---エレローラ---
王都に向かって、魔物達のスタンピートが発生したそうだ。王都内にいる全員冒険者、騎士に戦闘準備をさせる。こんな戦力で抑えきれるだろうか?ランクB以下の戦力しかいないらしい。ふと窓から外を見ると、遠くで何かが次々に落下しているのが見えた。あれって…遠眼鏡で確認すると、空を飛び回る蒼い装備の戦士が、次々とワイバーンを仕留めていた。落下していくワイバーンを見ていると、遠くの森から血煙が上がっている。え?!
まだ、王都内の戦力は外に出ていない。じゃ、アレは?
「エレローラよ、あれは誰何者だ!」
王が近寄って来た。
「わかりません。まだ、王都内の戦力は出ていないんですが…あっ!」
ダメ元で指名依頼を、クリモニアの冒険者ギルドに出したっけ。まさかなぁ~。
「うん?心当たりがあるのか?」
王の顔にいや~な汗が浮き出ている。気づいたのだろうか。アレの正体に…
「いえ…クリモニアの冒険者ギルドに指名依頼を…まさかねぇ~。早すぎるよなぁ~」
こんな迅速に対応出来る訳が無い…でも、あのクランなら…出来ないことは無い気がする。
「はははは」
笑うしかない気分だ。
「アイツらか…ワイバーンを簡単に落とすとは…王都死守となれば、報奨金を弾まないダメだろうな。頭が痛いわい」
確かに…彼らに借金している国庫。払う物は既に無い。しかし、報奨金を出さないともなると、国の威厳に関わるし…
---ダン---
ワイバーンは1ダースいた。総て仕留めて、収納しておく。地上では、ゴブリンは既に壊滅状態、オークはマイルとアリスが的確に首を斬り裂いて仕留めている。ウルフの群れは、射撃部隊が仕留めていた。他に目新しい得物はいないかな?あれ、オークが街道方向にもいる。サトゥーとミトに任せるか。念話で指示を飛ばしておく。
討ち漏らし、新たなヤツがいないかを、上空から探す。そんな俺の目の前を何かが通過していく。フカのグレネードランチャーか?いや、手持ちスティンガーみたいだけど…着弾地点を見ると、上級オークの群れが現れたようだ。弓を持っているオークアーチャー。杖を持っているオークメイジ。大きなランスを持っているオークランス。これは珍しいオークだな。ダンジョンでしか見た事が無いヤツラだ。フィールドにも居るのか。
地上に降りて、第二陣を呼び出すか。赤き誓いとワンダースリーの面々を『強奪』で召喚した。
「おぉ~これは…戦闘ですね」
メーヴィスが喜んでいる。それに対し、魔法使い5人組は、不満そうであった。
「新たな魔法を開発中だったのに…」
なるほど…それは不満な訳だ。メーヴィス以外は戦闘狂では無いしなぁ。おっと、他のヤツラも呼ばないとキツそうだ。後は…剣士達だな。サリー、カスミ、ゼノヴィア、由良、アスナ、リーファを『強奪』からの強制召集をした。
「状況は?」
サリーが訊いてきた。
「上級オークの群れがいる」
「了解!」
アスナ、リーファ以外は楽しそうに飛び出していった。
「不満か?」
「そうじゃ無いけど…」
二人を強制転移で館へ返品した。嫌々戦うと怪我の元だ。
『ダン!ヤバいのが出たそ』
サトゥーからの念話。サトゥーの元へ転移した。
---エレローラ---
このスタンピートを収めたとして、彼らに渡す褒美はもう無い。後は…王女や私達女官の身体くらいだろうか?でも、きっと差し出しても要らないって、いいそうだよなぁ。女体に興味が無さそうだし。
「森の中では何が起きているんだ?」
王の声が上がった。森でゴブリン、オーク、ウルフなどと交戦している彼ら。時折、血煙のような物が煙り立つが、彼らのか魔物達の物かはわからない。
