「だーかーらー!俺は何も見てないって!」
「嘘つけぇ!俺とがっつり目があっただろうが!アレを見られたからには生かしておけん!死ねぇ!」
知らんがな!
今日も今日とてトラブルに巻き込まれる俺。今日は路地裏でごそごそしてたネズミの怪人と目があっただけでそれはもうしつこく追いかけられている。
しかも使い魔か仲間か知らんが大量のネズミも一緒。戦闘員も一緒。こんなエレクトリックな参加型パレードマジ勘弁してください。
とか考えてたら後ろから爆発音。今度は何!?
「大丈夫?怪我はない?」
「え?あ、はい、ありがとうございます」
振り返ってみれば、そこにいたのは緑色でフリフリフワフワの少女。雑魚を蹴散らす似たようなコスチュームの黄色と青色の少女、そして怪人とタイマン張ってるピンクの少女。超有名ヒロインじゃん!めっちゃファンです!
「あとは私たちが引き受けます。あなたは早く逃げてください」
「ありがとうございます。あ、お役に立つかわかりませんが」
俺はお礼も兼ねて追いかけられた理由と怪人たちの怪しい行動を全部チクってやった。これで何をしようとしてたかはわからないけど全部パーですね。ざまあ。
「なるほど。それであなたは追いかけられていたんですね。大丈夫、あとは私たちが何とかします。さあ早く逃げてください」
「ありがとうございます」
「こんないたいけな少女を追い回して口封じしようだなんて絶対に許せません!覚悟してください!」
「あ、俺男……」
行っちゃった。
……訂正するタイミング完全に逃した。くそう。
「がんばれー!」
でも応援した。何故か?ファンだからだ。
「任せといて!」
ピンクが頼もしい笑顔で応えてくれた。
——————————————————
「それで今日はこんな時間にレアキャラが出現してるのか」
というわけで今日は登校RTAしなくてすみ、途中でたまたま出会ったりゅーじと登校中である。
「あのさ、レアキャラ扱いやめてくれない?人を何だと思ってる?」
「ポケ○ン?」
「そうそう、ピッカァってちっがーう!」
「その割にクオリティ高ぇよ」
「ほ、褒められても嬉しくなんかねーぞ!このヤローが♪」
「嘘つけ」
そんな雑談をしながら久しぶりの平和な登校時間を満喫していたが。
パサっ
事件は生徒玄関で起きた。
「……またか」
りゅーじの靴入れから出てきたのは数枚の封筒、しかもどれも可愛らしい便箋。十中八九ラブレターで間違いない。
「リア充爆破しろ」
軽く怨念を垂れ流しながら自分の靴入れをオープン。
バサバサ
「……またか」
「いやあお前ほどリア充じゃないって」
「フザケンナ。お前の貰う可愛らしいラブレターと俺が受け取らされるちょっと怪しい手紙が一緒なわけないだろうが!」
同じラブレターでも俺は男から。しかもシンプルなやつはまだいい。中には毛が入っていたり、りゅーじと仲のいい俺に嫉妬した女子からの不幸の手紙やカミソリレターなんかも少なくない。白いジャム瓶が入ってた時なんてマジでトラウマになった。
「それでもちゃんとした手紙には断りの返事するのは律儀だよな」
「お互い様だろうがそこはまあ人としてな」
前提が間違っているとはいえ、ラブレターや告白ってのは勇気とかエネルギーとかをたくさん使う。だからその想いには真摯に応えるべきだと思うんだ。ちなみにりゅーじともう一人の友人はこの考えに賛同してくれた。
パサっ
噂をすれば、って訳じゃないけどタイミングよくもう一人のモテモテな友人登場。
「んー気持ちは嬉しいんだけど……」
めぐみんは思わず苦笑いしていた。
「おっすめぐみ。おーおーそっちもすげぇな」
「あ、りゅーじおはよー。それと……うみおっはよー!」
「俺の挨拶だけテンションがおかしい!?」
モテモテな友人が
「りゅーじばりやー!」
俺はりゅーじばりやーを展開した。
「「甘い!」」
「甘い?ふははは、我が策略に穴などない!」
で、りゅーじ、何でばりやーのお前が屈んでってうっそ!?めぐみんそれを馬跳びで飛び越えてくるの!?
