勝手に人をヒロインにすんな!   作:茜 空

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どーも、いろいろ更新停滞中の作者です。
最近、やるぞーとか、書きたいって気持ちは強いんですが、いざ書き始めると萎えるというか、心が速攻折れるというか、そんな現象にとらわれています。
……はっ、これがコ○ナの影響か!?(超責任転嫁)
人の心はままならないですね。


第12.7話:夢で逢えたら

「……知らない天井だ」

 

 寝起きでまだ意識がはっきりしない中でゆっくり開けた目に入ってきたのは知らない天井だった。いや、目を覚ました時にそういう状況だったら言っちゃうよね、オタだったらなおさら、無意識にでもさ。

 

「ようやくお目覚めかな?眠り姫」

「ぁん?」

 

 姫扱いされて一気に機嫌が悪くなったのを隠さずに声のした方を向けば、ヨシオ先生がそれはそれは悪の幹部です!というような鎧甲冑を纏ってこっちを見ていた。

 いや、なんでヨシオ先生がここにいる?そもそもここ家じゃないよな?どこだよここ。

 ここでようやく様子がおかしいと思った俺は、状況を把握するために辺りを見回す。

 悪の幹部スタイルのヨシオ先生、赤黒い脈打つ壁と床、それに覆われて囚われてる俺。

 

 ちょっと待て。なんぞこれ!?

 

 なんで俺肉壁に埋まってんの!?しかも自分の身体の見える範囲は肌を晒してる状態。ぅぉぉい!?もしかして俺こんな状況で真っ裸!?頼む、下半身はパンツだけでもいいから何か履いていてくれよ!

 

「クク、そんな顔が見れただけでもリスクを冒した甲斐があったというものだ」

 

 ヨシオ先生が意味ありげなことを言っている。え?ってことはこれ全部ヨシオ先生の仕業?

 

「どういうことだ?」

 

 これは明らかに敵対行為だ。一度は感じ的には助けてもらったし、曲がりなりにも学校で先生なんてやり始めたんだ、多少は信用してたのに。

 

「俺様はお前とこの世界を作り直す。常に争いの絶えない修羅と強者の世界を作るのだ」

「え?嫌ですけど?」

 

 なんかまたとんでもないこと言い始めたな。寝言は寝て言えよ。

 まあこいつ元々どっかバトルジャンキーっぽかったし、そういう野望を持っててもおかしくはないんだけどさ。俺は嫌だけど。

 

「お前に拒否権などあると思うか?諦めろ」

「嫌だって言ってるだろ。お前こそ諦めろよ。つかそもそも俺必要か?」

 

 俺なんて見た目女っぽいただの男だ。波乱体質や自衛手段はまあ別として。

 

「手段としては必要ない。が、俺様はお前が欲しい」

「は?はぁ!?」

 

 俺が欲しい?何言いだしたんだこいつ?頭おかしいんじゃないか?

 

「なんで!?」

「理由なんてない。欲しいと思った。だから手に入れた。もうお前は俺様のものだ」

「は、はぁ?誰がお前のもんだよ!意味不明なんですけどー!?」

 

 くっそ、シンプルだからこそ、その気持ちの強さもダイレクトに伝わってくる気がする!なんかドキドキしてる気がする!ってなに乙女心全開にしてんだ俺!男だろうが!

 

「クク、そんな気の強いところもいいな。まあ時間はたっぷりあるんだ。ゆっくりじっくり堕としてやるよ」

「ヒィ!?」

 

 アゴクイ!?近い!顔が近いよ!しかも無駄にイケメンがキメ顔するもんだから男の俺から見てもかっこいい!やばい、ドキドキが加速している。ってもう堕ち始めたのかよ俺!チョロインすぎだろ俺ぇ!(錯乱中)

 

「さあ、古い世界の終わりを共に見届けようではないか」

 

