勝手に人をヒロインにすんな!   作:茜 空

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どうも、なかなか納得のいく内容に出来なくて更新滞ってます作者です。
今回ちょい短めで。
今世間が色々自粛モードで雰囲気も暗いですが、自分の作品を見て少しでも暇つぶしと楽しい時間を過ごしてもらえたら幸いです。
え?だったらもっと書く力つけて更新頻度上げていい作品作れって?それは他の作者さんと作品に期待してください(丸投げ)


第5話:波乱の新生活 学校編

「君かわうぃーね。海ちゃんだっけ?」

「今朝はほんっとーにごめん!てか同じ学校の同じクラスだったんだな。あのことは、その、ちゃんと記憶から、消す努力は、してるから、うん」

「顔ちっさ!足ほっそ!いいなぁ」

「髪もサラッサラだよ!どんなシャンプー使ってんの?」

「ちょ!?この子すっぴんでこれ!?う、羨ましい……」

「もしかしてモデルとかやってたり?」

「この後どっか遊びに行かない?友好を深めるためにさ」

「ねぇねぇ、フェアリアルエレメンツってどー思うー?」

「ああ、何という運命の巡り合わせ。こうして君とまた再会できるとは」

「あ、よかったら飴ちゃん食べる?」

「あーもーうるさーい!俺の事は放っておいてくれ!それと俺は男だ!」

「「「嘘つけ!!!」」」

 

 またこのパターンかよ。しかも多分だけどクラスのほぼ全員から突っ込まれたぞ。いや、そりゃまあこんな顔と制服(かっこう)じゃ説得力ないって自覚はあるけどさぁ……

 現在俺は美男美女に囲まれて質問責めにあっている。やめて、ただでさえ登校中のあれこれで頭パンク寸前なのに、コミュ障の俺にこの状況を楽しんだり対処したりできる戦闘(コミュ)力はないんだよ。初対面はただでさえ顔見知りで緊張するのに相手はそこそこの戦闘(コミュ)力とイケメンor美女美少女。これなんて楽園(ぢごく)

 俺は頭を抱えて机に突っ伏した。まだ1日の半分も終わってないのに俺のsan値を削るイベントが多すぎる件。

 

 誰か助けてください!

 

 あのあと。りゅーじとめぐみんが去って我に返った時にはちょっとしたギャラリーができていて、コミケの人気レイヤー状態と化していた。そこで俺は影分身と影移動というヒロインズから逃げた時と同じ手段(コンボ)で戦略的撤退。「ハーレムの術」っていう超気になるワードが聞こえた気がしたけど追求してる時間はなかった。

 そんでもってなんとか変身を解いてやっとの思いで学校に到着、教室を確認してみればりゅーじやめぐみん、あややとは別クラス。っていうか他の同中出身者含めて俺一人だけが孤立した悪意や陰謀を感じるクラス編成になっていてちょっと泣きそうになった。

 とりあえず絶望する時間も惜しんで教室まで急いで何とか時間に間に合ったんだけど、高校初日からギリギリに教室に入った俺は注目の的。しかも「かわいい」とか「めんこい」とか大変不本意な評価が聞こえてくる。いや、この辺はまだいい。許そう。問題は息を整えている俺を見て「エロい」だの「18禁」だの言ってるやつら。中には遠慮なしに俺をガン見する勇者(へんたい)もいた。お前らが欲情してる人物は男だからな?あとで正体知ったときに後悔してトラウマになればーかばーか!

 

 そんな心身ともに疲弊しまくりの俺にさらに追い打ちがかかる。

 

 入学式、俺は男子の列に何故か混じった女子状態で視線感じまくりの悪目立ちしまくり。しかもクラスメイトには先生が事情を説明してくれたにもかかわらずやっぱり信じてもらえない(なんとなくそんな気はしてた)。数人がずっとキョロキョロして落ち着きがなかったけどドッキリでもモニ○リングでもないから!

 

 そんな針のむしろ状態で式を終えて教室に戻って、ようやく一息つけると思ってたら一瞬で囲まれた。←イマココ

 おちおち落ち込んでる暇もないときた。

 確かに多少、ほんのちょっと、微かに、ビミョーに目立った自覚はあるけど、それでもこのクラスの顔面偏差値は異常と思えるくらい高い。だから別に俺に構う必要はないと思うんだよ。ただでさえ色々ありすぎて頭ん中整理したいし、知り合いのいない心細い絶望を乗り越えないといけない。何よりこの後に控えているりゅーじとめぐみんとの邂逅に備えて対策を練らないと、行き当たりばったりでいけばボロが出て詰む未来しか見えない。

 

「はい、皆さん席につい……」

 

 そこにようやく先生が到着。やっとこの状況から解放されると安堵のため息をしかけたところで。

 

 あれ?

 

 先生が言葉を最後まで言わなかった事に違和感を感じた。

 視線を向ければ先生の頭に何か乗っている。何だあれ?もしかして黒板消しトラップ?いや、リアルにこれやるやついるー?って思ってたからすごく新鮮な気分……

 

「ふふふふ……チュウッチュッチュ……チュァーッハッハッハッ!!」

 

 ぉぉぅ、先生が壊れた。黒板消しの粉がちょっと気持ちよくなったり幻覚の見えたりする粉だったんだろうか?

