---優奈---
或る日、私の住んでいる日本以外の国が滅びたらしい。両親は私からの手切れ金1億円で、世界一周旅行に出ていた。きっと、助からないだろう。両親を失ったのに涙なんか出て来ない。両親は私の稼いだお金にしか興味が無く、世間体を気にして、私にアレコレ文句を言う人間である。居なくなって良かったのかもしれない。
世界滅亡の危機に際し、今日もお気に入りのVRMMOをプレイしている。残っているの日本だけの筈なのに、ゲーム人口が多い不思議。将来への不安から逃げて来た人も多いのかな。
何気ない日常。15歳にして敏腕株トレーダーになり、巨万の富を築いた。運が良いのだろうか。所有していた株式を総て現金化した翌日、他国が滅んだ。当然、株式は乱高下をし、海外企業株は紙キレ同然に。
運命の岐路となったその日もゲームにログインした。アップデート記念キャンペーンというイベントが発生した。こんなご時世にアップデートって、運営会社は正気か?目の前に宝箱が沢山落ちている。1つだけ拾えるようだ。足下にあった1つを拾い上げ、蓋を開くと、『クマさんセット』が当たったらしい。
「副賞は異世界転生ですよ」
目の前に黒い装備の少女が現れた。副賞?なんだ、それは?美味しいのかな?
「私とお友達になってください」
こんなNPCは見た事無い。アップデートで現れた新キャラかな?
「さぁ、この門を潜って下さい」
言われるまま、門を潜ると、目の前から光が襲って来た。眩しい…
◇
気が付くと、知らない森の中にいた。ここはどこだ?アップデートしたから、マップデータも変わったのか?アップデートのお知らせを見なきゃ。メニュー画面を開くが、メッセージボックスは無くなっていた。ログアウトボタンが消えていた。どういうこと?まさか、デスゲームの始まりか?
「いたいた」
先ほどの少女が駆け寄って来た。この子に訊くか。
「ねぇ、ここはどこ?」
「国境の森だよ」
国境の森?そんなマップは知らない。ふと、自分の手元を見ると、クマのパペットになっていた。あれ?メニュー画面から装備品を見ると、『クマさんセット』になっていて、頭から足までクマ装備であった。なんだ、これは?下着までクマ装備だし。はぁい?
「ねぇねぇ、強いんだよね。戦おうよ」
目の前の少女がファイティングポーズを取っている。この子を倒せば、元の装備になれるのかな?最強クラスのプレイヤーの私。ゲーム内で無敵だったし。こんなNPCの少女に負ける気はしない。
◇
あり得ない。カウンター式のシールドバッシュ一発で意識を刈り取られていた。レベルを確認するとLV1に戻っているし。あのNPCの女の子はLV1000オーバーって、無茶ゲーすぎるだろ?
「ダンさん、仲間を拾ってきました」
気が付くと、どこかの家の庭にいた。どうやって運ばれたのだろうか?
「クマ兄さんのお嫁さんになるかな?」
クマ兄さん?
「う~ん…可愛い子クマ~」
目の前にクマが居た。二本足で起立している全身クマの人物がいた。
「あぁ、可愛いなぁ。どうして、クマの着ぐるみを着ているんだ?」
目つきの悪い男に訊かれた。どうしてだろうな。
「神様転生特典だよ」
NPCの女の子が答えた。うん?神様…転生…特典?って…私、死んだの…なんで?
「ねぇ、なんで、私は死んだの?」
黒い装備の女の子に訊いた。
「う~んとねぇ、ベッドに無防備に寝ていたら、大人の男女二人組に殺されたよ。その人達は大きなキャリーバックを持っていたような」
まさか…両親か?縁を切ったはずだ。命からがら海外から戻って、私のお金目当てかな。目から暖かい液体が零れていく。ふふふ…だけど、お金は見つけられないはず。
「大丈夫だよ。ユナのお金は全部、持って来て、両替したから」
はぁい?アイテムボックスを見ると、膨大なお金が入っていた。これも神様転生特典ってヤツか?
◇
久しぶりの人肌を感じながら目が醒めた。
「おはよう…ユナ…」
「おほよう…ダン…」
さてと、今朝から新生活のスタートだな。