デスを食らった男   作:もっち~!

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遺跡調査

 

---アルティミア・A・アルター---

 

遺跡調査にダン達を頼った。父である亡き国王から、マスターを戦の道具にはするなと言われたのだが、今の王国の戦力を考えると、マスター達の力に頼ることが不可欠だった。あの国王を亡くした戦争により、多くの有能なティアンが失われた。皇国のマスター達の手によって…

 

マスター…世界が遣わした時代の変革者で、特別な力を有する者達である。その特別な力は戦争の為にあるのでは無いと、亡き国王は口にしていた。だけど…彼らの力は戦闘向きである。これも事実である。破壊王の火力、女教皇の組織力、どれも戦争向きである。彼に会うまでそう思っていた。

 

ダン…私の総てを見て、触って、交わった唯一の男性マスター。彼は戦闘も出来るが、内政も出来る男だ。相談に乗ってくれ、提案もしてくれる。問題は、私が王女付きの侍女だと思っていることだな。今まで、何度も正体を明らかにしようとしたのだが、私の正体を知って離れて行く彼を見たく無い、失いたくないのだ。

 

「そろそろ、打ち明けたらどうだクマ」

 

破壊王には、アズライトの正体はばれていた。

 

「だけど…」

 

「いつまでも偽りの関係はダメですよ」

 

リリアーナの言いたいこともわかる。

 

「そんなことで、関係は壊れないクマ。あのレイレイが懐いているクマ」

 

酒池肉林が彼に懐いている。クマ以外と組まなかったあの女が、普通に彼の本拠地に出入りしている。私と二人で、彼に甘える日も少なくない。

 

「いざとなったら、護ってくれるクマ」

 

クラン<楓の木>…彼の所属するクラン。その潜在能力は未知数。クランマスターは非公式であるが、王国一の戦闘力を持つ破壊王を一撃で消し飛ばしたそうだ。その上、そのクランマスターは彼に全敗中だとか。また王都内にいる犯罪者や私達の敵対者は、彼の妹を始めクランにいるPK専と呼ばれる者達に消されているそうだ。

 

「すでに、王国の秘密戦力クマ」

 

王女として、彼らに特に依頼はしていないが、王女付きである私を苦しめる者は消すことが、彼のいるクランの方針らしい。あくまで、王女付きである私の為である。

 

 

遺跡に向けて、空を飛ぶ船に乗って移動している。これは何?どうして、金属の塊が空を飛んでいるの?

 

「そんなに固くならないで大丈夫だよ。落ち無いから」

 

この船の中には、ラウンジの他、キッチンや風呂場、そしてそれぞれの個室まである。クランホームとしての機能までもだ。

 

「みんなで移動する時は、コイツが便利なんだよ。特に宿屋が無くても、野宿しないで良いし」

 

「これはどういう仕組みなんだ?」

 

「俺も知らない。まぁ、失われた文明の残りカスだろうな」

 

ダンの部屋で彼に抱かれている。こうしていないと、不安であるから。たまに、体内でダンの息吹を感じる。それはそれで安心出来るのだが…

 

「目標地点に着いたよ。なんか機械仕掛けの犬が、人間を襲っているんだけど…どうする?」

 

周辺探査を受け持っていたイズが、そんなことを言うと、

 

「じゃ、殲滅するか」

 

私から離れ、装備を装着するダン…

 

「飛び降りられる者だけ降りろ。イズ、近場で着陸してみて」

 

「わかった」

 

扉を開け、飛び降りるダン、メイプル、アスカ…彼らは空を飛べるらしい。マリー、フレデリカ、ミィ、ミザリーが上空から狙撃を始めた。普段はマッタリとしている集団であるが、戦闘集団に変身する速度は速い。

 

「着陸します」

 

空を飛ぶ船が地上に降りると、クロム、サリー、カスミ、ビースリー、アスナ、レン、フカが我先にと飛び出して行った。

 

「アズライト、驚いた?私達、基本バトルジャンキーだからね」

 

イズとカナデ、マイ、ユイ、ユーゴーが私を護るように位置取りをしている。事前に役割分担が出来ているようだ。しかも、王国騎士団よりも火力も練度も高い。いつ練習しているんだ?いつも、マッタリしているのに…

 

ガサッ!

 

草をかき分けた音…咄嗟に音の方へと走る。私を追って、ガード陣も着いてきてくれる。目の前で、怯える少女に近づく、死霊系のモンスターがいた。

 

「貴様!」

 

剣を振るう私。

 

《復讐するは我にあり》

 

私の振るった剣を、何かのスキルで受け止めた。これって…

 

「うっ…」

 

薄れゆく意識の先で、目の前のモンスターの頭部が破壊され、消えていくのが見えた。誰かが倒してくれたんだな…少女は無事だろうな…

 

 

 

---ダン---

 

くそっ!アズライトがやられた。俺とサリー、カナデ、ミザリーで、回復術、治癒術、修復術を全力で掛けていく。

 

「なんで、コイツが…王女付きを暗殺って…」

 

オーバーキルに近いダメージである。辛うじて、カナデが今日のラッキースキルであるオールヒールを使い、アズライトの一命を死守してくれた。だけど、状況は思わしくない。瀕死状態のティアンには、ヒール系の術が効きにくいようだ。

 

「ミザリー、どうだ?」

 

「心が折れているみたい。生きようとする気力の問題かな」

 

生きたい思えばいいのか?俺とアズライトの想い出を妄想という形にして、ギフトしていく。もっと、生きろよ!なぁ、アズライト!

