---ダン---
村に戻り、狩りの成果を披露した。結局銀色のかまいたちは3匹いた。1匹は狩り残しチェックの際に、俺が上空からメーサー砲で狙撃したのだった。
「これは銀色のかまいたち?」
「本当だ。三匹もいるぞ」
村人が驚いていた。この銀色は、強い魔物らしい。
「怪我は!?」
「俺達は無いが、シノブは?」
シノブの服は切り刻まれていた。
「服以外問題無いっす…」
シノブは切られた部分を恥ずかしそうに押さえ、村人を見る。
「……追加の金額を払わさせていただきます」
男性の言葉にシノブは嬉しそうにする。あれ?シノブって、狩りの参加者だっけ?
「牛鍋でも食べて、休んでくれ。この村の名産は牛肉なんだよ」
牛鍋?和牛か?
「すき焼き?」
マイルとミトの口元がだらしなくなっている。最近、牛の肉は食べていないからな。しかし、この村にはすき焼き文化は無く、肉じゃがのような芋煮だった。旨いので問題は無い。
「里芋もあるのか」
村からの帰り、牛肉のブロック肉と芋を仕入れて、宿へと戻った。
◇
宿に帰る道すがら、
「ダン、街に帰ったら相談があるっす」
と、シノブに言われた。
「お前の身体に興味は無い」
「そういう話じゃなく…なんか、酷い言われようっすね」
シノブの事よりも、今は牛肉をどう調理するかで、頭を悩ましたいんだ。
「わたしの話を聞いてほしいっす」
面倒事の予感がする。
「面倒なことはパスだ」
「うぅ、そんなことを言わないで欲しいっす」
「面倒事だろ?」
「……面倒事っす」
スルー決定。
「無視しないで聞いて下さいよ~。お願いするっすよ」
スルーだな。スルーしたまま、冒険者ギルドに帰って来た。依頼完了を知らせ、かまいたちの討伐部位の尻尾を渡し、魔石を換金して、冒険者ギルドを出ようとすると、
「毛皮は売ってくれませんか?」
受付嬢が俺に縋り付いて来た。
「毛皮?うちの商業部門で使うから売れ無い」
「商業部門?え…Aランク…」
実はクラン<楓の木>は、エチゴヤ、ドラゴンの鱗、そして移動販売で、商業ランクがAランクになっていた。
「新商品開発に使うから、売れ無い。悪いなぁ」
商業ギルドに加盟している強みで、冒険者ギルドの買い取り要請を蹴ることが出来るのだ。
「残念…」
受付嬢の恨めしい視線を背中に受けながら、冒険者ギルドを後にした。
これで面倒事は終わりと宿に着くと、何故かシノブが一緒に部屋に入ってきた。
「ほぉ~、良い部屋を取ったっすね」
これは、面倒事を訊かないと、どこまでも付き纏うストーカーパターンか?
「で…面倒事って、何?」
「この男を捜しているっす」
懐から人相書きを取り出したシノブ。コイツを見つければ、帰ってくれるかな?『強奪』で男を拉致し、シノブと共に、浜辺へと強制転移させた。これで、問題は解決だよな。
◇
面倒は嫌なので、翌日はお城のある街へ移動した。
「飴細工かぁ」
べっこう飴を食べながら、飴細工製作を見学していた。
「そうか!飴でフィギュアもありですね。食べられる付録かぁ~」
と、マイル。まぁ、アリだと思うが、まずは実演販売でもするのか?
「見つけたっす。はぁ…はぁ…はぁ…」
あぁ~、背中越しに面倒事の声を聞いた。
「まだ、なんかあるのか?」
「あるっす。お願いっす。話を訊いて下さいっす」
俺の背中に抱きつくシノブ。
「はぁ~」
今度は、どんな厄介事を?
「言ってみろよ。事と次第では、男性恐怖症にしてやるぞ」
脅しを掛けてみる。
「やれるものなら、やってみなっす。で、和の国の中心に島があり、聖なる地とされ結界が張られ、普段人が入れない島があるっす。そして、その島には魔物が封印されているっす」
魔物退治か。封印されているのか。戦い甲斐がありそうだな。
「その島で、それを倒せばいいんだな。ミト、集められるだけ戦力を、その島に集めてくれ」
「はぁ~い」
なんか、みんな楽しそうなんだが…
「え?もう戦う準備しているっすかぁぁぁぁ~。何、その戦闘脳は…」
シノブの声がビビっているようだ。
「封印された魔物だろ?本気で戦っていいんだよな?」
「そうですが…まだ、封印は破られていないっすよ」
「封印?そんなの破ればいいだけだろ?問題無い」
なんたって、チーターが数名いるんだし。伝説的な食材かな?ワクワクする。
「その相談事は受ける。そうとなれば、準備するぞ」
俺達は移動式ギルドホームに転移した。
やっとラストシーンが浮かんだ(^^;;