 そういってヨシオが手をかざすと、近未来なんかでありそうな色んな場所の映像が目の前いっぱいに広がる。その映像は、どこも戦闘が行われていて、何人も倒れていたり、建物が崩壊してたり、地形が変わり果てたりとどことなく戦闘の激しさを物語っていた。さながら映画の最終決戦や最終戦争のような光景だ。

 

「ひでぇ」

「何を言っている?皆が己の存在を賭して戦う姿、美しいではないか」

「ふざけんな!戦うことの全部を否定はしない。けどその世界を望まないものに自分の理想を押し付けんな!」

 

 その映像を見て俺は一気に冷静になった。そしてヨシオの、こいつの野望を拒絶する。

 

「もう遅い。作戦はもう最終フェイズを迎えている。今抗戦している連中が最後だ。これで残す人類の選別が終わる。弱者は消え、強者の時代が訪れるのだ」

 

 っくそ、俺はなんで捕まっちまってるんだ!何のための自衛手段だ!何のために手に入れた力だよ!自衛もそうだけど、俺が好きなもの、俺の大切なものを守るためじゃないのかよ!

 何とか脱出しようと体を動かそうとするが、肉壁も一緒に動いて剥がれる気配が全くない。

 

「くそっ、剥がれろ!はーがーれーろー!!!」

「無駄だ。外側からならともかく、内側からは絶対に剥がせん」

 

 絶対的な信頼があるんだろう、ヨシオは落ち着きながら映像のほうを見続ける。

 何か、何か脱出できる方法はないのか?

 

「みんな、大丈夫?」

 

 必死に足掻いてた俺の耳に、聞いたことのある声が入ってきた。この声は。

 

「正直きっついわ!」

「一体一体が強力なうえに、数も多すぎる!」

「もうきりがないよー!」

 

 フェアリアルエレメンツ!

 

 映像の中に、エレメンツがいた。みんなまだ無事だったんだ!でもその姿はボロボロで、状況の過酷さを伺わせる。

 

「みんながんばって!海ちゃんはこの先のあの巨人の中だよ!」

 

 ネズミ怪人!?一緒に行動してるの?っと、それもそうだけど、他にも気になるワードが入ってきた。今俺がいる場所って巨人の中なのか。

 ネズミ怪人の声でピンクちゃんの顔つきが変わった。

 

「行こう、みんな。うみちゃんが、私たちの仲間が待ってる」

「うん!」

「せやな」

「当然だ」

 

 それに触発された他のメンバーも顔つきが変わる。みんな、ヒロインなのに顔つきが男前すぎるよ。そんなこと言われたら。

 

 ぽろっ

 

 涙が我慢できなくなるじゃん。

 

 他の映像も見てみる。

 

「ヒーローに敗北はない!」

「守るんだ!例え、相打ちになったとしても!」

「世界も救って女の子も救う。そんな強欲さこそが、今時のヒーロー像だろ?」

「俺たちは」

「私たちは」

「「「悪を遮るこの世界の守護者だ!!!」」」

 

 どの映像もヒーローやヒロインたちが闘っていた。その姿に俺の胸も熱くなる。俺は見てる側でいたいのは今でも変わらない。けど、こんな姿を見せられて奮起しなきゃ、オタクも男も、ヒーローも失格だ!

 何か俺にできることはないか?

 

「む」

 

 足掻いてもがいて悪戦苦闘しながら必死に頭を回転させていると、不意にヨシオの表情が変わる。原因はヨシオが見ている映像か?あれ?それはさっきエレメンツを映してたやつじゃないか?

 

「海ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーー!!!!」

 

 なんか俺の名前を叫びながら高速で巨人に向かっていく光が見えた。まるで流星のようで、ちょっとだけ目を奪われる。

 ってこの声も聞き覚えがある。むしろなじみ深い。間違えようがない。

 

「りゅーじ!」

「チッ!手の空いてるヤツは今突っ込んできた命知らずの馬鹿に攻撃を集中しろ!ダークバリア展開!武装も解禁!あいつを近づけさせるな!」

 

 ヨシオが少し焦った様子で指示を出す。今までの余裕が嘘のようだ。なんだかりゅーじを近づけさせたくないような感じだ。

 

「うおおおおおおおお!!!」

 

 けどりゅーじは近づく敵を、弾を、ビームを弾き飛ばし、バリアも突き破ってきた。

 

「なんだと!?」

「マジか!?」

 

 俺もびっくりだけど、ヨシオも随分驚いている。さすがにあれは想定外だったらしい。そして、そのまま巨人にぶつかった。と、同時に

 

 ズドォォォォォォォォォオオン!!!

