箋を取り出し、注意深く、真剣な顔つきで読む。

 

「…! そう…ふふっ。」

 

「ごめんなさい、あなたの気持ちは受け取れないわ。」

 

「そ、そうですよね…。」

 

「名前はなんていうの?」

 

「あ、葵ですっ!」

 

「そう、葵ちゃんっていうのね。ほら、そんな泣きそうな顔しないの。かわいい顔が台無しよ?」

 

「あぅぅ…。かわいいだなんて…。」

 

ほむらちゃんはそう言うと頭を撫でてあげていた。いいな、なんてまた嫉妬してしまう。

さやかちゃんは隣で、なにやってんのよ、あの女たらし…、と言っていた。

 

「恋人は無理だけど…友達にはなりたいわ。ダメかしら?」

 

「…!は、はい!よろしくお願いします!」

 

「ふふっ、ありがとう。それじゃあ、私は行くわね。また会ったら声をかけるわ。じゃあね。」

 

「は、はい!さようなら!」

 

「はぁ…なんというか、慣れてるねぇ…。」

 

「相手が気持ちを伝えてくれるのだから、こっちも誠意をもって接するのは当然のことでしょう?」

 

「誠意、ねぇ…。あんた、水商売むいてるんじゃない?荒稼ぎしてそうだよ。」

 

その時、プチッと何かが切れたような気がした。

いつものさやかちゃんの冗談だって、分かってるのに。

いつになく、不快に感じて。感情的になってしまう。

 

「水っ…!?なんてこと言ってるの、さやかちゃん!!最低だよ!!」

 

「ほむらちゃんに失礼だよ!!謝って!!」

 

「お、おおぅ…。ごめん、ほむら…?」

 

「い、いいえ。気にしていないから、大丈夫よ。」

 

「さやかちゃん、どうしてあんなこと言ったの!?」

 

「い、いや、あんなふうに接してたら誰だってそうおもうでしょ…。」

 

「そんなわけないよ!どうしてほむらちゃんの優しさをそんなふうに捉えるの!?さやかちゃんって、本当にデリカシーないよ!」

 

「んなっ…!なんてこと言うのよ!?ほむらは許してくれたんだからいいじゃん!」

 

「よくない!ほむらちゃんがよくても私がよくないの!」

 

「なんなのよ!…そんな必死になっちゃって…おかしいよ…!」

 

「…!」

 

ほむらちゃんの平手うちがさやかちゃんに飛ぶ。

 

「痛っ…!?」

 

「さやか、今なんて言ったの!?」

 

「え…?え、えっと、おかしいって…。」

 

「まどかに謝りなさい!…まどかは私を庇ってくれただけよ。その優しさを否定することは許さないわ!」

 

「…なんなのよ。二人してあたしのこと責めてさ!ほんっと、わけわかんない!」

 

「だいたい、冗談なのにさ…。それを本気にして…気持ち悪い!」

 

「本当に二人とも気持ち悪い!女同士とか、ほんっとにありえない!!」

 

「…!さやか、ちゃん…。」

 

「女同士…?なにを言っているの?」

 

「とぼけないでよ!どうせ、まどかのこと好きなんでしょ!?恋の対象って意味でさ!」

 

さやかちゃん…それは…言っちゃだめなのに…。

結果なんて、分かりきってるけど…そう思いたくないのに…!

 

「はぁ…?そんなわけないじゃない。私はまどかのことは好きよ。でも、友達として、よ。」

 

こうなることは分かっていた。私は、仲のいい友達、程度にしか思われていない。

 

「…そうだよ。ほむらちゃんは、友達…だよ。それ以上なんて…ありえないんだよ。」

 

「あ…!えっと、ご、ごめん…。あたし、かっとなって…ひどいこと言っちゃったよね…。本当にごめん…。」

 

「ごめん、まどか…。さっきのは気にしなくていいから…。」

 

「ううん。気にしてないから大丈夫。最初から分かってたことだから。」

 

「…でも、ちょっと体調が悪いから先に帰るね。バイバイ…!」

 

私のことは友達。

恋人じゃない。そんなふうには見れない。

私には、その資格はない。隣をいつまでも歩いていく資格は、ない。

いつか…高校、大学、就職…その間に疎遠になる。

そして、その頃にはほむらちゃんにも素敵な恋人ができている。

私のことなんか、気にもかけてくれない。

助けるって約束しただけ。しかも、その私は私じゃない。

ほむらちゃんにとっての私は…友達。

その事実は私に重くのしかかる。そして、変えることはできない。

もう、どうしようもない。

辛くなんか…ない。はずなのに。分かっていたはずなのに。覚悟していたはずなのに。

胸の奥がチクチクと痛い。涙が溢れ出して、止まらない。

こんな思いをするくらいなら、恋なんてしなければよかった。いつまでも友達だと思っていればよかった。

でも、さっきの一言で諦めがついた。もう、ほむらちゃんに恋なんてしない。そう、絶対に。

いつまでも…友達でいよう。

…そう、割り切ったつもりだった。

 

「ここは…!?」

 

気づけば、私は魔女結界に迷い込んでいた。

魔女は、気持ちが落ち込んでいる人に漬け込んで、結界に誘い込むらしい。

つまり…そういうことだ。

 

使い魔が少しずつ私に近づいてくる。

あぁ…私、死ぬんだ。親不孝な子でごめんなさい、ママ、パパ。

ほむらちゃん…ごめんね。あなたの言った日常は…私のせいで壊れちゃうんだ。

また、私のためにやり直してくれるかな。でも、やっぱりそんなことはしてほしくないな。

そんなことを考えていると。

 

「まどか!!」

 

わたしの一番愛しい人の声。

いつだって、私を助けてくれる人の声。

 

「ほむらちゃん!」

 

「まどか、無事!?どこも痛くない!?」

 

「うん!大丈夫!」

 

「よかった…。まどかには指一本触れさせないわ!さぁ、来なさい、魔女共!」

 

そう言って、ほむらちゃんはサーベルを取り出す。

もともとは銃メインで使っていたようだが、過去はもう振り返らないということで、剣を使うようになったらしい。

そして、このサーベルはさやかちゃんのものらしい。

まだサーベルにはなれていなくて、片手にサーベル、もう片手には銃、といったスタイルだ。

 

「やぁぁ!」

 

ほむらちゃんは華麗なステップで敵を切り倒していく。

私に近づく敵を銃で撃ち抜く。流れ弾の心配なんて、する必要はない。

だって、ほむらちゃんだから。

 

「まどかに傷をつけようとした代償は大きいわよ!」

 

怒涛の勢いで魔女を攻撃していく。まさに鬼神、といった感じで、魔女を圧倒する。

 

「ファンタジア·ディ·スパーダ·エ·ピストーラ《剣と銃の狂想曲》!」

 

ほむらちゃんはマミさんのような技名を叫び、より動きが激しくなる。

一撃一撃が目にも止まらぬ速さで繋がれていく。

剣と銃、その両方を完璧に使いこなしているように見えた。

 

