--- 椋鳥玲二---
女化生先輩こと扶桑月夜が、知らない男性に連れ出された。
「あの人は誰ですか?」
ビースリー先輩に訊いてみた。
「知らない方が平和だと思うけど」
知るとマズいヤツなのか?
「俺の知っているゲーム関係者ですか?」
「そうね…知っているわね。あ、ゲーム内と違って手を上げたら、正当防衛されて死ぬから、止めた方がいいわよ」
ゲーム内で俺が手を上げたのは、フランクリンと強姦魔であるが…どっちだ?
「リアルで、信者に頼んで闇討ちをしたらしんだけど、返り討ちにあってね。逆に調教されたみたいなの」
調教?そうなると、アイツだ。リアル強姦魔かっ!アイツの後を追いかけるが、既に拉致していった後で、どこにも見当たらない。
「ビースリー先輩、アイツの家を知っているんですか?」
部室に戻り、訊いてみた。
「知っているけど…あなたのお兄さんも知っているわよ」
アニキもかぁ…
「お兄さんに相談しなさいね」
先輩の言葉を受けて、アニキの元へと向かった。後味の悪いのはイヤだからだ。
---諸星正---
リアルクマこと、 椋鳥修一に呼び出された。
「何か、用ですか?」
「弟と、そろそろ和解してくれないか?」
「和解?シュウさんの弟、警察にダレ込みしたそうじゃ無いですか。これからは弁護士を挟んでくれませんか?」
「え?おい!玲二…どういうことだ?」
「俺の目の前で、月夜先輩を拉致したんだ。後味が悪いはイヤだからね。コイツ、先輩を調教してそうなんだよ」
「おかげで、事情聴取されましたよ。最近、多いんですよ。ネット内で勝て無いバカが、リアルで警察にたれ込む事案がね」
椋鳥修一とはリアルで戦いたく無い。向こうはプロの格闘家で、俺は単なる高校生である。戦わないでも結果は明らかである。しかし、コイツ、小さい男だな。兄がいないと勝て無いのか。
「ゲーム内でもリアルでも、女性にイタズラしているヤツが、大きな口を叩くなよ!」
リアルクマと言う盾越しに、悪態を吐いているリアル弱者。
「シュウさんの弟さんを名誉毀損で訴えていいですか?」
「玲二、お前、何をしているんだ…」
クマ兄さんは、弟の行動を把握していないようだ。
「だって、兄さん。俺は見たんだ」
「シュウさん、あなたが俺の無実を説明してあげてください」
俺は振り返り、帰路に着くが、背後から何かが近寄る気配を感じ、それに拳を合わせた。カウンター気味に椋鳥弟の顎に、俺の渾身の拳が入った。相手の顎の骨にヒビが入った感触がある。
「背後から襲えって、シュウさんが言ったんですか?」
唖然としている椋鳥兄。弟の予想外の行動に立ち尽くしていた。俺は、そのまま、帰路に着いた。
---椋鳥玲二---
顎の骨にヒビが入った。救急搬送される俺。警察に連絡をしようとするが、アニキに止められた。
「お前が悪い。これ以上、恥の上塗りをするな」
『どういうことだ?』
顎を固定されている俺、筆談で抗議をした。
「レイレイと月夜に確認したが、玲二の言ったような犯罪は起きていない。ゲーム内もリアルでもだ」
そんなはずは…
「お前の勘違いだ。アイツと和解しろ。いいな。出来無いなら、次の相手はアイツでは無くて、俺がする」
アニキ…勝てる訳が無いって…
---ダン---
資金繰りと環境整備に時間がかかるようだ。バイト先も装置の開発元も、前向きに、俺の計画に協力してくれるそうだ。そこで、新たな戦場を求めて、俺だけでダイブしてみた。今回は前回と違い、街中に転移していた。ここはどこだ?
『「神々の宴」というVRーMMOのようです』
アリスが情報を調べてくれた。VR-MMOなら、みんなで来られるな?
『勿論ですよ』
で、どんなゲームだ?
『神もしくは女神をトップとするギルドに加入して、ギルドを大きく、強くするゲームで、ギルド対抗戦や対人戦、ダンジョン攻略もあります』
楽しめそうだな。
『マスターに提案があるのですが、この前のVR-RPGへ行きませんか?』
ソロプレイーなんだろ?