 

 激しい衝撃と爆音と共に、気色悪い壁に穴を開けて何かが突っ込んできた。これって……飛行機?

 その飛行機と思われる先端部分のコクピットらしい所が開くと

 

「海!」

「りゅーじ!」

 

 案の定、りゅーじが飛び出してきた。

 

 そのまま俺のほうへと走ってきて、俺に纏わりついている肉壁を剥がす。

 

 ってこんな悠長なことしてたらダメだろ!

 

 

「りゅーじ!俺のことはいいからヨシオを」

「あ?そいつなら壁に頭ぶつけて気絶してるぞ」

「は?」

 

 慌てながら助言する俺にりゅーじは意味不明なことを言う。あのヨシオがそんなあっさり気を失うはず……マジか、本当に頭ぶつけて気絶してるよ。なんというご都合主義。ていうかこいつ、めちゃくちゃ弱くなってないか?

 

「ああもう面倒だ!」

「え?ひゃあっ!?」

 

 俺にくっついてる肉壁を剥がしてたりゅーじが面倒とか言い出したと思ったら急に抱き着かれた。不意打ちすぎて変な声が出たぞ。

 

「何すんだこのやろぉぉぉぉぉ!?」

 

 文句を言おうとしたらそのまま肉壁から引っこ抜かれた。っていうかそれやりたいんだったら言えよ!そうしたらちゃんと事前に心構え作れたのに!おかげで変にドキドキしたじゃん!

 

「うし!んじゃさっさとに逃げるぞ」

 

 りゅーじは俺を引っこ抜くと、何事もないように地面に降ろして離してくれた。

 うう、りゅーじに悪気はないんだろうし、助けてくれた手前文句も言いにくい。でもこのままやられっぱなしなのも気に食わない。

 

 ならちょっとだけいたずらしてやる(ニチャア)

 

 俺は後ろを見せたりゅーじに抱き着いてやろうとして

 

「あ、あれ?」

 

 急に引っ張られた。

 あ、よく見たら手をつないで引っ張られてる!

 

「何してんだ、早くいくぞ」

「あ、うん」

 

 そのままなすがままに手を引っ張られる俺。うう、りゅーじと手をつなぐなんてあんまりしたことないせいか、妙に緊張するというか、ドキドキする。くっそ、結局全部やられっぱなしかよ俺。かっこ悪い。

 

「っくそ、俺様としたことが……あ」

「あ」

 

 なんとかドキドキを紛らわそうときょろきょろしてたら、ちょうど目を覚ましたヨシオと目が合った。

 

「くそ、逃さん!」

 

 ヨシオが立ち上がって追い掛けてこようとして

 

 ズドォォォォォォォォォオオン!!!

 

「うおっ!?」

「ぬぁっ!?」

「おっと」

 

 また衝撃。そして

 

「うみちゃあああああん!!」

「海ちゃん!」

「海!」

「ピンクちゃん!エレメンツのみんなも!」

 

 肉壁に穴が開いて、そこからエレメンツが飛び込んできた。

 

「よかった、無事だったんだね!」

「む、その男は」

「海は救出した!そんな身体で悪いが脱出の援護を頼む!」

 

 衣装もボロボロで、体中傷だらけのエレメンツ。それなのに俺の姿を見てみんな嬉しそうだ。そんな顔されるとまた目頭が熱くなってくるじゃん。でも、そんなエレメンツにきついお願いをするりゅーじ。ちょっと文句を言いたくもなるけど、全ての元凶の俺に文句を言う資格はない。せめて俺のスマホがあれば変身して少しでも助けになれるのに。

 

「おっけー!」

「任せておけ」

「海ちゃんの無事も確認できたし、あとはヨシオにきつーいお仕置きをしないとね」

「乙女を裏切った代償は安くないで?」

 

 ボロボロなのにりゅーじのお願いを聞き入れるエレメンツ。あんなに傷だらけなのに無茶しないで欲しいんだけど、むしろやる気に満ちている気がする。……いや、殺ル気?