「とどめよ!ウルティマ·バーラ《最後の斬撃》!」

 

そして、魔女は言葉にならない断末魔を上げ、消滅していく。

 

「まどかは…私が守る!」

 

かっこいいなぁ…。また惚れちゃうよ…。

諦めたのに…もう、恋なんてしないって決めたのに…。

 

「まどか!よかった、無事で…!」

 

ほむらちゃんは私のことを思いっきり抱きしめる。その腕には優しさと力強さ、いろいろな感情が詰まっていた。

 

「ごめんね、ほむらちゃん…。心配かけて…迷惑かけて…。」

 

「いいえ…あなたを守ること…それが私の使命だから!」

 

「ありがとう、ほむらちゃん…やっぱり、優しいな。」

 

「…まどか、今日は私の家に泊まっていきなさい。」

 

「ふぇ!?」

 

唐突な提案に私は素っ頓狂な声を出してしまう。

 

「魔女の口づけを受けたということは、何か悩みがあるのでしょう?…ご両親にも話しにくい年頃でしょうし、私に相談して?まどかの力になれるかはわからないけど、話くらいなら…。」

 

いいの…かな。私の気持ちを伝えても。

…諦めたのに。困らせたくないのに。

伝えたい。そんな気持ちが強くなる。

私って…本当に弱い。自分の気持ちも自分一人じゃ整理できないなんて。

だから、ほむらちゃんに迷惑ばっかりかけちゃうんだ。

なんで…なんでなの…!

 

そんなとき、愛しい人が私を抱きしめる。

 

「ほむらちゃ…!?」

 

安心する匂い、柔らかさ、温かさ。

全部が私を包み込んでくれる。不安な気持ちが溶けていく。

 

「…思いつめないで。一人で悩んじゃ、嫌だよ。私を頼ってよ…。」

 

ほむらちゃんは、どことなくいつもと違う雰囲気だった。凛としたほむらちゃんじゃなくて、もっと、ふわふわしたほむらちゃん…。

 

「まどかが泣いてるところ、見たくないから…。笑っていてほしいから…。」

 

「まどかが笑顔だと、私も嬉しいの。笑顔になるの。だから…笑ってほしいの。」

 

やっぱり、諦めることなんて…できなかった。

 

「ほむらちゃん…伝えたいことがあるの。だから…。」

 

もう…どうにでもなれ。

 

「…今日、泊まっていくね。」

 

私はママとパパに連絡を入れて、許可を貰う。いきなりすぎるとか、明日は学校なのにとか、いろいろ言われたけど…。ほむらちゃんの名前を出したら許可してくれた。なんだったんだろう。

 

「お邪魔しまーす…。って、うわぁ!」

 

「どうしたの?」

 

「だって、前来たときよりも女の子の家、って感じで…すっごくかわいい…!」

 

「…私だってこういうものに興味がないわけじゃないから…。もう…繰り返す必要なんてないし、時間も沢山あるんだから、いいかなって。」

 

「そっか…そうだよね。」

 

さっき、一瞬でもあんなことを考えた自分が憎らしくなる。

私はまた、ほむらちゃんを絶望の迷路に閉じめ込めてもいいなどと考えていた。

最低だ。

 

「まどかは…先にお風呂に入っていて?すぐに沸かしてしまうわ。」

 

「うん。あ、着替え…。」

 

「…私ので構わないかしら?サイズはそこまで違わないと思うんだけど…。」

 

「え!?ほ、ほむらちゃんの服!?」

 

「嫌…だった…?」

 

うぅ。そんな涙目で見つめないでよぉ…。

 

「そんなわけないよ!むしろ…」

 

「むしろ…?」

 

「嬉しい…というか…。なんというか…。」

「よかった…。じゃあ、着替え持ってくるわね。」

 

ほむらちゃんはほっと息を吐いて、笑顔を見せてくれた。

 

「ほむらちゃんの…服。」

 

きっと、いい香りなんだろうな。着たら、顔がふにゃ〜ってならないように気をつけないと。

そんな顔したら…絶対変だと思われちゃうから。

 

「まどか、この服でいいかしら?」

 

ほむらちゃんが持ってきたのは、ピンク色のパーカーと、上とセットらしいもこもこのズボン。

ほむらちゃんのイメージが崩れる一着だけど、嬉しい。

 

「それじゃあ、お風呂に入っていて。私はその間に夕飯の支度を済ませてしまうから。」

 

「うん。」

 

ほむらちゃんの使ってるシャンプー…ボディーソープ…

いつも、これで髪とか、身体を洗ってるんだよね。

なんだか、変な気持ちになってくる。

 

「…ダメダメ。こんなこと考えてる場合じゃないよ。」

 

「まどかー?」

 

不意に、ほむらちゃんの声。

 

「ひゃ、ひゃい!?」

 

あんなことを考えていたせいか、素っ頓狂な返事をしてしまう。

 

「…タオル、おいておくわよ?」

 

「あ、ありがとっ!」

 

このドア一枚を挟んだ先に、ほむらちゃんがいる。

そう思うとドキドキが止まらない。

 

「あ!まどか、少し中に入るわね?」

 

「ふえっ!?だ、ダメっ!ダメだよ!」

 

「そうはいっても…シャンプー、切れてるのよ。詰め替えないと…。」

 

「じゃ、じゃあ、ちょっと待ってて…。」

 

私はドアに背を向ける。顔も…身体も今は見られたくない。

恥ずかしいから…。

 

「は、入ってもいいよっ!」

 

緊張して、声が裏返る。

 

「…どうして後ろ向きなの?」

 

「そ、そういう気分なんだよ!」

 

「そう…。それじゃあ…すぐに済ませるから待っていて。」

「あ、ご飯は大したものは作れないから、昨日の残りのシチューでもいいかしら?」

 

「う、うん。私、シチュー大好きだから…。」

 

「そう、それはよかったわ。」

 

優しいほむらちゃんの声から、微笑むほむらちゃんを想像して、またドキドキする。

 

「さて。詰め終わったから、もう出るわね。ごめんなさい、ゆっくりしているところを邪魔してしまって。」

 

「のぼせない程度に浸かっていて構わないから。」

 

そういうと、ほむらちゃんはバスルームから出ていった。

 

「はぁっ…。ドキドキで頭がおかしくなりそうだよ…。」

 

顔が熱い。これは、お風呂が熱いとかじゃない。

ほむらちゃんのせい。

一つ一つの行動にドキドキしっぱなし。その気なんてあるわけないって分かってるのに、ドキドキしちゃう。

 

…友達なのに。

恋人なんかじゃないないのに。

私達の間には、沢山の大きな壁がある。

性別なんてなければいいのに。

一部の魚みたいに、男にも女にもなれたらいいのに。

そうすれば、こんな悩みなんてなかったのに。

気持ち悪いなんて、思われなかったのに。

素直になれるのに。気持ちを伝えることなんて、もっと容易かったのに。

どうして。どうして、私にばかり試練をあたえるの?