『あそこには、ユウキさんの為に、使える物があるんです』
そうなのか。じゃ、行ってみよう。俺はキルされたゲーム世界へ転移をした。前回とは違い、転移した場所は、ダンジョン内であった。
『迷宮核の所有者が生存していないようなので、マスター名義に変更しました』
アリスからのメッセージの直後、隠し扉が開き、7人の女性が現れた。不思議なことに皆、同じ顔で同じ背丈で同じ服装であった。
「マスター、ご命令を…」
俺のことをマスターと呼んでいるんだけど…
『ホムンクルス…人造人間です。彼らの身体をコピーして、ユウキさんの器にします』
アリスが作業を始めたようなので、彼女達に迷宮をことを訊いた。この世界の迷宮は、龍脈と言うエネルギーの流れる地下河川よりエネルギーを吸い上げ、リソースとして使い、モンスター創造など迷宮の維持・管理をしているそうだ。
そして、それぞれの迷宮には迷宮核と呼ばれる制御AIがおり、ダンジョンマスターの指示により、迷宮を運営するようだ。で、アリスが所有権の名義を変更することにより、俺はこの迷宮のダンジョンマスターになっていた。
『マスター、コピーが完了いたしました。運用サーバーが確保でき次第、このホムンクルスとソウルトランレーターをリンク致します』
で、この世界はみんなで冒険出来るのかな?
『もう少し時間をください。冒険先は、先ほどのダンジョン都市が良いかと思われます』
次の瞬間、そのダンジョン都市、オラリオにいた俺。
『このゲームも新大陸として、デンドロの世界にリンクしました』
アリスの仕事は早い。この世界の管理AIと交渉をしてくれたようだ。さて、どうするかな?
「まず、神の配下になりましょう。神をトップとしたファミリアというクランに属さないと、ダンジョンに入れないようです」
金色の鎧を着たアリスが俺の隣に現れた。神か…機械神じゃダメかな?
「ダメです」
そうなのか…じゃ、ダレにするかな?
「お薦めは?」
「マスターの好みが良いですよね?そうなると…処女神アルテミス様はどうでしょうか?」
月の女神かぁ…セーラー戦士にされたりはしないだろうな?
「こちらです」
アリスの案内で、女神アルテミスの元へと向かった。
◇
「登録終わりましたよ」
ギルド職員のエイナ・チュールが、ファミリア設立の処理をしてくれた。この世界のギルドは、冒険者組合のような物で、冒険者の相談窓口になっているそうだ。アルテミス・ファミリアを設立出来た。団長はメイプルで、副団長はサリーにしてある。俺は役職無しがちょうど良い。
「あとは、本拠地を決めて下さいね」
ファミリアホームと言う、本拠地がいるらしい。宿屋住まいではダメなようだ。で、このエイナが、俺達アルテミス・ファミリアの担当者になったらしい。エイナが貸し出せる不動産のリストを見せてくれた。買うとなると大金が必要になるため、直ぐには無理なので、賃貸物件で始めようと思うのだ。
「アリス、どうだ?」
こういうのはアリスの能力が適任であろう。
「この物件はどうですか?」
月20万…3人部屋。まぁ、転移陣を使い、移動式ギルドホームへ移動すれば、問題は少ないか。アリスの案内で物件を見に行く。そこは食堂に併設された従業員宿舎の一室だった。
「二人か?」
クロムを女性にしたような女将に言われた。
「いや、もう少しいるが、転移陣で別の場所で寝泊まりするので、3人部屋で大丈夫だ」
「転移陣が使えるのか?」
この世界には無いのかな?深入りをしないように、スルーした。
「で、金は保証金20万に家賃20万だ」
50万ヴァリスの入った袋を渡した。アリスが作った偽造貨幣であるが、NPCにはバレ無いだろう。
「10万多いぞ」
「口止め料だ。俺達の秘密を漏らすなよ」
「わかった。あぁ、飯はここで食え。割り引いてやる」
---サリー---
ダンさんが新しい狩り場を開拓したそうだ。ここでは、アズライトの回復待ちで、ヒマなのが理由だと言う。
「『神々の宴』って言うVR-MMOが新たに新大陸としてリンクしたそうだ。そこに、本拠地とクランを設立してきた」
「行きます!」
メイプルが手を上げた。
「クランの団長はメイプルで、副団長はサリーにしてある」
うん?私?副団長?どうして?
