デスを食らった男   作:もっち~!

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試練 Part1

 

---サリー---

 

南門までシロップで移動。ミィとミザリーはポンチョを羽織っている。流石に、あの姿では街中には出られないようだ。

 

「戦わない時は、通常装備で良くない?」

 

アスカさんの一言で、威厳のある姿に戻ったミィとミザリー。南門の手前でシロップから降り、門を潜った私達。目の前には、ベータテストで見慣れた街並が広がっている。そうなると、最初の試練は、メイプルキラーか?

 

「ここにはギルドホームは無いのか?」

 

クロムさんが訊いた。

 

「無い。ただ、ログイン時とデスペナ時には、皆ギルドホームにスポーンすると思う」

 

町の広場に掲示板があり、ここでの試練の内容が表示されていた。

 

『ダンジョンでスライムを一人当たり1000匹討伐せよ。尚、ファーストアタックした者だけに討伐ポイントが入る』

 

やはり、そう来たか。が…

 

「俺と、サリーとメイプルは、試練の免除があるようだぞ」

 

メニュー画面を開くと、【試練免除】と表示されていた。そうなると、試練はしなくても良いのか。いや、そうもいかないようだ。

 

「みんなのアシストに回るぞ」

 

と、ダンさん。みんなの試練に付き合う必要があるようだ。パーティーメンバーが試練を乗り切らないと、パーティーとして、クリアしたことにはならないようだ。

 

「えぇぇぇぇぇぇ~、私、役立て無いよ~」

 

メイプルがベソをかいている。テストでの体験が蘇ったのだろう。メイプルを見て、全力で逃げ出したスライム達。足止めはダンさんのスラリンで

出来たのだが、ファーストアタックがダンさんになり、メイプルが全部倒しても、メイプルにはポイントは付かなかったのだ。

 

「ここでのネックはマイユイコンビだな。メイプルの時みたいに逃亡しないだろうから、多少は楽かな?」

 

全員で入り、まず感触を確かめて、誰が誰をアシストするかを決める。

 

「スライム以外にミノタウロスが出る。だから、防御に不安のある者はメイプルか、カエデと組んでくれ」

 

違うパーティーでも、同じギルド内では人員のトレードが出来るようだ。まず、ダンさんは、ダンさんのパーティーメンバーのクリアをするようだ。その間、マイユイにメイプル、イズさんとカナデには私がサポートしていく。ミノタウロス相手では、こちらにダメージが入るからだ。ちなみにメイプルの『身捧ぐ慈愛』は使えない。保護エリア内にスライムが入って来ないのだ。天使姿を見ると逃げるスライム達…心が折れるメイプル…

 

「メイプル、ミノタンが来たら、カバームーブよ!」

 

「だね…」

 

このダンジョンは、メイプルと相性が悪すぎる。

 

「どの位でクリア出来たの?」

 

イズさんに訊かれた。

 

「メイプルはチート技で3日です。正攻法ではクリア出来無いというか…」

 

「あぁ…これがメイプル殺しのダンジョンなのね?」

 

「いえ、もう1つ有るんですよ」

 

あのモンスターハウスは、もっと厄介だ。イズさんで、ファーストアタック出来るかな。ファーストアタックに関しては、アシストは出来無い。アシスト行為がファーストアタックに成りかねないからだ。それで、ダンさんは投げ込むと言う荒技に出たのだった。

 

たまに、洞窟が揺れる。下層で激しい戦闘をしているのは、アスカさんか、ミィか?あぁ、フレデリカもいるわね。

 

 

 

---ダン---

 

こんな場所で出会うとは…

 

「炎帝と楓の木が手を組んだのか?」

 

聖剣のペイン、ドレッド、ドラグがいた。飛んで火に入る夏の虫である。フレデリカとアスカは死角に居るため、見えていないようだ。手信号で待機と指示を出した。

 

