光の巨人と終わりの巫女   作:無名篠(ナナシノ)

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原作キャラ早く出したくて初心に帰ったので実質初投稿です。



3. 深淵より這い寄るもの

 【黒点(アレ)】と遭遇したあの日からとても長い時が経った。

 

 あれからというもの、俺は特に何かをすることもなくウロウロとこの星のあちこちを彷徨っていた。もちろん、【黒点(あそこ)】を除いてだ。

 

 初めは探検、あるいは冒険のつもりでしていたのだが、どこに行っても海、海、海。代わり映えのしない日々に早くも参っていた。

 

 いくら肉体がウルトラマンで長い時を生きていられるとはいえ、精神が一般人では気が狂いそうになってくる。まぁ【黒点(アレ)】のストレスも相まってそうなるのも時間の問題か。

 

 というのもあの【黒点】、どうやら俺に向かって移動しているのか、初めて目撃した時に感じた不気味な気配が自分から近づいていないのに何度もするのだ。全身の毛が逆立つような、心臓がキュっと竦むような感覚が。

 

 しかし動きはとても遅いのか早くて数日、遅くても数週間の頻度なので近くに来たことを感じ取ってはその場を離れるということを繰り返している。

 

 今日もまた、近づいて来た【黒点】の気配から離れるために空を飛んでいた。

 

 

(いい加減向き合うべき、なんだろうなぁ……)

 

 

 星を挟んで【黒点】と反対になるように距離を取って海に降り立ち、少し曇った空を見上げて思う。

 

 もう長い間【黒点(アレ)】から逃げて回っていたから分かってはいた。【黒点(アレ)】を初めて見たとき、この肉体から感じていた使命感は決して勘違いなんかじゃないと。

 

 このウルトラマンの肉体にとって、

 ティガにとって関係のある存在(・・・・・・・・・・・・・・)が潜んでいるのではないかということを。

 

 

 

 

 

 ──でも、だからどうしろっていうんだ。

 

 立ち向かう勇気なんてない。存在しているのは俺と【黒点(アレ)】だけだ。守るべき人々や町は存在しない。だから、命を張る必要なんてない。なら、近づく道理なんてないだろう?

 

 なんとも情けない話であることか。でも、それが前世から続いてしまっている俺という人間性だ。いまさら切り離せやしない。

 

 それに、今のところ【黒点(アレ)】は本当にゆっくりと近づいてくるだけで害があるわけじゃないし。今すぐどうこうしなくても……って──

 

 

 

「──はぁ……ほんと、何度同じこと考えてるんだ俺。暇だからって……はぁ。だめだ、ため息しか出ない」

 

 

 

 思わず頭を抱えてしまう。もはや数えるのもバカらしい。

結論はすでに出ているというのに、拭いきれない不安からずるずると引きずって囚われてしまっている。

 

 そして、それをどうにかしなければと考えるほど深みにハマっていっている。

 

 

 これはなにか……「きっかけ(・・・・)」が必要だ。そう、「きっかけ(・・・・)」さえあれば、この気持ちにも整理がつけられるかもしれないのに──

 

 

 

「──!! え…これ……なんで…!?」

 

 

 

 そしてその「きっかけ」は、もうすぐ側まで近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──時を少々遡り、【黒点】にて。

 

 

 

 光と出逢ってしまったあの日から、それ(・・)(ティガ)に逢いたい一心で、気配を頼りに星のあちこちを彷徨っていた。

 

 

 だが、求める(ティガ)は、あと少しでという距離まで近づくとすぐに離れてしまう。

 

 

 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!!!

 

 

 そして、一体どれだけの時が過ぎたのか。

 

 自身の肉体が巨体のためか、はたまた力の制御が上手くいっていないのか。

 

 ───もしくはいまだに自身が未完成だからなのか(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 結局、これまで(ティガ)出逢う(追いつく)ことは叶わなかった。

 

 

 何故、光は離れるのか?

 

 何故、光は逢ってくれないのか?

 

 何故、光は己を照らしてくれないのか?

