翌朝…アズライトと寝ていたと思うんだが、知らない部屋にいた俺。ここはどこだ?何故か和室で布団の上に寝ている。デンドロの世界に和室なんかあったのか?
『マスター、気をつけてね』
アリスから警告が発せられた。拉致されたのか?
『幻術系か、その類いでしょうね』
指輪は使えるか?
『システムコール 指輪の使用許可。これで使えます』
さて、相手次第でみんなに働いて貰うかな。で、現在位置は?
『王都アルテアにある<月世の会>の本拠地です。<月世の会>とは、王国最大のクランで、宗教団体です』
アリスがいると便利だ。俺に無い知識が豊富である。が、宗教団体はマズいなぁ。
『えぇ、宗教団体は敵です』
管理AIから見れば、宗教団体は敵だろうな。
『あと、敵のエンブリオの作った結界内にいますので、脱出は現状は不可能です』
捕らわれているのか。って、いうか…この施設、俺の物にならないか?王都にあるのなら、ホームに最適だろ?
『それは名案ですね。流石はマスターです。早速、関係書類を改ざんしてみます』
コンコン、結界を破れるか?こっそり、コンコンを召喚した。
『幻術系の頂点にいるんですよ、私は。こんなの分け無いです』
じゃ、解除してコンコンの結界で逆に捕らえておいて。
『了解です』
そんな会話を脳内でしていると、突然、襖が開いた。
「おはようございます。ダン様」
高級旅館にいるような仲居さんだった。ますます、拠点に欲しい施設である。温泉は有るかな?有るといいなぁ。
『無ければ作りますよ』
と、アリス。う~ん、優秀な相棒である。
「朝食の準備が出来ております。お着替えが済みましたらご案内いたします」
クイックチェンジで、蒼い装備を身に付けておく。これにより『楓の木』のメンバーの所持スキル、能力が使い放題になる。あれ?回数制限あったかな?まぁ、些細なことだな。
仲居さんと共に食堂へと向かった。食堂には十二単を着た女性がいた。あれが教祖様かな?
「どうされました?食事だと言うのに武装をするなんて…」
この拠点内にいるティアン、マスターを魅了しておいて貰おうかな。こっそりとフレイヤを召喚した。
『お任せ下さい、マスター』
「食事をする場で香を焚くとは、無粋ですね。媚薬効果のある香木ですか?」
「お見通しみたいな口ぶりね」
「見た事無い女性は危険ですから」
「やーん、ごめんなー。ちょっとからかいすぎたわー」
おちゃらけた演技か…いつでも狩る自信のある相手の殺気を感じ取っている俺。
「用件は何ですか?」
「うちは、【女教皇】扶桑月夜。<月世の会>のオーナーや――よろしゅう」
『改ざん終了!』
アリスが作業を終えたようだ。挨拶の後、月夜は人を呼んで食事を片付けさせた。その間、俺は月夜の動きに注視していた。
「実はなー、今日はダンちゃんをうちのクランに勧誘するために呼んだんよー。ほら、ダンちゃんって強いでしょ」
「断る!今いるクランを抜ける気は無いし、宗教団体に入る気も無い。俺は既に信仰する神がいるからな」
『知っています』
アリスが嬉しそうに答えた。
『この女は愚かですね。単なるマスターのくせに』
月夜に対して、敵対心を剥き出しにするアリス。管理AIから見れば、その程度の愚者なんだろう。
「あんたは欲しいなぁ。絶対にね」
「俺はお前を欲しくない」
『腹心の一人を除いて、魅了完了』
フレイヤでも魅了出来無いのがいるのか。女教皇の情報はあるかな?
『【女教皇】は、回復魔法や浄化魔法を得意とする司祭系統の超級職です』
司祭かぁ~。対抗出来る手立てあったっけ?あぁ~、そうだ。あれが効くかな。戦艦クマと月夜の濃厚な添い寝シーンを妄想して、月夜にギフトした。
「はぁい?なんで、こんなクマと…」
で、戦艦クマって英雄かな?
