「クソが!ヨシオはともかく何だあのヒーローやヒロインどもは!あんなイレギュラーさえなければうまくいってたのに!この俺の計画が台無じゃないか!」
結界に穴を開けて逃げ出したネズミ怪人は、人気のない校舎裏までくると少し安心したのか、怒りを言葉にして吐き捨てた。
「覚えてやがれ。俺は今回のことでさらに学習した。チュウぎはもっと完璧な作戦と手駒で必ずお前らを殺してやる!いや、男は洗脳して下僕に、女は俺のエサだ!生きながら死ぬよりチュウらい思いをさせてやる!」
「させるわけないじゃん」
「ヂュっ!?」
これ以上は聞くに耐えないので俺は影から姿を表す。
ネズミ怪人は素早く俺と距離をとり、巨大化して威嚇してきた。
「……貴様、海!」
「あーやっぱり俺の正体もバレてたか」
変身後の姿なのに俺ってわかってた言葉。エレメンツの身バレからして多分俺の正体もバレてると思ってたけど当たりだったらしい。当たって欲しくなかったなぁ。
「チュっ!チュウけられてたか。不覚」
まあ俺の影に潜る能力や影移動はバレてるだろうけど、じゃあ対策ってなるとこれが結構難しい。しかも気づかれにくいときた。絶対敵に持って欲しくない能力だな。
「チュウッチュッチュ」
なんかこっちを警戒、威嚇してたネズミ怪人が急に笑い出した。
「どうやら貴様一人のようだな!ならば恐るに足らん。貴様を殺すか服ヂュウさせられるのなら今日のところはよしとしよう。復チュウを一つ晴らせるのだからな。我が怨み、思い知るがいい!」
「ふふ、さっき俺に言った油断大敵って台詞、そっくりそのまま返してやるよ」
「何?ヂュッ!?身体が?!」
ネズミ怪人が威嚇のポーズのまま、固まって動かない。まあ正確には動けない、だけど。せいぜい喋るのが精一杯だろう。もちろん俺の仕業。
「俺が影に潜る能力や影移動できるの知ってるんだったら、もっと影に気をつけなきゃ」
俺はネズミ怪人の影に刺さったナイフを指差す。とは言ってもこのスキルが使えるようになったのって実はヨシオ戦の後だったりする。それまではコストが足らなくて2、3レベルの低い影スキルをセットしてたから。
「影縫いの術ってね。影を重ねて動けなくする影縛りなんてのもあるけど今はこっちの方が都合がいいんだよ」
「俺をどうする気だ?」
流石頭の回転が早い。俺が何かしたいのに気づいたらしい。
「ちょっと実験をね。人には絶対見られたくないし、動く相手に当てる自信ないから」
「貴様、俺で新技でも試す気か?」
「んー遠からず近からず、かな。」
確かに色んなコスの性能を試すいい機会かもとちょっと思ったのは内緒だ。
そんな会話をしながら俺はスマホをいじってスロットを一つセットしていく。
「スロット4ノソウビヲロードシマス」
セットが完了したスロットを早速ロードして
光の膜が霧散した後に佇む俺の姿は、クロスのついたカチューシャに、同じくクロスの矢じりのついた矢と弓、そして……濃いピンク色のレオタード。それは昔社会現象まで巻き起こしたチョコのオマケのシールのキャラクター、レア度星4つの十字○天使のコスチュームだ。何故か羽はついてなかったけど。
「む、貴様、その姿……」
「あー言わなくていい。感想は求めてないから。てか言えば殺す。俺だって恥ずかしいんだよ!」
誰が好き好んでレオタードになるか!そしてそんな自分の姿なんて見たくないから絶対下は見ない。ともあれ。
「こんな生き恥長く晒すつもりはないからな。サクッといくぞ」
俺は弓矢を構えて照準をネズミ怪人につけた。
「待て!話せばわかる!わかった、もう悪いことはしない!復讐もしない!だから見逃し」
「えい」
シュパン
トスっ
ネズミ怪人が何か喚いてたけど、とっとと終わらせたい俺はそんな話聞き流しながら矢を放つ。矢は見事にネズミ怪人の眉間に命中。すると。
「ヂュアアアアアアアアアあああああああ!!!」
ネズミ怪人が叫ぶと共に光に包まれた。
げっ!?やばっ!叫ばれるのはちょっと考えてなかった!ヤバイよヤバイよ!絶対人が集まってくる!どうする!?どうしよう!?
「消えていく!怒りが!怨みが!悪意が!俺の根源さえ消えて…変わっていく……」
ちょ!後半ちょっとすっげぇ怖いこと言ってるんだけど!軽くホラーっていうかサイコっていうか大丈夫かこれ!ヤベェ武器じゃないよな!?
