妹の明日奈と街を歩いている。帰路と言えばそうだし、ウィンドショッピングと言えばそうだし、なんだろうか?こうして街を眺めるのも仕事だと父は言う。
「兄さん、このVLのバッグが欲しいなぁ」
「そういうのは彼氏に買って貰えよ」
「兄さん以外、考えていないもん」
「ラノベのような義妹ならな。お前は血の繋がった妹だろ?それも二卵性双生児だぞ」
俺と明日奈は同じ高校で同じクラスである。学校では他人の目を気にしてクールビューティー、俺と二人になると甘えん坊って、落差ありすぎるだろう。
「あれ?」
「どうした?」
明日奈が何かを見つけた。前を歩くJCの二人連れのようだが。明日奈がその内の一人を捕まえた。あっ…あの横顔。もう一人の子の横顔も似ている。まさかなぁ。
「ねぇねぇ、サリーちゃんだよね?ちょっと、顔貸してくれない?」
「えっ!」
「ほら!明日奈、びびって居るぞ」
「ふふふ、ソッチの子もだよ。逃がさないからね」
JC二人を拉致して、いつも行くカラオケボックスに入った。
「好きな物を頼んでえぇでぇ~」
「おい!明日奈、口調がおかしいぞ」
「サリーちゃん、顔をよく見せて」
「えっ!」
顎クイをして、顔を近づける明日奈。
「ほら、怖がって居るぞ」
「ねぇねぇ、兄さん、サリーと私、どっちがかわいい?」
---本条 楓---
見た事の無い高校生の男女に、カラオケボックスに連れ込まれた。う~ん、ゲーム内なら悪食で退治するんだけど…理沙をゲーム内のサリー呼びしている。
ゲーム内で恨まれたのかな。私も連れ込まれたってことは、メイプルってバレているのかな?
「サリーちゃん、どうしたの?ゲーム内のように勇ましい言葉を言ってみて」
理沙は蛇に睨まれたカエル状態で、されるがままである。この後、簀巻きにされて、コンクリート詰めで、海にポイかな?こんな時にダンさんがいれば、助けて貰えるのに…
「明日奈!いい加減にしないと、晩ご飯抜きな」
「えぇぇぇぇ~、そんなぁぁぁぁ~」
「悪いなぁ。妹が馬鹿しやがって」
「そうだ!兄さん、メイプルちゃんと結婚して、男の子を産んでよ。私のお婿さんにする」
なんで、そこで私の名前が…結婚…まだ中学生だし…まだまだ先のことである。
「俺が産むわけではないぞ」
「きっと、メイプルちゃんみたいな、かわいい男の子もありかなって」
「あの…あなた達は誰です、ひゃぅ!」
女性が手を上げると、軽い悲鳴を上げた理沙。
「なんか、言った?」
「いえ…」
完全にびびっている。こんな理沙を初めてみた。涙目で顔色が悪い。お化け屋敷に入った時のようだ。
「君の名前は?俺の名前は諸星正、あっちは妹の諸星明日香だ」
「モロボシ…ダン?」
震える声の理沙。
「正解だ」
へ?モロボシダン?もろぼしただし、って名乗ったのに…はて?
「びびらせないでよ~」
彼の手の平が理沙の頭を撫でると、理沙から笑みがこぼれた。どうしたんだ?知り合いだったのか?
「いやぁ~、こんなにびびるとは」
妹さんは笑っている。
「妹が無礼を働いたので、もっといいお店に連れて行ってあげるよ。明日奈はハウスだ!」
「なんで?実の妹がかわいくないのか?」
「さぁ、いこう、サリー、メイプル」
が…腰が抜けていた理沙。
「びびりすぎだよ~、サリー」
「びびるでしょ?一応、中学生なんですからね」
正さんが理沙を背負い、私の手を握り、どこかへと連れて行かれる。
「兄さん、子持ちでも似合うねぇ~」
「お前、言い加減にしないと、後でしばくからな」
幸い、裏路地の怪しいお店ではなさそうだ。大通りに出て、甘い香りのする館へと入っていく。
◇
高級洋菓子店に連れて行かれた。ここのケーキは美味として有名である。
「好きなだけ食べていいよ。明日奈はいつものでいいなぁ」
「あい」
「すいません。レスカ1つにジャンクリアンを1つ、この子達にはケーキセットをお願いします」
店員さんに注文してくれた正さん。
「ここのは、ワゴンでケーキと飲み物を運んで来るんだ。目の前で選ぶんだよ」
「楓…ダンさんとアスカさんだよ」
私の耳元で囁く様に、教えてくれた理沙。
「ダンさん?」
「はい、正解」
はぁい?イメージが違う…うっ…ゲーム内では父親的なポジションで、現実では憧れ…
「こんな高級なお店、大丈夫ですか?」
思い出した…ケーキのワゴンサービス…2000円くらいしたはず。
「大丈夫だよ、ここは俺達の家だからね」
あっ!モロボシ洋菓子店って、店名だった。
「跡継ぎ?」
理沙が訊いた。
「あぁ、明日奈がパティシエで、俺がデザインだな。高校に入ったら、菓子作りの勉強で、武道を習う時間が無くなったんだ。それで、ゲーム内で身体を動かしているんだよ」
「じゃ、アスカさんが、ゲーム内でケーキ作りが上手なのって?」
「PSだよ」
近所に住んでいたんだ…運命的な出会いかな?