---サリー---
メイプルはあのビキニを手に取り、装着しようとした。だが…
「あれ?試着できない。なんで?えっ…これ、装着条件があるんだ。」
手に取らないと、装着条件が見えないらしい。私も手に取り、装着条件を見た。
『1.女性であること 2.アバターの胸のサイズが中以上の人』
胸のサイズ?アバターのだよね?たぶん、メイプルと私、マイユイコンビはダメなんだろう。
「えっ!えぇぇぇ~!私もダメなの…」
フレデリカが撃沈していた。私よりも大きく見えるのだが、パッド入りの服装だったのか?フレデリカの手から離れたビキニは、無表情のメイプルが手に取り、倉庫にポイした。
「きっと、呪われた装備なんですよ」
頷くフレデリカとマイユイコンビ。
「次のイベントはなんでしょうね?」
話題を切り替え、メイプルの顔に表情が戻った。ミィの視線は倉庫に向かっている。ダンさんに、
「ミィに着て欲しい」
って、言われたからだろう。が、彼女には無理だな。
『運営からのお知らせです。上級者向けのエリアが開放されます』
みんなのメニュー画面が一斉に開いて、運営からのお知らせが表示された。
「あのエリアかな?」
メイプルが私を見た。テストしたエリアの可能性は大きい。
「取り敢えず、みんなで見に行こうか」
開放は来週のようだ。
◇
開放日になり、新しいエリアに向かう扉に、向かうプレイヤー達の波。どう見ても上級者に見えない装備の者が多数いる。大丈夫なのか?あの運営が自信を持って開放したエリアだぞ。
扉を潜ると、目の前に町が広がっていた。円形都市のようで、町の中心には高くそびえる塔があり、町の外周部には円周に沿って、高い壁が囲んでいた。
「ここは、アソコじゃないな」
と、ダンさん。
「どうしてですか?」
「塔には外通路が無い。あれは、別物の塔だ」
メイプルの問いに答えたダンさん。
「それに、パーティーの解除が出来無い」
パーティーの解除?あっ、本当だ。パーティーメンバーが、私、メイプル、ダンさんで、解除のボタンが無い。
「まだ、ベータテストは終わっていないってことだ」
あれ以上の試練が待っているのか?まぁ、楽しいけど…
「あっ、俺がパーティーリーダーで、残りの7名がパーティーメンバーになっているぞ」
クロムさんが声を上げた。イズさんもパーティーメンバーってことか。まずは町の探索だな。ギルドホームがあるかを探さないと。
「この町の家って、個人でも買えるみたいね。ギルドホームは、町の北にあるみたい」
イズさんが、掲示板を読んでいた。先駆者達が、情報を上げてくれたようだ。まずは、町を探索しながら、ギルドホームを目指した。
---ダン---
アスカが唸っている。狙撃が出来るエリアが無いのだ。塔には窓が無く、外周に出ることは出来ず、狙撃ポイントにはならないようだ。
「私の楽しみを…塔の中でPKすれば良いのかな?」
どうなんだろうか?パーティー戦だからな。
塔へ向かう俺とアスカ。だが、俺は入れなかった。やはり、ベータテストを優先なんだろうな。アスカは一人で大丈夫か?ギルドホームを見つけ、中に入ると、イズとカナデがいた。
「どんな感じ?」
「見慣れた風景ね」
遜色は無いようだ。壁に埋め込まれた大きなモニタに、ここでのルールが表示された。塔内でのデスペナは、ギルドホームにリスポーンで、ギルドにはいっていない者は、中央広場の噴水前だそうだ。塔内でのログアウトは10フロアごとの町か、階段エリアだけで、それ以外のフロア部分は休憩扱いになり、不定期でリスポーンするモンスターの攻撃対象になるようだ。
「確かに上級者向けね」
「ここのルールに合わないやつは、基本エリアに戻れば良いんだろう。だけど、ゲームとしての面白みは、こっちだな」
「えぇ、そうね」
ログイン時には、ギルドホーム若しくは噴水前なのは、デスペナ時と一緒で、ギルドホーム内にある転移陣を使うと、ログアウトした場所にリスポーンするらしい。これは待ち合わせて攻略するには良い方式である。
「ここで、みんなに会えるのはいいわね」
さてと、転移陣で、俺はどこに出るんだ?転移陣に載ると、見た事の無い町に出た。町には宿泊施設があり、アイテムショップがある。食材屋もあるなぁ。
メニュー画面を呼び出すと、ここでのルールが表示された。基本、ログアウトは町の宿泊施設で利用料を払うことで出来る。それ以外の場所でログアウトするには、キャンプセットを購入して使用するようだ。
通貨は、モンスターのドロップ品などを売ることで得られる。道ばたに落ちている物でも売れる物があるのかもしれない。尚、買い取り価格、販売価格は変動相場制のようだ。厄介な仕様だな。
「あっ!ダンさん」
サリーがやってきた。
「まずは、このエリアの通貨を稼ぐことですね」
「いや、両替屋もあるから、あっちのエリアの通貨を両替出来るようだぞ」
交換しすぎると、両替レートに響きそうだな。一応試しで、1000万ほど両替した。
「えっ。両替レートが変わった」
俺のレートの半分くらいの価値になったサリー。
「取り敢えず、俺の通貨で暮らそう」
「はい…」
今、両替をすると大損である。次にアイテム屋へ移動し、売っている物と買い取り価格をチェックする。キャンプセットは必須だろう。変わった物だと乳鉢がある。これがあると薬草類をを自分でポーションへと加工ができるようだ。
「リアルに近い設定ですね」
「だな」
「あっ!ズルい!」
メイプルが来たようだ。若奥様風に、ダンさんの腕を抱いていた私。この前は、お前が抱いていただろうに。
◇
翌日、攻略に出ようとすると、このエリアでは試練を乗り越えるようだ。その試練とは…第一の試練、ダンジョン内で一人につき、スライムを1000匹討伐…スライムだけのダンジョンでは無いのに、スライム1000匹?
