デスを食らった男   作:もっち~!

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ミリーラ陥落

 

---シノブ---

 

冒険者ギルド経由で、エルファニカ王国から、大蛇の魔石を買い取って欲しいと連絡があったそうだ。ダンから買い取り依頼されたそうだが、エルファニカ王国の国庫のお金の全額でも賄えない金額になるらしい。他の国の王家に買い取りを頼むって…和の国で買い取ることになり、一路エルファニカ王国へと向かう私達使節団一行。まずは、交易のある港町ミリーラの町へ船で向かっている。

 

討伐依頼料も払わないといけないし、和の国も大赤字である。出来れば物納をと、王から言いつかっている。

 

「シノブさん、そのダンさんって、どんな方なんですか?」

 

国王スオウの姪で、巫女であるサクラ様が国王の代理として、私達に同行している。

 

「どんなって…とんでも無いヤツっす」

 

瞬時に探し人を見つけ、呆気に囚われているうちに、あの島を一変させてしまった男。あの男が直接やった訳では無いだろうけど、アイツが指示をしたに違いない。

 

「あのカガリ様をビビらせるって、並大抵のことじゃないっす」

 

数百年を生きる妖狐のカガリ様。そんな彼女が震えながら、この世の地獄を見たと言う。どんだけ、怖い思いをしたのだろうか?

 

船が突然、大きく揺れた。なんだ?

 

「おい!クラーケンが出たぞ!」

 

クラーケンだって?退治したんじゃ無いのか。水面に姿を晒し、手足で船を弄ぶクラークン。そのクラーケンに挑む蒼い鎧の戦士…どこから現れたんだ?空を飛んでいるのか?その戦士は手早くクラーケンを倒し、アイテム袋に収納し、飛び去っていった。討伐は一瞬の出来事であった。クラーケンって、あんなに簡単に倒せるのか??

 

「あれは?」

 

船員に訊いてみた。

 

「勇者様だ。彼が来てから、沈む船は無くなったのさ」

 

どこから来たんだ?アイツならダンに勝てるのかな?

 

 

ミリーラの町に上陸し、冒険者ギルドへ向かった。これからの陸路を相談する為である。

 

「ようこそ、ミリーラの町に。私がここ冒険者ギルドミリーラ支部のギルドマスターのアトラよ」

 

海辺の町らしい姿である。小麦色の肌に露出の多い服装。目のやり場に困ると言うか。ここまで行くと女性にとっても目の毒である。

 

「エルファニカ王国の王都?山越えと山脈を迂回が通常の道のりだけど…」

 

山越え?

 

「山って、どの位?」

 

「あれよ」

 

窓から指差す先にあるのは、頂上の見えない壁のような山だった。これはサクラ様と越えるのは難しい。

 

「幼女連れでは難しいわよ。迂回ルートだと1ヶ月くらいみた方がいいかな」

 

山というか目の前の山脈を完全に迂回する為、日数がとても掛かるらしい。

 

「後は、トンネルね」

 

トンネル?

 

「普段使い出来ないんっすか?」

 

「この町の商業ギルドと、トンネル所有者の間でトラブルがあって、今は使えないようになっているの」

 

訊けば、この町の商業ギルドが開通する為の土地の使用料を、思いっきりふっかけたらしい。で、相手はトンネルが無くても困らないって…じゃ、なんで時間と金を掛けて、トンネルを作ったんだ?

 

「トンネルを使えば早いっすか?」

 

「そうねぇ、馬車を使えば、半日あれば抜けられるんじゃ無いかな?ただ、トンネルの入り口の土地が、立ち入り禁止なの」

 

実質、使えないらしい。どうするよ、これ…1ヶ月掛けて、山を迂回か…

 

「2,3日、この町に滞在して貰えるかな?それまでに、トンネルを使えるようにしておくわ」

 

商業ギルドと交渉してくれるのだろうか?

 

 

 

---ダン---

 

隣町のギルマスのアトラから連絡が入った。商業ギルドの悪徳ギルドマスターを排除すると言う。盗賊を使い、住民から金品を巻き上げ、巻き上げた品を高額で買い戻させると言う。良識ある冒険者達は、違う町を拠点に変え、今残っているのは、盗賊もどきの冒険者達らしい。その上、その冒険者達は、冒険者ギルドで無く、商業ギルドに入り浸っているそうだ。

 

「代官とか町長は?」

 

商業ギルドのギルドマスターに物を言えるのは、代官とか町長であるはずだ。

 

「もうとっくに夜逃げしたわ」

 

なんでも複数回に渡る盗賊の襲撃に嫌気が差したらしい。

 

「今、この町を管理、牛耳っているのは、商業ギルドのギルドマスターよ」

 

真っ当な冒険者を雇える金持ちは良いが、一般市民は逃げようが無い。山越えにしても山脈迂回ルートにしても、隣町に逃げ込むにはリスクがありすぎるのだった。山にはモンスター、街道には冒険者崩れの盗賊軍団、真面な護衛無しで生きて逃げ出すのは難しい。

 

「ねぇ、ダン。なんとかならない?モロボシ公爵様が頼りなのよ」

 

「って、言うが…ここって隣国だぞ」

 

ジャミール家もクリフも、その権力は、他国であるこの地には及ばない。

 

「あなたは、クラーケン専門の漁師でしょ?その力を、この町でふるって、悪を倒して…」

 

いや、確かに目の前の海では、クラーケン専門で狩りをしているが…ギルマス倒して占領とか、俺が悪人にならないか?おたずね者はカンベンである。

 

「倒した後は、ダンは公爵なんだから、国王とは言わないけど、クリモニアの街の領主とこの町の繋ぎになってくれないかな」

 

このタイミングで使い魔から念話が届く。面倒事の予感だ。

 

『主様、成敗しておきました。悪意ある者は総て冥界送りにしてあります』

 

使い魔の仕事の早い件…もう排除したのか、デミウルゴスよ。

 

「既に、俺の配下が指示を待たずに、排除したみたいだわ」

 

凹む俺。なんってこった。おたずね者へ一直線か?

 

「もう?凄いなぁ。流石は豪腕な公爵様ねぇ」

 

これで何都市目だ?陥落させたのは…

 

「町長と代官は逃げ出し、商業ギルドの不祥事、クラーケンの放置といろいろと困ることが出てくるのよ。それで、クリモニアの街の領主様と話ができないかと思ってね。もう、この国に属すこと自体、無意味なの。町に危機があっても、国の助けはまるで無いからね」

 

それは、領地再編問題か?代官が逃げ出すって、この国はこの地の問題を投げたってことだ。兵を送ることも、次の代官を出すこともしていない。この町の領有権を放棄したと見なしてもいいのだろうな。形の上では占領で、いいかな?考え込む俺に、更にデミウルゴスから念話が届いた。

 

『問題無いです。首都を陥落させました。賠償金代わりに、ミリーラの町の領土を貰っておきました』

 

おい!俺の意思は?俺に決定権は無いのか?

 

『主様を悩ます問題は、即座に解決が忠臣の勤めですよ』

 

グラトニーからだ。あのコンビ、行動が早すぎる。俺の思考速度を遥かに上回っているんだが…

 

「配下の者が、ミリーラの町をモロボシ公爵領に参入させたそうだ」

 

「さすが、モロボシ公爵家ねぇ、仕事が早いわね」

 

そして、その日の夜、不本意ながら『モロボシ公爵領ミリーラ誕生祭り』が、町を挙げて開催された。

 

 

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