---サリー---
迷宮都市…NPCとプレイヤーの区別がしづらい。ここでは冒険者のNPC もプレイヤー同様に対人戦をしてくる。他のゲームと違い、別のフィールドに飛ばされる事無く、その場での戦闘になるのが特徴である。あと、ここのNPCはティアンと違い、簡単には死なない。と、言うか…NPCがNPCを殺すことが出来ても、プレイヤーがNPCを殺すことは出来無い。最悪瀕死の状態に追い込むだけのようだ。プレイヤーの場合は、相手が誰であっても、キルされた場合は、セーブした地点、ファミリアホームという場所に『死に戻り』するだけで、特にデスペナは無いようだ。
まぁ、運が悪いと装備していないアイテムがドロップしてしまうケースもあるようだけど。ここでも、私達に絡んで来るプレイヤー達は、うちのPK専に見かけ次第キルされているみたい。
この世界の食事は旨い。ここには、魔物肉は無く、牧場も畑も漁場も有る為、リアルで食べている物は大抵あった。そして、私達のファミリアホームにしている『豊饒の女主人』と言う店は、この街きっての繁盛店だったのだ。低価格で美味しい料理がテンコ盛り状態で出てくる。冒険者の優しい味方である反面、態度の悪い客には容赦しない店員達。
ヒマな時、このお店でウェイトレスのバイトをしているんだけど、お触り目当ての客は、成敗して良いと女将に言われた。
「今夜、ロキ・ファミリアの宴席があるんだよ。バイトを頼めるかい?」
女将のミアに依頼されたメイプル。一応、団長だしね。
「いいですけど、何名くらいですか?」
交渉の結果、私、ミィ、ミザリー、イズさんが選ばれた。メイプルはAGIが無い為、動作がのろいのでNG。同様にアスカさん、マイ、ユイもNG。アスナ、ユウキ、レン、フカはパワー不足のようだ。NGメンバープラスダンさん、クロムさん、リーファでダンジョンで稼ぐらしい。私も行きたいんだけどなぁ~。
---ダン---
「おい!テメェ、見かけねぇ面だな!」
ダンジョンへ向かう途中、狂犬に絡まれた。犬耳男子に声を掛けられてもなぁ。スルーだな。
「おい!待てや~!無視するんじゃねぇ~!」
背中はメイプルがおり、背後はカエデがいる。この世界のヤローは、2段盾を打ち破れるのか?
「うっ!何?!」
俺に詰め寄ろうとして犬耳男をカエデが防ぎ、抜剣したアリスの剣先は犬耳男の首筋にいた。
「あなたは、どなたですか?マスターに何か用ですか?」
アリスの殺気を受けて、犬耳男の股間が濡れていく。
「アリス、行くぞ!」
「はい、マスター」
プレイヤーで向かってくるヤツラはアスカがキルしまくっていた。まだ3日程度しか滞在していないのに、俺達にたかるハエが多い。ダンジョンへ行くのが遠いなぁ。
「おい!お前、何者だ?」
今度は大剣を携えたドワーフ?が俺の前に立った。なんだ、コイツ?ステイタスを見ると、オッタルという猪人のNPCのようだ。アビリティーは魔力を除いて、オールS。カエデとメイプルが俺を護るように立ち、アリスとクロムが、いつでも相手を斬れる位置に立った。
「俺は、アルテミス・ファミリアの団員だけど、それが何か??」
相手が剣を抜いた。それと同時に『ウッドオクトパス』による狙撃。ケツの穴から脳天に掛けての串刺し刑であるが、NPCは決して死なない。が、クロムと違って、瀕死状態にはなるようだった。
「弱い癖に、ジャマするなよ」
瀕死のオッタルを放置して、ダンジョンへと向かった。低層階での強敵と言われているミノタウロスを相手に、この世界での戦い方を練習していく。
「『捕食者』」