 

現場で出来る手は総てした。転移術で本拠地に戻り、プールしてある回復薬を飲ませていく。あの時と同じように、口移しで…体内から治すには、魔法よりポーションの方が良いらしい。

 

「これは…」

 

サリーがクマを呼びに行ってくれ、連れてきてくれた。。

 

「どういうことだよ。なんで、お前の弟が、アズライトを…おい!クマ!どういうことだ?」

 

初めて、ゲーム内で本気の怒りがこみ上げてきた。ゲームだと割り切っていたのに…だけど…アズライトが…くそっ!

 

「わからない…なんで、アイツはこんなマネを…」

 

クマの着ぐるみのせいで、中の人の表情はわからない。だが相当に動揺しているようだ。

 

「なんで王女付きのアズライトが、こんな目に遭うんだ?国にとっての重要人物なのか?」

 

「えっ!」

 

クマが驚きの声を上げた。おい、今のセリフのどこに驚くポイントがあったんだ?

 

「まさか…言っていないのか…まだ…」

 

クマがマリーとビースリーに目配せをすると、二人は頷いていた。何を言っていないんだ?それは、狙われる理由か?

 

「アルティミア様は大丈夫ですか?」

 

アズライトの親友であるリリアーナが、部屋に飛び込んで来た。

 

「アズライトなら、今寝ている。一命は取り留めたと思う」

 

「そうですか…ありがとうございます」

 

「なぁ、アルティミアって誰?」

 

「「えっ!」」

 

俺以外の者達が驚きの声を上げた。どうしてだ?そんなに有名人なのか?アズライトって、芸名なのかな?

 

「まさか…まだ伝えていないんですか?」

 

リリアーナが先ほどクマがしたように、マリーとビースリーに目配せをした。二人は苦笑いを浮かべる。

 

「なんで…墓場まで持っていくことじゃ無いのに…」

 

それは、アズライトの秘密ってことか?

 

「アズライトって、王城付きの侍女じゃ無いのか?これで二度目だぞ、命に関わる事件で助けるのは?」

 

初めて会った時も、見逃していたら、死んでいたと思う。

 

「それは…本人の口から聞いて下さい。アルテ…いえ、アズライト様の希望ですから」

 

アズライトは王女付きでは無いのか?まさか王様付きの愛人なのか…それは、俺に死亡フラグが立ちそうだぞ。あんなこと、こんなこと、そんなことをしてしまったし。トンズラするかな?

 

 

 

---アルティミア・A・アルター--

 

うん?ここは…身体がだるい…ここは私の部屋のベッドか…なんか夢を見ていたような。思い出せない。何が遭ったんだ?

 

「アルティミア様…」

 

目を真っ赤にしたリリアーナがいた。

 

「なんで泣いているんだ?」

 

「覚えていないんですか?」

 

「何をだ?」

 

随分長い間寝ていた気がする。

 

「何が遭ったんだ?」

 

「その前に…ダンさんに伝えていないのは、どういうことですか?」

 

ダン…そう言えば、ダンと旅行していたような…

 

「何を伝えてないんだ?」

 

「ご自分の身分をですよ!」

 

リリアーナが怒っているのだが…なんでだ?

 

「何を怒っているんだ?私は私ではないか…あっ!」

 

そうだ。ダンは私を王城付きの侍女と思っているんだ。で、今回の依頼の前に伝えようと…あの空飛ぶ船を見て、動揺のあまり伝え損なったのだった。

 

「伝えないと…うっ!」

 

「まだ、動けませんよ。死の淵を彷徨っていたんですからね」

 

えっ!

 

「どうして?」

 

「はぁ~」

 

リリアーナにため息を吐かれてしまった。私は何かをしでかしたのか?

 

「ダンさんが、アルティミア様のことを王様付きの愛人と誤解しちゃいましたよ」

 

「え…えぇぇぇぇぇ~!どうして、そうなったんだ?この国に王はいないぞ」

 

「現在、捜索中です。どこかに逃亡しています。王様付きの愛人に手を出して、打ち首の上獄門だって…なんで、正直に身分を明かさないんですか?!私まで会えないじゃないですか?!」

 

プンプンと怒り出したリリアーナ。えぇぇっと、怒るポイントはそこ?

