---ダン---
貴族一行様がお帰りになられた。翌朝起きると、カタリナ、キースのクラエス姉弟がいた。
「どうして?」
あの神は、どうして戦闘職で無い二人を連れて来たのか?
「私もいるわよ~」
あぁ、チートな元勇者のミトもいた。何気に存在感が薄いのは気のせいか?
「食材のタネを持って来たの。育てるのに農業の専門家がいるでしょ?キースは姉離れ出来ていないそうだから、連れてきたよ」
なるほど…畑は必要である。水田は手間が掛かるが、畑は水田に比べれば楽と言えば、楽である。
俺達のソウルフードの素である味噌、醤油は必要である。カタリナは大豆と小豆と小麦のタネを持って来てくれたそうだ。あれ?小豆って…餡子狙いか?そうなると和三盆辺りも欲しいところだ。
「じゃ、街に行って、農地付きの家を建てましょう」
とカタリナは乗る気である。が、先立つ物は無い。
「あぁ、イチロー兄ぃからの伝言だけど、商業ギルドで『エチゴヤ』を<楓の木>傘下で登録しておいてって」
ミトの言うイチロー兄ぃとは、チート商人のサトゥーのことである。
「じゃ、まず、冒険者ギルドでメイプル、ミトを登録だな」
【土ボコ】しか魔法が無いカタリナは冒険者にはしない。危険だし。一応、お嬢様だしねぇ。街の傍まで皆で転移し、街へ…銀貨4枚を払って、街の門を潜った。まずは冒険者ギルド…俺達が建物に入ると、ヤローの冒険者達がカタリナへ引き寄せられる。そんな男共を【子羊の行進】で大人しく寝かしつけ、受付へと進んだ。受付では受付嬢のヘレンがおり、でギルドの入会申請と、クランの設立申請をしていく。
「クランですか?パーティーでなくて?」
「クランだよ。冒険者以外にも商業部門、農業部門があるからな」
国政部門、PK部門も有るけど…それは内緒だ。
「メンバーの大半は冒険者なんだ。後、クランホームに出来る家って、買えるかな?農地があるといいんだけど…」
「土地関係は商業ギルドでお願いします。冒険者ギルドでは、ポーション販売と素材の買い取り程度しか商売してません」
あぁ、素材を売れば、先立つ物が出来るかな。
「これいくらで買い取ってくれる?」
この前仕留めたドラゴンのウロコを1枚差し出した。
「こ、こ、これって…ちょっとお待ちください。ギルドマスターに確認してきます」
ヘレンが奥へ引っ込んだ。しばらく待つと先日のガタイの良い男がヘレンと共に出てきた。コイツがギルドマスターか?脳筋な筋肉信者に見えなくもない。
「ギルドマスターのラーロックだ。で、コイツはどうしたんだ?」
「この前数匹仕留めたけど…」
盗んだと思っているのか?
「全量買い取りしてくれるのか?ウロコだけでなく、牙も皮も魔石もあるんだが…」
肉は無い。自家消費が決定済みである。
「そうか…本音を言えば、総て欲しいが…冒険者ギルドでは予算的に買い取れぬ…うぬぅぅぅ。悔しいが、商業ギルドで売ってくれ」
手渡したウロコを返してくれた。
「その代わりに、他の物を売ってくれ」
「後はゴブリンの魔石とか、オークの魔石だな」
この世界では、討伐証明は魔石で行うようだ。
「オークの肉とか皮は無いのか?」
肉は食用だし、皮はデミウルゴスが羊皮紙の原料に使うとかで、総てプレゼントしてしまった。なので、
「無い。自家消費だ。あぁ、ビックボアの牙ならあるぞ」
毛皮はフロアシートにしてしまったし。
「それを売ってくれ」
収納庫から、牙を2本取り出して、冒険者ギルドに売り払った。
◇
商業ギルドの建物に入り、受付嬢にギルドカードを提出して、
「商業ギルドに登録したいんだけど…屋号は『エチゴヤ』で。後、クランホームとして使える農地付きに家が欲しい」
受付嬢に要望を伝えた。
「あぁ…噂の『触るな危険』のダンさんですね」
受付嬢の顔が引きつって見える。なんだ?その二つ名は…どう考えてもメイプルの二つ名だろうに!
「家ですか…家付き、農地付きだと…金貨100枚くらいですが、出せますか?」
出せません。なので、
「これって何枚売れば、買えますか?」
受付嬢にドラゴンのウロコを1枚手渡した。
「え…これって…本物…うっ、うぅぅぅ…何枚くらいお持ちなんですか?」
「総てだと5000枚はあるんじゃ無いかな」
1匹から1000枚近く取れたし。
「5000枚も…では、場所は問わなければ、これから下見に行きましょう」
「で、何枚買い取ってくれるの?あと、下見の前に、登録をして欲しい」
「あぁ、そうですね。1枚で金貨100枚ですので、これ1枚で家と土地を交換です。当ギルドへの入会申請費諸々の経費分は、今回サービスさせて頂きます。今後も取引をお願いします」
そこまで言うと、受付嬢が頭を下げて来た。
ドラゴンのウロコ…ハンパ無く高いようだ。手続きを済ませ、下見に向かった。壁近くの土地だけど、人気が無いのか、かなり広い。
「カタリナ、どうかな?」
土担当に訊いてみた。
「中々広くていいわね。屋敷は古そうだけど、手直しすれば良いよね」
いざとなれば、移動式ギルドホームへと、家の中から転移すれば問題は無い。
「ここでいいわよ」
カタリナお嬢様の許可が出たので、買うことにした。案内してくれた受付嬢から権利書を受け取り、俺達はクランホームとなる家の中に入った。家は貴族が住むような屋敷である。室内はミトに任せ、俺とカタリナ、キースは農地になる庭へと向かった。
庭で、グラトニーを召喚して、土を喰わせて土地を掘り返していく。暴飲・暴食スキル持ちのグラトニーは何でも食べて、有機物を食べると培養土を排泄し、汚水の飲めば真水を排泄し、無機物を食べると結晶もしくはインゴットを排泄してくれる。とても便利なリサイクル生物である。尚
且つ、人化も出来、執事姿にもなれる万能使い魔だったりする。
「ここの土はどうだ?」
「主様、毒素も栄養も無い普通の土です」
今までにグラトニーが排泄した培養土を、収納庫から取り出し、土に混ぜ込んでいく。その土で、カタリナとキースは畝を作り、タネをまいていく。
「グラトニー、森の落ち葉とか腐った木でも、培養土になるのか?」
「はい、主様」
じゃ、狩りの他に、今後は森で落ち葉拾いもしていこう。
お菓子作りへの道は遠い…