メイプルがAGIを補うように『捕食者』を連発している。天井高が低いので機械神と機龍が使えないのが痛い。
「中層階に行けば、天井高が高くなるようだぞ」
と、情報通のクロム。
18階層にセーフティーゾーンがあるらしいので、そこを目指すのが第一目標である。ただエイナに訊いた話だと、日帰り出来る距離には無いらしい。旅費を稼ぐのが先だな。ここのモンスターは、倒すと魔石を落とす。レアモンスターの場合だと、たまにドロップ品もあるらしいけど。魔石は店で売れるそうで、ダンジョンでの目的の一つは魔石の収集になるのだとか。
前衛陣が倒し、マイとユイが拾っていく。前衛陣が倒しきれない場合は、後衛陣でシューティングしていく。ユウキ、カスミ、アスナ、リーファの前衛陣がヘマすることが少なく、順調に魔石を拾い集めていた。
「お願いです。助けてください!」
小さな女子が脇道から出てきた。全身傷だらけで、虚ろな目つきである。
「アリス、状況は分かるか?」
「モンスタートレインが発生しています。脇道方向から、ミノタウロス多数、レアのミノタウロスが迫ってきます」
「メイプル、出番だぞ」
「はい!がんまりましゅ!『機械神』全砲門展開!発射!」
ここじゃダメって言ってあった機械神へと嬉しそうに変身し、脇道へ向けて、多弾頭ミサイルが多数発射された。暗めの脇道が真っ赤に染まっていく。今日はミザリーがいないので、俺が回復薬である。モンスターはメイプルとカエデ、アスカに任せて、俺は少女に『ヒール』を掛けていく。それと同時に少女のステイタスを見た。
リリルカ・アーデ、ソーマ・ファミリアのメンバーで小人族。彼女の背中には神ソーマの恩恵と加護が刻まれている。
「アリス、これ、アルテミス・ファミリアに改宗出来るか?」
この世界では『ファミリアの移籍』を『改宗』と呼んでいる。信仰する神を乗り換えるってことだろうな。
「可能です。書き換えを開始いたします」
背中の契約陣の文字が少しずつ置き換わっていく。
「その子はどうするんですか?」
レンに訊かれた。
「現地駐在員にする」
ビースリーとマリーもデンドロの世界の現地駐在員扱いである。何か問題が起きたとき、俺達を呼び戻す役目がある。現在はアズライトの妹が執政しているのだが、無いと良い暗殺事案が起きた場合とかに、緊急連絡をしてくれるように頼んである。新生ALOの世界ではユウキの仲間達が駐在してくれていた。もしかしたら、アイツらはメイプルにビビって逃げたのかもしれないけど。
今現在もメイプルは楽しそうに、ミサイルやら機銃やらをぶち込んでいるし。まぁ、俺の妹も似た感じなので、メイプルのことは言え無いけどな。
---リリルカ・アーデ---
目が醒めると、知らない部屋のベッドで寝ていた。何年ぶりだろうか、ベッドで眠るって…
「あっ!目が醒めましたか?」
知らない女神様がいる。ここって、どこだ?
「えぇ…あの、ここはどこでしょうか?」
「アルテミス・ファミリアのファミリアホームですよ。あなたは、私の子供に改宗されていますよ」
あれ?ソーマ様の許可が無いと改宗出来ないんじゃ無いの?
「あなたみたいな幼い子を虐待するって、ソーマはロクな事をしないわね」
女神様からのお言葉…そうか、ダンジョンから救出してくれたんだ。ここのファミリアの眷属達が…
「私は、アルテミス様の眷属ですか?」
「そうですよ。ソーマの与えた加護と恩恵とは違うと思うから、気をつけてね」
地獄から救い出されたのか?殆ど奴隷並みに扱われて来た私。もう、あの生活に戻らなくても良いんだ。
「今、月に代わってお仕置きをしにいっているの。もう、虐待はさせませんからね」
お仕置き?誰に?