 

「邪魔を、するなぁぁぁぁ!!」

「ぐっ」

「きゃあっ」

「あうっ」

「ああっ」

「みんな!」

 

 ヨシオの前に立ちはだかったエレメンツがヨシオから巻き起こる突風で吹き飛ばされた。ヨシオやっぱり強いじゃん!さっきのアレはなんだったんだ!

 

「だ、大丈夫」

「く、さすがに強い」

 

 吹き飛ばされたエレメンツが心配だったけど、なんとかみんなが立ち上がってホッと一息。

 そしてその間に俺とりゅーじは飛行機?のコクピットに乗り込むことができた。てかこれ二人乗りじゃん。

 

「伏せろ!」

 

 乗り込んですぐにりゅーじが叫ぶ。その声にエレメンツは即座に反応して身体を伏せた。と、ほぼ同時に前方に向けて機銃?が雨のように撃ちだされた。そしてヨシオを中心に爆煙があがり、辺りを包んでいく。すげ、なんだかハリウッド映画を生で見てるような気分だ。

 

「今だ、逃げるぞ」

 

 ある程度機銃?を撃ったあとに、それだけ叫ぶと飛行機が自身の向きと逆に急加速する。逆噴射でもついてるのか?なんて思ってたら、機体の下の方に足っぽい何かが見えた。まさかのヴァ〇キリー仕様かよ。俺のオタ魂が歓喜してるわ。もしかしてバト〇イド形態もあるのか?

 

「ついでだ、これも受け取るがいい」

「やられっぱなしは性に合わないしね」

「絶対零度……」

「「「プリズムブリザード!!」」」」

 

 そんなタイミングで、エレメンツの4人の声がハモりながら撃ちだされた攻撃は、氷や宝石のような何かが荒れ狂う風と共にさっきまで俺たちがいた空間を爆煙ごと蹂躙する。

 すっげぇ、めちゃくちゃ綺麗だけど殺傷能力高そうな攻撃。え?今の新技?

 足止めがうまくいったのか、ヨシオが追いかけてくる、ということはなく、外も来るときにすごそうだった弾幕や敵の姿もなく。俺たちはその場からどんどん離れて、やがて巨人の輪郭が見えるくらいまで離れる。

 

「うみっ!」

 

 そこまできて、不意に通信?なのか目の前にスクリーンが現れて、画面いっぱいにめぐみんの顔が映し出される。って、ちょ、近い近い!スクリーンって分かっててもめぐみんの美少女フェイスが近いのは緊張する!

 

「大丈夫だった?変なことされてない?」

「大丈夫、される前に救出されたっぽいから。心配かけてごめんな」

 

 曇っていためぐみんの顔が安堵の表情に変わる。今回はなんかたくさんの人に心配かけたなぁ。なんだか申し訳ない。

 

「うし、無事海も助けたことだし、最後の仕上げと行くか」

 

 俺がそんな感傷に浸っていると、りゅーじがそんなことを言い出した。そして「最後の手段」とか嫌な予感がバシバシするボタンを躊躇なく押した。

 

「ちょ、りゅーじ、今なんのボタン押した!?」

 

 そんな手段にろくなものはない!自爆か相打ち前提の攻撃か、とにかく何かしらのリスクを伴うこと前提だろそれ!

 

「まあ見てろ」

 

 なんでそんなに楽しそうなんだよりゅーじぃ!