「ゲットだぜー!」
「バカなぁ!?」
逃げる間もなくめぐみんにゲットされた。つか息ぴったりですね二人共。俺びっくりですチクショウ。
「うみやっぱり私と声優目指そう?今のル○ーシュの真似もすっごい似てたよ!」
「やだ!声優になるのがどれだけ大変かめぐみんから聞かされてるから知ってるし、才能ないし、俺みたいに中途半端な気持ちで目指すのは本気で目指してる人たちに失礼だ」
「じゃあ本気で目指そう?大丈夫、うみは才能あるし、きっと大変だけど楽しいから!」
「いーやーだ!俺は見る側でいいんだよ。アニメ見てこうやってりゅーじやめぐみんと面白かったなって話せればそれでいいんだよ」
「えーもったいなーい。そんなにいい声持ってるのに」
「そう、そんな容姿してるのにもったいないわ。だから私とアイドル目指しましょう!」
うげ。この声は。
「あ、彩音おっはよー。でもざんねーん。うみは私が先に目をつけたから私と一緒に声優目指すって決まってるんだ」
めぐみんが唐突に会話に加わってきた声の主から俺を隠すようにする。いや、目指さないって言ったじゃん?お願い、俺の話を聞いて。あと放して。平静装ってるけど内心かなりドキドキしてるから。なんか色々柔らかい。あっ、いい匂い……
「あら、めぐみさんももちろん一緒ですよ。三人でアイドルユニット結成しましょう。ああ、想像しただけで……」
「いやだから私は声優を目指すって、もしもーし?だめだ、完全にトリップしてる」
うーん、アイドルを目指す子がしていい顔じゃないぞあれ。あれで目指せるのはエッチな女優さんじゃね?
彼女は白鷺彩音。アイドル目指してるのにトリップ癖のある残念美少女。ことあるごとに俺とめぐみんをアイドルに誘ってくるが、アイドルなんて群雄割拠でこれまた難易度SSSクラスの職業を男の俺に目指せとか無謀にもほどがある。
「お前らいつまでやってんだよ。置いてくぞ」
「あ、まって、いまいくー」
ようやく開放された俺はめぐみんとお互い落ちた手紙を集めてりゅーじの後を追った。
「はぁ。この手の手紙や告白、量増えたなぁ」
思わずため息が出る。ちなみに初めてラブレターを貰ったのは小六、告白は中一の夏休み前日。そこから嫌がらせも含めて徐々に増えていき、今じゃ朝靴入れに手紙がない日はない。ちなみに女子からのラブレターは一度もない。というかめぐみん含めて女子に男に見られてない節がある。ちくしょう。
「モテモテだねーうみ」
「うわぁ微塵も嬉しくねぇ」
男にモテてもなぁ。
「そりゃあお前、俺たち性欲も出てお付き合いもしたくなる年頃だろ?」
「理解はするけどさ、なおさら男の俺に告白しても意味ないじゃん?それにそういうのが増える理由にはならないだろ?」
「いやー見た目美少女の詐欺キャラだからなぁお前。知ってるか?お前とめぐみ、それに彩音の三人が何て呼ばれてるか」
「え?」
「明青中学の三大女神だってよ」
「はぁぁぁ!?」
なんだそれ!?三年この学校に通ってて初耳なんですけど!?
「天真爛漫で純真な豊穣の女神のめぐみ、品行方正、それなのに天然で隙が多くてちょいエロ、なぜか嫌いになれない彩(いろどり)の女神彩音、最後に男口調が逆にイイ!キツい言葉の中に優しさが垣間見えるツンデレ、創造の女神ちゃん、ウミ」
「なんだそれ!?俺がいつデレたよ!?あとなんで俺だけちゃん付け!?」
いかん、ツッコミどころが満載過ぎてどこからツッコんだらいいのかわからん!おいりゅーじ!笑い事じゃねぇぞ!?
