---ダン---
『カスミがやられた!』
サリーからのメッセージ。術者は強者のようだ。俺も、現場に向かう。そこには筋肉隆々のマスクマンがいた。『ウッドオクトパス』を放つが、貫通攻撃なのに、先端を折られていく。NWOの常識は通じないようだ。
「サリー、下がれ!」
「でも…」
「お前の攻撃力じゃ無理だ」
「わかりました」
サリーの退路を作る。身体中が痛い。見た目よりも素早く、力強い攻撃である。クイックチェンジで神装備に変えて、応戦する。見た目とは違い、見えない速度の攻撃があるようだ。常識の違いか、神装備の即死効果は効かないようだが、不死効果は有効なようだ。死なないで壁になれるかな。
相手の攻撃は総合格闘術のようだ。どこかで見た事のある戦い方。そうだ!幼い頃に見た、憧れの戦士の椋鳥修一じゃないか?あの人を見て、武道を習い始めたんだ。骨折した足で放った蹴り…その当時の俺には衝撃的なシーンだった。
「もしかして、椋鳥修一さんですか?」
俺の言葉で、一瞬動作に動揺が見られた。隙有り!迷わず32連打を叩き込んだ。1発入ればいいんだ。入ってくれ…クリティカルよ。
---サリー---
戦艦はドット落ちしながら消えていった。ダンさんが倒したようだ。ギルドメンバーのリストを見ると、ダンさん、カスミ、マイ、メイ、フレデリカの名前の後ろに『デス』と表示されていた。ダンさんは相打ちだったのか。
「5名の離脱で済んで、良かったのやら」
クロムさんの言葉に、悔しそうな顔を向けるミィ、ミザリー、アスカさん、そして、メイプル。
「良くないです!ダンさんが…ダンさんを倒すのは私だけです」
メイプルが私に縋り付いた。
「また、逃がしてくれたよ」
一番悔しいのは私である。これで、二度目だよ。私のデスを回避する為に、ダンさんが身代わりでデスしたのは…
しばらくすると、城壁の方から、兵達が出てきた。
「あなた達は何者ですか?」
城壁の方からやって来た白い装備の女性に訊かれた。兵のリーダー格か?
「あなた方の国に招待されたのに、いきなり攻撃されるって、どういうことですか?」
メイプルが言葉を返した。臨戦態勢は解いていない為、相手もこちらを敵対者と見なしているのかもしれない。
「招待?まさか、ニューワールドからいらした方ですか?」
メイプルがアイテムボックスから、招待状を取り出し、女性に手渡した。
「確かに、王女様の封蝋がありますね。これは失礼しました」
失礼では済まない。こちらは戦死者がいるのだ。
「なんで、攻撃したんですか?」
いつもはオットリなメイプルであったが、ダンさんをやられた事で、相手に詰め寄っている。
「あれは…王国の兵ではなく、マスターです」
こちらのゲームのプレイヤーの洗礼ってことか?それにしては、激しい。いや、これがこの世界での標準な強さなのか?
「また、出直して来ます」
「どうしてですか?ここまで来たなら、王女様に会ってください」
「どうして?何を言っているんですか?コチラの被害は甚大です。また襲われたら、次は全滅かもしれません。ギルドマスターとして、ここは危険と判断しました」
「わが王国は、危険ではないです。あれは、一部マスターの暴走です」
危ないという評判が怖いのだろうか?食い下がる女性。
「メイプル、王女様に会おう」
埒が明かないと判断したのか、クロムさんが声を掛けた。
「でも…」
「もし、全滅すれば、ここは危険と運営が判断するはずだ」
それはそうだろう。NWOで一番のチート集団が全滅すれば、運営はそう判断すると思う。しばし考え込んだメイプルが、
「わかりました。お会いします」
そう決断を下した。
---ダン---
相打ちだった。これでギルドホームにリスポーンかな。って、どこかの書庫にリスポーンした俺。こんな部屋あったかな?
「あの破壊王と相打ちとは…あなた、見所がありますね」
目の前に、知らない女性が立っていた。
「ここはどこ?」
「ここは、デンドログラムの世界でいう神の間です」
そうなると、目の前の女性は神なのか?女性の姿は朧気であり、はっきりとは見えない。俺って半死の状態か?