『英雄召喚で呼び出します』
アリスが使える手を使い、俺の隣に戦艦クマ本人が現れた。
「どうしたんクマ」
「この女に拉致監禁されているんだけど、どうすればいいかな?」
「厄介な相手クマ」
戦艦クマのデカイ主砲をイメージして、月夜が尺八を吹いているシーンを妄想して、月夜にギフトした。
「はぁい?!なんて、ことを…」
真っ赤な顔になっていく月夜。しかし、ダメージが入らないなぁ。メンタルが強いのかな?
『メンタルはオリハルコン級ですね』
違う手立てを考え無いとダメなようだ。
「――《月面除算結界》」
月夜が何かを発動した瞬間、世界が“夜”に包まれた。
「マズいクマ」
マズいらしい。屋内だというのに暗い夜。屋内であるはずなのに、蒼い月が浮かんだ夜空が見える。異常な空間であり異常な世界な世界…
「これなー、うちのカグヤ……<超級エンブリオ>の固有スキル《月面除算結界》で、種明かしするとなー、このスキルは効果圏内のうちに、都合の悪い数値を六分の一にするんよー」
『そんなことは、させません』
アリスが毅然と言い放った。なら、安心か。
「なんで、なんともあらへんの?」
『フルカウンターしました』
徐々に苦しそうな表情になる月夜。
「呼ばれる必要性を感じ無いクマ。そもそも役立たないクマ」
「誰なら、役立つ?」
「バルバロイ・バッド・バーンクマ」
「そいつは英雄?」
「たぶん違うクマ」
じゃ、ダメだな。英雄召喚は英雄しか呼べない。
「敵対者のステータスを六分の一に、敵対者の与ダメージを六分の一に、敵対者の心拍数を六分の一に、敵対者の体温を六分の一にってことやねー。他にも色々“割れる”んよー? あ、六分の一は多分“月面”だからやねー。あそこは重力六分の一やろー?はぁ?何で平気な顔してんの?何で効かへんの?何で私が苦しいの…そっか!フルカウンターしたんやね。くそっ!」
それって、体温も1/6にするのか?仮に体温が36度として、6度まで落ちるのか。低体温症決定だな。
『いい気味だわ』
嬉しそうなアリス。
「さすが、チータークマ」
戦艦クマに褒められたのか?
「月夜、絶対強者に相性程度では勝て無いクマ。チーターの能力を読み違えたクマ」
「なんでや?コイツ、エンブリオがまだ覚醒してへんのに…」
あぁ、そういこと?まぁ、いいや。スルーしとこ。次はどうやって排除するかだな。
『冥界へ堕としますか?』
デミウルゴスが提案してきた。出来るのかな?
『出来ますとも。超級とは言え、人間ごときに防がれる程、私は弱くないんですよ』
月夜が畳に浮かんだ闇に吸い込まれて行く。
「何?なんやねん?私よりも強いの?うそっ!」
畳に浮かんだ闇に月夜は完全に飲み込まれた。
「エゲツ無いクマ」
あぁ、良く言われる。
◇
「凄い…王都にこんな豪華なホームが持てるとは…」
高級旅館を居抜きで手に入れ、メイプルが感無量のようだ。ティアンの従業員は、全員住み込みの為雇用であるのが難点である。もっと稼がないと雇いきれない。
『大丈夫です。隠し財産を手に入れてありますから』
アリスが良い働きをしてくれた。しばらくは安泰かな。俺達だけでは広すぎるので、アズライトを通して、王国の迎賓館としても使ってもらうことに成っている。使用料が王国から貰えるオマケ付きである。
「ここを抑えましたか」
「月夜に対する対処法は手に入ったよ」
「あの女狐は要注意ですよ。王国の寄生虫って呼ばれていますから」
狐の親玉もいるから、安心かな?
「いやぁ、お兄ちゃんのおかげで、新たに二人の獲物をゲット出来たよ。なんでも王国の寄生虫だから、街中でキルしていいって、リリアーナが言っていたし」
アスカが嬉しそうだ。それは月夜と、その腹心である【暗殺王】月影永仕郎だと思う。まぁ、アスカに駆除して貰えれば、逆恨みはされないかな?
