デスを食らった男   作:もっち~!

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04/27 修正を加えました



新大陸

---メイプル---

 

クエスト前に強化をしないと。『時空渡り』で新大陸へと渡った。ここで武者修行だな。

 

森の中を歩いて、モンスターを探す。オークの群れをキルしていく。大群にはヒドラがよく効く。初見の羽の生えた紫色のオオトカゲを見つけて、食べてみると、『邪眼』というスキルを得た。呪い系で相手のステイタスを一定時間著しく下げるようだ。これでダンさんを倒せるかな?

 

「おい!お前、見かけない種族だな?」

 

現地人に見つかったみたいだが、何故か敵視されている気がする。迷わず『捕食者』でキルする。しばらく、その場で様子を窺うが、仲間を呼ばれた様子は無いようだ。更に奥へと向かう。

 

「いた!お兄ちゃん、アイツじゃ無いの?」

 

上から声が聞こえた。羽を持って飛んでいる集団。そうか、この世界では、みんな飛べるのか。空への警戒はしていなかった。反省しないとダメだな。

 

「全武装展開!」

 

機械神になり空に飛び上がり、私に対して身構えている集団をキルしていくが、黒い服の男性の一撃でキルされた。この世界では貫通するんだ…剣術で…

 

NWOで無双をして時間を潰し、72時間後にデンドロへインをした。

 

「しばらく見なかったけど、どうしたんだ?」

 

ダンさんに訊かれた。

 

「新大陸に武者修行に行ってキルされました」

 

「えっ!メイプルが?」

 

サリーが驚いている。しかし、ダンさんは驚かない。なんで~?

 

「どうせ油断をして、貫通攻撃でも喰らったんだろ?」

 

「正解です、ダンさん…」

 

さすがである。私のウィークポイントを知っているようだ。

 

「ボスの戦闘ログから、相手はキリトと言うプレイヤーです。二つ名は『黒の剣士』ですね」

 

アリスには情報がダダモレのようだ。

 

「キリト君…」

 

アスナさんの知り合いみたいである。噂のSAOサバイバーって人達か。それは、負ける訳だな。私よりも死線を潜り抜けているのだろう。

 

「メイプル、アスナの知り合いだからって納得するな。どんな相手でも心を折って納得するなよ!」

 

ダンさんからの激励。それとも、ダンさんの闘争心に火が付いたか?

 

「どうするんですか?」

 

「お礼参りだな。ふふふ」

 

えっ!遠出は禁止じゃ…私の復讐って大義名分だと、私がレイレイさんとアズライトさんに、絞られそうだよ。いやだなぁ…あの二人、ねちっこいから。

 

 

 

----ダン---

 

新大陸へお礼参りしに行くことになった。メンバーはいつも通りレイレイを除く全員で、移動式ギルドホームで移動をした。まず、拠点を作る。浮遊城に着陸し、アイテムボックスに移動式ギルドホームをしまい、アスナの情報から22階層に持ち家を持てることを聞き、そこに新大陸支部を置くことにした。そこまでの移動中に、お金を皆で稼ぐ。

 

「凄い…どの階層も殲滅に近いですね」

 

アスナが俺達の火力に驚いている。手加減はしているんだが。途中PK集団と出会うが、瞬殺をする。こちらもPK専が数名いるから。

 

「PK専がいるんですか?」

 

「あぁ、俺とアスカ、サリー、ビースリー、マリー、フレデリカ、ミザリー、レン、フカがそうだよ」

 

敢えてメイプルの名前を外す。こいつPK専では無くて、殲滅専だと思うから。メイプルの火力は、1VS1だとオーバーキル過ぎるのだ。名前を挙げて貰えず、凹んでいるメイプル。実際、今の戦闘では、メイプルは一人もキルできていない。AGIが無い為、本職のPK専がかたづける速度に追いつかないのだろう。

 

「アスナも勘が戻れば、期待していいのかな?」

 

「勿論です」

 

その後も、出会う敵は殲滅していく。いや、早い者勝ちである。唸るメイプル…出番がまったく無い。PK専では無いカスミとミィにまで、先を越されているし。

 

「う~ん…」

 

「メイプルはボス専だな」

 

「でしゅね…」

 

項垂れるメイプル。本人も分かっている弱点だろう。そして、漸く22階層に付く頃には、大きな家が買える金が稼げていた。

 

「じゃ、今日は家を買って、ログアウトだ」

 

 

翌日インをすると、レイレイとアズライトがプンプンしていた。

 

「どこへ行ったのよ?」

 

「長旅禁止よ、依頼したクエストもあるんだからね」

 

取り敢えず場所を変えて、1時間ほどスキンシップをしてみた。

 

「新大陸かぁ…世界ツアー中で無ければ、行きたかったなぁ」

 

「そうか、新大陸の調査か。それは必要ね。ゴメンね、さっきは…」

 

更に1時間…今度は二人共甘えてきた。更に1時間後、漸く二人に解放されたので、昨日のメンバーで新大陸の支部へ転移をした。

 

「転移術…いつの間に…」

 

サリーが驚いている。

 

「味方で良かったわ。ふふふ」

 