「男三人とはむさ苦しいなぁ」

 

ミィは演技プレイに入ったようなので、ミザリーの肩を抱いた。

 

「ナンパ師か、お前なんぞ怖くねぇよ。メイプルが居なければ問題無いカスだな」

 

あぁ、今日は普段着で有る為か、コイツら俺の正体に気づいていないようだ。カスと言われてもしょうがない程の軽装な俺。

 

「カスで結構だよ。身捧ぐ慈愛だ!」

 

カエデをこっそり召喚して指示を出した。、ミザリーとミィを保護する。メイプルにレベルをギフトしまくった為、カエデが思いっきり固くなっていた。メイプルはブレずに、VIT一択強化しているのだ。

 

むさいヤロー共が攻撃を仕掛けてくるが、ミィとミザリーには攻撃が入らない。アイツらからは死角でカエデは見えていないのだ。

 

「何?貴様まで、使えるのか?」

 

「一応、盾だからな。ミィ、攻撃しろ。ミザリーは援護だ!」

 

「「了解!」炎帝!爆炎!」

 

ペイン達に炎攻撃が飛んでいく。隠れる場がないダンジョン内。さぁ、どうする。アイツらは迷わずに、炎攻撃を無効化するポーションを飲んでやがる。

 

「あいつらの目の前に、蜘蛛の巣を張ってみて」

 

こっそりスラリンを召喚して、指示を出した。ペイン達の目の前と退路にスラリンの糸が張られ、ペイン達を一歩も出さないようにした。

 

「なんだ?この蜘蛛の巣は?」

 

ドラグが指で払おうとした瞬間、ヤツの指が切り離された。

 

「うっ…痛ぇぇぇぇぇ~!」

 

スラリンの糸は不壊属性の上、切れ味抜群であるのだ。

 

「何をした?」

 

動揺しているペイン。

 

「フレデリカ、昔のお仲間に砲撃して」

 

「了解で~す。多重水弾」

 

水の弾丸がペイン達を襲う。スラリンの糸は、味方の攻撃を透過させる。ペイン達は使い魔を出して来た。ドラゴン、狼、ゴーレムが盾になり、フレデリカの攻撃を防いだ。そんなの読んでいるよ。

 

「では雷撃!」

 

スラリンの糸に雷撃が発生し、水弾が弾けた水を通電し、ペイン達の使い魔達を麻痺させた。その場から指輪へと還っていく盾役の使い魔達。

 

「何?連携プレイだと!」

 

「同じパーティーだからね。これくらい出来無いとねぇ。アスカ!一気に殺すなよ。ミンチにする要領で殺せ!」

 

「アイアイサー、お兄ちゃん」

 

両手にレールガンを持ったアスカを見て、固まるペイン達。

 

「お前が…狙撃手か…」

 

「私ですか?お兄ちゃんの妹です」

 

更に恐怖を与えよう。俺はクイックチェンジで蒼い装備に切り替えた。

 

「何…貴様が、テロリストなのか…」

 

「うげっ!止めてくれ…痛っ!」

 

狼狽えるペインを尻目に、アスカはまずドラグを潰し始めていた。指の関節を貫通させ、手首を貫通させ、肩を貫通させ…身体の各部位ごとに分断させて

いく。

 

「止めてくれ…一気に殺してくれよ~。痛い…痛すぎる…」

 

ドラグは走って、俺達に寄って来るが、スラリンの糸でバラバラに斬り刻まれて、ドット落ちして消えていった。

 

「ダンさん、エグいですよ」

 

ミィが俺の方を向いた。

 

「一応、ブラックリストのテロリストですからね。この位しないと、運営が納得しないでしょ?」

 

標的のドラグが消え、次にアスカはドレッドの関節を撃ち抜き始めた。

 

「どうだ?カスに殺される気持ちは?」

 

手招きをして、天使モードのカエデを近寄らせた。

 

