04/27 更に修正を加えました。
---ユーリ・ゴーティエ---
正さんに身の上話をしてしまった。まったく、聞き上手の上、聞き出し上手だな。澱ませる事無くプライベートをさらけ出してしまった。複雑な家庭の事情の私に、彼と彼の両親が手を差し伸ばしてくれた。
「じゃ、うちにおいでよ。将来、お店で働いてくれるなら、ここで住み込みをすれば良い」
って…彼ら兄妹も、彼の両親もフランス語が話せ、言葉の壁は感じ無い。
「以前、話しただろ?フランスのケーキに精通した人材は、欲しいんだよ」
と…サマーバケーション中に、渡航と留学転校の手続きを進め、そして、ジャポンのサマーバケーション中に渡航出来た。来週から、サリー、メイプルと同じ学校へ通えるそうだ。
「どう?言葉は順調かな?」
「はい。ちょっとずつ…」
正さんもアスカさんもフランス語が出来るので、この国の言葉を学び易い。
「9月はこれでいいとして、10月はどうするかな?」
厨房に戻ると、正さんが、10月のケーキで悩んで居た。
「兄さん、松茸はダメだって。高くなりすぎるからさぁ」
「じゃ、トリフは?」
「もっとダメだよ。良物の確保が難しい」
「う~ん…じゃ、カボチャで行こうか?」
「カボチャ?あぁ、有りかな。って、単なるパンプキンにはしないんだよね?」
「あ!ユーリ、フランスのカボチャ料理って、どんな感じ?」
突然、私に話し掛けて来た正さん。戸惑いながらも返答をする。
「え…えぇっと…グラタンかな?」
「そうか…品種が違う可能性があるんだな。これを食べて見て」
何かのクリームかな?一口食べると、ほんのり甘い。
「おいしいです」
「それ、カボチャ100%の餡だよ」
へぇ~。品種が違うのか?調理方法が違うのか?興味があるなぁ。
「一緒に開発しない?」
「喜んで…」
ケーキの開発かぁ…夢が広がるな。先の見えなかった世界から、助け出された気分である。
---アルティミア・A・アルター---
日常生活が出来るまでになった。妹が代わりに内政を見てくれているが、そろそろ復帰できそうだ。あれからダンは、連絡をまるでくれない。リリアーナに探して貰っているのだが、クランの本拠地には誰もいないそうだ。移住されてしまったかな。一番大事な事を伝えていなかったから。
私を死の淵へと追いやった人物は判明した。兄に付き添われて自首をしてきたのだ。その正体はレイ・スターリング、破壊王の弟だった。
「俺は少女を助けに行っただけです。そんな俺を攻撃したのは、あなただ!言っちゃえば自業自得だよ」
自業自得…確かに彼の供述だとそうなるのだが…
「紛らわしいい格好をするのが悪いるのでは。どう見たって、死霊系のモンスターだろうに、あの服装は!」
原因は私の誤認だったらしい。しかし元を返せば、何故コイツは聖騎士のくせに、見た目が禍々しい装備をしているんだ。カモフラージュ以前の問題である。どう考えてもコイツが悪いだろうに!!装備に関しては、クマも弟に苦言を呈していた。いや、彼のエンブリオもだな。あの姿に関しては、レイ本人以外、全員が私と認識を同じにしているのだった。
「弟には言って聞かせるクマ。これで手打ちにして欲しいクマ」
クマに暴れられると、我が国は崩壊するであろう。ダンがいれば別だと思うけど、今はもういない。
「一つ訊く。カルディナを崩壊させたのは、お前か?」
破壊王に訊いてみた。あんなことを出来るのは、コイツかダンくらいだろう。
「う~ん、あれは事故だクマ。やったのはメイプルだクマ」
