勝手に人をヒロインにすんな!   作:茜 空

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本当ならガチャ回のはずだったんですけど、主人公がめぐみんに身バレし(やがっ)たので一話追加です。
あ、私事ですけど、前回お気に入りや特に評価してくれた方、ありがとうございました。久々にランキング入りしてテンション上がりました。
もちろん今までにお気に入りしてくれた人、評価をくれた人、特にいつも感想をくれる方々にはめちゃくちゃ感謝してますし、それがモチベになって短編のつもりのこの話を続けられてます。




第10話:友人、襲来

 日曜日。それは学校や会社がお休みになる一週間で一番素晴らしい一日。普段なら間違いなく遅くまで寝てる俺だが、今日は朝から台所でちょっと作業中だ。

 

「今日のおやつは何かなー♪」

 

 俺はスイートなソングを口ずさみながら甘い香りの漂う台所でさっきまで使っていた道具を洗っていた。

 

チーン

 

 お、ナイスタイミング。ちょうど洗い物が終わったところだ。

 俺は水道を止めて手早く手を拭くとオーブンをあける。するとオーブンから熱気と辺りに漂う甘い香りより強い匂いが台所を染めていく。んーいい匂い。

 

「うまくできたかな?」

 

 俺は焼きあがった色とりどりのクッキーから一つつまむと口へと放り込んだ。

 

サクッ。

 

 小気味いい音と触感を感じれば、それからすぐにやさしい甘さと小さな幸せが口いっぱいに広がった。

 

「うん、うまい。さすが俺」

 

 いやまぁ正確には以前ガチャから出たお菓子作りの才Lv6のおかげなんだけど。

 このスキル、これより下のLvがどんなもんか知らないけど、Lv6でそこらの下手な売り物よりよっぽどうまいお菓子を作れる。以前検証を兼ねて作ったカップケーキは家族やりゅーじ、めぐみんやあややに大絶賛だった。ちなみに余った分をクラスメイトに進呈したんだけど、何故か軽い修羅場と化した。たかがカップケーキ、されどカップケーキ、食べ物は馬鹿にできないと学んだ。

 で、なんで俺が今クッキーを焼いていたかというと、今日家にくるめぐみんのためだ。女子だけあって甘いものが好きで、その時のカップケーキも嬉しそうに食べてたのを覚えてる。だから今日作ったクッキーもきっと喜んでくれるだろう。今日の話が話なだけに、少しでもいい印象や雰囲気をつくっておくのは大事なことだ。この事前の根回しの大事さは転生前の社会人の時に学んだ。だから転生前も含めて初めて女子が、それも超絶美少女で友達のめぐみんが俺の部屋にくるっていう嬉しさもあって作ったということでは決してない。

 

 それにしてもほんとうまいな。もう一個食べよ……

 

「「じー」」

 

 いや、自分で「じー」って言うか我が弟と妹よ。いつから見てたか知らないけど甘い香りに誘われてきたな。

 

「かわいいあねーのクッキー……」

「かわいいおねーのクッキー……」

「こら、さらっと俺を姉扱いすんな」

 

 とうとう血を分けた兄弟にまで普通に女扱いされ始めたぞ俺。いやまぁ今日に関してはあまり強く反論できないので軽めに怒るに留めておく。理由?そりゃ今の俺の格好。スキルを使うにはガチャで出た衣装にスキルをセットして着替(へんしん)する必要がある。つまり今の俺は前回ガチャで出たメイド服(クラシックなのじゃなくて、メイド喫茶なんかで見るスカート短くて露出が少々多いやつ)着用でクッキーをつくっていたのだ。鏡を見て絶妙なかわいらしさを醸し出す自分の姿を見たらさすがに責めにくい。

 そんな二人の視線は俺の焼いたクッキーにくぎ付けだ。まあ俺含めてこの年頃って食欲旺盛だし、カップケーキの時もしっかりと食べて随分と気に入ってた様子だったから欲しがるだろうなぁっていうのは予想してた。だからちゃんと二人の分も計算して作ってある。

 

「ほら、翼、翔真、あーん」

 

 俺は焼きあがったクッキーの中から両手で一つづつつまみ、二人のほうに向かって突き出してやる。

 

「あーん」

「あ、あーん」

 

 翼は嬉しそうに、翔真は恥ずかしいのか、少し躊躇いながらも俺の手にあったクッキーに噛り付く。

 

「んんんんん♡♡♡」

「んっ、うまっ!」

「ふふふ、うまいだろう?」

 