そんな俺の焦りをよそに、ネズミ怪人の発光が収まると、そこにはぬいぐるみのようなマスコット化したネズミらしきかわいい生き物が項垂れていた。
「……なんでボク、今まであんなひどいことや悪いことしてきたんだろう……」
「お前誰だよ!?」
とりあえず全力でツッコミを入れた。
いや、この弓矢の効果って悪人を良い子ちゃんにする能力だってのは知ってるんだ。これはそれ試すためだったんだから。けど姿形まで変える能力はなかったはずだし、元の姿を考えれば今の姿は完全に詐欺のレベルだ。ていうか本当に誰だよお前!
「何言ってるの?ボクは海ちゃんとずっと一緒にいたじゃないか」
「嘘つけ!姿も喋り方も変わってるというか変わりすぎだ!」
「嘘も何も、ボクをこの姿に変えたのは海ちゃんだよ?」
「……まじかー」
……まじかー
やめろ、そんな目でこっち見んな!なんかちょっと罪悪感感じるから。動物虐待とか思っちゃうからマジで。
「やったね海ちゃぁぁぁぁん!!」
どーん
「うわあああ!?」
何事!?あ、いや、なんかこんなの前にもあった!
「ピ、ピンクちゃん!?」
何故ここに!?いやそれよりも!
「なんで俺の正体知って!?」
「そんなの一部始終見てたからに決まってるだろう」
げえっ!?ヨシオ先生!?それに他のエレメンツのメンバーまで!?
「ああ、心配すんな。ここにいるのは俺とエレメンツだけだし、結界も張ったからネズミ怪人の断末魔は外には聞こえてねーよ」
いや断末魔て。でもそうか、外には漏れてないか。ネズミ怪人の変化っぷりで悲鳴のことちょっと忘れてた。そんなめっちゃヤバイ案件忘れるとか俺どうなんだって思うけど、ネズミ怪人の変化はそれだけ衝撃が大きかったんだよ。ヨシオ先生の話で思い出して一瞬血の気が引いたけどすごくホッとした。
……問題大有りだろ!?一部始終見てた?待て、待つんだ俺。まだ慌てる時間じゃない。焦って喋れば逆に墓穴を掘るかもしれない。
「あ、あのー、一部始終ってのは、どの辺りから?」
「んえ?魔法少女のコスチュームからその姿になるところからだよ」
……終わった。何もかも……
「うきゃあ!?」
俺は膝から崩れ落ちて地面に手をついた。ピンクちゃんを巻き込んで。ん?待て?そっから見てても俺、魔法少女の姿だったはず。
「なんで黒色の魔法少女が俺だってバレてんの?」
「いや君、俺の目の前で変身しただろうが」
「いや、ヨシオは別として。ピンクちゃんの方が」
「私たちもあなたの正体、知ってるわよ」
みどりちゃんから衝撃の一言が。
「なんで!?」
「いや、簡単な推理だろう?あの時ヨシオ先生の結界に閉じ込められたのは、私たちと巻き込まれたもう一人だけだ」
「その結界が晴れた時にいたのは姿は違うけどその子そっくりの魔法少女。あとは簡単に調べられたわ」
「海ちゃん有名人やから」
えー……最初っからバレてたのかー……なんか今まで必死に正体隠してきたのが馬鹿みたいに思えてくる。
「で、我々は考えたわけだ」
「ウチらに勧誘するんやったら高校に入ってからやってな。おんなじ高校志望やったし」
「そうすれば逃げられないでしょう?」
なんて悪魔的発想!心なしかセイさん、キーちゃん、みどりちゃんの笑顔が黒く見える。
「ちなみにアイデア出したのは私!」
ピンクちゃん余計な事を!
「これから仲良くしようね♪」
「……ハイ……」
ピンクちゃんの溢れんばかりの眩しい笑顔に俺がノーと言えるはずもなく……俺の頭の中では子牛が売られる音楽と情景が流れていた。
「それはそうとして、この子どうするの?」
みどりちゃんがあの変わり果てたネズミ怪人を抱いて聞いてくる。かわいいもの好きなのかみどりちゃんはちょっと嬉しそうだ。
……元ネズミ怪人の方もみどりちゃんの豊満なお胸に包まれて嬉しそうだ。イヤラシイ顔しやがって!こいつ間違いなくあのネズミ怪人だ。このエロ怪人め!