「出撃の準備が出来ました」
騎士団長が王の前に進み出てきた。
「王都の防衛が任務だ。決して手柄を上げようと思うなよ。下手すると巻き込まれるぞ」
味方と認識されない場合、切り捨て御免かもしれない。手柄を上げようと、彼らのジャマなんかしたら、彼らの戦力が王都に向いてもおかしくない。
「しかし…」
「命は大事にせよ」
「はぁ!」
しかし、王の言葉を真摯に受け取らずに、王都の門で守備陣形を取らずに、森へと走って行く騎士団、そして冒険者達。
「何故アイツらは、私の言葉を無視するのだ?」
「余っ程、手柄が欲しいのでしょうね」
新参者の公爵家の手柄では、王都を護る騎士としてのプライドが許さないのかもしれない。
---ダン----
俺が向かうと、そのヤバいのは既に地中に潜っていた。
「何が出た?」
「ワームだよ。巨大なワーム」
大きなミミズ?ハンバーグに最適か?内臓は直腸程度しか無い上、骨も無い。内臓の取り出しが意外に楽な食材である。
「そうなると、地表の音に反応しているのか?」
ワーム達は耳も目も鼻も無い。その代わり触覚が優れており、地面の振動を全身で感じとり、獲物位置を見つけるのだ。
王都方向から、何かの大群の気配を感じる。新敵か?王都の方を見ると、王都から騎士団が駆け寄って来た。ワームのエサが押し寄せて来ている。そう思った瞬間、彼らの群れの中心辺りの地面が盛り上がり、多くの騎士達が巨大ワームに飲み込まれていった。突然の地面の震動で、馬たちがパニクり、騎士達が次々と落馬していく。それを巨大ワームが次々と丸呑みしていた。
「どうする?」
「どうするって…アレ攻撃すると、騎士達も冒険者達も巻き込むと思う」
食材として考えるなら、体液をドレインして、動作を鈍らせれば良いが、倒すとなると、丸呑みしている処を叩き潰すのが良い。丸呑みが終わると、地中に潜り、叩けなくなるから。
「なんで、このタイミングでエサを撒くかな。あの王って、アホ毛あったっけ?」
「王冠を被っているから、分からない」
そりゃそうだ。じゃ、倒しますか。機龍化して、丸呑みして潜る動作に入った巨大ワームにメーサー砲を頭からケツに向けて開きにする感じで焼き切っていく。焼き切った直腸から、丸呑みされた騎士や冒険者達の遺体が次々に零れ落ちていった。サトゥーが走り寄り、遺体を避けて、巨大ワームの肉だけを適当な大きさに切り分けながら、空間収納庫に収納していた。
焼き斬り終わった俺は、機龍化を解除して、次の戦場を探す為、上空へと舞い上がった。
---エレローラ---
蒼い装備の戦士が、突然銀色に輝く巨大なドラゴンに変身した。その光景を目撃した私達は、しばらくの間固まっていたと思う。ドラゴンの口からブレスが放たれ、巨大なワームが切り開かれていき、丸呑みされた騎士や冒険者達が、次々に落下していく。それを只見ていることしか出来ない。私達は無力な人間である。あんなの相手に勝とうと思ってはいけない。
「エレローラよ…これは夢か?」
「いえ…現実ですわ…」
使命を負えたのか、巨大なドラゴンは蒼い装備の戦士に戻り、また上空を駆け巡り始めた。
「クラン<楓の木>は、あんなのばかりなのか?」
「どうでしょうね。私も初めて彼らの戦闘を見たので…」
これに比べれば、クマ姿の不審人物が可愛く見える。
「人質を出した方が良いか?」
「どうでしょうね。好みが分かりませんし」
あれ?クランマスターって、女の子だっけ。そうなると王子を人質に…
「さて、どうしたものか…和の国の一件も、褒美がまだだしなぁ」
それを言うならドラゴンの鱗も、予定枚数の支払いがまだである。どうする気だろうか。