---ダン---
翌日…昨夜の獲物を使い、調理する。見た目がウナギぽいので、蒲焼きにしようと思う。先ず、蒸す。収納・解体・分類の作業により、小骨は肉から除去されているので、鱧ののような骨切りの工程が無いのが救いである。
次に串打ちし、炭火で焼く。タレを付けながら、何度も何度も、あの色になるまで…
「これって、ウナギか?」
あの食欲を暴発させる香りによりレイが釣れた。
「昨日の獲物のブラックバイパーだよ」
人食い蛇…これを食すと俺達は共食いになるのかな?
「美味しそうな香りですね」
フィナ親子が出勤してきた。サトゥーとクマ兄さんは鳥小屋作り、ミト、ネメシスは鶏の世話をしてくれている。
珍しいのか、俺の調理風景を見ているフィナの母親のティルミナ。すっかり元気になり、顔色も良い。フィナ、シュリの面倒はアズライトがしてくれていた。
「一旦、蒸すんですか?」
「あぁ、これは蒲焼きっていう調理方法なんです。蒸した後、焼きながら、何度もタレに潜らせるんですよ」
「なるほど…」
この料理は温泉旅館ではダメだろう。匂いが染みつきそうだし。サトゥーが手にいれてくれた貴重な米を炊き、今日のランチはブラックバイパーの蒲焼きとTKGに味噌汁である。尚、デザートには焼きプリンを用意してある。営巣地で無精卵を大量にゲットしてきたのだ。将来的には無精卵か有精卵かを識別出来る鑑定持ちが欲しいかな。俺の場合、一旦収納しないと鑑定、分類が出来ないのが不便である。
そして、お昼。TKGを見て固まるフィナ親子とアズライト、ネメシス。こんな食べ方を知らないのだろう。
「夢に見たTKGが食べられるとは…」
転生組は涙し、味わって食していく。
「旨いのか?」
アズライトが恐る恐る訊いてきた。
「当たり前だろ。いらないなら、俺が喰うけど」
「いらないなんて、言っていないわよ」
恐る恐る一口食すアズライト…
「美味しい…」
「蒲焼きもイケるぞ」
と、サトゥー。そして、食後。収納庫から焼きプリンを出し、皆に配った。
「これ…茶碗蒸しだったら、怒るぞ」
と、ミト。食後に茶碗蒸しは出さない。出すとしたら、前菜だろうな。一応、パティシエなんだよ。デザートが作りたいんだよ。って、実は昆布出汁が無いので茶碗蒸しは断念したり。出汁という概念が無いのか、鰹節も無いし。さて、どうするかな。今度、村長にリクエストを出すか。
「これ、美味しいよ」
フィナ、シュリが喜んでいる。だけど、このプリンに納得していない俺。砂糖の甘みが硬いのだ。イメージ的にはもう少しまろやかな甘みが良い筈だ。これでは卵の旨みを潰し兼ねない。
「ダンは納得していないのか?」
サトゥーに訊かれた。
「あぁ、砂糖がなぁ…甘みが硬いんだよ」
「サトウキビを手に入れるか?」
「砂糖を作る方向か?う~ん…作業場を作る場所はあるか?」
作業場ばかりを作ると、畑の面積を圧迫しそうだ。爆裂種、大豆、小豆、小麦を植えたいんだけど…
「無いなら作るクマぁ~」
クマ兄さんに抱きついているフィナ姉妹。中身はオッサンだけど、いいのか?そう言えば、アズライトの国でも、クマ兄さんは子供にはモテていた
な。
「なんか失礼なことを考えたクマ?」
「いや、現実を見つめ直しただけだ。気にしないでくれ」
◇
翌日、カタリナに呼ばれて、ギムルの街へ向かった。ギムルの温泉旅館とクリモニアの館間で連絡が出来る様に、魔法具を設置した。開発はサトゥーに丸投げである。なんでもラインハルトの指名依頼が入ったらしい。
「頼みがある。娘にテイム出来る魔物を見繕って欲しいんだ」
ジャミール家ってテイマー家系らしい。娘のエリアリアにはまだテイムした魔物がいないそうで…って言っても、俺はどっちかと言うと召喚師であって、テイマーでは無いのだが…
「何でも良いですか?」
「まだ、そこまで能力は無いので、ドラゴンとかは無理だよ」
一般的に初心者だとスライムだろうか?グラトニーに頼んで、見繕って貰うかな。
数日後、グラトニーが一匹のスライムを連れてきてくれた。これって…う~ん…まぁ、エリアリアの元へ、そのスライムを連れていった。既にグラトニーが心を折ってくれた為、簡単にテイムは出来るらしい。
「このスライムさんは、なんですか?」
「メタルスライムです。エサは金属…それも合金なんだけど…」
飼うのが大変そうである。
「利点は、一緒にいれば、剣にも鎧にもなってくれることかな」
メタル素材なので、そこそこの硬度はある。鉄では切れないと思う。ミスリルだと切れちゃうけど…グラトニーの言った通りテイム自体は簡単に出来た。
だけど、エサの確保が中々大変である。鉄だけでは喰わない、アルミだけでは喰わないけど、鉄とアルミの合金は喰うのだ。なんと贅沢なスライムなんだ。
「良いスライムを紹介してくれたが…エサがなぁ…」
ラインハルトの表情は冴えない。反面、エリアリアの表情は嬉しそうで、メタルスライムを抱き締めて、昼寝をしている。ヒンヤリとして気持ちが良いのだろうか?
「専属の騎士を雇ったと思えば…」
給金とエサ代はトントン位かな?
「まぁ、確かに…」
役立ち度はメタルスライムに軍配が上がるだろう。ミスリルの剣を持つような輩が、公爵家の令嬢を襲うことは稀であるから。
◇
公爵邸の帰り、冒険者ギルドに立ち寄った。クエスト紹介の掲示板を見ていると、塩漬け案件を見つけた。他の紙よりも明らかに焼けている紙だったのだ。内容は家の掃除とある。何か問題のある掃除なのか?その紙を持って受付に向かった。
「受けてくれるんですか?依頼主が喜んでくれます、きっと…」
冒険者は掃除しないよな。きっとFランク用の初心者のお遣い程度の仕事なのだろう。それにしても誰も受けないのは、おかしい。依頼料もそこそこであるし。寧ろ、家の掃除程度の額では無い。
「ギルドカードを見せて下さい」
ギルドカードを手渡すと、受付嬢が固まった。
「あの…『触るな危険』のダンさんですか…」
「触っても危険では無いですよ」
ギルマス辺りが変な噂を風潮したのだろうか?