「ちなみに女神ってのは名前から来てるみたいだぞ」
「いやそれは別にどうでもいい。ていうか聞いてない」
「うみ、人が嫌がること結構率先してやるじゃない。で、褒められたりお礼言われたりするといつも「う、嬉しくなんかねーぞ!コノヤローが♪」とか言ってるから」
「……あれが原因か」
ただ好きなキャラの真似をしてただけなのにそんな事態を引き起こしていたとは。いや、照れ隠しは確かにあったけど。
「ちゃん付けは見たまんまだな」
「それはそれで凹む」
後輩からなぜ「海ちゃん先輩」とか呼ばれてたか分かったよ。分かりたくなかったよ。
「え?本当に知らなかったの?」
「おう、こいつ、マジで知らなかったんだよ。ぷっ、くくく」
「笑うな!ちくしょー!」
ん?待て待て。
「めぐみんは知ってたのか?」
「かなり有名な話みたいよ。ていうか下手すると他校の一部にも流れてるみたい」
「他校にまで!?」
どうなってんだこの世界!?
「いやほら、うみや彩音もそうだけど私も目立つみたいだからさ」
「俺も目立ってるの!?」
「あれだけラブレターや告白されてるし今更でしょ?」
「いやいやいや!俺何にも知らないんだけど!?」
一体俺の知らないところで何が起こってるんだ!?
「で、この学校に行きついて、噂を耳にすれば必然的に、ね」
えええええ。俺いつの間にか有名人?ていうか。
「なんでめぐみんはそんなに平然としてられるの?」
「え?私別に他人の評価なんてあまり気にしないし」
俺の友達が女子で男らしすぎる件。この年齢でそう思えるとかすごすぎるんだが。
「私はむしろ嬉しいわ。アイドル活動を始める前からこんなにファンがいてくれるんですもの」
うおっ!?あややいつの間に復活してた?しかもしれっと会話に参加してくるとかなかなかのコミュ力。ってそうじゃねぇ!りゅーじもいつまで笑っていやがる!
「なんで……こんなことに……」
「ああ、そうそう、ラブレターや告白が増えた理由だけどな」
「や、やめろ……この流れでいくとロクな答えじゃない……」
「俺たち今年で中学卒業だろ?だから別の進路に行く連中や下級生がラストのワンチャンに賭けて当たって砕けにきてるんだよ」
「ないから!そんなチャンスはないから!」
「ま、その辺の苦労は俺たちも一緒だ。お互いがんばろうぜ」
「くっそ、このせいで受験失敗したら全員恨んでやるからな!」
「お前がそういう影響受けて失敗するタマかよ」
「あのなぁ。こういう時はもうちょっと優しい言葉とかかけるもんじゃないの?」
「大丈夫。受験失敗したって声優には関係ないから」
「アイドルにも関係ないですよ。妹系おバカアイドルっていうのも悪くないですね」
「うん。絶対に失敗しない」
おかげで不退転の覚悟ができた。絶対に失敗するもんか!
——————————————————
放課後。
俺は一人で下校していた。いつもならりゅーじかめぐみんと一緒だけど、りゅーじは部活の助っ人、めぐみんは生徒会で二人ともどうしても抜けられなかったらしい。かくいう俺は帰宅部に加え、今日はジャ○プの発売日もあって二人を待たずに下校中だ。すまん二人とも。今週は気になる続きが多くて早く読みたかったんだ。
パキン
……あれ?今何か割れるような音が。空耳?でも急になんか空気が変わったような。それにこの時間に車や人が全く通らないっておかしくない?
とか考えてたら、何かが目の前を猛スピードで横切った。
ばこぉぉぉぉぉぉん!!!