「……みどり、そいつ、下ろした方がええで」
「?なんで?」
「な、なら次は私に抱かせてくれ!」
「……ハァ。これ、ウチが変なんかなぁ?」
「いや、キーちゃんの反応が正しいと俺は思うよ?」
「……ありがとな」
セイさん、意外とかわいい物好きなんだな。とはいえ、キーちゃんのあんな邪悪でイヤラシイ生き物を2人に抱かせたくない気持ちはよくわかるよ俺。
「あのっ!ボク、みんなの仲間にしてください!今までのチュウみ滅ぼしをしたいんです!必ず役に立ちますから、どうかお願い!」
俺たちの会話や視線が気になったのか、元ネズミ怪人はみどりちゃんに降ろされたらその場で土下座を始めた。器用な。
「おいおい、そんな勝手で都合のいいことが許される訳ねーだろ」
今まで黙ってたヨシオ先生が、この時ばかりは会話に参加してきた。
「お前には聞ーてない。そもそもお前だってボクと似たようなもんだろう」
確かに。どういった経緯でこのヨシオが先生やってるのか知らないけど、ヨシオだけ許されてこのネズミ怪人が許されないって道理はないよな。
「ハッ。俺にあれだけ言いやがったお前がどこまで本気なんだか」
「お前よりは役に立チュウ自信あるけど?」
「は?お前が俺より?なんの冗談だそれは?弱いくせに」
「ボクはお前みたいな脳筋じゃないからね」
「よくわかった。お前に謝る気や過ちを認めてやり直す気は絶対にねぇ!今すぐここで俺が退治してやる!」
「はいはい、そこまで。ここで争い始めるのはやめてくださいね」
ヒートアップしていく2人を仲裁してくれるみどりちゃん、ナイス。
「それで、どうするんだ、海?」
「へ?俺?」
セイさんの急なフリに思わず変な声が出た。
「それはそうだろう。この怪人をこの姿にしたのは海だ。ならば海が決めるべきだろう」
うええええええええええ!?
「あ、私もそー思う」
「まあ、妥当やなぁ」
「そうですね」
ピンクちゃん、キーちゃん、みどりちゃんも同意。
「チッ。仕方がない。海の決定なら従おう」
ヨシオ先生も了承。俺、逃げ場なし。俺はただあの弓矢の効果を確かめたかっただけだったんだけど……
「うん。ボクも海ちゃんならどんな決定でも従う。こんな心を持てたのも海ちゃんのおかげだから。ボクはどんな結果になっても受け入れるし、恨まないよ」
本当にお前誰だよ!!!
復讐だとかなんとか言ってたのが嘘みたいだよ!さっきちょっと、いや、かなりエロいところまで見せてたのにそんなことなかったかのような潔さ。やめろ、そんな決意を込めた目でこっちを見るな!見た目と雰囲気と相まってもう助けるって選択肢しかないじゃん!これで助けないって選択したら俺、完全に悪者で、絶対後で後悔する。
「……じゃあ、保護観察処分で」
とりあえず様子を見よう。正直、元ネズミ怪人のこの状態がいつまで続くのかわからない。効果の持続性は知っておきたいし、この状態で助けないっていうのは罪悪感あるけど、もし元に戻るようならその時に改めて退治すればいい。そこはこの姿にした俺の責任だろう。それにこの子がどう役に立つのかもちょっと興味ある。
「……!!ありがとう海ちゃん!ボク、がんばるよ!」
ああ、とうとうマスコットキャラまで登場しやがった。ますます俺、ヒロインっぽくなってきてないか?もう引き返せないところまで来てる気がしてならないんだけど。
長くなった波乱の新生活編、残すは後1話です。次回、りゅーじとめぐみんとのお茶、最後にガチャのおまけ回で占める予定。
ヒロインテンプレカウンター
・マスコットキャラ加入
ますますヒロイン化が進む海。ヒロインにならない明日はどっちだ!?
おまけ ショート劇場 かってにひろいんにすんな!
ちなみに本編には影響ないので興味ない方は飛ばしてオッケーです。
名付け。
「やったねチューる!」
「もう名前つけたんかい!てかピンクがつけるんかい!」
「なんか猫のおやつの名前みたい」
「いやみどり、まんまや!てかその名前は流石に可哀想やわ!」
「クク、なんともお似合いな名前ではないか」
「流石にそれはやめたれや先生!」
「流石関西出身だけはあるなキー。ツッコミがよく似合う」
「あぁありがとうってセイ、全然褒められてる気ぃせえへんわー!」
「えー?じゃあチュウ兵」
「それもあかーん!」
「じゃあミッk」
「もっとあかーん!」
「じゃあ根津校」
「わざとか?わざとやろピンク?怒らんさかい言うてみい?」
「キ、キーちゃん?ちょっと怖いよ?その両手握りこぶしでグリグリするジェスチャーはやめよう?ねっ?」
「あの、ボク一応チュッパカブラットって名前があるんだけど」
「えーかわいくなーい!」
「ちょっと血生臭そうな名前ですね」
「却下だな」
「まあ、ボクも今考えるとなんであんな名前自分にチュウけたんだろうって思うけど……」
「じゃあキーちゃんはどんな名前がいいと思う?」
「ねづっt」
「芸人じゃん!ちなみにセイちゃんは?」
「スキャバ」
「それいちばんあかんやつ!絶対裏切るやつ!」
「むぅ。かわいいと思うのだが。みどりはどうだ?」
「蟬丸」
「渋い!」
「ここはやっぱり海に決めてもらうべきやろ」
「んーメッ○ルとかミ○プルとか」
「コッテコテやん!てかそれもアカンやつや!」
「案外ミーハーなのね」
「ちなみにヨシオ先生は?」
「あ?そんなんネズミでいいだろうが」
「あ、アカンわコレ」