 

 

 

---ダン---

 

まさか、アズライトが王様付きの愛人とは…もう、あの国には居られないな。

 

「どこに行きますか?」

 

メイプルに訊かれた。

 

「追っ手の来ない場所だな」

 

現状でも追っ手が来られない移動式ギルドホームで、お空の上にいるが、ここではバトルが出来無い。

 

「いや、逃げないでも大丈夫ですよ」

 

マリーは妙案でも浮かんだのか?

 

「アズライトは王様付きの愛人では無いからですよ」

 

「いや、しかしなぁ」

 

「そもそも、この王国には王様はいません。先の戦争で王様は戦死しているのですよ」

 

戦死?

 

「で、今王族に残っているのは3人の王女様です」

 

「まさか王女様付きの愛人なのか…」

 

まさか…アズライトは両刀遣いだったのか?

 

「それはそれで、そそるシチュエーションですが違います。アズライトは第一王女様本人ですよ」

 

「は?」

 

意味がわからん。王女が、なんで侍女のロールプレイしているんだ?

 

「アルター王国第一王女であるアルティミア・アズライト・アルター王女本人です。王女とバレると、ダンが去って行くのではって、中々言い出せていないかったのですよ」

 

え…俺、王女様とあんなことを…打ち首の上獄門で済むかな?

 

「兎に角、逃げるのでは無く、向き合った方が良いと思いますよ」

 

マリーとビースリーはアズライトの正体を知っていたようだ。交互に俺を説得してきた。。

 

「そういうもの?」

 

「そういうものだと思います。それに、このまま逃亡ではリリアーナはどうなるんです?駆け落ちするにしても、彼女の妹はどうするんですか?」

 

俺はまだ駆け落ちまで考えていないのに、マリーは俺の一手先を読んでいるのか?

 

 

 

---一宮渚---

 

暗殺者マリー・アドラーの新作が掲載される。ダン達のクランに入って以来、作中のマリーが生き生きと動き出したのだ。暗殺のターゲットの為に、恋のキューピッド役をやらせてみたら、生き生きと動き出したのだ。

 

「第2部はこういう展開なんですか?う~ん、ありだと思いますよ」

 

担当編集さんに連載の依頼を頂いた。正君に報告しに行くかな。週末にモロボシ洋菓子店へと向かった。月末の週末は混んでいる。クラン<楓の木>の面々が集合しているからだ。来月の試作ケーキが目的であったりする。あのクマも来ているし。月夜と月影の中の人まで来ているよ。そのうち、デンドロ公認のケーキ屋になるんじゃ無いのか?

 

「あっ!マリー」

 

レジにいたアスカに声を掛けられた。

 

「今日は一段と混んでいるねぇ」

 

「夏休み最後の週末だからね。あぁ、そうだ。フカの中の人も北海道から来ているよ」

 

そのせいで、ごった返しているのか?夏休み最後の週末の為、遠方組もいるのか。

 

「あぁ、連載が決まったよ。これ、プレゼント」

 

「ありがとうございます」

 

連載1話目の載った雑誌をアスカに渡した。

 

「おぉ!マリー、連載開始おめでとう」

 

クマの中の人だ。コイツ、私の作品の愛読者だった。ずっと、続編を待っていてくれていた。

 

「ありがとう。今日はレイレイは?」

 

「くやしがっていたよ。今日はロンドンだ」

 

世界ツアー真っ盛りのレイレイの中の人。そうか、ロンドン公演じゃ、来日は無理だな。

 

空いている席に着き、ケーキセットを頼むと、新作ケーキがオマケで付いて来た。

 

「今回は干し柿のモンブラン風です」

 

ウェイトレス見習いのサリーがサーブしてくれた。ヘッドに干し柿のクリームが載り、中には栗?これって、マロングラッセとクリームチーズのクリームかな?風味が豊かで、なんか癒やされる。

 

「これ、高くなりそうだね」

 

材料原価が高そうである。正君は納得出来る味の為なら、価格高騰を抑えるなんて妥協はしない。

 

「1000円近くなるみたいですよ。マロングラッセとクリームチーズですからね」

 

苦笑いしているサリー。来月はイズ達の悲鳴が聞こえそうだ。周囲を見回すと、見慣れない外国の少女がいた。誰だろうか?カスミ、イズのいるテーブルにいるんだけど…

 

「あれは誰?」

 

近くにいたフレデリカに訊いた。

 

「ユーゴーの中の人だって。驚いちゃったわ」

 

へ?ユーゴーってイケメンだよね?え、えぇぇぇ~!中の人って、少女だったのか…う~む…ベルばらチックだな。

 

「複雑な家庭の事情で、正さんの家で同居して高校卒業したら、ここで働くんだって」

 

何?このお店の女子率が高くなっていくでは無いか。既にメイプルとサリーも高校卒業したら、このお店で働く気満々だし。それにフレデリカ、ミィも狙っているかもしれない。あぁ、マンガのネタが一杯転がっているのね…

 

 

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