「あなたの戦闘ログを拝見しました。死を恐れず、敵に挑む折れない心。仲間の窮地には、自らの命すら差し出せる決断力。とても頼もしい猛者ですね」
何を言っているんだ?当然だろうに。俺はそういうプレイスタイルなんだから。
「私からあなたにプレゼントを差し上げます。エンブリオと呼ばれる使い魔です。既に沢山の使い魔がいるあなたなら、安心してお譲りできますわ」
俺の左手の甲が光り、何かの紋章が刻み込まれた。
「それはマスターである証です。マスターは1体のエンブリオという相棒を得られます。では、良き冒険が出来ますよう、見守っていますわ」
俺は光に包まれ、強制ログアウトさせられた。
◇
あれは、なんだったんだ?再度、インをすると、ギルドホームにリスポーンした。転移陣に乗るが、デンドロにはデスペナ中の為、行けないようだ。
「あれは何だったんだ?」
カスミに訊かれた。マイ、ユイ、フレデリカがいる。あの戦闘で5名のデスを出したのか。
「マスターだろうな。きっと、メイプルの機械神みたいなものだろう」
メイプルの機械神が、赤子に思えるほどの火力と防御力。楓の木がここまで追い込まれるとは…
「デンドロって、あんなのばかり?」
フレデリカに訊かれた。
「かもな。まぁ、戦いがいは有りそうだ。でも、デンドロで通用する強さを得ると、NWOに戻れないような」
向こうでは無敵になれそうだ。
---サリー---
お城に連れて行かれ、それぞれに部屋を用意された。一応、国賓って扱いのようだ。
「もっと強くなりたい。ダンさんを守れるくらいに…」
メイプルにヤル気が漲っているが、こういう時のメイプルは、付属品が増えそうで怖い。
「火力が足り無かった。避けきれなかったし…」
生き残った皆それぞれが反省をしている。もっと、何かを出来たのではと。
『みんな無事か?』
ダンさんからメッセージが届いた。
『ギルドホームにいる。心配するな』
と…
「ダンさん…」
う~ん、メイプルもそうだが、ダンさんも何かやらかしそうだ。大丈夫か?
◇
廃プレイヤーではない為、一旦ログアウトし、リアルでいう翌日、ダンさん達と合流した。あの白い鎧の女性、リリアーナ・グランドリアというティアンで、アルター王国近衛騎士団副団長だと言う。
「今日は、皆さんを街へと案内いたします」
王都を案内してくれるようだ。観光かぁ…ゾロゾロとリリアーナの後を付いて歩く。この世界には七つの国があり、NWOは新大陸という設定らしい。
「ダンさん…ムニャムニャ」
メイプルは指定席であるダンさんの背中で安眠中である。
「なぁ、ここには迷宮はないのか?」
「有りますが…」
「案内してくれないか?」
「申し訳ありません。資格もしくは通行証が無いと入れません」
それで納得するダンさんでは無いと思う。アスカさんもそわそわしている。
「フィールドにはモンスターはいるのか?」
「ちょっと待ってください。せめて王女様との謁見を終えてからにしてください」
国賓が勝手に動くとマズいらしい。
「じゃ、終わらせようぜ」
「それが…」
王女様が出先から戻らないらしい。
「ほぉ~」
ダンさんが何かを察した。これって、クエストなのか?
「どこに向かったんだ?」
◇
リリアーナは用があり同行出来無いそうで、向かった先の地図を貰い、そこへと向かった。ダンさんの移動式ギルドホームで…イズさんは、コレに搭載する武器を作っていた。
「コイツを武装すれば、火力アップだろ?」
と、ダンさんの悪魔の囁き。マイ、ユイはワクワクして見ている。メイプルとフレデリカは案をひねり出していた。
この国の第一王女は、遺跡発見の報を受け、自ら見に行ったそうだ。国賓を放置したまま…
「サリー、難しい顔をするな。イレギュラーな俺達が来て、イレギュラーな出来事が起きたのだろう」
そういう考え方も出来るのか。
「サリー、カスミ、クロムは戦闘準備をしておいてくれ。先遣隊で行って貰うかもしれない」
「わかったわ」
「そろそろ、遺跡に着きます」
操縦席にいるミィから声が飛んできた。
「アスカ、何か戦闘は起きているか?」
「特に起きていないわ。って言うか調査隊が来ている割に、静かと言うか…」
皆で地面に降り立ち、移動式ギルドホームはアイテムボックスにしまわれた。
「メイプル達は遺跡に突入してくれ。俺達第二パーティーは地上の探索をする」
「ダンさん、やらかさないで下さいね」
って、メイプル。それは、あなたもでしょ?!
---ダン---
アスカの索敵で、地上を探索する。目視で宿屋を見つけた。だけど、人の気配は無い。静かに近寄り宿屋を調べる。中に人がいる。結界を張って、気配を消しているのだろうか?多数の男が一人の女を弄んでいた。
「おい、もっとお口で奉仕しろよ!」
「ほぉ~、ティアンでも濡れるんだな。そろそろ、いいかな?」
これが、メイプルやサリー達には見せたく無かった風景である。全裸のティアンの女性を甚振る多数のプレイヤー達。
パン!パン!パン!(注:銃声です。肉叩き音では無いです)
と、乾いた音と共に、男達の頭が弾け飛んでいく。アスカと俺の狙撃攻撃である。AVな光景を見るために、ゲームをしている訳では無いからだ。
「フレデリカ!カエデ!あの女性を守れ!ミィとミザリーはケダモノ達の退路を塞げよ」
「何だ!きさまらは!」
答える義務は無い。さて、PKタイムの始まりだな…って、1分程度でケリは付いた。モザイク状で消えていくマスター達。
「おい!大丈夫か?」
何かの薬でも盛られたのか、意識が朦朧としているティアンの女性。毒消しポーションを飲ませるか…女性の口に含ませるが、自力では飲めないようだ。こういう場合は口移しだっけ?