「ダンのおかげであの女狐がデカイ顔出来無くなって良かったわ」
アズライトが嬉しそうだ。王女付きとして、虐められていたのだろうか?そうなると、月夜と月影を、もっと虐められるようにならないとダメだな。
「ダンさん、悪い顔になっているわよ。またロクでも無いことを考えているんじゃないの?」
サリーには、まるっとお見通しなのか。まぁ、どうするかな。
---ビースリー---
ヤバいヤツらに取り囲まれている。特に、あのチーターの顔は怖い。【鎧巨人】バルバロイに変身しているとき数え切れない程瞬殺をされたから、トラウマになっているかもしれない。
「バルバロイの中の人だよね?」
「そうだとしたら?」
「『楓の木』に入って欲しいんだよ」
「どうして?」
「月夜対策だよ。月夜には勝てるんだよな?」
そうだった。噂で聞いたけど、あの<月世の会>の本拠地を奪い去って、ホームにしたとか。私は反撃予防策ってことか?
「断ったら?」
「甚振る。女性の尊厳を奪う。とか考えたけど、『魅了』でどうにかなりそうだよ」
また、ヤバい能力を持っているなぁ、このチートの百貨店は…魅了なんかされたら、私の身体をやりたい放題される。それは避けたい。
「どうする?拒否権を行使してくれても構わない」
それは、甚振る理由が欲しいんだろう。このドSは…
「わかった。クランに入るわ。その代わり、魅了はしないで」
---ダン----
「わかった。クランに入るわ。その代わり、魅了はしないで」
『フレイヤの魅了はアクティブだけど、マスターの魅了はパッシブなんだけどね』
えっ!アリスがさらっと、トンでも無いことを口走った。パッシブって、駄々漏れってことか?それって、フレイヤの能力を使うと二重掛けなのか?
『正解です』
嬉しそうに言うアリス。おいおい…まさか、アズライトとリリアーナって…
『う~ん、どうかな?微妙です』
影響はあったのか…なかったのか…
ビースリーを連れて、クランホームに戻り、メイプルとサリーに紹介した。
「PK専なんですか?なんか、PK専濃度が上がってませんか?」
サリーが妙なことを言う。上がる訳が無いだろうに。俺とアスカとビースリーとサリーだけだぞ。
「最近、メイプル、フレデリカ、ミザリー辺りがPKに目覚めてますし」
えっ!そうなのか?
「だって、ダンさんに勝つには、PKで修行しないとダメですよね?」
メイプルがPK?似合わないぞ。
「ランカー狙うなら、PK専が有利ですよね」
「うんうん」
フレデリカの言葉に頷くミザリー。ミィは能力的にPKには不向きなようだ。戦闘の燃費が悪く、ガス欠が目立つのだ。格闘場だとポーション禁止の為、ガス欠までに相手を倒さないと負けが決定になるのだった。
「なんか、女性比率が高く無いですか?」
ビースリーに言われた。男は俺とクロムとカナデだけか?
「あぁ、高いなぁ」
「で、あなたのスキルは何ですか?」
ビースリーの質問に、みんなが聞き耳を立てた。
「俺のスキル?言えるのはフルカウンターと32連打かな」
「【鎧巨人】である私を一撃で倒した能力はなんですか?」
余程、悔しいのか詰め寄って来た。
「あれは32連打だよ。一撃だけど、一撃で32連打を放っているんだ。で、確率5割でクリティカルヒットが出るだけだ」
「はぁ?32連打の内、5割がクリティカル?」
防御力無視してだけど…たまに即死攻撃もあるけど…
「それに、バルバロイよりメイプルの方が固いから」
VITが素で20000有るメイプル。パフとか装備込みになると100000は軽く越えるだろう。
「そんな私を一撃でキルするんです、ダンさんは…」
メイプルに32連打は使わない。時間を掛けると、暴虐でHPを回復されてしまうから。致死性のある貫通攻撃による狙撃が基本である。オーバーキルされてもHPが1残るスキルを持っているメイプル。だけど、俺の防御力無視は、防御系へのバフや付加効果も無視している感じである。
「後…エンブリオは?」
ビースリーの質問が止まらない。
「そこにいるアリスがそうだけど」
メイド服のアリスは戦闘職に見えない。
「タイプは?」
「企業秘密だよ。月夜対策にも使っているしね」
言え無い。アリスが管理AIで、システムをいじれるなんて…チート過ぎるし。