デスを食らった男   作:もっち~!

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クマとノア

 

---ダン---

 

移動販売馬車と共に、クリモニアの街を訪れた。今日の販売品はポップコーンと水羊羹である。販売員はユナとクマ兄さんのクマくまベアコンビである。

 

価格はどちらも1つ銀貨1枚である。少し高めであるが、売れ無くても、自家消費出来る分しかないし、問題は無いだろう。

 

屋台を二人に任せ、俺はフィアの家に向かった。引っ越したせいで、雇えなくなったので、どうしているか心配になったのだ。

 

「ダンさん…」

 

フィアの母親のティルミナは再婚をしていた。旦那はギルド職員で、食いっぱぐれることは無いようで、問題は無さそうだ。

 

「お土産です」

 

「これは?」

 

フィナに訊かれた。

 

「ポップコーンと水羊羹だよ」

 

「美味し~」

 

出した瞬間にシュリが食い始めていて、水羊羹に嵌まったのか、新しい父親の分を狙っている。

 

「ダンさん、どこに引っ越したんですか?」

 

「雪山の麓だよ」

 

「今度、家族で遊びに行ってもいいですか?」

 

「いいけど、俺はいないかもしれないよ。ギルドに言伝を残してくれれば、来訪予定の相談に来るよ」

 

「ありがとうございます」

 

ここから、少し距離がある上、途中に魔物もいるしなぁ。気軽に来られる場所ではないか。

 

用件が終わり移動販売馬車に戻ると、クマくまベアコンビは、子供達に抱きつかれていた。相変わらず、クマ兄さんは子供には大人気である。

 

「どうだ?売れているか?」

 

「完売だよ。試食した大人達が次々に買っていったよ」

 

と、子供達のアイドルになったユナが答えた。

 

「クマさんだぁ~」

 

この声は…領主の娘が懲りずに接触してきている。犯罪者集団と思っているなら、娘を近づけるなよ!

 

「ダン君…」

 

エレローラが声を掛けてきた。

 

「犯罪者と思っているなら、娘を近づけるな!」

 

「私は…思っていません。それよりも、クマは二人いたんですね」

 

「販売員として目立つでしょ?」

 

会話が成り立たない気がする。二人の身元を隠したい俺、二人の身元を探りたいエレローラだから。

 

「誤解を解きたいです…亭主は親バカなだけなんです。娘が心配なだけで…」

 

「それでえん罪?誤解って…未だに、あなたの亭主から謝罪は無い」

 

「えっ?そうなの?あの人ったら…親バカで仕事バカなんです。娘と仕事以外、無頓着で…誤解を受けやすいと言うか」

 

あぁ、謝罪は仕事じゃ無いってことか?俺的には納得は出来ない。

 

「弁解にはなりませんが、私は王付なので王都に長女と住んでいて、こちらにはあまり帰って来なくて…」

 

クリモニアの街には亭主と次女が暮らしているそうだ。長女の学校が王都にあると言う。

 

「王の世話だけで無く、亭主の教育をしてください」

 

「そうですね。それで王から伝言です。いつでも来て下さいと。これ、入城証です。ギルドカードを出して下さい」

 

ギルドカードを出すと、入城証がカードに吸い込まれて行った。これって、どんな仕組みだ?

 

「今度からギルドカードを見せれば、問題なく城に入れます。今回の件は、王まで報告が届いていませんでした。重ね重ねごめんなさい」

 

日が落ちていく。クマに群がっていた子供達が帰って行く。一人の少女を除いて…

 

「お宅の娘さんは、帰る気は無いんですか?」

 

「とても気に入ったようですわ。箱入り娘で遊び相手がいないから…」

 

「亭主だけで無く、娘さんも教育してください。怪しい人物には近づかないとか」

 

少女はユナでは無く、何故か見た目が怪しすぎるクマ兄さんの方が気に入ったようだ。ソイツの中身はおっさんだぞ。

 

「暗くなるから帰るクマ~」

 

「え?クマさんと帰る」

 

「ノア、無理を言わないの」

 

「だって…お母様」

 

クマ兄さんから娘を引き剥がす母親。そのことで、泣き喚く娘。どうするかな?

 

「ダンさん、今夜は泊めて貰えます?帰りに我が家に寄って貰えますか?亭主に一声かけますから」

 

泊める分には問題は無い。波乱が起きそうな予感だが、エレローラが居れば安心か?

 

 

目の前にクリフがいる。親バカ貴族のクリフがいる。エレローラに説教を食らっているクリフがいる。コイツ、エレローラの尻に敷かれているのか?

 

「本当にすまなかった」

 

エレローラに解放されるや、俺に対して土下座をしてきたクリフ。

 

「なぁ、街に戻ってきてくれないか?」

 

「断る。あの土地は、住宅で無くて、クランの建物にする」

 

クランというか、サトゥーがエチゴヤの支店を、あの場所に置きたいそうだ。ギムルの街中にも支店を置くとか。店員は奴隷とか、ギルドからの紹介でまかなうと言う。エチゴヤの裁量権はさとぅーに丸投げだし。どうにかなるだろう。

 

「わかった。無理強いはしない。だが、妻と娘には罪は無い…だから…」

 

別に人質に取るわけでは無い。一晩泊まるだけだぞ。

 

「一晩だけよ、あなた」

 

エレローラがクリフを優しく諭し始めた。飴と鞭か?その後、タダを捏ねるクリフを残し、馬車で無事に帰宅した。エレローラと娘が居なければ、転移で帰って来られたのだが。

 

「ここまで開拓したの?」

 

エレローラが畑や水路を見て、驚きの声を上げた。水路の脇には水車小屋もある。

 

「まだまだだよ」

 

これから手探りで米を育てようとしているんだから。

 

夕食。エレローラの娘ノアールは、クマ兄さんの腿の上に座っている。流石に戸惑っているクマ兄さん。食卓にはコンビーフサンドにサラダ、チャーシューを利用したシチューが並んでいる。

 

「お、美味しい…王都に、ここまで美味しい料理は無いわ」

 

エレローラが気に入ったようだ。王都にも売りに行くかな?今宵のデザートに、水羊羹とかりんとう、そして緑茶を出した。

 

「このお茶…緑色なのね。あら?口の中をリセット出来るのね。へぇ~、不思議」

 

緑茶は王都には無いらしい。

 

「王都の土地って高い?」

 

将来的にエチゴヤの支店の土地が必要であるので、エレローラに訊いてみた。

 

「うん?ダン君の土地は確保されているわよ。住む気になったの?」

 

えっ?俺の土地が確保されている?なんで?

 

「王都にいつ来ても住めるわよ。屋敷も付いているし、隣は私の家だしねぇ」

 

はぁ?隣がエレローラの屋敷だと…そうなると貴族街かぁ…サトゥーを見ると、ニヤリとしている。エチゴヤの支店を出すのだろうか。

 

 

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