「参加者は?メイプル、サリーの他にいるか?」
ミィ、ミザリー、フレデリカが挙手をした。アスナ、ユウキ、アスカさん、レンはダンさんにたかっている。結果、ほぼ全員参加…不参加は、連絡要員として、この地に残るビースリーとマリー、リアルが忙しいレイレイさんである。
そして、転移をすると、どこかの敷地内に出た。
「借りた部屋が狭いので、部屋から移動式ギルドホームへ転移出来る様にしてある」
部屋の場所を説明しているダンさん。そして、ゾロゾロとダンジョンへと向かう。ダンジョンの入り口は、驚くことに高層ビルの地下にあった。
「このビルはバベルって呼ばれているそうだぞ。なんでも、魔物が溢れて出て来ないように、蓋の役目をしているんだって」
この世界の人はこんな高層ビルをどうやって建てたんだろうか?最上階は50階だそうだけど、周囲は中世ファンタジー世界の風景であり、その頃の技術で、この建物の建築は無理に思えた。
地下ダンジョン…5階層までは初心者用らしい。う~ん…メイプルが戦力にならない。メイプル本人も諦めたのか、ダンさんの背中にいる。AGI無しで、ダンジョンは無理か?久しぶりの戦闘で、みんな生き生きと戦っていた。
「6階層から下は、フォーメーションを考えろよ」
ダンさんから指示が飛ぶ。フォーメーション…タンクはメイプル、カエデ、クロムさんがいる。フォワードは、カスミ、ユウキ、アスナ、フレデリカ、そして私。後衛にはアスカさん、レン、フカがいる上、ダンさんもいるし。中段には非戦闘員であるユーゴー、イズさん、カナデ。マイ、ユイが遊撃手として待機している。リーファは約束の時間までにインして来なかったので、今ここにはいない。
---椋鳥玲二---
女化生先輩の病院のお世話になり、やっと退院出来た。とは言え、まだ物を噛めず、流動食であるが、それ以外は普通に生活出来るようだ。アニキに思いっきり説教を受けた。俺はリアルで敵にしてはいけないヤツを敵にしたようだった。
「アイツは、リアルでも強い。アイツとは戦うな。俺の後味が悪くなるからな」
アニキがもしリアルで戦っても、勝率8割って感じらしい。
「アイツは打撃だけで無いから、厄介なんだよ」
アイツの流派は、総合格闘術だそうだ。アニキと言えども、ケリなどを受け流されてからの極めは、敗北確実クラスだそうだ。アネキならどうだろうか?
「だけど…アイツは…」
「レイレイに訊いて思い出して貰ったんだけど、先に攻撃をしたのはレイレイらしい」
そうなると、返り討ちの末にアオカンされたのか?う~ん、後味が悪いなぁ。
「月夜の方は、俺も現場にいたが、あれは月夜が悪い」
だけどなぁ…リアルで仕返しか?
「言って置くが、リアルでも月夜が悪いんだぞ。まぁ、頭を冷やせ」
と、言われても…
◇
久しぶりの大学…部室に行くと、ビースリー先輩と女化生先輩がいた。
「正君にやられたんだってね」
ビースリー先輩が声を掛けてきた。
「えぇ…振り向きざまに一発貰って…」
ゲーム内のアニキと同じで、俺の攻撃動線を見切り、拳を置きに来たらしい。もし、全力で振り抜かれていたら、俺の顔面は…
「もう手を出さないように」
澄まし顔でお茶を啜る女化生先輩。
「先輩達は、アイツのことを、どう思っているんですか?」
「どう?そうね…やんちゃな弟かな?」
と、ビースリー先輩。
「男気が溢れるけど、オスとしての本能に正直な性癖の破綻者かしらね」
と、女化生先輩。破綻しているんだ。
「でも、悪くない。あそこまで開き直れるオスはいないわ」
アイツの破綻した性癖を受け入れてしまっている女化生先輩だった。いいのか?それで。
「ハッキリと言うけど、アイツだって、後味の悪いことはしたくないの。だけど、敵対する獲物を前にして、後悔することを恐れている」
「先輩は悔しくないんですか?」
「悔しい?う~ん…あそこまで破綻されると、悔しさがアホらしいかな。私の新たな性癖を見つけてくれるし、誰もしようとしないことを、実現させようとしてくれている。そういう意味では、私にとってヒーローかな?あ、ダークヒーローかもしれない」
女性の目から見るとそうなるのか?ティアンであるリリアーナも、アイツのことを悪く言わないし。
「レイ・スターリングは英雄かもしれないけど、それはゲーム内だけのこと。だけどアイツは、リアルでも勇者なんだよ。お子様の君には分からないだろうけどね」
高飛車でワガママな女化生先輩は、アイツに心酔しているようだ。どうして?
「先輩は騙されているんじゃ無いですか?」
「そういう君は、事実を知らないだけなんだよ。私はアイツとプロジェクトを進めている。もし実現すれば、医学界の一筋の光になるかもしれない。それ程の偉業を、高校生である彼は成し遂げようとしている。君にそれと同等の偉業を為すことは出来るかな?」
アイツが偉業を?何の話だ?
<楓の木>VS<ロキ・ファミリア>を妄想中(^^;;