「メイプルが不利だな」
ここのスライムは麻痺しないみたいで、パラライズシャウトが効果無し。
「えっ、ぇぇぇぇぇぇ~、スライムさん、待ってぇぇぇぇぇ~」
スライムはメイプルを見かけると逃げていく始末。完全なメイプルへの試練であった。私とダンさんがクリアした後、ダンさんがメイプルに耳打ちをすると…
「なるほど…やってみます」
って、機械神になって、ダンジョンに向けて砲撃を開始した。
「ダンジョンを破壊すれば、スライム1000匹程度道連れに出来るだろ?」
ダンさんらしい発想により、メイプルは砲撃3日目にして、クリアした。いいのか、それで…
次の試練は洞窟タイプのダンジョンで、モンスターハウスを一人につき5個殲滅とある。今度のネックはメイプルのSTRである。モンスターハウスをまず堀当てるのだが、掘る道具であるツルハシが装備出来無い。悪魔化すればSTRはゼロでは無くなるが、悪魔ではツルハシは装備出来無い。装備条件が人間であること…明らかに、メイプル狙いだな。
「え?!それって、差別ですよねぇ?」
ダンさんに泣きながら抱きついている。そこで、ダンさんの取った手は、堀り当てたと同時にメイプルをモンスターハウスに投げ込むことだった。モンスターハウス内のモンスターと最初に交戦した者が、カウント対象であることに気づいたそうだ。
「まぁ、楽しめるからいいか」
ダンさんが楽しいならいいか。たまに、メイプルとカエデを間違えて放り込んでいるけど…
このエリアに来て1週間もすると、あちらではイベントの告知があったそうだ。
「対人戦イベントだよ。倒した人数勝負のようだよ。モンスターはレベルによって、獲得ポイントが代わるようだ」
クロムさんから説明を聞いた。フィールドはイベント専用フィールドのようだ。
◇
そうそう、ベータテストのバイト料が振り込まれたのだが、中学生が手にして良いか悩む額であった。
「最低賃金に色を付けて貰ったよ。ゲームしたいのに、テストに参加しているんだからな」
ダンさんが運営とバイト料の交渉していたようだ。ちなみに、メイプルはお菓子の家の資金にするそうだ。私はどうするかな?将来に向けて貯金が妥当か?
「うん?サリー、メイプル、運営から報酬が来ているぞ」
と、ダンさん。何の報酬だ?メニュー画面を開いて見た。バイト料のゲーム内での報酬のようだ。ゲーム内で、個人宅が貰えるとある。早速、三人で貰えた家を見に行った。ギルドホーム街を抜けて、北門を出ると、段々畑状の棚地に家が建ち並んでいて、頂上近くの三軒長屋が私達の家のようだ。長屋と言うには多少語弊がある。一軒一軒がお屋敷であるのだった。隣あった壁にドアでも有るのかな?
「じゃ、ダンさんは真ん中ですね」
って、メイプルが右手の屋敷に走って行った。
「サリー、一緒に見に行くか?」
「はい」
ダンさんからのお誘い、断る訳が無い。一緒にお屋敷を見て回る。3階建てで、地下には鍛錬場がある。これって、ギルドホームのような造りである。
『新エリアを開放します。南門より出て、数々の試練を乗り越えた者は、真のダンジョンに到達でき、そこでお宝を目にするでしょう』
と、いきなり運営からのお知らせが届いた。
「ベータテストしたエリアだろう。テスト段階よりも、難敵になっているだろうな。一旦、ギルドホームへ戻ろう」
メイプルを呼びに行き、三人でギルドホームへ戻った。
◇
イベント前のタイミングで、新エリアの開放のお知らせだったので、みんな戸惑っていた。
「イベントよりも新エリアに興味がある」
カスミはイベントを回避のようだ。
「問題は1パーティー8名の問題だな」
楓の木はベーターテスターが3名いるので、情報に長けている。もしかすると情報も報酬の内か?
