---ダン---
移動式ギルドホームで、和物を売る国を探すことにした。搭乗者は俺、ミト、サリー、マイル、ユナである。人選に当たっては、転生(転移)者で好戦的で無い者にした。
「凄い。この世界に飛行機があるなんて…」
ユナとマイルが窓から見える景色を楽しんでいる。機内サービスは、アリスとサリーに任せ、俺とミトはコクピットで、陸地探しをしていた。
「こういうのは、東の方角よ」
「ミリーラの港って西向きだぞ」
そういや、あの胡散臭い神が、拠点にしている大陸はムー大陸辺りって言っていたような。その上、アリサ達の拠点は、オーストラリア大陸辺りって、言っていたな。そうなると、
「北だ。北北東だろう」
海面を見ていると小島は見えるが大陸っぽい物は見えない。
「ねぇねぇ、日本って大陸じゃないわよ。島国だよ。忘れていない?」
「そうだった…」
大陸探しじゃダメだ。デカイ島を探さないと。
レーダーに日本らしい島は映らない。そうか、形が違う可能性はあるな。北海道、本州、四国、九州と4つの島からなる、諸島群を探せば良いのか…っ
て、これか?大きな4つの島の中心に小さめの島が1つ。まぁ、降りて見て、探索してみるか。手前の大きな島に降りてみた。地上の人から見えないように、人口密集地を避けて、山陰に降り立った。
山の群生を調べると、見慣れたキノコ類がある。収納してからの鑑定によると、椎茸、マイタケ、松茸…ここで良いみたいだ。
「松茸かぁ~。何百年ぶりかな~」
ミトが蕩けている。
山を下りて、街道を見つけ、歩いて行くと、関所が見えた。全員冒険者なので、冒険者カードを提示して、街の中に入った。道行く人々の姿は和服である。探していた当たりの国かもしれない。建物屋根は瓦屋根であり、店の中を覗けば、畳が敷いてある。
「取り敢えず、宿に泊まりましょうよ。和食が食べられるかもしれない」
ミトの喜びようは凄い。異世界に来てうん百年。ソウルフードがたらふく食べられるかもしない。畳の上で寝られるかもしれない。そんな期待で一杯なのであろう。って、伯斗に貰った温泉旅館で満喫していなかったのか?
街中を彷徨い、『さくら旅館』と書かれた看板を発見。
「ねぇ、ここにしようよ」
宿ののれんを潜る俺達。
「いらっしゃいませ」
宿屋に入ると、ミトを除いた俺達と似たような年頃の少女が声を掛けてきた。和装を着こなし、髪にはかんざしが刺さっている。
「なんで…クマさんが…」
ユナの姿が真っ先に入ったようだ。
「泊まれるか?4人部屋を二つ、無ければ、大部屋を1つ」
代表して俺が訊いた。
「あっ、はい。大丈夫です」
ユナの姿を見てトリップしていた少女が、正気を取り戻し、返事をしてくれた。
「その前に確認をよろしいでしょうか?」
「彼女のクマ装備は、彼女の好みだ」
「いえ、そうでは無く、当旅館にはベッドがありませんが、よろしいですか」
「問題無い」
「あと、温泉付きの部屋がございますが」
「温泉付きでお願いします」
温泉かぁ~。いいなぁ。伯斗の温泉旅館は、露天風呂だけ温泉だったからな。
「その~、部屋も広く、お値段がお高くなりますが、よろしいですか」
「あぁ、それでいいよ」
取り敢えず三泊分の料金を前払いし、部屋に案内して貰った。
「わたしはこの旅館の娘のコノハと言います。なにかありましたら、申し付けてください。で、お客様達は、どこからおいでですか?」
「ミリーラだよ」
この国と交易のある街の名前を伝えた。ミリーラがどこの国かは知らないし。
「なるほど。交易のある街ですね。あそこは、しばらくの間、海に大きな魔物が現れたとかで、行くことが出来なかったって聞きました」
海に大きな魔物?あぁ、イカリングの元、クラーケンかな。アイツは最近、見つけ次第、狩っている。おかげで、イカリングは売るほど調理できる。
「話によると、冒険者が倒したそうですが、海にいる大きな魔物を倒すなんて、本当に凄い冒険者がいるんですね」
「そうだな」
「お客様は、どんな人が倒したか知っていますか?」
「うん?わからないなぁ」
迂闊に俺って言うと、証拠を見せろ的なトラブルに遭いそうで怖い。
「夕食はシャモ鍋とネギマ鍋がご用意できますが」
「じゃ、半分半分で頼む」
「わかりました」
部屋に俺達だけ残った。畳…縁側…そして、掛け流しの温泉だ。みんなして、畳の上でゴロゴロと…
「畳を買って帰ろう」
「後は、何を買います?」
ユナに訊かれた。
「後は、街に出て情報収集だな」
◇
夕食まで時間があるので、街を練り歩く。
「浴衣がありますよ」
サリーが呉服屋を覗き込んだ。女性陣に浴衣、俺は作務衣を買い、それぞれ着替えて、街中に戻った。そうだ、履き物も買おう。女性陣は草履、俺は雪駄を買い、履き替えた。これで、街の風景に溶け込んだか?
「醤油、味噌、みりん…作らなくても、なんでもありそうだね」
と、ミト。
「そうだな。買えるだけ買って、サトゥーを明日呼び出すか」
アイツのコピー能力で、醸造蔵をコピーさせて、持ち返る計画である。
「乾物もチェックだ。特に鰹節を探そう」
鰹節を作るのは大変であるから。捌いて、蒸して、クリーニングし、乾燥、菌付け、熟成と、手間と時間が掛かる。作れと言われれば作るが、なるべく避けたい食材である。
「米、麦、大豆も探すぞ」
味見をして、どの店が良いかを見極めないとダメだ。値段と品質、味は比例していないだろうから。