事故って…どんな事故だ?大国を崩壊させるほどの事故って…その上、下手人はメイプルなのか…ダンのクランマスターか…責めれば、ダンは益々帰って来てくれないだろうな。
「アルティミア様、ダンさんがいらっしゃいました」
頭の痛い事態に、リリアーナが吉報を持って来てくれた。
「何?あの強●魔か?そうか…自首か?じゃ、俺が退治してきますよ。これで貸し借り無しにしてくださいね」
はぁ!意味不明な事をいうクマの弟。なんで、ダンを退治なの?なんでよ!そもそも、どうして強姦魔だと言い切るんだ?私の知っている限り、ダンはそんなことをするほど、女には困っていないぞ。ダンは女性に積極的に迫る性癖も無いし、至って性欲も真面だと思うのだが…
「待つんだ!レイ!」
クマの呼び掛けは届かず、扉の外で争う音がして…扉からダン、アスカ、アスナ、アリス、カエデが入って来た。クラン<楓の木>の室内戦最強戦力である。
「おい!クマ!お前の弟に襲われたんだが…」
「すまんクマ…」
「おい!俺がいつ強●をしたって言うんだ?」
「アイツの誤解クマ」
「お前の弟、ギデオンで英雄らしいなぁ。その英雄が俺を強●魔って言うから、俺はギデオンを出入り禁止にされたんだぞ!責任取れよな」
「謝罪ではダメクマ?」
「謝罪はいらない。お前の弟だから、PKリストに入れてなかったが、さっき入れたぞ」
見つけ次第にキルってヤツか。あの王室に寄生していた女狐の心を折ったというクラン<楓の木>が定める極刑である。
「仕方ないクマ。リアルで言い聞かせてくるクマ」
目の前からクマの姿が消えた。
「あんたが王女様か?!」
久しぶりに聞くダンの声だけど…その呼び方は止めてぇぇぇぇぇ!私の心に激痛が走る。
「そうよ」
でも、ここでは王女を演じないとダメだ。臣下達の目がある。
「王室からアズライトを解放しろ!」
えっ!何を言っているの?私がアズライトよ…
「アズライト…お前の力でアイツを一般人に出来無いか?」
それは私自ら王位を捨てろってことか…
「無理だわ」
ダンとの関係が終わったのか…涙がこぼれていく。臣下の前であるが…何かが決壊したのか、涙が止まらない。
「そうか…」
もう気軽に話し掛けられないのか?嫌だよぉぉぉぉぉ~。
「なら、アズライトに伝えろ。受けた依頼は終わらせる。だから…静養に励めと。以上だ」
言い終わると、扉へと向かい始めるダン達。
「リリアーナ、無茶しないように、見守れよ」
「はい…あの…これって、別れでは無いですよね?」
リリアーナが大切なことを訊いてくれた。王女として、ここにいる私には訊けないことである。
「別れ?何のだ?俺は王女付きのアズライトへの伝言を伝えに来ただけだ」
「お姉ちゃん、これでいいの?こんな終わり方で…」
小声で妹が、私の背中を押してくれた。そう、こんなのはイヤ。
「待って!ダン!」
私は玉座を立ち上がり、ヨロヨロとダンに近づいて行く。
「あなたに言って居なかったことがあります」
ダンは振り返らず、その場に立ち尽くしている。
「ごめんなさい。私がアズライトです。アルティミア・アズライト・アルター、これが私の本名です。言うのが遅くなって、ごめんなさい」
やっと、ダンの背中に抱きつけた。ダンの首に腕を回し、ダンの臭いを吸い込む。臣下達の目?そんなの関係無い。私の全力をぶつけるのは、今しか無い。ここを外すと、後が無いと思う。
「王女様、俺はこの国の英雄に言わせると強●魔です。ここでは、触れないでください」
ここでは?うん?
「リリアーナ、アズライトが元気になったら、連れて来いよ」
「はい!」
えっ!リリアーナが笑顔で、私をダンから離していく。なんでよ~!