 

 

 

 

 光の存在だから? なるほど、たしかに対極に位置する存在ではある。

 

 だが、だからこそ。

 

 その対極に位置する、互いに反発する筈の(もの)(じぶん)が惹かれているのに(ティガ)もそうではないのはおかしい。なら何故?

 

 

 

 わからない。わからない。わからない。いくら自問自答すれど答えは出ない。それは自らがその答えを持ちえないからだ。

 

 故に(ティガ)を強く欲するのだ。この湧き上がる感情(もの)理由(わけ)を知るために。

 

 

 

 そのためにもまずは出逢う方法を考えなくてはいけない。それ(・・)は一度追いかける足を止めて考える。

 

 それ(・・)が単身追いつくことは現状不可能だ。それは長年続けていた追いかけっこの経験から確信できる。

 

 ならばどうするか。

 

 自分で追いつくのが無理ならば、誰かに連れてきて貰えばいい。

 

 名案を思いついたとばかりにそれ(・・)はすぐさま行動に移す。

まず、自身の領域である【黒点】から闇を目の前に集めた。闇は重なり合って凝縮し、さらに重なり大きくなって、それ(・・)が望む形に変化していく。

 

 今の自分より遥かに早く動ける形に。

 

 この海に適した形に。

 

 こうして、それ(・・)の手足となる存在。最初の【眷属】が誕生した。

 

 【眷属】は海に着水すると体の調子を確かめるようにそれ(・・)の周りを泳ぎ始める。設定通り自分の歩行スピードよりも遥かに速い。誕生した己の【眷属】の出来を見てそれ(・・)はとても満足げだ。だがこれだけで満足してはいけない。手段を生み出しただけでまだ目的を果たしていないのだ。

 

 動作確認を終えた【眷属】は造物主の前で静かに与えられる言葉を待つ。

 それ(・・)が告げる命令はただ一つ。

 

 

 

 

 

 

 ───光に逢いたい(ティガを連れてこい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 

「───なんで、なんで【黒点(アレ)】の気配が、こんなスピードで近づいてくるんだっ!?」

 

 

 

 なんで!? どうして!? Why!?

 どどどどどうする俺! あんなものと鉢合わせたところで勝てるヴィジョンなんて浮かばんぞッ!? いや、そもそも戦うことが論外だ!

 

 とにかく、早く離れ───ッ!!?

 

 

 

 ───そう思った時には手遅れで、背後から飛んでくる【黒点(ヤツ)】の気配から俺はとっさに地に伏せることで事なきを得る。

 

 空振りに終わり俺の背を飛び越えて目の前の海に着水した襲撃者を見れば、それはとても奇怪で、おぞましくて、名状し難くも特徴的な見た目をしていた。

 

 肉体の形状はサメか、イルカか、シャチか。それに似通った姿。

 10はあろう目は顔から体にかけて規則正しく横一列に並んでいて、口は二つも重なって存在してる。

 

 だが【黒点(ヤツ)】じゃない。その気配はプンプンするが……違う。

 そして、目の前にこいつが来て気付く。俺の遥か後方に比較にならないほど強大な気配───【黒点(ヤツ)】の存在に。

 

 

 俺は勢いよく起き上がり、目の前の……なんて呼ぶべきか。【サカナモドキ】でいいな。サカナモドキに向けて構えをとる。そう、あのティガの戦いの構えを。

 それを見たサカナモドキは海へ深く潜り離れていく。

 

 逃げた……訳ではないだろう。気配はまだある。

 案の定、ヤツは大きく口を開けて飛びかかってきた。

 

 

「ッ!」

 

 

 体を逸らして避ければ、またヤツは海深くに潜り次の攻撃の準備をする。時間はかけられない。モタモタしていたら【黒点(アレ)】がここに着いてしまうから、早々に決着をつけなくてはいけないだろう。

 

 

 

 ───ぶっちゃけるとめっちゃ逃げたい。というか逃げようと思えば、まぁ今この場から逃げ出すことはできるだろう。

 

 じゃあなんでそれをしないのかといえば、この状況は俺が望んでいた「きっかけ」だからだ。

 

 今逃げればこれまでの逃亡生活に逆戻り。それどころか【黒点】だけじゃなく今度はサカナモドキからも逃げなくてはいけない。

 