「何?メイプルもいたのか…ブラックリストは楓の木に所属なのか…」

 

何を今更…ドレッドが退路に張ったスラリンの糸でミンチになり、消えていった。

 

「お兄ちゃん、コイツはどうする?」

 

「試したいことがある『子羊の行進』『添い寝』」

 

その場で倒れ、悶えるペイン。

 

「よし、スラリン、カエデ、助かったよ。休んでくれ」

 

使い魔の指輪に戻っていくカエデ達。スラリンが消えると、スラリンの糸も消えた。

 

「じゃ、先を急ごうか」

 

地べたで、身もだえているペインを残し、先へと進んだ。

 

 

 

---サリー---

 

翌日、ギルドホームに行くと、皆疲れ切った顔であった。やはり、一人当たり1000匹はキツいよな。

 

「まだ、ダメか?」

 

「無理…」

 

ダンさんの問い掛けに、イズさんの心は折れ掛かっているように見える。

 

「そこで作戦を伝授する」

 

ダンさんが、何かに気づいたようだ。

 

「昨日のログアウト寸前に発見したのだが、スライムのリスポーンって、固定位置なんだよ。だから、リスポーン位置で待ち伏せして、倒すんだよ。経験上、リスポーンし切った後、5秒ほど動けないロスタイムがある。そこを叩くんだ」

 

経験?それは、初めてのゲームインでスポーンした直後に喰らった、メイプルの悪食攻撃のことか?メイプルが思い出したのか、真っ赤な顔で狼狽えていた。

 

「今日はその方向で行こう」

 

「それなら、行けそうね」

 

「まず、単独で叩けるクロムとカスミで違うフロアで試してくれ。必ずフロア毎に1箇所は最低有る。ただ、ダンジョン内では他のパーティーと交戦する可能性があるので、マイユイコンビはメイプルと行動、イズとフレデリカをトレードするから、サリー、フレデリカを頼む」

 

「わかりました」

 

「私をどうするの?」

 

イズさんが怯えていた。呪いのビキニの恐怖だろうな。

 

「今までに集めた素材で、売っていない物が作れるか、考察を頼みたい。売っていない物と良く売れる物は、高値で売れるからさぁ」

 

金策に走るようだ。確かに、金策は大事である。このエリアの見えない敵と言って良い。

 

 

 

---白峯理沙---

 

翌日、学校では連休を前にした小テストの結果が発表された。

 

「本条楓さん、よく頑張りましたね。クラスで一番ですよ」

 

担任に褒められ、立ち上がって、照れまくっている楓。えっ、なんで?私と同じ様にゲームに嵌まっているのに…

 

「えへへへ、それほどでも…てへへへ」

 

何が起きたんだ?このチート娘に…放課後、楓に訊いてみた。

 

「どうやったのよ?」

 

大差で負けるなんて…悔しい。

 

「え?えっとねぇ…テスト前の勉強をみて貰ったんだよ」

 

みて貰った?

 

「誰に?」

 

「正さんに…学校の先生よりも教え上手で、すっご~く、分かり易かったんだよ」

 

え…出遅れた。お近づきになるのに、そんな手があったのか。

 

「どうやって、教えて貰ったの?」

 

楓の両肩を掴み、訊き出そうと必死になっていた私。

 

「痛い痛いよ~。ゲームと違って、リアルの私は弱いんだよ~」

 

そうだった、そうだった。我に返って、楓の肩から両手を離した。

 

「テスト前に理沙が、お店に来なかった日があったでしょ?」

 

あった。用事があって、行けなかった。

 

「あの日、明日奈さんの仕事姿を見ていたら、明日奈さんが正さんのご両親に紹介してくれて、高校を卒業したらモロボシ洋菓子店で働きたいって、伝えてくれたの。そうしたら、じゃ、高校を卒業出来るように、今から勉強をしようねって、正さんに勉強を教えてくれるように言ってくれたんだ」

