---ダン---
翌朝…誰かにユサユサと揺り動かされ、起床っ!って、メイプルだった。
「ねぇねぇ、ダンさん。聞いて聞いて」
ニコニコ顔のメイプル。こんな朝早くに、ご機嫌になる要素があったのか?
「どうした?」
「VITをコンプリートしたんだお」
嬉しそうにステイタスを俺に見せるメイプル。そこには『VIT MAX』と表示されていた。コイツの硬さは、最凶の盾ってことか?コイツを見ていると、『防御は最凶な攻撃』に思えてくる。今までに俺は3度死んだが、そのうちの2度はコイツにやられた訳だし。
「それでねぇ~、次は何を極めれば良いかな?」
満面な笑顔で訊いてくるメイプルと言う黒き死神。STRはいらないだろう。コイツのVITは最凶兵器だし。HP、MPはレベル依存な為、自分で振れない。魔法使いでは無いからINTもいらない。脳筋なコイツには器用さもいらないだろう。そもそも、コイツの攻撃手段にDEX頼みの物は無い。
「決まっているだろ?お前に足り無いのはAGIだ。人並みに歩く速度を上げろよ」
「あぁ~、そうだよね。うんうん、サリーやマイルみたいに、回避盾になれるかな?」
コイツに回避は必要無いだろう。コイツを傷つけられるのは、俺かシュウだけだと思う。俺の場合、ロックオンした瞬間に貫通出来るので、回避は無理であるし、シュウの透過能力だと、障壁なんかスルーで内臓攻撃が出来る訳だし。
「まぁ、頑張れよ」
「はい!がんばりましゅ…あっ、噛んだ…」
顔を真っ赤にして俯くメイプル。精神のVITは低いようだ。
◇
森の家に戻ると、お貴族様の護衛が待っていた。
「どこに行っていたんだ?」
「クリモニアに家を買ったから」
「うん?家をか?う~ん、ラインハルト様が、お前に土地を進呈したいって言うんだが…」
「どんな土地?」
買った屋敷は面白みの無い土地である。
「廃坑になった鉱山の麓で、出来れば、鉱山の管理をして欲しいんだよ。廃坑になったトンネルって、魔物の住処になり易いんだが、お前達の戦闘力なら、どうにか出来るだろ?」
それは、楽しめそうだな。態と罠を張り、オークを誘い込むのは有りだな。
「貰える物は貰うよ。どこに行けばいいんだ?」
お貴族様の護衛が地図を手渡して来た。
「公爵領のギムルの街だ。その街の北に鉱山がある」
「公爵様は、その街に?」
「あぁ、しばらく滞在している。街にある公爵邸に来て欲しい」
鉱山か…魔物の巣かぁ…魔物を狩り放題…メイプルが喜びそうだ。
「わかった。3日後に向かう」
「待っているぞ」
護衛の者が立ち去っていく。
◇
新たな拠点を見に行く前に、住処のある森を掃除しておく。メイプルにはゴブリンと盗賊、山賊の巣穴の掃除を頼み、俺とグラトニーは落ち葉拾いと、倒木や腐った木の除去をし、アリス、ミトには近隣の街の視察、カタリナ、キースには屋敷のある街の市場調査を頼んだ。
そして、3日後、移動式ギルドホームでギムルの街へと向かった。ほんの1時間ほどで到着し、鉱山に舞い降りた俺達。
「俺とアリス、あとカタリナとキースで公爵邸へ向かう。残りの者は鉱山及び周辺の調査だ。メイプルはゴブリン以外は確実に首の骨を折れよ」
首の骨を折れば、大抵の生物は死ぬ。アンデッドは死なないが、メイプルの前ではアンデッドは羽虫同然だし。
公爵邸に着くと、公爵家族とご対面となった。公爵の父のラインバッハ、妻のエリーゼ、娘のエリアリア、執事のセバス、護衛のヒューズ、ゼフ、カミル、ジルなど…
「俺の使い魔で護衛のアリス、うちのクランの農業部門のクラエス姉弟です」
連れてきた仲間を紹介する。
「冒険者クランでは無いのか?」
ラインバッハに訊かれた。
「殆どは冒険者ですが、食い物を自給自足したいので、農業部門、商業部門が傘下にあります」
「なるほど…」
「頂ける鉱山周辺を調査しましたが、周辺の森もいただけますか?」
「開墾するのかね?」
「えぇ…廃坑の管理の件は了解です。現在、掃除中です」
「仕事が早いな」
「戦闘狂がいますから…」
メイプルだけでなく、使い魔の殆どが大掃除に参加している。あの軍団に勝てる魔物はいないだろうな。
「頼もしいなぁ。うちの私兵にならないか?」
「俺達のクラン<楓の木>はどこの勢力にも付きません。クランマスターが戦闘狂な物で、売られた戦争は買いますよ」
「流石は、『触るな危険』のダン君だな、はははは」
いや、その二つ名はメイプルに差し上げてください。隣国にも知られいる二つ名って何だ?
「ところでクラエス姉弟は、貴族の出かね?」
「遠くにある祖国では、公爵家でした」
とカタリナが流暢に言葉を返した。さすが、公爵の元令嬢である。優雅さが分かる人には分かるのだろう。
「この街にも拠点を作ってくれるかい?」
「はい。鉱山一帯は任せてください」
◇
と言い切った物の…洞窟暮らしはちょっとなぁ。家を作るスキルも無い。
「へぇ~、良さげな場所じゃないか」
と、サトゥーが転移陣から現れた。
「魔王様からの差し入れだよ」
伯斗が何かをくれたようだ。サトゥーが何かを出すと、目の前に温泉旅館が現れた。
「これをくれたのか?」
「あぁ、これをくれたんだよ。ラビの村での功績のお返しだって」
ナイスプレゼントだよ。毎日温泉に入れる。どんな仕組みか知らないが、消耗品は無くなれば、自動で補充されるし。
「食材保管庫は、村長の家と繋がっている。欲しい物のリクエストリストを入れて置けば、転送してくれるそうだよ」
至れり尽くせりな拠点である。
「あぁ、お礼は新作の料理で頼むって」
そうだな。これでやっとパティシエが出来そうだよ。
<クラン楓の木>
【黒き死神】メイプル(防振り)
クランマスター。VIT値MAXでAGI振りに転向し、回避盾を目指す。転移者
【触れるな危険】ダン(オリジナル)
クランサブマスター。パティシエのはずなのに…クランの実質的司令塔。転移者
カタリナ・クラエス(はめふら)
農業部門。元クラエス公爵家の令嬢。転生者。
キース・クラエス(はめふら)
農業部門。元クラエス公爵家の養子で、シスコン。
ミト・ミツクニ(デスマ)
冒険者。シガ王国の王祖で元ミツクニ公爵家当主。転移者の元勇者。
サトゥー(デスマ)
商人。チートの総合商社と言われるチート冒険者な転移者。
<協力者>
【魔王】九内伯斗(魔王様リトライ)
魔法は使えないが、チート能力で蹂躙する転移者。
【村長】街尾 火楽(異世界のんびり農家)
万能農具を駆使して最強の戦士となった転移者。