デスを食らった男   作:もっち~!

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第六回イベント

「次回のイベントは2月だそうだ」

 

情報通のクロムが自慢げに話している。

 

「2月かぁ~」

 

洋菓子屋にとっての稼ぎ時である。

 

「ダンさん、どうしたんですか?浮かない顔をして」

 

メイプルが俺の顔をのぞき込んだ。

 

「2月って、リアル世界でイベントがあるだろ?俺とアスカは参加出来無いかもだな」

 

誰が考えたんだ?バレンタインデーなんて…チョコレート業界の陰謀か?

 

「あっ!そうか。リアルでは忙しいんですね」

 

流石、察しの良さは天下一品なサリー。

 

「まぁ、その日を超えれば、大暴れするかもだ」

 

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。固まるまでの時間はイン出来ると思う」

 

生チョコで無ければ、固くなるまで、デコレーションは無理だな。

 

「あれって、配合とかあるんですか?」

 

俺とアスカとサリーしか参加していない。他のヤツラは俺達の家を知らないんだな。

 

「企業秘密だよ。一般家庭だと買えない銘柄もあるから…近所だし、来れば食べ比べさせてあげるよ。試作品だけどね」

 

「絶対に行きます」

 

何故、メイプルは不思議そうな顔の一団に含まれているのだ?

 

「ねぇ、話が見えないんだけど…」

 

イズが堪らず訊いて来た。

 

「あぁ、アスカの中の人は、パティシエなんだよ。正式にはパティシエールだけど」

 

フランス語は面倒である。男性形、女性形など、1つの単語に2つの言葉があるのだ。日本で定着しているパティシエは男性形で、パティシエールは女性形になる。

 

「アスカさんて、ケーキ職人さん?」

 

カスミに聞かれた。

 

「う~ん、職人では無いかな。まだ見習いだよ」

 

「ダンさんは?」

 

ミィに訊かれた。いつの間に来たんだ?

 

「俺は、アスカのアシストだよ。だから、バレンタインデーの前は、試作とか仕込みとかで、イン率が悪くなると思うんだ。あの日を超えたら、バリバリPKするよ」

 

「そうすると、アスカさんの菓子作りって、PSなのかしら?」

 

俺の言葉をスルーして、質問をするイズ。

 

「まぁ、そんな感じだよ。ただ、流石にゲーム内だと材料が限られちゃうから、多彩には作れないけどね」

 

アスカを中心に話が盛り上がっている女性陣。

 

 

 

---サリー---

 

2月に入ると、イベントの詳細が分かった。通常フィールドで、イベントフィールドへ行けるアイテムをゲットするのが、第一段階だと言う。問題は、その入場券的なアイテムが山積みになって、ギルドホームに置いて有ることだ。誰がやらかしたんだ?

 

「これって、ダンさんぽいよね?」

 

マイの言葉…そう、彼は第一容疑者である。

 

「みんな、おはよう!」

 

メイプルがホームにやってきた。

 

「ダンさんからの伝言、AGIがゼロな人が多いから、入場券を狩って来たから、自由に使ってって」

 

予想通り、第一容疑者は下手人だった。

 

「これって、PKの結果だよな?」

 

クロムが苦笑いしている。

 

「さて、行って来ようっと」

 

メイプルは入場券的アイテムを使い、イベントフィールドへ転移していく。

 

「俺も使わせて貰うよ」

 

クロムが転移すると、皆が次々に転移していった。じゃ、私もだな。入場券には入手先は書かれていないしね。

 

 

 

---ダン---

 

漸く解放された。さて、イベントを楽しむかな?アスカと共に、イベントフィールドに飛んだのだが、別々の場所に転移したようだ。効率良く回るには案内人が必要だな。ミィにメッセージを飛ばし、合流した。

 

「遺跡を見つけて、探索がいい感じかな」

 

俺と二人の時は素のミィ。金色装備の俺にはモンスターは寄りつかず、PKばかりしている。俺とミィを襲う?アイツらバカか?

