---ダン---
今日の狩りの参加者を、それぞれの駐留地へ送り届けていく。任意の転移術が使える俺、ミト、サトゥー、マイルの役目である。ユナも使えるようになったらしいが、転移門を設置した場所にしか転移出来ないそうだ。適材適所で良いだろう。
送るついでに、上空から見た感じの、それぞれの反省点を伝えていく。
「メイプル、盾の使い方を練習しろよ。シールドバッシュばかりだと、狩り禁止にするぞ」
「うっ!」
アドバイス程度であるので、教育的指導はしない。なのに、こめかみを押さえて蹲っている。
「何をしているんだ?」
「だって、ダンさんのグリグリって痛いんですよ。VITがMAXなのに、痛すぎです」
「じゃ、頑張って鍛えろよ。痛くないようにな」
メイプルは突き放し気味が良い。舞い上がったり、力むと噛むし…平常心でこそ、最大火力が出るのだろう。
皆を送り終えて、クリモニアの冒険者ギルドへ向かった。
「指名依頼を終わらせたぞ」
巨大ワームの魔石を、ラーロックの目の前に置いた。
「おい!うちでは払えないぞ。王都の冒険者ギルドへ行けよな」
何、逆キレているんだ?確かに、ここには金は無いなぁ。
「ただ、依頼の終了を知らせに来ただけだ。こっちも金には困っていない」
トンネル通過運賃と、専用馬車で、ホクホクになる予定である。
◇
翌日、久しぶりに、ギムルの街に。グラトニーと共に、肥だめの清掃である。栄養価満点の培養土が貰えるのが嬉しいクエストである。その後に温泉旅館経由でモーガン商会へ、向かった。
「エチゴヤの評判は聞いておりますよ」
「悪名?」
「いえいえ、ランクAになったそうじゃないですか」
それは取引高が高いからである。更に言えば、ドラゴンの鱗のおかげとも言える。
「エチゴヤとの取引があるだけで、ステイタスですぞ」
あれ?ステイタスって、貴族相手に商売していたっけ?
「それで、この前のオークションの結果ですが…」
あぁ~、オークションを仲介して貰っていたなぁ。ドラゴンの鱗とか古銭とかを…想像していた額よりも儲かったようだ。これなら、あれこれ、出品できるかな?
「最近、開発した調味料なんですが、ご意見、ご感想をお聞かせください」
営業モードの言葉遣いで対応する俺。今回、持ち込んだのは、エチゴヤ製の味噌、醤油、そして豆腐である。まだ、エチゴヤ本店に並べていない商品とも言う。
「ほぉ~、遂に完成しましたか。これが豆腐ですかぁ…」
豆腐は鮮度が命、豆腐には旅をさせるなと、有名グルメ漫画に書いてあったし。刻みネギを散りばめ、醤油を適量掛ける。
「後、コチラが納豆です」
「えっ…これは腐っているのでは?」
「豆を熟成した物です。発酵と腐敗は別物です。これがダメだとチーズもダメでしょうね」
チーズも取り出してみた。
「あぁ、これらの味がわからないと、エチゴヤさんの料理は食べられないのですね」
目の前で、納豆汁を調理して、提供した。
「う~ん、旨いですなぁ~。これが腐った豆とは…」
だから、腐っていないって!!
◇
異世界生活にも慣れ、最近リア充している。面倒事が多いが、それも楽しく感じる自分がいる。さて明日は何をしようかなって、思いに耽っていると、
「ダンさぁぁぁぁぁ~ん!」
突然、上から声が聞こえた。これって、メープルか?上を見上げると、グキッ!と首の骨が折れる音、その直後に目の前が真っ黒になった。
またかよ…今度はどんな世界だ?
(完)
ダンに報われる日が来るのだろうか?