これもまた、必然なのかもしれない。運命なのかもしれない。

私には、ほむらちゃんみたいに運命を変える力なんてない。…厳密にはあるけど、私がそんなことはしたくないから、ないと同じ。

いつまでも、いつまでもこのまま。

気持ちを伝えても、関係がこじれずに、優しいほむらちゃんでいてくれるように。

願わくば、こうやって友達でいれるように。

ただ、ありもしない神に祈ることしかできなかった。

 

「あら、ずいぶんと長湯だったわね。…悩み事のことでも考えてた?」

 

「う、うん。そんなところかな。あはは…。」

 

嘘は言っていない。間違いなく、悩み事についてのことを考えていたのだから。

 

「そう。…それじゃあ、ご飯にしましょうか。」

 

「いただきます。」

 

「…いただきます…。」

 

時間がないから大したものは作れない、といった割にはかなり豪華な夕飯だ。

何を食べようか迷ったので、シチューに手をつけてみる。

 

「ん…おいしい…!」

 

「それはよかったわ。チーズと牛乳を足してみたのだけど…正解だったみたいね。」

 

「ほむらちゃんって、お料理が上手だよね。羨ましいな…。」

 

「…一人暮らしをしていると、どうしても、ね。いつの間にか覚えてしまっているのよ。」

 

「最近はスーパーに行っても自分が中学生とは思えないくらいに周りのおば様たちと同じ思考をしてるんだなって気づいて嫌になるわ。」

「これは賞味期限が短いからとか、鮮度が悪いからとか…最初は成長してるって、嬉しかったけど…最近は自分の加齢を感じるみたいで…。」

 

「まどかみたいなみずみずしさはもうなくなってしまったわね。それがいつからで、いつ気づいたのかなんて忘れてしまったけどね。」

 

そう言うとほむらちゃんは哀愁ただよう笑みを浮かべる。

 

「大人になるって、こういうことなんだって思い知らされたわね。」

 

「そうなんだ。私には考えられないなぁ…大人になった自分なんて…。」

 

「ふふっ、まどかは子供のほうが似合ってるし、かわいいわ。」

 

「か、かわいいだなんて…そんな、大袈裟だよ…。」

 

私は自分がからかわれているなどとは露知らず、いかにもな反応をしてしまう。

 

「そういうところがかわいいのよ。まどからしくて。」

 

「は、はぅぅ…。」

 

その後、悶々としながら夕食を過ごし、ほむらちゃんがお風呂を上がって、着替えたときにも私は悶々としなければいけなくなった。

 

ほむらちゃんのパジャマは、水色のオフショルダーのルームウェアに、白っぽい青のかぼちゃパンツという無防備すぎる格好だった。

その露出度の高さは男子が見たら発狂するレベルで、真っ白い綺麗な手足がスラッと伸びている。

すごく…えっちぃ。なんというか、そそられる。

 

「まどか?どうしたの、私の身体をまじまじと見て…なにか、おかしいかしら?」

 

おかしいよ。そんな格好でいたら獣に襲われるよ。

…私みたいな。

 

「ううん。すっごく似合ってるよ!」

 

「ありがとう。…さて、寝室に行きましょうか。」

 

「あ、一緒のベッドでもいいかしら?うち、来客用の布団、ないのよ。」

 

「え!?いっ、一緒のベッドぉ!?」

 

「し、しぃ〜!近所迷惑よ…!」

 

「え、あ…ごめんね…。」

 

「それで…私と一緒は…嫌…かしら…。」

 

「嫌だったら…私はソファーで寝るから…。気にしなくていいわ…。」

 

あぁ…ほむらちゃんが泣きそうに…やめてよ…。

そんなふうにされたら…断れないよぉ…。

 

「う、ううん!私は、ほむらちゃんと一緒がいいなっ!」

 

「まどか…!じゃあ、直ぐに支度してしまうわね?」

 

ほむらちゃんの笑みは、いつも違う顔を見せてくれる。

今の笑顔は、子供みたいな無邪気な笑顔。

だから、かわいい。かっこいい。

 

「…それで、話してくれる?悩みのこと。」

 

ついに。この時が来てしまう。

私が最も恐れていた時間。結果なんて分かりきってるけど、ほむらちゃんから直接答えを聞かなければいけないのが、辛い。

 

否定されるのが、恐い。

 

「あのね…私は…。」

 

関係が壊れるのが恐い。

 

「ほむらちゃんのことが…。」

 

一番じゃない私を再認識するのが、恐い。

 

「大好きなの…。恋の対象として…。」

 

もう…あとには引けない。

やり直しなんてきかない。答えを求める。

ただ、それだけ。

 

「えっ…!?こ、恋の対象…!?」

 

ほむらちゃんの顔にはいろいろな感情が渦巻いている。

その中に、喜び、嬉しさといった感情はない。

困惑、不安といった感情ばかり。

 

「え、えと、私たちは女同士よ?」

 

「うん…。そうだね。」

 

「私には、恋っていうのがなんなのかよく分からないけど…普通は男と女がするものじゃないの…?」

 

「普通は、ね。私は普通じゃないんだ。」

 

「…最高の…友達…じゃないの?」

 

「あなたにとっての私って…そういうものじゃ…ない…の…?」

 

「恋人と…友達って…何が…違うの…?」

 

「それ…は…。」

 

答えられない。

全然、わからない。なんて答えていいのか。

なんとなく。なんとなくならわかる。

でも、私が言った言葉は全部、陳腐なものになってしまいそうで。

ほむらちゃんには届きそうもない。

 

そのかわり、とめどない気持ち…ぶつけどころのない気持ちが溢れ出す。

 

「…わからない。わからないよ、そんなの…!」

 

「仕方がないんだもん…好きって…思ったら止められないの…!」

 

「友達だって、私も思ってた…でも、いつしかあなたは愛しい人に変わっていった…!」

 

「もう…どうしようもないんだよ…届かないって分かってるのに…止まらないから…!」

 

「気持ちが…抑えようとすると、もっと大きくなるんだもん…!」

 

「まど…か。」

 

「早く…早く、私を諦めさせてよ!!」

 

「ほむらちゃんが好きって感情を否定して、諦めさせてよぉ…!!」

 

「ごめん…なさい。」

 

「…今は、答えを出せない。」

 

「え…?」

 

「私は、あなたの事を…どう思っているのか…。わからない。」

 

「この気持ちが恋なのか…友達としてなのか…。」

 

「私には、恋というものがなんなのか理解できない…。」

 

「こんな状態であなたの気持ちには応えられない。」

 

「だから、私が答えを見つけ出すまで、待っていて。」

 

「必ず…返事をするから。」

 

「…うん。ずっと…ずっと…待ってるから。」

 

「あなたが…私の事をどう思っているのか、わかるまで…。」

 