イズはいつも通りだ。メイプル、マイ、ユイ、ミィの瞳が輝いている。後の者達は、多少のチートでは驚かないし、憧れもしない。

 

「今日はどうしますか?」

 

「前半は、ここの設備を使いやすくする。後半は狩りだ。メイプルをキルしたヤツらをな」

 

アリス、探しておいて。

 

『了解です』

 

 

 

---アスナ---

 

近所の雑貨屋へダンとお買い物。楽しい時間である。ダンから聞くケーキの話は興味津々である。だけど、楽しい時間は続かない。

 

「アスナ!貴様!俺のアスナに何をしているんだ?!」

 

私の肩に手を回していたダン。キリト君がダンに詰め寄るが、手首を捻られ、そのまま一本背負いで投げ捨てられた。

 

「キリの字、大丈夫か?」

 

「お兄ちゃん!」

 

マズい、仲間を連れて来たのか。

 

「アスナ!貴様が、アスナを監禁していたのか?」

 

ダンにえん罪をかぶせようとしているキリト君。

 

「違うの、彼はねぇ」

 

私の声はキリト君に届かない。怒り有りきのようだ。

 

「決闘しろ!」

 

「絡まれての自己防衛は罪にはならないな」

 

「はい、そうです、マスター」

 

アリスとカエデが現れた。

 

「カエデ、アスナを守れ。アリス、やるぞ」

 

「はい、マスター「クイックチェンジ!」」

 

アリスが金色の鎧を、ダンが蒼い鎧を身に纏った。戦闘態勢だ。もう、止まらない…キリト君たちも剣を手にして、襲い掛かってきた。しかし、一瞬で勝負は着いた。キリト君達の頭が胴体から離れて行った。

 

「もう、大丈夫だぞ、アスナ」

 

笑顔のアリスとダン。さすが、PK専である。キリト君の剣を受け流しながら、素手で首を掴み、引き千切っていたダン。アリスは剣技で残りの者達の首をはねていた。

 

装備を元に戻し、何事も無かったように雑貨屋へと向かう私達。

 

 

 

---キリト---

 

俺の買ったコテージにみんなが集まってきた。現場にいたリーファ、クラインは勿論、エギル、シリカ、リズベッド。

 

「なんだ、アイツらは…」

 

見た事の無いヤツラだ。俺の首を引き千切っていた。リーファ、クラインはそれぞれ一太刀で首を切り落とされていたし。

 

「アスナ…アスナを監禁して洗脳したのかもしれない。ALOで…」

 

取り戻さないと…えっ!全身を痛みが走る。何かが俺達をお尻から頭に向かって串刺しにしていた。途絶えていく意識…

 

 

 

---桐ヶ谷直葉---

 

夏休み中でも剣道部の部活はある。無心になって素振りをするが、昨晩のことが頭から離れない。あの場にいた全員が串刺し刑に遭った。なんで?誰に?どうして?アスナさん絡みの報復か?

 

「直葉、手合わせして貰えないか?」

 

この声は…声の主を見ると、剣道を引退した諸星兄妹が、竹刀を片手に立っていた。私以外の部員達が、後ずさりしている。

 

「どうしてですか?引退したんですよね?」

 

「お前、引退した者とは手合わせ出来無いって言うのか?お高くとまるなよ」

 

バッシン!

 

竹刀で地面を叩いた。その音で、みんなが尻餅をついている。悪名高き、諸星兄妹…中学3年の時、全国大会で兄妹がそれぞれ男子の部、女子の部で優勝をした猛者兄妹である。私なんかが敵う相手では無い。

 

「お前、兄さんを襲ったそうだな」

 

襲った?覚えが無い。闇討ちなんか出来るレベルでは無い。返り討ちにされてしまう。そもそも、襲う理由は無い。

 

「何かの間違いでは?」

 

「アバター名…リーファだっけ?」

 

えっ!まさか…昨晩の男女って…

 

「思い出したようだな。キリトって、お前の兄か?」

 

「そ、そ、そうです…が…」

 

声が震えている。マズい…ゲーム内なら強気に出られるが、リアルでは…

 

「剣道部にいた覚えが無いんだが…それに、お前の兄の構え、見た事の無い流派だったな」

 

「兄は剣道部に…いませんでした」

 

あれって、アインクラッド流剣技だっけ?

 

「なら、お前が相手をしろ。それで水に流してやる。俺と明日奈、どっちと先にやる?」

 

まさか二連戦か?殺される…

 

「なんだよ?ゲーム内だと勇ましいのに、リアルではヘタレか?」

 

両腕に兄妹が抱きついて来た。どこかへ連行するようだ。逆らわないようにする。この兄妹は剣道だけでなく、空手と柔道でもチャンプだったのだ。この態勢から回し蹴りサンドを喰らえば、内臓破裂するかもしれない。

 

「なぁ、直葉…臭いんだけど、チビったのか?漏らしたのかな?」

 

明日奈が耳元で囁く様に言い、耳タブを舐めて、甘噛みしてきた。殺される?耳をかみ切られるのか?