 

楓はリアルでもチートであった。何、その展開は…ズルい、ズルすぎる…

 

「じゃ、次のテストの時、一緒に勉強を見て貰おうね」

 

「うん…ありがとう…楓…」

 

楓は正さんをどう思っているんだ?そこも問題であるが、訊けないなぁ、流石に…

 

「あんなお兄さんがいたらいいなぁ。そうすれば、明日奈さんの妹さんになれるのにね」

 

お兄さん?正さんはお兄さん枠なのか?本当に?なんか、私の知らない楓がいるようだ。コイツ、一番油断成らない気がする。

 

 

その週の週末、正さんのお店に行くと、ショーウィンドウの中身が模様替えされていた。そこには、メイプルを模したケーキとメイプルのフィギュアがあり、ミィを模したケーキとミィのフィギュアもあった。どういうこと?

 

お店に入ると、メイプルという名のケーキと、ミィという名のケーキと、シロップという名のケーキが新作として、並んでいた。

 

「おぉ、理沙。今日は一番乗りだぞ」

 

明日奈さんがいた。

 

「これって?」

 

「5月の節句向けケーキだよ。ショーウィンドウのフィギュアは兄さんの力作だ。試食させてあげるよ」

 

明日奈さんがお皿に新作を3つ載せてくれた。喫茶ブースに持っていくと、紅茶を淹れてきてくれた。

 

「メイプルはビターチョコにトマトのジャムだ。メイプルシロップ味で無いのがミソだよ」

 

紅いラインを表現するのにトマトのジャムを使ったんだ。一口食べてみるが、トマト臭くないが、ほんのりとした甘みを感じ、美味しい…

 

「ミィはイチゴ三昧で、外側がマッシュしたイチゴ、中身はイチゴのムースさぁ」

 

イチゴ本来の甘酸っぱさを感じ、イチゴを食べているみたいだ。

 

「シロップはメロン味のケーキで、中にはミルクプリンが入っているんだ」

 

これも美味しい。メロンの甘みとミルクの甘みのハーモニーを感じる。

 

「問題は値段だな。売り切れるか問題だな」

 

値段は高めの1000円超え…

 

「買うなら、ピースでなくて、ワンホール5000円のがお得だよ」

 

ワンホールは6ピースだっけ…確かにお得であるが…

 

「何?あれ…」

 

ミィとミザリーの中の人達が入って来た。ミィの顔は真っ赤で俯いている。

 

「兄さんのアイデアだよ。5月の節句は鎧兜だから、戦士をイメージしたら、あぁなったって。本当はサリーも作りたかったらしいけど、あの蒼色を出す食材が浮かばなくて断念だってさぁ」

 

一応、考えてくれたんだ。まぁ、確かに蒼いケーキは難しいかな。

 

「で、シロップの翠色に目を着けたみたいだよ。読み方が『すいしょく』で、水色をイメージ出来るかなってね」

 

そうなんだ。シロップを買って帰ろうかな。ミィとミザリーは新作セットを頼むか悩んで居た。今回は3つセットで5000円である。飲み物が付くが、勇気のいる価格である。

 

「すみません、新作セットを1つ、珈琲で。後、ダージリンのファースフラッシュを1つ」

 

セットの紅茶は銘柄の指定は出来無い。単品の紅茶は銘柄を指定しないといけない。このお店の喫茶ブースは珈琲と紅茶の専門店であることもウリであった。

 

「あら?」

 

イズさんの中の人がやってきて、ケーキ売り場で固まっていた。原因は値段だろうな。

 

「期待出来るのよね?」

 

「どうだろうな」

 

イズさんと明日奈さんが、何やらヤリトリをしている。

 

「素材と調理法に凝ったら、こんなになりましたよ。ははは…」

 

明日奈さんが常連さんが来る度に応対していた。それだけ、今回は値段に問題があったのだった。

 

 

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