 気分は料理アニメの主人公だ。最後のセリフはお粗末で決まり……あ、これはだめだ。逆にうまいもん食べたときに服を脱いだり吹き飛ばされたりされかねない。

 そんな俺の軽いトリップをよそに、翼は幸せそうに、翔真も顔を綻ばせてクッキーを味わっている。二人ともかわいいなぁ。翼は母さん似で正統派美少女、翔真は父さんに似てきてジャニーズ顔で、かなりイケメン。二人にはもう身長も抜かれたけど、大事でかわいい俺の下の双子に違いはない。兄は鼻が高いぞ。

 

「ほら、二人の分」

 

 そんな二人の顔を見てほっこりしながら俺は二人の分のクッキーをラッピングして渡してやる。

 

「ありがとー。おにー大好き」

「さ、さんきゅ。お、俺もあにーがその、嫌いじゃない、す、好き、だぞ」

 

 翼は俺に抱きつき、翔真は照れて顔を赤くして、顔を背けつつも嬉しいことを言ってくれる。

 

 うん。うちの下の双子が可愛すぎて尊すぎる件。もうこれだけでクッキー作ったかいがある。

 

「そういえばおねー、じゃなくておにー、なんでクッキーなんて作ってたの?」

 

 翔真が「いつ食べるか」と呟きながら難しい顔をしてクッキーとにらめっこしてるところ、翼は俺がクッキーを作ってたのが気になったらしい。

 

「ああ、今日友達がくるんだよ」

「「え?竜司センパイくるの!?」」

「いや、今日は違う。ってか友達がって言ってなんで即りゅーじにつながる?」

 

 しかも息ぴったりで。解せぬ。

 

「え?だって家に遊びに来たことがあるおにーの友達って竜司センパイしかいないし。ねー?」

「なぁ?」

「あのなぁ、俺にだって他に友達はいるっつーの」 

 

 た、確かに家に来たことある友達はりゅーじしかいないけど。結構よく遊びに来るけど!

 にしても二人とも嬉しそうじゃん?まあよく遊びに来るから仲良くなるのはわかるし、兄弟と友達が仲良くなってくれるのは嬉しいからいいんだけどさ。ちょっとだけ悔しいし寂しい。

 

「あ、もしかして高校でできた友達?」

「女の子だったりして」

 

 何故かこれからくる友達考察が始まる二人。そんな時。

 

ピンポーン

 

「お、来たかな?」

 

 我が家のインターホンが鳴った。とうとう約束の時がきたか。

 

「はーい」

 

 複雑な気持ちでインターホンにでれば、画面には私服姿のめぐみんが映っていた。おお、めちゃくちゃかわいい。

 

「やっほー。きたよー」

「あ、恵センパイ」

「っほっ、豊穣センパイ!?」

 

 そういや二人はめぐみんとどれくらいの知り合いなんだろ。少なくとも俺つながりで紹介とかはしてないけど、翼とめぐみんは連絡先の交換をするくらいには仲がいいっぽい。翔真はー、なんだか少し挙動不審だな。

 まあ今は自分のことでいっぱいいっぱいだし、あれこれ詮索するのも野暮ってもんか。

 

「今玄関行くから待ってて」

 

 さて、それじゃあ俺の部屋に友人を初ご招待するとしますか。

 

 

 

——————————————————

 

 

 

「ふーん。なるほどねー」

 

 着替(へんしん)したまま出迎えた玄関で「かわいいようみー!」と抱き着かれて翔真や翼を巻き込んでひと悶着あった後、一応普段からちゃんと綺麗にしてるけど、今日を迎えるにあたって念入りに掃除をしてある俺の部屋に案内。そこで座椅子に身を預けながらクッションを抱えて相槌をうつめぐみん。女の子のこういう姿ってかわいいとか思いつつもなんだか不思議な気分。「そういえば男の娘の部屋に入ったのって初めてかも」とか言われたときは色々とドキッとした。一瞬男の扱いしてもらえたって超喜んだぞ?俺の喜びを返せ。

 ちなみに弟妹二人には大事な話をするので覗いたり聞き耳立てたりしないように厳命してある。これ以上俺の秘密がバレてたまるか。こっそりとされる可能性も考えて入り口には簡素だけどテーブルでバリケード作っておいた。

 そんで、今は俺の部屋の住人になったネズミ怪人(名前はまだない)には喋らないように言って、口止め料にクッキーを進呈してある。一口食べた後に一心不乱に齧る姿がちょっとだけかわいいって思ってしまったのがちょっと悔しい。