 【黒点(アレ)】はともかく、サカナモドキは今までの動きとその姿から泳ぎに特化しているように思える。故に、たとえ【黒点(アレ)】から逃げ切れても休む間もなく追ってくるサカナモドキの相手をしなくてはいけなくなってしまう。

 

 

 だからこそ求めた、覚悟を固めるための「きっかけ」。

 

 逃げに徹する弱い心を捨て去り、戦う意思を俺自身に示し、現時点で俺の命を脅かすサカナモドキ(こいつ)を、そしてその元凶である【黒点(ヤツ)】を倒す覚悟を───!!

 

 

 俺は顔の位置に交差した腕を上げて構える。そこに隙と見たのかまたヤツは飛びかかってきた。

 

 だが正面からだったため難なく避け、すぐに構えた腕を振り下ろしてパワータイプへと変化する。

 

 

「ヌゥゥン……! ハァ!!」

 

 

 そしてヤツが海に着水する前に尾びれの根本を両手で掴み、背負い投げのように海に叩きつけた。

 

 

「%¥#*°〆!?」

 

 

 予想外の反撃をだったのか聞くに耐えない金切り声を上げるサカナモドキ。それを無視して大振りに振り回して何度も海に叩きつける。

 

 

「これでどう───ッ!?」

 

 

 だがヤツも黙ってやられている筈もなく、振り上げたタイミングで体をグンッ! と曲げて噛みつこうとしてきた。

 

 とっさに掴んでいた手を離して胸前で交差させ防御の体制を取るが、ぶつかってきた勢いに押されて足を滑らせ海に落ちてしまった。

 

 

「ぐっ!? こんや───ろおぉぉぉぉ!?」

 

 

 体制を立て直そうとする間も無く、そのまま腕に噛みつかれ猛スピードで海を泳ぎ回るサカナモドキ。

 

 何とか抜け出そうにもガッチリと噛みついていて外せず、ならば殴って離させようにも水の抵抗力とサカナモドキのデタラメな泳ぎのせいで思ったように力を込めて殴ることも出来ない。

 

 それでもと些細な抵抗を続けていると、煩わしく思ったのか、今度は俺が海底へ叩きつけられた。

 

 

「ウグッ!?」

 

 

 そしてそのままサカナモドキは先程までのメチャクチャな軌道ではなく、まるで俺を何処かに連れて行くようにまっすぐ引きずりながら泳ぎ出した───って!!?

 

 

「ちょ……おま、まてまてまてまてッ!!」

 

 

 ───こいつ、【黒点】に向かってるじゃねーか!!?

 

 まずいまずいまずいまずい!! 今【黒点(ヤツ)】とサカナモドキ(こいつ)を同時に相手にできる余裕はねぇ!! なんとかここで止めねぇと!!

 

 だが海底の岩を掴んで止めようとしてもサカナモドキのパワーに逆に岩が耐え切れず砕けてしまって止められない。くそっ、どうすれば………そうだ!! デラシウム光流をぶつけて吹き飛ばせば……!!

 

 

「こん……のぉ……! 止まりぃ……やがれぇぇぇぇ!!!」

「@#&//?/@/!!!?」

 

 

 ボォォンッ!! とサカナモドキの体にデラシウム光流をぶつけ爆発が起こる。爆発の反動でサカナモドキはもちろん、俺も吹き飛ばされ拘束から脱出することに成功した。海中なのでゆったりとした動きで体制を整え、反対方向に吹き飛ばされたサカナモドキを見ると思いのほかデラシウム光流が効いたのかビクンッ! ビクンッ! と体を痙攣させて倒れていた。うわぁ、痛そう……いや、やった本人が何言ってるんだって話だな。うん。

 

 と、ともかく! 倒すなら動けない今しかないッ!!

 

 とどめを刺すため、俺はデラシウム光流を放つ構えをとった。

 

 

「ハッ! ハァァァァァ……ハァッ!!」

 

 

 両の手に集めたエネルギーを胸の前で球状に固め、投げるように放つ。放たれたデラシウム光流は真っ直ぐ飛び、痙攣して動けないサカナモドキの体を貫いたッ!

