---サリー---
1つめの試練を全員がクリアした。
「イベントの方が楽だな」
クロムさんがへたばっていた。
「でも、ここのスライムのドロップ品は、ポーションの材料になるのよ、うふふ」
嬉しそうなイズさん。あの日、シロップを気に入り、5個の大人買いをしていた。シロップだけはピースでは無く単体ケーキだったのだ。
「次の試練は…あれかぁ~」
ダンさんが思考モードに移行した。効率の良い作戦を、考えてくれているんだろうな。
「運営からのお知らせだと、モンスターハウスを一人当たり5箇所殲滅とあるが、そんな大変なのか?」
カスミが訊いた。
「掘り出すんだよ。モンスターハウスをさぁ。メイプルが免除で良かったよ」
ちらっとメイプルを見たダンさん。メイプルは申し訳無さそうに座っていた。
「ここもメイプル殺しなの?」
イズさんが訊いた。
「あぁ、メイプルはSTRゼロだから、自力で掘れなかったんだよ。今回のメンバーは大丈夫そうだが、ファーストアタックが必要だから堀り当てた瞬間、イズ、カナデ、マイ、ユイ、ミザリー、ミィ、フレデリカには身捧ぐ慈愛が必要だと思うが、問題は身捧ぐ慈愛がファーストアタックと見なされた場合、一撃食らわせて逃げるか、一撃貰って死ぬかだな」
確かに一撃でも食らえば、危険なレベルである。5回ほど自殺をすれば、攻撃陣はどうにかなるが…
「試さないとな」
立案させた作戦だと、穴を掘るにしても、大きめに掘らないといけない。先頭部分にメイプルが居る必要がある為だ。
「まぁ、堀り当てる寸前まで、マイとユイに掘って貰うのが効率的であるが、寸止めできるかどうかだな」
掘り当てた瞬間に、モンスターが反応して接近してくるのだ。
「まったく運営は、試練を与えすぎだよ」
珍しくダンさんが愚痴をこぼしていた。それ位、厄介な試練であるのだ。
---メイプル---
ふと誰も触れないことに気づいた。
「ダンさん、試練の数って、町の数と同じでしたよね?」
次は3つ目の試練なのだが、町は4つ目であった。
「あ…1つめの試練は、みんな終わって居るぞ。レベル50以上であることだからな」
と、ダンさんにしては珍しく、目が泳いでいるようだった。
「えっ?ダンさんのレベルって…」
サリーが何かを知っているようだ。
「まぁ、運営と取引したんだよ。二人くらい見逃せよ。さもないと、南門で鬼畜兄妹がPK競技を始めるぞって…」
運営を脅したようだ。って…
「なんでですか?ダンさんもレベル50くらいありますよね」
私やサリーよりもレベルが高かったはずである。
「俺?レベル30だけど…アスカは、レベル40だっけ?」
あれ?おかしい。アスカさんは、そんな物かもしれないが、ダンさんがレベル30って…ギルド対抗戦の時に、レベル30じゃなかったっけ?
「ダンさん、そろそろ白状した方がいいと思いますよ」
サリーは理由を知っているようだ。ズルい…いつの間に、そんな話を訊いたんだ?
「う~ん、手の内を晒すのは心外だが…俺のレベルはメイプルにギフトしているんだよ」
「はい?」
私にレベルをギフト?なんで?
「メイプルが強くなれば、俺も比例して強くなるから…」
「うん?あの~、意味が分からないんですけど…」
そういえば、私のレベルアップの速度がサリーよりも早い。そのせいなのか?
「カエデのステイタスは、メイプルに準拠するんだ。メイプルが固くなれば、カエデも固くなるんだよ」
なるほど…って、…
「それじゃあ私は、いつまで経ってもダンさんに勝て無いじゃないですか…」
私の防御力を私の攻撃力で打ち破るのは、機械神以外不可能である。
「同じギルドだから、問題は無いだろ?」
「問題ありますよ。ダンさんに勝つのが、夢なんですから」
「それは絶対に無理だよ。メイプルキラーってスキルがあるから…」
何、それ?そんなスキルがあるの…
「それに、機械神相手になると、互角だしなぁ」
互角じゃ、勝て無い…ズルいって…
「ダンさんって、無敵ですか?」
「そんなことは無い。最近だと、サリーとアスカには負けているし」
サリーに負けている?う~ん…避ければ勝てるってことなのか?