結局、保留という結果になった。

ほむらちゃんは、恋がなんなのか…理解していないと言った。

しかし、理解したところで結果は同じ。むしろ、私の事を軽蔑するだろう。

恋と友達の差。それを知ったら、もう…。

ここで、私たちの関係は消えてしまうだろう。

それなら、今の時間を精一杯楽しむだけ。

私の初恋の人との時間を…。

 

「それじゃあ…電気、消すわね。…おやすみ。」

 

「うん…おやすみ、ほむらちゃん。」

 

やがて、深い闇がおとずれる。聞こえるのは、時計が時間を刻む音、予報はずれの雨の音。

そして、この空間には一つの大きな壁がある。私とほむらちゃんの間。この距離が私とほむらちゃんの距離を示している。

一生この距離を詰めることもなく、私たちは終わる。

そして、この距離よりも近くにほむらちゃんと入れる人がいつか現れる。

そんなふうに考えて、残酷さを改めて認識した。

 

…眠れない。もう、一時間くらいは経っただろうかと、スマホを確認する。

まだ、三十分しか経っていなかった。

隣の黒髪の美少女は、すぅすぅと規則正しい寝息をたてている。

 

「髪…サラサラだな…。」

 

この髪を独り占めしたい。

 

「脚も…スベスベ…。」

この脚を誰にも渡したくない。

 

「ほっぺも…ぷにぷに…。」

 

この柔らかさを知っているのは、私だけでいてほしい。

 

「かわいい…寝顔。」

誰にもこの寝顔を見せたくない。

 

「んんっ…くすぐったいよ…鹿目さぁん…。」

 

…私の夢を見てるのかな。

鹿目さん、か。昔はそうやって呼ばれてたんだ。

…昔の私はどうだったのかな。今の私みたいに、ほむらちゃんに恋をしてるのかな。

そうだったら、悲しいな…。どの私も、ほむらちゃんを振り向かせることはできなかったんだもんね…。

最後の私も…無理そうだし…。

ごめんね、私。

 

ごめんね、ほむらちゃん。

 

いつの間にか眠りに落ちてしまっていた私は、トントン、という包丁の音で目が覚める。

 

「ん…ほむらちゃんが作ってるのかな…。」

 

「あら、やっとお目覚め?おはよう、まどか。」

 

「おはよう…ほむらちゃん…。ごめんね、朝ごはんまで作って貰っちゃって…。」

 

「いいえ。気にしなくていいわ。私が好きでやっていることだから。」

 

「それに、いつも一人で私の料理を評価してくれる人がいないから作り甲斐がないから。それじゃあ寂しいからまどかに評価をしてほしいって勝手に思っているだけだから。」

 

「…私じゃ、宛にならないよ。」

 

「え?」

 

「私は、どんなに美味しくなくても美味しいって言うから。」

 

「だって、大好きなほむらちゃんが作ってくれたんだから。」

 

そう言うと、ほむらちゃんは困惑の表情を浮かべ、料理を運び始める。

 

「…そう…。じゃあ、ご飯にしましょう。あまりのんびりもしていられないから。」

 

「うん。そうだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ほむら編。

 

恋って、何?

好きってどう違うの?

友達と、恋人の境って…何?

 

私はまどかに告白されてから、そんなことばかり考えるようになっていた。

答えは見つからない。…見つかりそうもない。

まるで、まだ習っていない数学の範囲を解いているよう。

私一人じゃとても解決できない。そう思った私はみんなを頼ることにした。

 

「マミ、相談があるの…。家に行ってもいい?」

 

マミは二つ返事で許可をしてくれた。

彼女なら、解決までとは行かなくとも大きいヒントをくれるだろう。

 

「いらっしゃい、暁美さん。あなたから誘ってくるなんて珍しいからびっくりしちゃったわ。」

 

「まぁ…ね。相談したいことがあったから…。」

 

「相談…まずはお茶にしましょう。話はそれからってことでもいいかしら?」

 

ということで、私は紅茶を飲んでいる。

しかし、どうしてこんなにも上手に紅茶を入れられるのか。私がいくら頑張っても、こんなふうにはならなかった。不思議だ。

 

「さて…相談ってなにかしら?」

 

「…昨日、まどかから告白されたの。」

 

「まぁ…。それで、なんて答えたの?」

 

「まだ…返事はしていないの。私には恋っていうのがなんなのかわからなくて…。」

 

「…私も恋って何っていわれても答えられないわね。魔法少女をやってると色恋沙汰なんて、ね。」

 

「そう…よね。私も全然わからないの。…そもそも恋って男女のものなんじゃないかってことすらわからなくなってしまって…。」

 

「暁美さんは女同士なんて変だと思う?」

 

「少し…変じゃないかって思う…けど。」

 

マミはおもむろにパソコンをいじりだした。

…私は相談をしているのだけど。

その後、何かのホームページを開いたよう。

 

「…これ、見てみて?」

 

「これは…ウエディングドレスを着た、二人の女の人…?」

 

「そう。これは外国のLGBTの人向きのウエディングよ。」

 

「LGBT…?」

 

「レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、の頭文字をとった略称ね。私達の社会では性的少数者、と呼ばれる人たちよ。」

 

「鹿目さんはレズ…同性愛者という種類の人ね。」

 

「同性…愛者…。」

 

「今では珍しいことじゃないわ。むしろ、否定する人のほうが前時代的、と言われることのほうが多いわ。」

 

「つまり、私がいいたいのは、決して鹿目さんはおかしくなんてない。ただ、恋する対象が同性だっただけよ。」

 

「私が思うに、性別なんて関係ないと思う。本当に大事なのは、気持ちだと思うわ。」

「鹿目さんがあなたを本気で思っているのだから、女同士なんて、という理由なんかで悩んでいる場合じゃないわ。」

「もっと、別のことについて悩みなさい。…これ以上、私からは教えられることはないわ。」

 

「新しい悩みが生まれたのなら、別の人に相談する、というのも一つの手ね。」

 

「がんばって、暁美さん。」

 

そう言って、マミは私を送り出した。

…もっと別のことで悩め、か。

 

私は、まどかのことをどう思っているの?

友達?友達って、なに?

恋人?恋人って、なに?

二つの違いって…なに?

…だめ。まったく分からない。

 

そう思った私は、図書館に行って、そういう類の本をいくつか読むことにした。

しかし、そこにある恋は現実味がない。まったく心に響いてこない。

理解できない。友達と恋人の差。

友達じゃなにがだめなの?なんで、恋人じゃなきゃだめなの…?