 そして今しがた俺の体質に始まって自衛手段のヒロインアプリの入手、その後のあれやこれや秘密にしてた訳をだいたい話し終えたところだ。

 

「いや、体質のことは感じてたというかまあ分かってたけど、まさか自衛手段を手に入れててしかも結構な数の怪人を倒してるのはびっくりしたよー。まあ秘密にしてた理由もまあ分からなくはないけどさー」

 

 そこで一旦言葉を切ってクッキーを齧る。

 

「ん?美味しいねこれ」

 

 ちょーっとばかりしかめっ面だっためぐみんの顔が綻ぶ。よっし!クッキー作戦大成功!やっぱり事前の根回しは重要だな。

 

「やっぱり内緒にされてたことはショックだなー」

「うっ」

 

 とか思ったら急に泣きそうな顔をしてこっちを見る。うぅ、その変わり身の早さとその顔は卑怯だ。美少女にそんな顔されると罪悪感も倍に感じる。そりゃあ俺だって後ろめたさや正直に話したい気持ちはあったさ。でもそうは言ったって、こういう情報はどこから漏れるか分からないから友達や家族にだって知られたくない。ましてやヒロインになるなんて嫌なものは嫌だし、恥ずかしいものは恥ずかしいんだ。 

 

「でもうみがそのアプリを使って色んな姿を見せてくれたら許しちゃうかもなー」

「……それで許してくれる?」

 

 正直、抵抗はあるし、かーなーり嫌だ。だけどこれまで内緒にしてた罪悪感もあるし、これまた正直、もっと大変なことを脅迫(おねがい)されると思って覚悟してた。例えばめぐみんと一緒に声優を目指すとか。

 

「うみ、今私がもっと大変なお願いするって思ったでしょ?」

 

 ぎくっ

 

「お、思ってません」

「じゃあなんで顔を逸らすのかなぁ?」

 

 なぜバレたし。

 

「女の勘?」

 

 エスパーか何かかな。ってかなんか俺の考え筒抜けすぎない?もしかして実はめぐみんも正体隠してヒロインか何かやってたりしない?それも魔法少女やエスパー系のやつ。

 

「さっきも言ったけど、そりゃあ内緒にされてたのはちょっとショックだったけどさ。それでもうみの気持ちも分からないほど私は鈍感じゃないし、そんな浅い付き合いでも短い付き合いでもないでしょ?」

「めぐみん……」

「前にも言ったけど、私はうみの味方だからね。今度はちゃんと相談してよね」

「……ありがとう」

 

 めぐみんの優しさがめっちゃ染みます。バレちゃったけど、めぐみんにバレたのは結果的によかったんじゃないだろうか?

 

「まー湿っぽい話はここまでにしてー」

「うん」

「そのヒロインアプリっていうの見せてー」

「わかった」

 

 俺はこみあげてくる涙を見られないように顔を抑えながらヒロインアプリを開いたスマホをめぐみんに差し出した。

 

「わ、デザインかわいい。えっと、衣装ボックスにスロット、それにガチャ。うみの説明にあった通りだね。うわ、衣装結構ある。なるほど、確かに漫画やアニメでヒロインって呼ばれるキャラたちの衣装……ぶふっ、何、パンツまで出るのこれ?くくっ、しかも中にはスクール水着とかバニースーツとか……ぶはっ。ぶっ、ブルマって!いつの時代の衣装?」

 

 俺の中の熱とか感動とかが急激に冷めていく。

 

「しかもやたらと露出やフリフリが多い衣装ばっかり。うみ、苦労したんだね」

「そう思ってくれるんなら笑うの止めて」

 

 くっそ、だから話すのが嫌だったんだ!やっぱりバレなきゃよかった!

 

「ごめんごめん。でもさ、これ全部絶対うみに似合うよ?ガチャから出たとか思えないくらいナイスチョイス」

「それはそれで嫌だよ!」

 

 こういうのって見苦しいとか似合わないとかも嫌だけど、似合いすぎなのも結構辛いものがある。でも実際着て似合ってたり可愛かったりするとまんざらじゃない自分がいるんだよな。それが結構自己嫌悪だったり。

 

「ぜーたくだなーうみは。似合わないより絶対にいいのに」

「じゃあめぐみんが着ればいいじゃん」

「それは別にいいんだけど、私が使えるの?これ」

 

 ん?そういえばこれ、他人が使った場合どうなるんだろ?今まで秘密にしてたからそういう検証はしてないな。

 