 

 と、俺がテンパってると、飛行機?らしい乗り物がロボット形態になった。そしてどこからともなく飛んでくる物々しいライフル。「なんとかバズーカ」とか、「何とか粒子砲」とか名前の付きそうなえげつないのが。

 ロボットに変形した今乗ってる機体がそれをつかみ、ロボットに接続?ドッキング?させる。

 

 おお、いかにもロボットアニメとかのラストの決め技っぽい形態だ。

 

 よかった、自爆も相打ちもなかったよ。

 

「よし、海、めぐみ、頼んだぞ」

「はいよー」

「へ?」

 

 りゅーじがさも当然のように俺とめぐみんに頼む。めぐみんは理解してるようだけど、俺は何が何やらさっぱりなんだが?

 

「何言ってるの?歌うんだよ」

「はぁ!?」

 

 これまたさも当然のようにめぐみんがのたまう。いやいやいやいや。

 

「なんで!?」

「なんで?って、この攻撃、私たちの歌がエネルギーだよ?」

「まじか!?」

「まじまじ」

 

 どこのマク○スだよ!この変形メカといい、歌といい、どこのマ○ロスだよ!(大事なことなので二回言った)

 

「早くしないと、ヨシオが復活するぞ」

「うええええええ!?」

 

 どうする?ってどうするもこうするも歌うしかないんだけど!

 とか俺が動揺してたら、なぜか俺たちが脱出した穴がスクリーンに表示される。そこにはボロボロになりながらも生きているヨシオが必死にこっちに向かって手を伸ばしていた。

 まさかのエレメンツの置き土産の新技がめっちゃ効いてた!

 

「海……俺様は、お前が、お前が欲しいぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「ヨシオ……」

 

 トゥンク

 

 ……なんだ?今の?まさか、俺がときめいた、今の、ヨシオの告白で?

 

 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???

 

「ヨシオ……」

「うみ、あんなこと言われたらやっぱり攻撃できないよね」

「俺、魂込めて歌う!」

「うわぁ、めっちゃ殺ル気だ。なんだか攻撃力が3倍になりそうな気がしてきた」

「それでこそ海だ!」

「どういう意味だそれ!」

 

 二人共俺にどんな印象持ってるのか後で小1時間問いただす!

 

「で、曲は何?」

「愛の弾丸」

「選曲に悪意を感じるんだが!?」

 

 確かこの曲、めっちゃハイスピード&ハイテンションで愛を語る曲だったはず。

 

「愛には愛で応えなきゃ」

「超嫌なんですけど!?」

「早くしろ!ヨシオが回復してくるぞ!」

 

 ちくしょう、めぐみん、後で憶えてろ!

 

 俺が文句言ってる間にももうイントロが流れ始めていた。

 

 俺は半ばやけくそでめぐみんとデュエットする。するとロボットの背中から光の翼が生え、どんどん光と大きさを増していく。

 歌はやけくそだけど、表現はかっこいいなちくしょー!

 

「海ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

 ヨシオはまだ俺の名前を叫んでいた。なんだかこのまま消し飛ばすのは非常に心苦しい。

 曲はちょうど歌詞のない間奏の部分だ。

 

「ヨシオ、ごめん、俺はお前の想いには応えられない。けど、俺を欲しいって言ってくれたこと。忘れない。絶対に忘れないから」

 

 こんなところから言っても伝わらないだろう。だからこれはただの俺の自己満足だ。けど、言っておきたかった。口にしておきたかった。

 なぜか心が苦しい。目が熱い。ほほを何かが伝う。

 

「……そう、か。だが、お前の中に少しでもこの俺様が残るのなら、お前の心の一部を俺様が占領するのだ。悪くない」

 

 なぜかヨシオが辛そうに、それでも笑いながらそんなことを言っていた。

 

 ……あるぇぇぇぇぇぇぇ?!なんで言葉が届いてんのぉぉぉぉぉぉ!?

 

「ああ、言い忘れてたけど、今お前が発してる言葉は力にするために全部タダ漏れだから」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 それ、早く言ってよぉ!ってことはこれ、ほぼ世界中に今のやりとりが知れ渡ってるって事!?ナンテコッタイ!