 

そんなことをぼんやり考えていると、肩をトントン、と叩かれる。

なんだろうと、振り返ると仁美がいた。

いきなりだったので、ひどく驚いてしまった。

 

「ひ、仁美…んぐっ!」

 

「…しぃー。ここは図書館ですわよ?」

 

仁美唇に指を当て、小声で言う。完全に失念していた。

 

「…ごめんなさい。それで、なにか用かしら?」

 

「いえ、用という訳ではないですが…思いつめているようだったので…声を掛けさせていただいただけですわ。」

 

「…それは…」

 

私がいいかけて、仁美が遮る。

 

「ここではなんですから、外でしましょうか。でも、先に本を借りてから、でもよろしいですか?」

「ええ。」

 

私が仁美の抱えている本を見ると、フランツ·カフカの【変身】だった。確か、ヨーロッパの方の近代作家だったはず。

直接の興味はあまりなかったものの、入院時代に通っていた図書館にもあったはず。

しかし、そんなことはどうでもいい。

仁美はその本を急いで借りると、公園へと向かった。

 

「それで、何をお悩みになっているのですか?」

 

「…友情と、恋ってなにが違うのかしら。」

 

「…。」

 

「どっちも好きって感情からくるものなのに、違うものだとされているの?」

 

「…まどかさんに、告白されたのですね。」

 

「え?あ、あぁ…されたわ。」

 

「それで、ほむらさんはまどかさんを友達だと思っているから、断ったのですか?」

 

「いえ、このまま、恋がなんなのか理解せずに返事をするのは失礼だと思って、保留、という形になっているわ。」

 

「そう…ですわね。恋が何なのか、理解しないままというのはいけませんものね。」

 

「では、そのことについて相談したいと。」

 

「ええ…。自分だけではもう、答えが見つからなくて…。」

 

「…恋って、辛いのですわ。」

 

「え?」

「友達として過ごすなら、相手の行動にどぎまぎしたり、ドキドキしたりなんてことはありませんわ。」

 

「でも、恋をすると、見方がいろいろ変わるんです。相手を見る目だとか、行動だとか。」

 

「だから…辛いんです。それが、友情との一番の違いだと私は思います。」

 

「辛い…。」

 

「じゃあ、どうして恋をするの?」

 

辛いならしなければいいのに。友達のほうがいいのに…。

 

「好きになってしまった、からですわ。」

 

「好きになったら人間、その気持ちを止めることはなかなかできません。」

 

「辛いけど、楽しいんです。好きな人との時間が。友達として過ごすときの何倍も楽しい。」

 

「相手の何気ない一言が楽しい。一緒にいるのが楽しい。笑い合うのが楽しい。」

 

「その人といると、自然と笑顔が生まれるのです。」

 

「それが、恋というものですわ。」

 

「友達より…楽しい。」

「私は、ほむらさんに言われるまで恋ってなんなのか、なんて考えたこともありませんでしたわ。」

 

「ですので、あまり参考にならないかもしれないですが…。」

 

仁美は、これから稽古がありますから、と言って去ってしまった。

 

恋は…辛い。でも、それよりも楽しい。

私は、まどかと過ごしていて、どう思っていたのか。

…辛くはない。仁美が言ったような、意識することはなかったはず。

じゃあ、楽しかった?…わからない。楽しかったけど、そういう楽しいなのかはわからない。

少なくとも、まどかと過ごす時間が何よりもたのしかった。

でも。

まだ答えはでない。一歩ずつ進んではいるのだが、いかんせんその一歩が小さいのだ。

ゴールは…まだ見えない。まるで、フルマラソンだ。

 

「…。」

 

私はあてもなく、街を彷徨う。考えを巡らせるのに夢中で、どこに自分が向かっているのなんか、とっくに忘れてしまっていた。

 

「ほむら?こんなとこで何してんだ?」

 

「あ…杏子…どうして見滝原に?」

 

「いやいや、ここは風見野だよ?あたしがいて当然でしょ。」

 

「え?か、風見野?私…そんなに歩いてたのね…。」

 

「んなっ…歩いてきたのか!?この距離を?まったく、なーに考えてんだか…。」

 

「ごめんなさい…悩やみながらあてもなくぶらぶらとしていたら、いつの間にか…。」

 

「悩み、ねぇ。あたしが聞いてやるよ。力になれるかどうかは分かんないけどさ。」

 

そう言うと、杏子はニッ、と笑って。

 

「まずは腹ごしらえから…腹が減っては戦はできぬ、なんて言うだろ?だから…。」

 

「食うかい?」

 

「ふふっ…いただくわ。」

 

「んで…悩みっていったいなんなのさ。」

 

「まどかに…告白されたの。」

 

「ふーん…って、はぁ!?」

 

「そ、そんなに驚かなくても…。」

 

「いや、これが普通の反応だろ!?」

 

「お、落ち着いて…私が悩んでいるのはそのことじゃなくて…。」

 

「別のこと?」

 

「ええ…恋ってなんなのかって…。」

 

「…はぁ。恋、ねぇ…。」

 

「いくら考えても答えが見つからなくて…いろいろな人に話を聞いたのだけど…わからなくて…。」

 

「それで、あたしにもってわけか。…うーん…。」

 

「ええ。無理にとは言わないけど…。」

 

「…あたしにはよくわかんないな。恋ってのは。」

 

「でも、恋って独占欲なんだと思う。」

 

「独占欲…?」

 

「ああ。例えば、まどかがあんた以外の人に告白してるところを想像してみな?」

 

私は、まどかが誰か別の人に告白するところを想像する。…なんというか、モヤモヤする。あとは、胸がチクチクって…。

 

「どうだ?どんなふうに思った?」

 

「…モヤモヤして、胸がチクチクって…。」

 

「それはな、嫉妬してるんだよ。」

 

「嫉妬…?」

 

「そう。嫉妬さ。あんたはまどかが自分以外の誰かに告白してるところを想像して、その誰かに嫉妬してたのさ。そのモヤモヤとか、チクチクってのが証拠。」

 

「つまり、ほむらはまどかは私だけのものであってほしいと思ってるのさ。」

 

「…そんな、わけ…。」

 

「でも、本当のことさ。いつの間にか、まどかが欲しくなってるんだよ。」

 

「…そうなの…ね。だから、苦しかったのね。」

 

「あぁ。そういうことだ。」

 

「あたしはそれが恋ってやつだと思うけどね。」

 

私は時間も時間なので、帰ることにした。

 

杏子が言っていたことは、かなり私を進ませた。

まるで、徒歩から自動車に乗り換えたよう。

でも、なにかが引っかかっている。

この気持ちは…本当に恋なの?