 

このイベントフィールドでは、HP回復アイテムとHP回復スキルが使用不可というが、勝手に再生してしまう【自己再生】は使えている。なので、ミィの盾をしている俺。

 

遺跡探索よりも重要なアイテムを見つけた。濃厚な蜂蜜である。前回同様、女王蜂を倒すと得られる。気づくと、俺達は蜂蜜ハンターになっていた。何回目かの周回プレイで、働き蜂を追っていくと、他の蜂蜜ハンターに出会った。

 

「ダンさん、ミィさん?」

 

メイプルとペインがいた。

 

「蜂蜜を渡せ!そうすれば命までは取らない」

 

「はぁ?ダンか?お前とは戦い…」

 

前口上が長いと死ぬぜ。ペインがドット落ちして消えていく。

 

「メイプルは敵か?」

 

「な、な、何を言っているんです。仲間ですよ。で、蜂蜜をどうするんですか?」

 

「アスカに渡して、なんか作らせるんだ」

 

「あぁ、それは手ですねぇ」

 

こうして、蜂蜜ハンターは3名になった。蜂を倒すのは簡単である。金色装備に帯電しているエネルギーを放電するだけ。蜂の針が避雷針となり、感電死してくれるのだ。帯電エルギーは歩くだけで補充出来るし。

 

「ダンさん、また先を行ったんですね」

 

涙目のメイプル。蒼き装備に変えて、メイプルをオンブしてあやす嵌めに…因みに金色装備で背負うと、メイプルがデスします…

 

「親子三人でハイキングって感じですね」

 

ミィのテンションが上がった気がする…

 

 

遺跡を見つけたので、1つくらいは探索をしてみる。俺、メイプル、カエデ、コンコン、ミィに、襲い掛かる無謀なモンスターの皆様。俺達にザコが勝てる訳ないだろうに。メイプル、カエデの絶対的防御、コンコンの妖術、俺の32連打、ミィの高火力魔法。ボスクラスで無いと、勝て無いぞ、きっと。

 

洞窟内では、コンコンが照明代わりに狐火とか人魂を出してくれ、暗くても問題は無い。

 

ゴーレムエリア、【ウッドオクトパス】の地面から垂直に飛び出す貫通攻撃で一撃で8体仕留める。俺のカバーはカエデ担当である。

 

「なんか、このパーティーは楽しいですね」

 

メイプルが楽しんでいる。ミィは余裕があるし、先へ進むか。

 

「お~い!ダン!」

 

後方から名無しの大盾の声が聞こえた。振り返ると、クロム、ミザリー、カナデ、マルクスがいた。ミィの表情が固くなっていく。あぁ、ミィの素を知らないマルクスがいるので、炎帝を演じるようだ。訳知りの皆は、ミィを暖かい目で見る。

 

「う~ん、何も言うつもりは無いが、最強パーティーか?」

 

クロムに訊かれた。

 

「いや、アスカがいない」

 

アイツ、どこにいるんだか?いや、それよりも、ミィをリラックスさせてやりたい。マルクスの背後に回り、腕を首に回し、一瞬で首の骨を折ってやった。マルクスがドット落ちして消えていく。

 

「ミィ、これで素で通せるだろ?」

 

「あっ…ありがとう…」

 

ミィの表情が炎帝から少女へと戻っていく。

 

「それだけの理由でマルクスを?」

 

クロムが驚いている。

 

「お前にとって、それだけかもしれないが、俺にとっては、フレンドの居心地の良さの方が、重要なんだ。お前も消えるか?名無しの大盾君」

 

「うっ…いや…わかった。見なかったことにする」

 

「そう、それが良いぞ。あぁ、掲示板で書いたのを見かけたら、俺達兄妹は、お前を敵認定する。たとえ、同じギルドであってもだ」

 

クロムの顔は青ざめている。

 

「さて、先に行くか。ケツ持ちは名無しの大盾君だ」

 

先に進む俺達一行。

 

 

暗い階段…ミザリーがランタンを出してくれた。狐火、人魂よりも明るい。しかし、コンコンの出してくれた照明達は、ランタンの灯りが届かない箇所を照らしてくれている。

 

階段の先に大きな扉があった。メイプルが押したり、引いたりしているがびくともしない。

 

「力自慢ってことは無いが、メイプル、どけ!」

 

メイプルがどいたので、ドラゴン装備に変えて、【機龍】の尻尾で一発…粉々になる扉。力は正義だな。

 

「う~ん、その装備、ずるいなぁ~」

 

「そうか?俺はメイプルの天使がずるいと思うぞ」

 

「う~ん、そうかもしれないね。なんか、褒められた感じだよ」

 

褒められたと思ったのか、メイプルの表情が明るくなっていく。褒めてはいないんだけど

 

扉の向こうには迷路が展開していた。こういうのは、得意なヤツに任せれば良い。カナデに丸投げした。カナデの先導で、迷路を進んでいく。

 

「う~ん、ミィさんが、移籍したいって言うのが分かるわ」

 

俺に話し掛けて来たミザリー。

 

「そうか?」

 

「そうよ。適材適所が行き届いている上、仲間優先で外道なマネを出来る人もいるし」

 

後者は俺かな?