 

「待チュウに待った時がきた」

 

 急に顔を手で隠し、語り始めた先生。うわぁ、完全にキマってる。やっぱヤベェ粉だったか?

 

「多くの仲間たチュウの死が無駄でなかったことの証のために」

 

 仲間たち?死?何の話?

 

「裏ディ(自主規制)ニー再興のために!」

 

 おいやめろ!それはマジでシャレにならん!

 

「復チュウ成就のために!」

 

 復チュウ?あ、復讐か?ナニソレちょっとかわいい。って何で俺を睨むんですか先生?ちょ、目が血走って超怖いんですけど!?

 

「アマチュウミ!私は帰ってきた!!」

 

 最後の台詞とともに先生が人間離れしたスピードと跳躍でこっちに向かって跳んできた。

 え?アマチュウミって俺!?いや、こっちは身に覚えないんだけど!?

 

「みんな逃げて!」

 

 俺は開口一番そう叫ぶと、ちゃぶ台返しの要領で机を先生に向かって放り投げる。もちろんそんなので大したダメージは期待していない。だが目くらましにはなるはず。俺は机をひっくり返すと同時に横転しながら受け身を取りつつ前方へと転がる。この場合、左右や後ろに逃げるより相手の死角になるから次の一手が打ちやすいのだ。(注意、個人の感想です)

 俺はすぐさま起き上がり、逃げようと

 

 がし。

 

「チュウかまえたぞ」

 

 して捕まった。

 

 あるぇぇぇぇぇぇ!?

 

「あのー、俺、先生に何か恨みを買うようなことしましたっけ?」

 

 先生に猫のように首根っこを掴まれぶらんぶらんしながら俺は必死で記憶を探る。

 そもそもあの黒板消しトラップは俺じゃないし、仮にも先生なんて職業の人がまさかあれだけでここまでブチ切れるほど短気でもないだろ。それ以前は入学式の前に俺の事情説明してくれた時が初対面……のはずだ。まさか本当にヤベェ粉?

 

「この俺を忘れたとは言わせんぞ!」

 

 俺が首をひねっていると、先生はそのまま俺に顔を突きつける。

 んー申し訳ないけどやっぱり覚えがない。ん?頭の上の黒板消し、あんな動きをしたのに落ちてない?いや、黒板消しじゃない。ネズミだ。先生の頭にネズミがへばりついている。

 

「貴様のせいで計画は失敗、そして俺はエレメンチュウに敗北というくチュウ辱を味わったのだ!貴様が、貴様がチュウげ口さえしなければ計画が成功して敗北することはなかった!」

 

 チュウげ口?ああ、告げ口?それで計画は失敗?で、エレメンチュウに敗北。で、敵はネズミ……

 

「あー!」

「やっと思い出したようだな!」

 

 思い出せた!半年くらい前にネズミの怪人に追いかけられてフェアリアルエレメンツに助けてもらったっけ!え?あの時のネズミ?

 俺は先生の頭の上にひっついているネズミを思わず2度見。

 

「……縮んだ?だめだぞ、普チュウに洗濯しちゃあ」

「俺を縮む洗濯物と一緒にするなぁぁぁ!」

 

 まあそれは冗談として、そりゃあ気づくわけない。あれから結構な時間が経ってるし、そもそもサイズが以前と違いすぎる。むしろちゃんと正解にたどり着いた事を褒めてくれてもいいレベルだろ。一瞬取り巻きの生き残りの方かと思ったし。しかしなるほど、だから裏ディ(以下自粛)を名乗ってるわけか。

 

「あいつ生きていたのか!?」

「生命力ありすぎやろ」

「後手に回りましたね……」

「え?なになに?みんな何に気づいたの?」

 

 俺と怪人が軽い漫才トークを展開してると、他にクラスメイトから4人の声が上がった。どうもあのネズミの怪人と面識があるっぽい。……約1名怪しいのがいるけど。あの子だけ空気が違わない?

 

「妙な動きをするなよエレメンチュウ。俺がその気になればこいチュウの首なんぞすぐに飛ぶからな?」

 

 怖っ!そうならないように俺はいつでも変身できるようにスマホを隠し持つ。もちろんこいつは最終手段。死ぬのは嫌だけど、だからって言って正体明かすのもさっきの状況を考えれば絶対面倒なことになる。

 とりあえず魔法少女はマミるゲフんゲフん……首が飛ぶ可能性が残るから今のスロットのセットならテレポート能力のあるあの制服かな。

 

 ……ん?エレメンチュウ?

 

「くっ」

「こちらの正体はお見通しってわけやな」

「まずいわね」

「え?え?」

 

 ん?んん?あの喋り方、あの髪型、色、それに雰囲気……まさか?ほ、ほほほ本物のフェアリアルエレメンツぅ!?