「やってみてもらってもいい?スロットは5を使って」

「いいよー。あれ?これってあの時の?」

「そーだよ」

 

 スロット5はめぐみんとりゅーじと遊びに行った時のセットだ。

 

「じゃあ、えい」

「スロット5ノソウビヲロードシマス……ロードカンリョウシマシタ」

 

 ボン

 

 毎度おなじみのボーカロイド声が響いた途端、俺は一瞬煙に包まれた。それはすぐに晴れたんだけど、俺の格好がバニーさんになっていた。

 

「なるほど、やっぱり持ち主じゃないとダメなんだ」

「……他に言うことは?」

「……ごめんね?」

 

 かわいい素振りをしながら謝ってくれためぐみん。くそ、かわいいから許す!いや、本当は俺が頼んだことだから謝る必要もないわけで。

 

「で、なんでこれを選択したさ」

「一度着てみたくって」 

「まじか」

「そりゃあね。こんな衣装、絶対に自分で買うことないでしょ。だから着る機会なんてまずないと思ったから」

「あー」

 

 そう言われるとなんとなく納得してしまう。でもこれ、もし俺じゃなくてめぐみんに反映されてたら……

 

「もう、うみはそんな顔してえっちだなー」

「うぇ!?顔に出てた!?ごめんなさい!」

「いや、そういう意味じゃなくて……って許すから!さっきとの相殺でいいから土下座はやめて!」

 

 はい、がっつり想像しました。めちゃくちゃ似合ってました!妄想だけどエロかわいかったです!

 と、俺がひれ伏している間に服がさっきのメイド服に戻った。あ、アプリ終了はしてくれないのね。

 

「もう、あの格好のうみに土下座されたらちょっと開けちゃいけない扉をあけちゃうところだよ」

「なにそれ?」

「知りたい?」

「あ、やっぱりいいです」

 

 これ以上は踏み込んじゃいけないと俺の第六感が告げる。だから俺はこれ以上は追及しない。他はどうか知らないけど、俺は人間、ちょっと臆病なくらいでちょうどいいって思ってる。

 

「なんにしても、これで人には使えないってことが分かったのは収穫だなー」

 

 俺は無理やり話題を逸らすというか、脱線から戻すべく、強引かなぁと思いつつ元の話に戻す。

 

「ジョウケンヲクリアシマシタ。リンクキノウガカイホウサレマシタ」

「は?」

 

 けど突然、スマホから聞き逃せない声が響いた。で、画面を見つめてためぐみんが、急に自分のスマホを取り出して操作を始める。

 

「ちょ、めぐみん?何やってんの?」

 

 なんか嫌な予感がする。というか嫌な予感しかしない。

 

「んー?なんか画面にリンク先が表示されたからちょっとアクセスしてみようと思って」

「ちょー!?危ないって!なんでなんの躊躇いもなく行動に移してんの!?」

「大丈夫じゃない?私の勘は特に危機感を発してないし」

「直感的に行動したらだめだって!ストップ!ストーップ!」

 

 確かにめぐみんの直観ってめちゃくちゃ精度が高い。だからってそんな行動してたらいつか絶対痛い目を見る。ていうかまさに今そうなろうとしてる気がしてならない!

 

「アクセスヲカクニンシマシタ」

「リンクアプリ?っていうのがとれたよ」

「いや聞いて俺の話!ていうかもうダウンロードしちゃったの!?」

「でもこれ、アプリ開いても何も起こらないよ」

「アプリ起動しちゃったの!?!?」

 

 俺の友人の行動力が半端ない件。お願いだからもっと危機感を持って行動してほしい。

 

「あれ?うみ、これ……」

 

 そんな俺の心配をよそに、めぐみんは俺のスマホをこっちに向ける。

 

「え?ガチャ画面?」

 

 そこには、リンク開放記念星5確定ガチャの文字と共に、ガチャの画面が表示されていた。

 

 




実は今回でガチャまで行くつもりだったのがいけなかった件。というわけで今度こそ次回ガチャ回……できるかなぁ。

ヒロインテンプレカウンター
・休日にお菓子作り
・メイド服が似合う
・過去に家族や友達にお菓子を振舞っている
・クラスで手作りお菓子の取り合いの修羅場を作る
・下の双子にお菓子をねだられる
・下の弟妹大好き。下の双子も兄大好き
・あーん
・マスコットにクッキー進呈
・アプリの衣装が似合うのを認められる
・バニー装着
・女子にイケナイ妄想をさせる

今回は多かった。さすがのヒロイン力。……強引なのもあるかな?
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