 

「話し合いで済まそうか」

 

正が、私の頭を掴み、目をのぞき込むように言った。

 

「何だよ、ビビっているのか?」

 

蔑む視線の明日奈。私の下着をゴミ箱へ捨てた。

 

「そうだな。直葉の詫びを、先ず受け入れてもいいけど…強制はしないよ」

 

あくまで私が自発的に行った形にするようだ。彼らの希望に沿うように、自発的に…その様子をスマホで撮影している明日奈。後日、脅すネタにするのだろう。

 

「お前の兄に言っておけよ。いつでもリアルで決闘を受けるとな。但し、ゲーム内で俺達の仲間に手を出せば、次はお前の家に行く。いいな、忘れるなよ。ゲーム内ではやりたい放題のようだが、リアルで俺達がやりたい放題する。肝に銘じておけよ」

 

今後のことを言い残し、鬼畜兄妹が帰っていく。恥ずかしい姿の写真も撮られた。あんな姿、誰にも見られたく無い。

 

家に帰ると、お義兄ちゃんはALOにインしていた。私がこんな目に遭ったのに、ゲーム三昧って…暢気なものだな。夕食の時に、今日のことをお義兄ちゃんに話すと、直ぐに警察へ通報をしていた。

 

「何をしているの?」

 

「こういう輩は、補導してもらって、臭い飯を食えばいいんだ。アスナもリアルで脅されたんだろうし」

 

お義兄ちゃんは、リアルの諸星兄妹のことを知らなすぎる。お義兄ちゃんは、VR世界において最強の存在かもしれないが、リアルでの更なるお礼参りが私にされるのに…

 

そんな心配をしていると、翌日の朝、警察の人が来た。

 

「昨晩は、どこにいたんだ?」

 

「家にいましたが…」

 

通報による事情聴取があったのかな?

 

「何度も呼び掛けたり、スマホへ連絡をしたが、不在だったぞ」

 

あぁ、兄妹共にALOにダイブしていて、気づかなかったようだ。その旨を伝えると、

 

「なるほどな。SAOサバイバーだから、リアルな日常では過ごせないのか。あの兄妹は今や更生をして、家業の手伝いを精一杯しているのになぁ。お前ら、ゲーム三昧なヤツとは違うんだ。ゲーム内のことを、一々警察に訴えるなよ」

 

えっ?どういうこと?警察の人に訊くと、あの兄妹はあっさりと、ゲーム内で乱暴したことを認めたそうだ。リアルでしたでしょ?何で…警察の人に事実を話した。でも…

 

「昨晩、双方の言い分を聞こうと思って、君達兄妹を呼び出そうとしたんだが…そうか、ネット内にいたのか。彼らは大切な修行の時間を削って、署まで来てくれたのにな。通報者である君の兄の証言を訊きたかったんだ。ゲーム内の報復をリアルでされたって通報されてね。彼らの言い分では、ゲーム内の報復をゲーム内でしただけって言うんだよ」

 

そんな言い訳をしたのか、あの兄妹は…

 

逆に、警察からの私達兄妹の心証が悪くなったようだ。この辺の情報操作は、あの兄妹は上手い。武道の道場で警察関係者を複数知り合いにしているらしいし。言わば警察の身内サイドであるらしいのだ。一方、私のお義兄ちゃんはSAOサバイバーという色眼鏡で見られる存在である。ゲーム内で人殺しをして、現実とゲームの区別があやふやな存在として、マークされているようだった。

 

「君も、ヴァーチャルとリアルの区別は、付けなさいね。今回は警告だけにするが、次は偽証になるから注意しなさいね」

 

警察の人は帰っていった。これって、私が悪いの?

 

 

 

---ダン---

 

ゲームにインをするとアスナがいた。

 

「もう心配は無いと思う。リアルで話を着けてきた」

 

実際は拗れている。直葉の兄は俺達を警察に訴えていた。ゲーム内だと勇ましいが、リアルでは警察を頼るのか。ゲーム内なら躊躇無く人を殺すくせに、リアルではチキンとは呆れた男だ。

 

「リアルで知っていたの?」

 

「桐ヶ谷の妹の方だけどな。俺も妹も知り合いなんだよ」

 

アスナの頭を軽くポンポンとしてあげる。

 

「そうか、円満解決したのね」

 

円満かどうかは、直葉次第だな。アイツはどう立ち回るのだろうか?

 

「ダンさん、休業日ならそう言ってくださいよ~」

 

メイプルがぶんむくれている。今日、店に来たらしい。いつも来るサリーには言ってあったんだけど…

 

「一番乗りを狙って、朝早くに行ったら、シャッターが降りていましたよ!」

 

メイプルが一番乗り?それは珍しい。

 

「怒るなよ、今度来たら新作を奢ってやる。試食とは別にだ」

 

「本当ですか?」

 

リアルで食い過ぎると太るとは言え無い。メイプルの笑顔は、いつも嬉しさが満開だから…

 

「今日はどうします?」

 

「アズライトのクエストの準備だな。新大陸は、クエストの後にしよう」

 

「了解です」

 

って、メイプルがクランマスターで無いのか?なんで、俺が取り仕切っているんだ?

 

 




次回、遺跡調査ですが、アズライトの身に…

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