「誰か、口移しで飲ませてやって」
女性同士なら問題は少ないだろう。
「それって、苦いヤツだよね、お兄ちゃん…」
誰も近づかない。俺か?俺なのか?まぁ、ポーションは飲み慣れているから問題は無いが…ポーションを口に含み、女性の唇と自分の唇を重ね、俺の舌で、相手の舌を絡め、ポーションを移していく。女性の目に力が戻るまで、ポーションを合計4本飲ませた。
「お兄ちゃん、この女性、感じているみたい」
何かの動作を見たのか、アスカがそう伝えて来た。
「惚れ薬でも盛られたんだろ?ミザリー、後は回復魔法を頼む」
静かな呼吸をし始めたので、ミザリーに丸投げした。全裸の女性を見つめるのは良く無いだろうから。
「了解。ヒール!」
「生き残っているのは、この女性だけみたい」
ミィとフレデリカが、宿の中を見て回ってきたようだ。
「この女性の服は?」
アスカがビリビリに引き裂かれた布地を手にしている。
「あんた、名前は?」
「アズライト…あなたは?」
「俺はダンだ。服の替えはあるか?」
首を力無く横に振るアズライト。
移動式ギルドホームにアズライトを連れ帰り、温泉で身体を洗ってあげた。
「あの…」
「体内の浄化もしてあるから、妊娠の心配は無いと思う。それより、なんで襲われたんだ?」
「その前に…ありがとうございます。助けてくれて…」
「あぁ、そうだ。第一王女はどこだ?そいつを見つけて、城に連れ戻らないとダメなんだ。お前、お付きの者だろ?」
「えっ?っ、えぇ…」
洗い上げたアズライトの全身を、バスタオルで包んで、温泉を出た。服なぁ、どうするかな。通称、呪いのビキニはあるが、問題があるか。布地の面積が少なすぎるし。潜入用のポンチョでもかぶせておくか。
「ここは?」
「俺達の移動式ギルドホームだ」
「これでも食べて」
アスカがケーキと温かいお茶を持って来た。
「おいしい…」
アズライトがケーキを食べ始めた。落ち着いてきたようだ。
「メイプル達が、何かと戦っているけど…」
ミィの声で窓から外を見ると、三つ首のドラゴンとメイプル達が戦っていた。
「上空から攻撃を頼む。俺は機龍で行くよ」
移動式ギルドホームのハンガーから飛び降り機龍化した。
---サリー---
遺跡が崩れ、飛び出して来たキングギ●ドラを彷彿させるモンスター。メイプルが機械神になり、シロップが巨大化して、大自然で拘束する。
「出し惜しみちゃダメ。もう誰もデスして欲しくないから」
メイプルから指示が飛ぶ。上空から魔法弾が撃ち込まれていく。移動式ギルドホームだ!機龍が降臨してきたし。レールガンがモンスターの羽をボロボロにしていき、最終的にはオーバーキル気味で、モンスターを倒した。
「サリー、王女は見つかったか?」
「遺跡には誰も居ませんでした。ダンさんの方は?」
「お付きの者をゲットした。今、移動式ギルドホームにいる」
一人しか助けられなかったのか?移動式ギルドホームを着陸させ、イズさんにアズライトの服を用意してもらい、私、カスミ、ダンさん、アスカさんで宿を調べあげていく。
「豪華そうな剣を見つけたが、王女の物だろうか?」
ダンさんが蒼い剣を手にしている。蒼い装備に似合いそうな剣である。
「うん?コイツ、ヤバい剣だな。何でも切れそうで怖い」
半身だけ抜き出し、直ぐに鞘へと戻した。剣を腰に差し、移動式ギルドホームへみんなで戻った。
「あぁ、アズライト、似合って居るぞ」
余っていた羊毛で作り上げたモフモフのワンピースを着た女性。彼女が助け出したアズライトらしい。
「これ、王女様の遺品かな?渡しておくよ」
腰から鞘を外し、蒼い剣をアズライトへと手渡した。
「さて、王城へ戻るか。戦ったし」
戦闘意欲は満たされたようで、穏やかな表情であるダンさん。メイプルは指定席でうたた寝をし、アズライトがダンさんに寄り添っていた。
「サリー、強力なライバル出現ね」
って、イズさん。ティアンがライバル?あり得るのか?