---サリー---
メイプルが考え込んでしまった。メイプルキラーってスキルも気になるが、次の試練が問題である。
「次の試練は平原戦で、敵を一人につき10匹撃破なんだけど…ダンさんが死んだ試練なのよ」
「「「えっ!」」」
ダンさんと長考状態のメイプルを除き、皆驚いていた。まぁ、無理もない。無敵と思われているダンさんが、デスしたんだから。
「平原戦っていうけど、急降下爆撃有り、遠距離狙撃有りの地獄なの。ここでもファーストアタックした者しか、カウントされないし」
10回死ねば、どうにかなるかもしれない。
「ダンはどうやって死んだんだ?」
クロムさんに訊かれた。
「私をカバームーブして…私でも躱しきれないほどの貫通狙撃が広範囲に放たれて…」
「蜂の巣になったよ。あれは、避けられない。まぁ、対処法は見つけてあるけどな。今回は貫通狙撃を、機械神と機龍で先制攻撃で防ぐ。急降下爆撃に対しては、フレデリカの多重防御とカエデの身捧ぐ慈愛で対処する。基本、それ以外の相手からカウントを稼げよ」
「それ以外の相手はたいしたことは無いから、イズさんでもいけると思います」
私とダンさんで、攻略法を皆に伝えた。その結果、試練は5月一杯で終わった。
「この後はギルド戦だから、誰が倒してもクリアだ」
と、ダンさんが説明すると、皆安堵の表情を浮かべた。それだけ、試練は過酷であった。平原戦の伏兵は地面からの攻撃であった。カエデの防御範囲にいれば、耐えられるが、カエデがノックバックを喰らうと、たちまち袋だたきを喰らう。結構ハードであった。
「地面の下からノックバックには、やられたな」
ダンさんすら苦笑いを浮かべている。地面の下からノックバックを喰らうと、カエデが宙に浮き、慈愛の保護範囲が斜め上方向にずれ、前線で戦う者には恩恵がなくなると言うか…
今、三軒長屋な私達の家で、まったりとしている。当分、戦闘は腹一杯である位、戦い通した。
「ペイン達は、まだモンスターハウスらしいぞ」
三人は上級であるが、残り五名は中級な為、苦戦しているようだ。
「ペイン、ドレッド、ドラグだけのパーティーにすればクリアだろうけど、ギルドの意味が無くなるし、難しいだろうな」
ここで足手纏いを斬り捨てると、後半のギルド戦がキツくなるのが見えている。8名全員がクリアできる強さを想定しているギルド戦。
「いや、三人で平原戦に挑んで、戻ったみたいだよ」
と、フレデリカ。ドラグとメッセージ交換しているらしい。平原戦は三人じゃキツいよな。楓の木だって、フルメンバーの13名でもキツかったし。
◇
6月に入る頃、運営から招待状が届いた。
『更なる強者と戦ってみませんか?』
と…
「これって、運営の罠だろうな」
と、言いながらダンさんが招待状を読んでいる。
「俺だけ行って来ようかな」
「私も行きます」
メイプルが手を上げた。ギルドマスターが行くなら、みんなで行くのが妥当だろう。
「メイプルは止めた方がいいな」
「なんでですか?そうやって、ダンさんだけ強くなるのは許せません」
いつも以上に、譲らないメイプル。
「これ、たぶん違うゲームとのコラボだと思うぞ」
招待先のルールというか概要を表示させたダンさん。
招待主はアルター王国の王女、アルティミア・A・アルターとある。このゲームには国という概念はない。なので、他のゲームの可能性は大である。
「これって、世界的にヒットしている『Infinite Dendrogram』だと思う」
巷でデンドロと呼ばれているゲームかな?
「ここよりも、もっと現実的なシステムと言われている。NPCをティアンと呼んでいるんだけど、ティアンを殺すと殺人罪に当たる。一方プレイヤーはマスターと呼ばれ、こっちは殺しても問題無しだ」
ヤケに詳しいダンさん。
「俺も、NWOとデンドロで悩んだんだけど、気楽なNWOを選んだ。ティアンは単なるNPCでは無く、デンドロの世界で生きているんだ。例えば、人助け系のクエストを失敗すると、死んだティアンは二度と生き返らない。一方、マスターはデスペナが24時間、ゲーム内時間は3倍の72時間になるんだけど、クエスト失敗をしても、時間の流れは止まらず、クエストの途中でデスすると、指をくわえて72時間待たなければならない。俺やアスカのように、ゲームと割り切れれば問題は無いが、そうでない場合、トラウマになり、人格形成中の中学生、高校生は要注意が必要だよ」
迂闊にクエスト中にデスすると、ゲーム内の歴史が変わるってことか?