…答えはでない。私には、まだ理解できない。

 

そんなことを考えていると、魔女結界を発見した。

その中では誰かが戦っているようだ。加勢するか。

 

「よっ、と!」

 

中で戦っていたのは、青い髪をした、中世の騎士。

 

「さやか、しゃがんで!」

 

「ほ、ほむらぁ!?」

 

さやかは私の指示に従い、しゃがむ。

RPG-7を放ち、使い魔を一掃する。

 

「ちょっとほむら!?ひどくない!?」

 

「いいじゃない、使い魔って数が多くて面倒なのよ。」

 

「…まぁ、いっか。早く魔女を倒そうよ。」

 

「そうね。」

 

その後、私達は特に苦戦することもなく、魔女を撃破した。

 

「ふぅ…ほむらも剣の使い方、すごくうまくなったじゃん。あたし、いつか追い抜かれるかも…?」

 

「…少なくとも、私の剣の師匠はさやか一人よ。これまでも、これからも、ね。」

 

「嬉しいこといってくれるじゃん!くぅ〜、本当にほむらはいいやつだなぁ!」

 

「きゃっ!いきなり抱きつかないでよ…まぁ、さやかなら…いいけど…。」

 

「うん、うん。あたしとほむらの仲だからね!」

 

今回、勝利を掴み取れたのは、さやかの存在が一番大きい。さやかには、様々な場面で助けてもらった。魔法少女の真実を告げるときも。私達が対立してしまったときも。杏子を仲間に引き入れるときも。

ワルプルギスの夜を倒すときも。

一番お世話になった。今回の時間軸で、さやかの印象は一変した。今まではむしろ、邪魔な存在だった。

しかし、こんなにも頼りになって、人のことを考えていると知って、私自身、さやかを頼りにするようになった。それはさやかも満更でもないらしい。

 

「そうね…ねぇ、私とあなたって、親友、なのよね?」

 

「ん?そりゃそうでしょ。それ以外何があるの?」

 

「…私って、恋してるように…見える?」

 

「え?…うーん…?してるような顔は…してないかな。でも、なんでそんなこと…?」

 

「…まどかから、告白されたの。」

 

「…なるほど、そういうことか。」

 

「私は、恋がなんなのか分からない。いろんな人に話を聞いて、もうすぐそこまででかかっているのだけど…。」

 

「恋と友情…なにが違うのか…私とまどかの好きは…なにかが違うのかもしれないし…。」

 

「そっかー…。それはまた、大層なお悩みで…。」

 

「でもさ、好きって同じじゃいけないの?」

 

「え?」

 

「まどかの好きと、ほむらの好き。違うから付き合ったらだめなの?」

 

「それは…相手に失礼じゃ…。」

 

「そうだね、ほむらは優しいからそう思うよね。でも、ほむらは間違いなく友情以上の気持ちをまどかに抱いてるよ。」

 

「それがわかっていたらこうやって相談なんて…!」

 

「だって、そんな気持ちじゃなかったとしたら、まどかの告白を断ってるでしょ?」

 

「…それは。」

 

「断らなかったってことは、別に嫌じゃなかったってことでしょ?」

 

「…それに、本当はどこかで嬉しいって思ったんじゃないの?まどかに告白されて。」

 

「…わからないわ。その時は、ただただ困るだけで…。」

 

「じゃあ、今告白されたらどう思う?嫌だって断るの?」

 

「…わからない。」

 

「はぁ…じゃあ、まどかのことを想像してみて。あんたの恋人として、楽しそうに笑ってるまどかを。」

 

さやかに言われた通りに想像をしてみる。

ポカポカしたような何かが全身に広がる。それと同時に胸の鼓動が早くなる。顔が熱くなるのを感じる。

 

「なんだか、変な気持ちになった…嬉しいような…怖いような…。」

 

「ってことは、ドキドキしたんでしょ?」

 

「ええ…。」

「あたしが思うに、それが恋ってことだと思うよ。」

 

「まどかは…私と同じ気持ちなのかしら…。」

 

「そりゃわかんないよ。でも、あたしはさっき言ったとおり、お互いの気持ちが一緒かなんて関係ないと思うんだよね。」

 

「だって、相手のことを好きって想いあってるんだもん。それに、そんな二人が付き合えば、いつか同じ好きになるよ。」

 

「だから、今大事なのは、二人が同じ好きか、じゃない。二人が好きでいるかどうかなんだよ。」

 

「ほむらはどうなの?女同士だとか、そういうのを抜きにして、まどかのことをどう思ってる?友達?それとも、恋の対象?」

「私…は。まどかのことを…。」

 

「恋の対象として…好き…なんだと思う…。」

 

私がそう答えると、さやかは笑顔で、

 

「答え、出たじゃん。」

 

と私に言った。

 

「ん、そうだ、あたし、まどかとほむらに謝らないといけないんだよね。」

 

「あたしさ、今日女同士なんて気持ち悪いって言ったじゃん。あれさ、演技なんだ。ごめんね?」

 

「あ、あぁ…。私は…別にって感じだったけど…。」

 

「いやー、あれでまどかのことを意識させようとしたけど、逆効果だったのかな?」

 

「…まあ、そうだったのかしらね。しっかり謝るのよ。」

 

「へいへい…。」

 

私は…まどかが好き。…だったみたい。

マミ、仁美、杏子、さやか…。みんなのおかげで気がつく事ができた。

理解すれば、とても簡単なことだった。全身がまどかが好きという気持ちで包まれる。

それは、暖かくて。幸せだった。

 

「あぁ…私、こんな簡単なことであんなに悩んでいたのね…。」

 

「会いたい…まどか…。」

 

「今すぐ会って、抱きしめて、大好きって言いたい…。」

 

「こんなにも…まどかが愛おしい…。」

 

私は、携帯を取り出し、ま行の一番上にある人物に電話をかけていた。

その人は、直ぐに電話に出てくれた。

 

「もしもし、ほむらちゃん?どうしたの、こんな時間に…。」

 

そう、私の愛おしい人。

 

「まどか、今から家にお邪魔してもいいかしら?できれば、お泊りをしたいの。」

 

「え?あ、うん…私はいいけど…ママに確認してみるよ…。」

 

「…大丈夫だって。でも、いきなりどうしたの?」

 

「まどかに…会いたかったのよ。」

 

「え…と。それって、どういう…?」

「それじゃあ、直ぐに行かせてもらうわ。」

 

「あ、うん…。じゃあ…。」

 

「…ふぅ…。」

 

まどかのことを声を聞いただけで胸が張り裂けそうになる。そして、何よりも心地良い。

…もう、この気持ちを止められそうにない。

早く…伝えたい。

 

私も…好き。

だから、私と付き合ってください。

その一言を言うところを想像し、胸が高鳴る。

 

私は急いで荷物をまとめ、髪が乱れることも気にせず、走ってまどかの家に向かう。

息を整え、インターホンを押す。

中で高い音がし、階段を降りる音がして、直ぐにドアが開く。

出迎えてくれたのは。

 

「いらっしゃい、ほむらちゃん!」

 

ピンク色のツインテールをぴょこぴょこと揺らす可愛らしい少女。

 

「まどか…!」

 

その姿を見て、私がつい抱きしめてしまう。

 

「わわっ!い、いきなりどうしたの…?」

 

まどかは驚きつつも、佐優しく私を抱きしめてくれる。

 

「…あなたに早く会いたくて…まどかを見たらつい、抱きしめたくなって…。」

 

「…そう、なんだ。でも、それって…。」

 

「ええ。私の中で答えが出たの。」

 