 

「うみ、こっからクライマックスなんだから集中して!」

「無理!こんな状態で集中なんて絶対ムーリー!!」

「いや待てめぐみ、なんかめっちゃパワー上がってる」

 

 そんな俺にめぐみんがはっぱをかけてくるけど、それにりゅーじが待ったをかけた。

 へ?いや、なにそれ?

 

「んー?歌にいろんな感情が乗って、しかも爆発寸前ってこと?」

「真相はわかんないけど、な。海、そんな状態でもいいから歌え!」

「無茶いいなさる!」

「四の五の言ってないで歌えー!」

「鬼かお前ら!?」

「ほらほら、間奏終わるよ」

 

 ちくしょー!お前ら二人とも絶対にどっかの鬼に血を与えられてるだろう!?なんで太陽にあたって平気なんだよ!

 

 もうヤケもヤケで俺は続きを歌う。幸いなのか、最悪なのか、この曲はかなり歌いこんでいただけに、ヤケで歌ってもミスをしない俺。

 

「じゃあな、好敵手」

 

 りゅーじがいつの間にか現れてる銃のようなものに手をかけ、引き金を引いた。

 とたんに俺の視界は光で塗りつぶされて、何も見えなくなる。大きな爆破音が聞こえる中、「さらばだ、愛しき人よ」という満足そうな声をなぜか俺は聞き逃さなかった。

 そして、光が収まって俺の視力が回復して、目が見えてくると、目の前にあった巨人はきれいさっぱり消え失せていた。

 

「……終わった、な」

「ええ」

「うん」

 

 最後にあんな言葉を聞いたせいか、今の空気のせいか、なんだかしんみりした気持ちになる。

 

「あ、助けに来てくれてありがとな、りゅーじ」

 

 俺はそんな空気を変えようとりゅーじに助けてくれたお礼を言う。後で脱出の時にはぐれたエレメンツにもお礼を言わないとな。

 

「なに、俺にとって大事な人を助けるためだしな」

 

 そう言われると俺も嬉しくなる。大事な人、か。へへ。

 

「んじゃあお礼をしないとな」

「おう、盛大に期待して、る……」

 

 りゅーじがコクピットで振り返ってこっちを見たタイミングで、俺は顔をどんどん近づけていき……

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅおおおおっ!?!?!?」

 

 俺は布団を跳ねのけて起き上がる。

 今のは……夢?

 くっそ、なんつー夢見てんだよ俺!突っ込みどころしかないぞ。ていうかなんで夢の中までヒロインしてんだよ俺!しかも最後なんてりゅーじ相手にきっ、きっ、きっ、キスまでしようとするなんて!

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 俺は自己嫌悪でベッドの上を転がる。

 

「ひぃ!?」

 

 そして身体にべっとりと張り付く服に驚きと不快感で固まる。改めて胸元から服をのぞき込む。

 

「うぁー……寝汗すっげぇな」

 

 あんな夢を見たせいか、寝汗が半端なかった。正直気持ち悪い。

 まあ、どうせあんな夢みたらしばらく寝付けなさそうだし。

 

「ロードカンリョウシマシタ」

 

 俺はヒロインアプリで魔法少女に変身すると、箒に乗って深夜の空中散歩へとしゃれ込むことにした。

 

 

 




実はもう一本夢物で書きたい話があったんですが、思いのほか主人公の夢が長くなってしまったので、できませんでした。次にナンバリングの話をやって、そのあとの番外編でやれたらいいなぁ。
次回は「新歓とライブとキツネっ娘」の予定。まあこのサブタイで大体の内容は予想(看破)されそう(笑)



ヒロインテンプレカウンター
・肉壁に埋め込まれる
・囚われのお姫様状態
・裏切ったヨシオ(敵幹部)からの告白、俺のもの宣言
・からのアゴクイ
・歌姫ポジション
・助けたヒーロー(りゅーじ)にお礼のキス(未遂)

自分の夢すら海はヒロイン(うみ)
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