 

「ミザリー、ギルドホームの雰囲気を忘れてはいけないわよ」

 

「そうね。あのホンワカ感は居心地が良いですよね。部外者の私達が行っても、雰囲気が壊れないのもいいなぁ」

 

他のギルドは、違うのだろうか?

 

「戦闘になると鬼畜以下だぞ。仲間でも容赦無い時もあるし」

 

クロムが後方から話に加わってきた。

 

ギルマスのメイプルは、俺の背中で寝ている。緊張感の無さを、まずは論じるべきでは無いか?カエデを片手で抱っこし、もう片腕にはミィが抱きついている現状。鬼畜を論じる前に、今の状況を論じて欲しいものだ。

 

「普通なら、緊迫するシーンだけど、このメンバーだと、コレもありですよね?」

 

論じずに、賛同しているミザリー。凶悪なモンスターや即死クラスの罠をするりするりとすり抜けていく。罠はカナデが無効化し、モンスターはコンコンと、カエデが蹴散らしていく。この二人でもダメな場合、ポチが出てきてかみ殺しているし。俺の出番は無いのか?

 

そして、今までと雰囲気の違う部屋に辿り着いた。メイプルを起こし、警戒を強めていく。部屋の最奥には、金と宝石で飾られた大きな棺が一つ置かれているだけである。こういう場合、棺からアンデッドって、パターンかな?俺は【ウッドオクトパス】で、棺の真下から貫通攻撃を真上に向けて放った。

 

棺は砕け、粉々になった骨が辺り一面に散らばっている。その骨片はドット落ちして消えていく。

 

「なんだ、何も無かったのか?」

 

俺と使い魔、メイプル以外の者達が目を見張っていた。

 

「い…いたんだろ?その骨…スケルトンだったんじゃ…」

 

クロムが重い口を開けているようだ。俺はカエデの【身捧ぐ慈愛】のエリアに入りながら、棺のあった場所へと近づいて行く。

 

「人数分の巻物とメダルがあるぞ」

 

なんか、呆気なかったな。まぁ、皆で山分けして、ギルドホームへ戻るか。

 

 

翌日からは、イベントフィールドで、アスカと共に、食材探しを始めた。手持ちの食材では、あの濃厚蜂蜜を生かす食材が無いのだ。まぁ、途中で狩りもしているけど。

 

「ペイン!みっけ!」

 

アスカの近接攻撃で、股間から頭上に向けて、真っ二つに切り分けられたペイン。最強プレイヤーのペインのデスシーンを見ているヤジ馬達を、俺が屠っていく。

 

「獲物はいるのに、食材が無いねぇ」

 

「もしかて、モンスターがドロップするのか?」

 

「あぁ、可能性はあるねぇ」

 

モンスターを片っ端から狩る俺達。

 

「ねぇ、あの赤い花…」

 

ドロップ品はジャムだった。

 

「ダメだな。フレッシュなフルーツが欲しいのに…」

 

「そうだ!1層のカフェで、仕入れ先を訊こうよ」

 

あぁ、確かに、あそこにはフルーツケーキがあったなぁ。

 

 

 

---サリー---

 

久しぶりに鬼畜兄妹とギルドホームであった。何をやらかしたんだ?ホーム内に甘い香りが漂う。当然のようにミィとミザリーがケーキでティータイムを過ごしている。ここってカフェにでもなったのか?

 

「よぉ~、サリーじゃないか」

 

「これはどういう事態?」

 

ダンさん達は、イベントで濃厚な蜂蜜を大量にゲットしてきたそうで、それで甘味の開発をしていたようだ。

 

「ミィとミザリーには、試作を食べて貰っていたんだ。サリーも喰うか?」

 

出されたケーキを一口食べてみた…はぁ?何、この美味なる物は…

 

「うまいだろ?」

 

「うん、うん、おいしい…」

 

「作った甲斐があるな」

 

だけど、材料はどうしたんだろうか?

 

「ねぇ、このパイ生地はどうやって再現したの?」

 

「それは…訊かない方がいいよ」

 

なんか、やらかしているのか?

 

「訊かない方が良い食材?」

 

「そうだな。ここはリアルと違う挙動をする食材が多いから…へたに訊くと、喰えなくなるぞ」

 

ははは…笑うしかない。それは、普通、食べない物なんだろう。何かの死体とか死体とか…

 

 

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