「では?失礼します」
ダン達が、玉間から去って行った。
---ダン---
「あれで良かったの?」
アスカが不満げである。
「他に無いだろ?一応、現役の王女なんだからさぁ」
何かの映画のように、連れ去る訳にもいかない。王女付きの侍女だと思っていたのに、王女本人とは…詐欺だ。
「ダンらしいかな?」
アスナが抱きついて来た。カエデはメイプルがいないので、既に背中に背負っている。
「ティアンだしなぁ。無理をさせる訳にいかない」
ティアンは死んだら、そこまでである。生き返らせるのは難しいだろうな。
「そうですね。ティアンは死んだらお終いです。改ざん出来ますが、アンデッド化させて不死性をつけるのは、ダメですよね?」
アリスが抜け道を示してくれるが、
「王女がアンデッドではマズいだろ?以前のように、街で遊ぶ程度が良いんだよ、きっと」
王女と遊ぶって言うのは罪悪感があり、気が引けるが、前線に連れ出せば、あぁいう危険が伴うしなぁ。って、言うか、クマの弟はなんだよ、アレ?ジョブが聖騎士で、姿がリッチとネクロマンサーに、見える上、禍々しいスキル持ちらしい。この先も、あぁ言う事故が増えそうだ。なので、見つけ次第、退治しよう。
「でも、アズライトだよ。きっと、付いてくるな。無理を押して。リリアーナじゃ止められないよ」
まぁ、割と強引であるのは事実である。俺も何度押し倒されたことだろうか。
「遺跡調査って、王国の関係者を連れ行かないとダメみたいだよ」
アスカが今回のクエストのヘルプを読んで教えてくれた。
「第二王女は?」
「黄河帝国の王子とお見合い中です」
「第三王女は?」
「病弱のようです」
アリスが俺の訊きたい情報を提示してくれる。意思の疎通感が有り、便利である。
「そうなると第一王女しかいないのか?う~ん…」
悩みどころだな。
---リーファ---
一人、新大陸を目指して旅をしている。リアルでは向き合えない。だから、この世界で向き合おうと思ったのだ。あの鬼畜兄妹にだ。初めての船旅。VR空間の船旅も船酔いがあるようで、海に向けて嘔吐している者がいたりする。幸い、私は酔わなかったので、良かったわ。
新大陸までリアル時間で24時間掛かる。それぞれのゲームの時差を吸収する為らしい。
24時間後、新大陸に着いた。定期便の着いた港は、アルター王国にある。そして、この国の王都に目指す人物がいるのだった。港街の両替所で通貨をコンバートしていく。所持しているお金のほぼ全額である。この地に骨を埋める覚悟で来た。定期便の馬車で王都を目指す。
移動中にすることは無いので、この時間を利用して、デンドロのルールを読み、理解を深めていく。NPCはティアンといい、ティアン殺しは重罪であること。但し、先制攻撃をしてきたティアンに関しては、その限りでは無いこと。期待と不安が交差する。幸い、奴隷制度が無いのは救いである。あの鬼畜兄妹の奴隷はいやであるからだ。
王都に着き、クラン<楓の木>の本拠地を目指した。案内所でマップを貰い、歩いて移動する。何故か迎賓館と同じ敷地にあるらしい。そして目的地に着き、深呼吸をして、中に入った。
入ると中は喫茶店になっていた。鬼畜兄妹の意向か?クランの受付があり、そこで用件を伝える。
「鬼畜兄妹に会いに来ました」
と…彼らのアバター名を知らない。しばらく待つと、背後から抱きつかれた。手の平が胸と股間に伸びている。
「リーファじゃないか。どうしたよ。遊びに来たのか?」
奥へと連れ込まれてる。抵抗はせず、されるがままでいる。
「俺の部屋はここだ」
鬼畜兄の部屋に連れ込まれた。
「で、用件はなんだ?」
「もうリアルではカンベンしてください」
「それはこの世界ならいいのか?」
「好きにしてください」
「わかった。見ているだけにするわ。動くなよ!」
見ているだけ?
「ダンさんいる?」
知らない少女が入って来た。
「この女はどうしたの?」
この女呼ばわりである。
「好きにしていいって…だから、オブジェにする」
オブジェ扱い?無理…ずっと、動かないなんて無理だって…
「サリー、こいつをクランに登録する。アリス、手続きを頼む」
「了解です」
あの時の黄金鎧の少女が現れた。
「おい!、動くなよ!」
動かないって辛い。つい、よろけてしまった。
「動くなって言っただろう?」
動かないことに意識を集中して…段々と意識が遠くなっていき、朧気な意識が覚醒すると、知らない部屋で寝ていた。
「ここは?」
「やぁ~!」
鬼畜妹がいた。
「どうかな?」
笑っている鬼畜妹こと、諸星明日奈…苦しむ姿を見るのが好きなドS女である。
カチッ!
何かのスイッチが入り、全身に刺激が駆け巡る。勝手に身体が反応している。
「清純派の直葉も、ヴァーチャル世界では…ふふふ」
愉しんでいる。このドS女が…ダメ…あっ!デスペナを喰らった。
---桐ヶ谷直葉---
気づくと、自分の部屋にいた。快楽に飲み込まれると、デスペナになるのか。
大人も愉しめる仕様のデンドロ…恐るべし。今までのゲームとは違う怖さを感じ、呆然としてしまった。
次回は、統一デュエル・トーナメント…予定ですが…