---ダン---
翌日、トンネルを開通させ、レールの上を走るゴーレム車両を設置した。灯火や休憩場、トイレなどのトンネル内の設備の設置が面倒なので、専用鉄道を敷いたのだ。ゴーレム車両に乗せるのは、専用コンテナで、駅でそれらに荷物を詰め、人員を乗せて、コンテナ単位でトンネル内を移動する感じである。イメージ的には、スキー場にあるゴンドラだろうか。先頭車両は無しで、コンテナ車がリング状に連なっていて、コンテナ車を移動させているだけである。移動時間は大体30分程度で、コンテナの乗降時間は1時間くらい。中々好評である。
このコンテナ専用の馬車を買えば、乗降時間が5分程度に縮まるとあって、専用馬車の売れ行きも良いそうだ。エチゴヤはどこへ向かうのだろうか。
「まさか、ダンが…公爵様って…」
和の国のシノブが驚いている。いや、俺もだよ。まさかトンネル鉄道の一人目の乗客が、シノブとは…因みにコンテナ1両で乗車代は銀貨10枚である。一人、二人では高いが、乗り合い感覚で10名乗れば、一人銀貨1枚となり、妥当な金額であろう。駅からクリモニアの街まで、別途馬車代がかかるけど…
「何しに来たんだ?」
麓の館に、シノブとお付きの者を連れ帰った。
「エルファニカ王国の王様と交渉事っす」
シノブってお城勤めなのか?
「ここからだと、王都まで馬車で10日くらいだよ。クリモニアの街までは送ってやる」
明日はクリモニアでの移動販売日である。
「まぁ、飯でも食えよ」
今日の昼飯は、クラーケンのゴロ焼きである。新鮮なクラーケンがある時にしか、調理出来ない料理である。
「美味しいです。これは何イカですか?」
シノブのお付きの者に訊かれた。
「それはクラーケンだよ。昨日、獲ったばかりの新鮮なヤツだ」
「はぁ?クラーケンって…」
固まる二人の客。そうだ、イカリングも出して上げよう。
---シノブ---
クラーケンのゴロ焼きって…あの巨大なイカを解体し、調理したのか…美味しいんだけど…魔物を調理するには、調理スキルレベルが高くないとダメだったはずだ。普通の包丁では捌けない魔物の肉…コイツ、本当に何者なんだ?
「明日は何を売るんですか?」
「あっ、クマさんだ」
サクラ様の声で横を見ると、クマの着ぐるみを着た女の子が、ダンに話し掛けていた。
「イカリングにするか?」
「ソースは?」
「デミでどうかな?醤油ベースならすき焼きのタレっぽいヤツとか」
「わかりました。その方向で…後、甘味は?」
「白玉粉が手に入ったから、団子にしてみるか。ヨモギはあったかな?」
「ヨモギはないです。同じ色見だとホウレンソウかな。後は梅酢にしてみます」
「こしあん載せにするか」
「了解です」
クマの女の子が厨房へ下がっていく。
「売るんですか?」
サクラ様が訊いている。
「あぁ、移動販売しているんだよ。明日はクリモニアでの販売予定なんだ。そのついでに、二人を連れて行く」
「なぁ、お前は一体何者なんっすか?」
前から思っていたことを訊いてみた。
「俺?パティシエだけど…」
「パティシエ?」
「洋菓子職人だよ」
菓子職人?なんで、クラーケンを調理出来るんだ?分からないことが増えていく。
---ダン---
翌日、シノブ達をクリフの屋敷に連れて行き、後のことはクリフに丸投げした。
「おい…お前…自領にミリーラを参入したそうだな」
「情報通だな」
「今度は何をやらかしたんだ?」
「俺は何もしていない。配下の者が勝手に…」
「暴走か?いいか?流血騒ぎは起こすなよ」
流血?しないだろう。アイツらがキレれば、焦土となるだけだ。クリフ邸を出て、移動販売の場所へ向かう。馬車の中では、既にノアがクマ兄さんにべったりなんだが…相変わらずのモテッぷりだな。
販売はくまクマ熊ベアーコンビに任せて、俺は冒険者ギルドへと向かう。
「おっ!ダン、いいところに来たな。指名依頼だ。直ぐに王都の西門に向かってくれ」
ギルマスからの指名依頼。スタンピートか?
「何が出たんだ?」
「ギルド間通信によると、ゴブリン、ウルフを合わせて1万以上。さらにオークが500体。ワイバーンの数は未定だが群れているそうだ」
食材大量ゲットの予感。俺は、指定された場所に転移した。メイプル、マイルを『強奪』で拉致し、カエデ、アリスを呼び出した。
「スタンピートだそうだ。メイプルとカエデはゴブリンを残りの者はウルフ、オーク、俺はワイバーンを狩る」
「どの位ですか?」
マイルから質問が出た。スタンピートだぞ。
「分かっているのは、ゴブリン、ウルフを合わせて1万以上。さらにオークが500体だそうだが、他にもいるだろう。根こそぎ回収するぞ」
そうだ。狙撃手も呼び出すか。レン、シノン、フカ、アスカ、マリーも『強奪』で強制召集した。
「薄い本を執筆中なのに…」
ペンを持って現れたマリー。
「スタンピートだ。狩りの時間だよ。俺は空に行く」
『クイックチェンジ』で蒼い装備を纏い、上空へと向かった。