「8名じゃつらいの?」
イズさんが質問してきた。
「メイプルとカエデを使って乗り切った場所がある」
「えっ…」
絶句するみんな。このゲーム内で一番固い2名を盾にして、乗り切った外通路。10フロアごとに町があるから、実質10フロアごとに外通路がある。
「サリーがいてもダメなのか?」
カスミに訊かれた。
「前後には動けるけど、左右には無理。空中に足場を作る能力があるけど、敵は縦横無尽に動いて特攻してくるわ。足場の配置が少しでもズレると、死ぬわね」
なので、守ってもらった。相手は今まで以上に賢いので、足場を狙って来るだろう。
「本当の意味での上級者向けだと思った方がいいな。試練の2つはメイプル殺しに近いし」
スライム1000匹とモンスターハウスだろう。その他にも、私を助ける為に、ダンさんが死んだエリアもあったし。
「パーティー2つで協力して進むのが良いだろう」
◇
更に翌日、インをすると運営からのお知らせの追加があった。新エリアでの通貨について、物価について、私達が知っている情報と、私達の聞いていない情報…複数パーティーでの協力プレイもあり、エリア内の町以外でのPK解禁などなど。
「やっと、PK出来る」
アスカさんが喜んでいる。塔内ではPK不可だったらしい。
「で、このギルドに新メンバーをスカウトしてきたよ」
ギルドホームの倉庫のドアを開くダンさん。玄関のドアじゃないの?何故…って、あっ!そういうこと…あの呪われたビキニを恥ずかしそうに着ているミィとミザリーが出てきた。
「似合うぞ、ミィ」
「えっ…本当ですか?色々な部分がスゥスゥするんですけど…」
そこには炎帝のギルマスではなく、ただの恥ずかしそうな少女がいた。
「う~ん、何故、私も?」
何故か、呪われたビキニは2着あり、ミザリーも着ていた。
「ミザリーはなんか、はち切れそうだな。まぁ、切れることはないか」
クロムさんの視線は、ミザリーの見えそうで見えない股間をロックオンしている。あれが男のサガってやつかな。
「まぁ、これで、二人共魔力不足に悩まないでいいな」
ダンさんは、効率優先のようで、視線をロックオンさせずに、思考モードのようだ。
「ミザリーとミィ、あと、フレデリカとアスカは俺のパーティーに入れて、メイプル達のフォローに回る。一方、俺達が危ない時は、メイプル達がアシストに回ってくれ」
豪勢な布陣である。
「炎帝ノ国はミィとミザリーが抜けても大丈夫なの?」
イズさんが質問をしてきた。
「この二人がいても役立たない。そんな生やさしい仕様じゃない。人数の多いギルド向きでは無いんだよ」
ギルド戦であれば、数の暴力は有効である。が、新エリアのシステムを考えると、人数が多いと金欠になる。ログアウト時にゲーム内通貨が必要である。それも人数分。今までのシステムでは、お金の重要性をあまり意識しないでも良かったけど…
「新エリアの攻略に出れば、大人数ギルドは崩壊していく。後、みんなでワイワイしていたいプレイヤーも減るだろう。まぁ、元のエリアが、ソイツらの受け皿になると思うけど」
「確かに、あの塔の攻略は縦列進軍しか出来無い。多人数では先頭パーティーしか戦え無いなぁ」
カスミが頷きながら、感想を述べた。
「しかもワンパーティー8名のルールだ。後方集団には旨みも面白みもないと思う」
それがネックだよな。ギルド戦でなくて、パーティーアタックだと、大人数でいる意味は少ない。
「まぁ、この先の展開を説明した上で、ミィとミザリーを貰った。その代わりに、炎帝ノ国から相談されたら、人員は貸す、情報は流す、ゲーム内通貨はある程度融通する、って条件を出して、了承してもらったよ」
ある意味、ありの交換条件だ。
「ペイン達はもう向かっているだろうけど、南門へ向かおう。サリー、ギルド情報にパーティーを設定してくれ。メイプルと俺をだ」
ギルドメニューの画面を開いて、設定をしておく。ギルド所属のパーティーの設定は、パーティーリーダーを設定すれば良いみたいだ。
「さて、南門へ行こうぜ!」
ギルドマスターはメイプルなのに…って、ダンさんの背中で安眠中だった。いいのか、うちのギルマスよ…
演じなくても良くなったミィは強いのだろうか?