「だから、まどかの部屋に行ってもいいかしら?」

 

「…うん。」

 

私はまどかの部屋でそわそわしながらまどかを待っている。

まどかは、お風呂に入るといい、こうして待たされている。

この部屋で、というのもムードゼロだが、大事なのはそこじゃない。まどかに私の気持ちを伝えること。

それこそが、本当に大切なこと。

 

「…上がったよ、ほむらちゃん。」

 

「おかえり、まどか。…改めて見ると、髪をおろした姿も素敵ね…。」

 

「も、もう…。からかわないでよ。」

 

「からかってなんかいないわ。これが私の本音よ。」

 

「…ありがと。…それで、返事、してくれるんだよね。」

 

「ええ。今回こうして泊まらせてもらったのも、それが目的だから。」

 

「そうなんだ…。」

 

まどかの肩はふるふると震えている。私は、反射的にまどかを抱きしめていた。

 

「ひゃっ…ほむ…ら、ちゃ…?」

 

「怖がらないで…。私は…ここにいるから…。」

 

「…うん…。」

 

私はすうっと息を吸って、言葉を紡ぎ出す。

 

「あのね…私…。」

 

「まどかのことが…大好きなの。」

 

「恋の…対象として…。」

 

「だから、私と付き合って…ほしいの。」

 

「え…!?えぇぇ…!?」

 

「夢じゃ…ないよね…?」

 

「ええ…だって、私はこんなにもまどかを感じているもの…。」

 

「うん…私も、ほむらちゃんをすごく感じてるよ…。これは夢なんかじゃないって…。」

 

「…じゃあ、返事させてもらうね。」

 

「はい、喜んで…!」

 

その言葉を聞いた瞬間、全身に暖かい何かが広がっていく。

あぁ…これが、恋なのね…。

 

「まどか…まどか…!」

 

「ほむらちゃん…!」

 

私たちはお互いの名を呼びながら抱きしめ合う。

たったそれだけのことなのに、とても心地良い。

 

「まどか、私わかったの。沢山の人たちに教えてもらって…まどかのことを愛してるんだって…。」

 

「そして、今こうやって抱き合ってるのがすごく気持ちいいの。」

 

「そっか…私も同じだよ。私も、こうやってると気持ちいいんだ…。」

 

「…ね、ほむらちゃん。」

 

「なぁに、まどか?」

「あの…私たち、恋人なんだから…き、キス…してみない…?」

 

「き、キス…!?」

 

「あ、ご、ごめんね?したくないなら…」

 

「そ、そんなわけない!」

 

まどかが悲しそうな顔をするので、つい声を荒らげてしまう。

 

「ひゃっ…!」

 

「あ、ごめんなさい… 。」

 

「ううん、大丈夫だよ。ちょっとびっくりしただけで、嬉しかったから!」

 

「それなら良かったわ…。」

 

「そ、それで…私とキス…して、くれる…?」

 

まどかは身長差もあってか、上目遣いで私を見つめてくる。

そんな顔をされて私が断れるわけもない。

 

「う…うん…私も、まどかと…したい…。そ、そのっ…き、キス…。」

 

「えへへ…じゃあ、するね?」

 

「うん…。」

 

「目、閉じて?」

 

私はまどかの言われるままに目を閉じる。

「えへ…こうやってるとなんだか、恥ずかしいね…。」

 

「…や、やめてよ…私だって、恥ずかしいのに…。」

 

「ほむらちゃん、かわいい。」

 

「も、もう…からかわないで…そ、それに、早く…して…。」

 

「ごめんね?本当にほむらちゃんがかわいかったから、見とれちゃったの。」

 

「はぅぅ…。」

 

「それじゃあ…今度こそ、するね…。」

 

まどかのその言葉に反応して、私もさらにギュッと目を閉じる。

少しずつまどかが近くなるのを感じる。

そして、唇が触れ合う。

 

「んっ…!」

 

まどかのそれは、柔らかく、甘かった。すべてのことを忘れさせ、まどかのことしか考えられなくなる。

まるで、魔法にかかったかのようにまどかに夢中になる。

 

「んんっ…!」

 

私たちのキスは、とても大人から見たらキスといえるものではない。しかし、私たちはそんなふうに思っている大人たちよりも幸せに違いない。

大切なのはそこじゃない。

お互いが愛し合っているかどうか、なのだ。

キスはあくまでもそれを確かめる手段の一つでしかない。

 

そして、唇を離す。

 

「ぷはぁ…。」

 

きっと私は、誰にも見せたことのないような情けない顔をしているだろう。

 

その瞬間、まどかに押し倒される。

 

「ひゃあ!ま、まどか…?」

 

「えへ…。」

 

服を脱がされてしまう。抵抗は…できなかった。

そして、また口づけされる。手、脚、お腹、鎖骨、首、

唇。

まるで、全身がまどかに包まれているようだった。

 

「んゃぁ…そ、そんなとこ…らめぇ…!」

 

「み、耳…噛まないでぇ…!」

「く、首、吸っちゃ…いやぁ…。」

 

もう、こうなったらまどかのされるがままだった。

けど、不思議と恐怖はなかった。

 

「ま、待って…!」

 

「ん…どうしたの、ほむらちゃん?」

 

「私…えっちなこと…よく、わからないの…。」

 

「で、でも…まどかになら…なにされてもいいから…。」

 

「私の身体…好きに…して、いいよ…?」

 

「…ほむらちゃん!」

 

「ひゃあ!ん…!そ、そこ…胸…!」

 

まどかは私の二つの突起をしゃぶったり、つついたり…。

 

「んっ!ひゃ…す、吸っても、何も出ないよぉ…!」

 

「どうかな?気持ちいい?」

 

「わかんない…んやぁ…頭…真っ白になってぇ…。」

 

「でも、嫌な感じはしないのぉ…んんっ!むしろ…もっと…欲しくなっちゃうのぉ…!」

 

「えへ、それが気持ちいいってことなんだよ?」

 

「そう…なの…ね…。」

 

その後、私とまどかは一夜を共に過ごした。

あんなに積極的なまどかは久々だった。まどかにリードされる…それもいいかもしれないわね。

一線を越え、私たちはそういう関係なのだ、と改めて実感した。

 

 

「…すぅ…すぅ…。」

 

「ふふっ…まどか、かわいい…。」

 

昨日の夜の獣のようなまどかは何処へやら、そこにいる少女は可憐な寝顔を無防備に晒していた。

 

「ん…ほむ…ら…ちゃぁ…。いま…なん、じ…?」

 

まどかが起きてしまった。

 

「まだ朝になったばかりよ。眠たいのなら、まだ寝ていていいわよ。」

 

「んー…ほむらちゃんが起きてるなら、私も起きるー…。」

 

「そう…それじゃあ、少し待っていて。眠気覚ましのコーヒーでも作らせてもらうから。」

 

「ん…。」

 