「うわぁっ!」
爆音に驚き、すぐに色んな破片が飛んできたのをとっさに腕でガードする。
幸い、殺傷能力の高いものは飛んでこなかったのでケガらしいケガはなかった。
土煙?砂煙?が徐々に晴れて、飛んできたものを確認する。そこには今朝会ったヒロインズのピンクがボロボロで倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
俺は慌てて駆け寄って彼女を抱き起す。意識はあるようだけどぎりぎり保ってるって感じだ。
「に、逃げて……」
こんな状態でも俺を逃がそうとしてくれるなんて本物のヒロインはやっぱり違う。でもこんな状態の女の子を見捨てるなんてできない。
「今すぐ病院に」
「ほう、俺の作った結界で、虫が入り込んだだけじゃなく動けるのか。貴様、ただの虫じゃないな」
イケメンヴォイスが俺の言葉を遮った。振り返ればそこにはいかにも「俺はサイキョウだぁー!」と言わんばかりの悪の高幹部的な服装をしたイケメンヤローが仁王立ちで宙に浮いていた。
「まあいい。俺にかかれば多少毛の色の違う虫も他と大して変わらん」
そういうと俺たちに向かって手をかざす。
「させない!」
そのタイミングでイケメンヤローの横から黄色のヒロインがラ○ダーキックで飛んでくる。
「ふん。遅い」
イケメンヤローは黄色の少女のキックをよけつつ足を掴み、回転しながら勢いをつけて飛んできた方向へ投げ返す。
「きゃあああ!!!」
凄まじい勢いで飛んで行った黄色の少女は建物の谷間に消え、そこから土煙だか砂煙が上がる。
「まだよ!」
「くらいなさい!」
イケメンヤローを挟む形で青色と緑色のヒロインが叫ぶ。青色の少女は弓矢を、緑色の少女は小さなつむじ風を発生させて挟み撃ちにする。
「同士討ちするがいい」
イケメンヤローは高度を上げるだけで同士討ちになる。はずだった。
「私がみどりを」
「せいちゃんを」
「「ケガさせるような攻撃するわけないでしょ!!」」
イケメンヤローの真下で矢と小さなつむじ風は衝突する。が、風が矢の方向を変え、速度を増し、風を纏う矢となってイケメンヤローへと飛んでいく。
「ふん。多少はマシな攻撃ができるようだな。だが」
イケメンヤローはなんでもないことのように矢を掴んで見せた。
「そんな……」
「私たちの攻撃が、効かない……」
二人に明らかな落胆の表情が浮かぶ。
「ふははは、四天王にまで上り詰めたこの俺がどれだけ幾多のヒーローやヒロインを葬ってきたと思っている?貴様らとは格が違う。ほら、返すぞ」
イケメンヤローは掴んでいた矢を青色に向かって投げつける。
「い゛っ!?」
ただ無造作に投げた矢は二人が仕掛けた攻撃の比じゃない速度で青色の少女を貫き、地面に縫い付ける。その後、青色の少女はぐったりとして動かなくなった。
「せいちゃん!」
緑色の少女が慌てて青色の少女に駆け寄ろうとして
「ふははは、油断大敵だ」
遮るように現れたイケメンヤローに回し蹴りを食らって吹き飛ばされた。
「さて、これでお前を守るヒロインはいなくなった。これから己の不運を嘆きながら死ぬがいい」
イケメンヤローがわざとらしくゆっくりと俺に向かって歩いてくる。
「……なぁ、お前さ、女の子は大事に扱えって習わなかったか?」
「なんだ?命乞いか?自分は女だから大事に扱って見逃せと?笑わせてくれる。そんな言葉で俺がお前を見逃すと?」
「違ぇよ。俺は男だ。だからこれは今お前が暴力を振るった子たちに、だ」
「お前が男?気でも狂ったか?」
「質問に答えろよ?」
「はっ。いいだろう、冥土の土産に聞かせてやる。答えはNoだ。貴様は害虫のオスやメスをいちいち気にするのか?」
ぶち。
「なるほど分かった。幸いテメェの張った結界のおかげで目撃者もいないようだし」
「何を言っている?」
俺はポケットからスマホを取り出してアプリを起動、そこにある装備スロット1を選択してタップ。
「アプリキドウシマシタ。スロット1ノソウビヲロードシマス」
某ボーカロイドの声がスマホから流れると、俺は黒い霧のようなものに包まれる。
「む、貴様、何をする気だ?」
イケメンヤローは訝しみながらも、攻撃はしてこないらしい。変身中の攻撃をしないルールを守るとは律儀なことだ。
「ロードカンリョウシマシタ」
声と共に黒い霧は晴れ、俺の格好は変わっていた。黒い色は変わらないが、髪は伸びてセミロングに、服は白と黒を基調として紫のポイント、そして……
ミニスカートに黒タイツ。
所々にリボンがあしらわれ、少しのフリルが下品過ぎない可愛さを演出する。その姿は何度でも繰り返す時を操る魔法少女のコスチュームに似ている。
俺がさらにスマホをタップすると、何もない空中に突如可愛らしい魔法のステッキが現れる。
俺はスマホをポケットにしまいながらそのステッキを掴み、イケメンヤローに突き付けた。
「さぁ、道徳の時間だぜ」