「もし、デンドロに足を踏み入れるなら、その辺りの覚悟が必要だ。あと、18禁モードなんてない。ディアン同士、プレイヤー同士、ティアンとプレイヤーとでの交配が可能で子供も出来る。万が一の際の覚悟も必要だ」
それは、性犯罪があると言うことか?それは、リアルだな。ダンさんとならいいかな。
「招待を受けるかどうか、一晩じっくりと考えた方が良い」
「でも、ダンさんは行くんでしょ?」
「行くよ。どこまで戦えるか、試したい」
「じゃ、私も行きます。あぁ、私は行きますが、行かない選択肢も有りですよ」
メイプルが私達を見回して言った。
「私とミザリーも行きます」
「私も行きますよ」
ミィ、フレデリカも手を上げた。
「明日までよく考えるんだな。ここよりも強いやつがゴロゴロいそうだし」
いずれ、公開コラボするのかもしれない。それなら、経験しておくのも有りかな。
◇
翌日、招待は楓の木全員で受けることになった。ここ最近の試練で、ウンザリしていたのも一因だと思う。
「じゃ、行きましょう」
ギルドホームの転移陣に載ると、森の入り口にある道の上に出て、森の向こうには城壁が見えた。あれが招待主のいるアルター王国か?ダンさんを先頭に森に入ると、
「敵襲だ!」
ダンさんの声…声の方を見ると、顔の半分を吹き飛ばされたダンさん。
「カエデ、身捧ぐ慈愛だ」
カエデを召喚したダンさん。ミザリーが顔が半分無くなったダンさんにヒールを掛けていく。
---ダン---
まさか、転移していきなりのPKとは…モンスターではあり得ない距離からの狙撃である。そうだ…開始直後はデスに注意だな。前回の経験が生かされていないなぁ。少し反省…メイプルも、サリーも、俺の負傷で固まっている。指示を出さないと全滅するぞ!
「サリー、カスミ、敵を見つけて消せ!」
「了解!」
攻撃陣が飛び出していく。
「アスカ、狙撃で援護。ギャメスを出して、索敵だ」
「了解!」
ギャメスとは、アスカの使い魔の名前である。ギ●オスはオスだから、ギャメスにしたそうだ。
「クロム、メイプルは防御態勢を取って、非戦闘員を守って」
「任せろ!」
「ミィ、フレデリカ、カナデは第2波に温存だ」
顔が再生していく。顔が全損だとデス扱いである。危なかった。メイプル達だけじゃ、不安だものな。
『倒したわよ』
とサリーからギルド内メッセージが全員に送られてきた。一安心か…いや、目の前に戦艦が現れた。森なのに戦艦?宇宙戦艦●マトよりも大きく、超時空要塞マ●ロスよりも小さい戦艦が現れた。主砲、副砲が俺達を照準に捉えようとして、動いている。
「メイプル!機械神だ!」
「了解です。全武装展開!」
俺も機龍になり、空に飛び立ち、アナとポチを召喚して、攻撃を開始した。
「全員、全力で行け!コイツはヤバいって…」
貫通攻撃が当たった装甲は貫通するが、向こう側には出ない。半貫通ってことか?
「マイ、ユイ、鉄球を砲門の筒に投げ込め!出来る限り、砲門を潰せ!」
「「了解です!」」
「爆炎、炎帝、炎帝、噴火」
必死なミィの攻撃が効いていないようなんだが。
「フレデリカ、万が一の時は、多重障壁をカエデに使え!」
「はい、わかりました」
フレデリカは、イズ達とカエデの保護域に入った。しばらくすると、轟音と共に、相手の主砲が発射された。防御力は足し算出来無い。相手の攻撃力を引き算するだけである。主砲の発射された砲弾に対し、攻撃を入れてフレデリカの多重障壁へのダメージを抑える。
「シロップ!大自然と精霊砲!」
メイプルも持てる手を繰り出していく。俺もメーサー砲で、副砲を潰していく。
ドン!
ミサイルが打ち出されてきた。アナの貫通弾である礫で潰していく。なんだコイツ…生きた戦艦って、バケモノか?現代兵器相手では分が悪い気がする。
『術者を見つけた。カスミと戦うわ』
サリーが術者を見つけたようだ。アスカはレールガンで副砲を破壊しているので、援軍に向かえないようだ。そうだ!『ウッドオクトパス』で、船底への貫通攻撃をしてみた。運が良ければ、爆薬庫を破壊出来るかもしれない。蒼い装備にクイックチェンジして、32連打を船底に叩き込んだ。大きい身体の機龍で接近は、狙い撃ちされそうだし。
ドッカーン!
爆薬庫を破壊したかな?再度、機龍化して前線を離脱して『百鬼夜行EX』『白鬼夜行EX』を使ってみた。この際、使える戦力は出そう。コンコンとデミウルゴスも召喚して、効果的な攻撃をしてもらう。これでどうだ?
いきなり、超級殺しとクマ兄さんとの2連戦…('';