まどかの部屋を出て、キッチンへと向かう。

もうまどかのお父様は朝食の準備をしていた。

 

「おや、ずいぶんと早いお目覚めだね。」

 

「いえ、いつもこのくらいには起きていますから。」

 

「そうかい。なにか飲み物でもだそうか?」

 

「いえ、お構いなく。お父様、少しキッチンを借りてもよろしいですか?」

 

「別に構わないよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

私はカバンに入れていたコーヒー豆、コーヒーミル、ドリッパーを取り出す。

 

「それ、全部君のかい?どうやって…いや、それはどうでもいいんだ…。」

 

「そこまでコーヒーにこだわりが…?」

 

「いえ、そういうわけではないですが…やっぱり、市販品よりも実際に自分で豆を挽いてコーヒーを淹れるほうが美味しいので…。以前、喫茶店で飲んだコーヒーの味が忘れられず…こんなものを買ってしまったんです。」

 

「あまり得意ではありませんが、お父様もお飲みになりますか?」

 

「そうだね、一杯もらおうかな。」

 

まずはコーヒー豆をミルで中細挽きにする。

次にドリッパーにフィルターをセットする。

そして、挽いた豆をドリッパーにセットし、あらかじめ沸かしておいたお湯をケトルを使ってそそいでいく。

それをコーヒーカップにそそぐ。

うん、上出来だ。

 

「いい香りだね…すごく上手だ。」

 

「ありがとうございます。砂糖はいりますか?」

 

「ううん。僕はこのままもらおうかな。」

 

私がカップを差し出すと、まどかのお父様は香りを愉しむようにカップを回し、一口に含んだ。

 

「うん…すごく美味しいよ。…また作ってくれるかい?」

 

「ええ。私なんかのコーヒーが気に入ってくださったのならいつでも。」

 

「…では、私はまどかを待たせていますので。」

 

「おや、ごめんよ。引き止めてしまって。」

 

私はコーヒーカップと砂糖を持ってまどかの部屋へと向かう。寝ていなければいいが…。

 

「ん…ほむらちゃん、遅いよぉ…。」

 

「ごめんなさい、少し時間がかかってしまって。」

 

「砂糖、いれるでしょう?」

 

「うん。たくさん…。」

 

まどかのコーヒーカップに、砂糖をたくさん入れる。

きっと、甘くないとまどかは飲めないだろうから。

 

「はい、どうぞ。」

 

「ありがと…。」

 

まどかは彼女のお父様のように香りを愉しむ仕草は一切見せず、一口というにはいささか多い量を口に含む。

 

「わ…これ、すっごく美味しいよ…。」

 

「よかった、口にあったみたいで。」

 

まどかのために、と苦味の弱い豆を用意しておいてよかった。

 

「まさか、ほむらちゃんが作ったの?」

 

「ええ。私の手作りよ。」

 

「そっかぁ…だから美味しいんだね!」

 

「え?」

 

「ほむらちゃんの愛情分、美味しくなってるんでしょ?」

 

まどかはふにゃあ、といった笑顔を向けてくる。

…この子には、敵わないわね。

愛らしいまどかを見ていると、つい、抱きしめてしまう。

 

「わっ…もう、ほむらちゃんたら…。」

 

「えへ…まどか、暖かい…。いい匂い…。」

 

「もう…甘えん坊さんなんだから…。」

 

「…こんな私は…嫌い…かな…?」

 

「そんなわけないよ。どんなほむらちゃんだって、私は大好きだもん。」

 

まどかの優しい声に、私は安心する。本気で嫌いになるだとかは思ってはいないが、どこか安心してしまうものだ。

 

「…キス、したいな、ほむらちゃん。」

 

「え、え…!?私が…するの…!?」

 

まどかの予想外の発言に少しばかり戸惑ってしまう。

 

「昨日はずっと私がしてたんだから…私もほむらちゃんにしてほしいの。」

 

「…わ、分かったわ。」

 

私は、覚悟を決め、すうっと息を吐く。

 

「ま、まどか、目を瞑って…。」

 

「ん…。」

 

目を瞑っているまどかはどこか幼さを感じさせ、私は少しばかり興奮してしまう。…そういう趣味なんて断じてないから。

 

「じゃ、じゃあ、する…わね。」

 

少しずつ…少しずつ、まどかに近づいて行く。

私もまどかも顔はもう既に真っ赤で、人に見せられるような表情ではない。

 

そして、唇が触れ合う。

まどかの唇はピクッと震え、直ぐに私を受け入れる。

私の唇も、まどかの柔らかさを私の脳へとダイレクトにつたえている。

凄く…心地がいい。

 

「ぷはぁ…。」

 

「えへへ…やっぱりキスって気持ちいいね。」

 

「ええ…。そうね。」

 

「あんまりえっちぃキスはできないけど…我慢してね、ほむらちゃん。」

 

「わ、私は期待なんて…してない…わけじゃ…ない、けど…。」

 

「…まあ、時間もたっぷりあるし。だってまだ私たちは中学ニ年生なんだから。」

 

「そうね…これから、二人でたくさんの思い出を創っていきましょう、まどか。」

 

「うん…ほむらちゃん。」

 

二人の少女の手は、強くお互いに握り合っていた。

一人の少女はこの手はもう二度と離さないと誓い、

もう一人の少女はこの手を二度と手放すことなどしないと誓った。

そして二人はまた、朝日に重なるようにキスをした。

 

愛してるよ。

 

-fin-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、いかがでしたでしょうか。
所々に、私の趣味が溢れ出ていますね。はい。
本当はよろしくないこととは理解しているのですが…
まどマギって、スピッツの曲に照らして考えられるんじゃないかって、私は勝手に思ってます。はい。
例えば、みなととか、歌詞の一部をリボンに置き換えるだけであら不思議、最終話のほむらみたくなってしまうんです。…というか、リボンに置き換えなくともそれっぽいんですけどね。
あとは楓とかもそうなんです。魔法のコトバとかも…。まぁ、上げだしたらきりがないんですけどね。
なんというか…スピッツが元々好きで、その後まどマギを好きになったんですけど、改めてスピッツの曲を聴いて見ると、それっぽいな、って勝手に思ってたんです。
…と、趣味全開の私の話は置いておいて…。

いかがでしたでしょうか。
え?杏子の出番が少ない?
それは…えっと…が、学校に通ってないから…。
え?さやかと仁美と恭介はどうなったのか?
えーっと…ご想像に…おまかせします!その、想像力が大事ですからね、今の時代!
え?さやかの演技ってやつ、割とマジなんじゃね?
…それは、触れないでください。グレーゾーンですよ。
え?ほむらはあんな中二じみた技名なんて叫ばない?
ま、マミさんが、やってくれないならみんな死ぬしかないじゃない!…とか言ったんじゃないですか…多分。
と、まあ…こんなふうにくるであろう質問をあらかじめ答えておきました。
作品をお楽しみいただけたのなら幸いです。
では、また次の作品で会いましょう!

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