 

 貫かれたサカナモドキは断末魔を上げることなく爆発し、その肉体は黒い塵となって消滅した。

 

 

「お、終わったぁ〜……」

 

 

 なんとか勝てたことで全身の気が抜けて思わず座り込む。倒せたことによる達成感よりも、終わったことによる脱力感が強い。まぁ初戦闘だってこともあるたまろうけど、こんなんで【黒点】の主を続けて相手にできるのか……?

 

 【黒点】の方へ顔を向ける。黒いモヤが海の中にも広がっていて先を見通すことができない。だが、サカナモドキによってモヤと海の境界が見えるくらい近くに連れてこられたためヤツの気配がすごい。すごく重い。ていうか視線がすごい。めっちゃ見てる。いや、自惚れとかじゃなくて。ガチで。

 

 そんなヤツと今から戦わないといけないの……?

 

 

 タイトルマッチ[元気モリモリな【黒点】の主 vs 初戦闘で疲れ切った光の巨人]ウルトラファイッ!!

 

 

 ───うん、無理だな! 逃げよう!

 

 「命あっての物種」ともいうし、無理は禁物。万全の状態になってから出直そうかなッ!

 

 そうと決まればすぐにこの場を離れよう。

 

 そうして飛び上がった瞬間───

 

 

「んっ!?」

 

 

 何かに引っ張られるように先に進めなくなった。何かと思い負荷がかかっている足を見れば、【黒点】のモヤの中から無数の触手が伸びて絡み付いていた。さらに【黒点】の中に引き摺り込もうしているのかものすごい力で引っ張っている。

 

 

「逃さないつもりかッ!? それは勘弁ッ!!」

 

 

 すぐさまハンドスラッシュで触手を切り離し、大急ぎでその場を離れる。しかし逃さないよう退路を阻むように無数に伸びてくる触手。すごく……気持ち悪いです。

 

 そこからはひたすら触手との鬼ごっこ。紙一重でなんとか避けたり、捕まってもすぐに切り飛ばしたりと、それはもう無我夢中で逃げまくった。

 

 気づいた時には触手はもう追ってこなくて、【黒点】からもだいぶ離れていた。

 

 

「ハァ……ハァ……な、なんとか……逃げ出せたか……」

 

 

 もはや満身創痍だ。精神的にだけど。疲れたものは疲れた。当分動きたくない。はぁ……ぬくぬくの布団が恋しいぜ……。

 

 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

 

 触手群から逃げてる時にとても気になることがあった。

 

 【黒点】の主、その正体だ。

 

 あの時、触手を避けている最中、【黒点】の中に潜む何者かの鳴き声を───まだ本体までとの距離が離れているのか、とてもか細いものだったが───ウルトラマンの超人的な耳で拾っていた。

 

 それはなんというか、例えるのなら甲高い象のような鳴き声だった(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 そんな鳴き声で、触手を持ち、闇を統べ、この肉体(ティガ)と縁を持つヤツなんて一つしか俺は知らない。予想は当たっていたわけか……。

 

 

 

 

「───邪神、ガタノゾーア……」

 

 

 

 

 原作のティガが一度は敗北し、倒すのにも子供たちの光と共にある必要があった存在に、果たして自分一人で立ち向かい、そして倒せるのだろうか。それはわからない。だが、やらねばなるまい。あんなのは放っておくことはできない。主に俺の身の安全のためにも。サカナモドキのお陰で覚悟は出来ている。次こそは───倒す。

 

 

 しかしそんな恐ろしい怪物が、何かを悲しむような、何かを求めるような、幼子が手を伸ばすような、そんな嘆きの声をあげているような気がしてならなかったのは何故なんだろうか───

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 ───パオオオオオオォォォォオオオオン………。

 

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───ま、そんな訳ないか。

 

 

 

 




 ───余談だが、ティガが膝くらいしか浸かっていない海であるにもかかわらず沈むほど深いのは、普段彼が見えない足場を作って立っているからである。


 戦闘シーン難しすぎて把握しきれなくなったんで失踪します。


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