 

 同い年だったの!?てかクラスメイトぉ!?なんていう奇跡、なんていう巡り合わせ。正直言って嬉しい。嬉しいんだが俺、大絶賛メンバー勧誘されてる真っ最中。嬉しいけど心の底から歓迎できねぇ。めちゃくちゃ複雑な心境だ。つかますます変身できない!

 

「えぇ!?あの時のネズミの怪人!?」

 

 ズコーッ!

 

 ピンクちゃん、状況が一歩遅い!人のこと言えた義理じゃないけど場の空気壊れる壊れる。

 

「海ちゃんを離せこのドブネズミ!」

「妙な菌が移るだろこの(ピー)野郎!」

「死ねぇ!」

「エンガチョ」

「誰か殺鼠剤持ってないか?」

 

 クラスメイトもある程度状況把握できたらしい。で、ピンクちゃんの空気ブレイカーによって溜まったヘイトがすごい勢いで向けられて罵詈雑言の嵐。言いたい放題だな。俺、現在進行形で人質なんだけど草生える。エンガチョて。いや待って。それ、大絶賛接触中の俺もエンガチョ!?ヤダー!

 

「ウルセェェェェェ!言いたい放題言いやがってクソガキ共!そんなにこいチュウを殺されたいか!」

 

 まあ当然ネズミ激おこですよ。口調もさっきより汚くなったし。むしろこっちが素だな。でもできればあまり煽らないで欲しい。最終手段の出番がきちゃう。

 とりあえずネズミの恫喝で一旦教室も静かになり、ピリッとした空気が戻ってくる。

 

「最初からそうやって大人しくしてろガキども!テメェらもタダじゃすまさねぇからな?」

 

 場は緊張感のある状態に戻ってもネズミの怒りは収まってない模様。怪人ってどうしてこう短気で煽り耐性が低いんだろうね。カルシウムが足りてないんじゃない?もしくは丈夫な骨格に全部持ってかれてるとか?そう考えると怪人に脳筋タイプが多いのも納得できる。

 

 しかしこれだけ騒いでも人が来ないっていうのはどういうことだ?

 

「チューッチュッチュウ。助けならこねぇぜ?この教しチュウはあの時チュウかう筈だった結界を張ったからなぁ?」

 

 俺が不思議に思った事を何故か読み取って親切に教えてくれるネズミ怪人。優しいね。あの時っていうのは俺が見てチクったアレのことか?そうか、アレは結界を張る装置か何かだったのか。

 

「あ、あれ?力が……」

「入らない……」

「くっ」

「なんやの、これ」

 

 そんなこと考えてたらエレメンツが不調を訴えだす。

 

「ようやく効果が出てきたようだな。冥土の土産に教えてやろう。この結界は周囲には侵入不可と認識阻害、そして中にいる人間は弱体化させる能力があるのだ!」

 

 気がつけばクラスメイトも彼女たちと同じようにみんな辛そうだったり膝をついたりしていた。俺?まあそれなりに辛いは辛いけど冥土の土産にテンプレ感を感じる程度には平気だったり。個人差があるのか?

 しかしなるほど、この結界を使っていればエレメンツに勝てたって言ってた理由はわかった。

 

 あれ?これかーなーりーヤバい?

 

 いよいよ最終手段の出番が現実味を帯びてきた?しかもこの結界の中でどれくらい能力が発揮できるのか未知数。持ってるコスの組み合わせ次第じゃ何とかできるかもしれないけど、こんな猫の子状態で新しいセットを考えてスロットを作るのは無理だ。

 

「さあ、楽しい楽しいショーの始まりだぁ!」

 

 ちょっとぉ!?高校生活入学初日から難易度高すぎなんですけどぉ!?

 

 

 




補足。
怪人が海の名前を知ってたりエレメンツの正体を知ってるのは、敗北してから配下や使い魔を使ってちゃんと情報収集してたから。なので今回の襲撃も計画的です。実は海の変身能力もバレてます。

ヒロインテンプレカウンター
・クラスメイト(イケメン、美女美少女)に囲まれる
・ぼーっと立っていればコミケの人気レイヤーばりのギャラリーと人垣ができる
・教室に入って話題を掻っ攫う。しかもかわいい扱い
・入学式で注目を浴びる
・怪人に捕まる。そして人質

今回も安定のヒロイン力。

怪人図鑑その2
怪人チュッパカブラット
通称ネズミ怪人。実は吸血ネズミでブルーチーズと美少女の体液、主に血が大好物の変態。ヒロインズを狙っていたのも例の結界で弱らせてあんなところやこんなところからいっぱいチューチューするためだった。このエロネズミめ!
裏ディ(自主規制)という組織のトップ。結局以前は海の告げ口によってヒロインズに敗北するも、力のほとんどを使って何とか逃げ延びた。今回ちっちゃくなっているのはそのため。
今日まで時間をかけて力を取り戻し、配下を増やして復讐の機会を伺っていた。
余談だが血を吸った分強くなる。セ○の生体エキス吸収と同じような能力。
他にはネズミなら問わず自分の配下にして、強化、使役できる能力と、弱い生き物もしくは弱った生き物なら脳に近い場所から脳をリンクさせ、乗っ取る能力がある。そのおかげで情報収集能力が高い。

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