---ダン---
バイト組を除いたメンバーで、ソーマファミリアを急襲した。プレイヤーはドット落ちをしながら消え、NPC達は瀕死の状態になっていく。屋敷の2階のバルコニーのある部屋に、ソーマと呼ばれている神がいた。
「君達は何者だね?何をしに来たんだ?」
ソーマは俺達の方を見ずに、何かの作業をしながら、問いかけてきた。
「リリルカ・アーデー…アルテミス・ファミリアに改宗させたからな。この世界では幼女虐待は認められているのか?」
「興味が無い。好きにしてくれたまえ」
なんか会話が成り立たない予感。クマの弟並の理解力か?
「何?」
好きにして良いと言われたので、ソーマに対して串刺し刑を執行した。俺達にはキル出来無い存在。だけど、痛みは与えられる。そして、アリスにはコイツを消す事が出来るそうだ。いや、神を殺せる仲間がいるな。【神喰狼】のポチを召喚して、一関節ずつ食いちぎって食べて貰うことにした。
「痛い…止めてくれ…酒が造れなくなる」
「リリルカを虐待しまくって放置って、アンタ無責任過ぎるだろ?」
手の指の関節を総て食べ終えたポチが、脚の指を食い始めた。
「無責任?ただ酒以外に興味を抱けないんだ。それは酒を司る神としての特権だぞ」
よく分からない理論だな。俺は酒を飲まないし、お前のような神を信仰したことは無い。
「なぁ、止めてくれ…私は地上にいたいんだ」
「お前、リリルカの心の叫びを聞いていないかったのか?」
「そんなヒマは無い!」
「じゃ、神の世界で悠久の時間を堪能してくれ」
この世界の神は地上で死んでも、神の世界へ帰還するだけだそうだ。だから、せめて激痛だけでもプレゼントしようと思った。プレイヤーである俺は、コイツを自らの手でキル出来無いから。ポチは美味しそうに、ソーマの腕、脚を食べ、最期に身体を食べて始めた。その頃になると、ソーマの口から喘ぐ様な声しか聞こえなくなっていた。ポチが身体を食べ尽くすと、ソーマの頭部に光の柱が降りて来て、ソーマの頭部が天へと昇っていった。これで悪神を一柱成敗出来たかな。
◇
善行の後は腹が減る。なので、『豊饒の女主人』に立ち寄ると、揉めていた。ミアがあの失禁犬耳男とだ。
「ミア、どうしたんだ?飯を食いたいんだけど…」
ポチの旨そうに喰う姿を見たから、余計に腹が減っているのかもしれない。
「あ、ダンか。コイツ、お前のとこの団員に手を掛けたんだよ」
「はぁ?ケツをなで回したところで減る訳でも無いだろ?」
うん?誰のケツをなで回したんだ?店の奥に視線を向けると、ミィが泣き崩れていた。ミィに手を掛けたのか?お前、この店を全焼させる気なのか?あぁ、面倒だ。あの状態のミィは小学校低学年並の少女になるんだぞ!
「はぁ?狂犬よ!お前がなで回したのは前だろ?後ろじゃない!」
はぁ?ミィのアレをか?俺ですら、未だ触っていないのに…仕返しに近くにいた女性客を抱き上げて、唇を頂いた。
「お、お前!俺のアイズに何をしやがるんだ!」
淫乱失禁犬耳男が、俺の方へ走り寄って来た。レンとアスカの狙撃で、瀕死状態になり崩れ落ちていく淫乱失禁犬耳男。コイツ、、彼女がいるのにミィに手を掛けたのか?
「おい!ウチのアイズたんに何をしやがるんや~!」
神様っぽいのが文句を言っている。目の前の女性の口の中に舌を入れ、彼女の舌に絡めていく。ついでに俺へ敵意を持っているヤツラに『子羊の行進』からの『添い寝』をプレゼントしてあげた。目の前の女性だけ、俺に敵意が無かったのか、自ら舌を絡めて来る余裕があるようだ。
「おい!ダン…お前がやったのか?」
宴席に来ていた客が、一人を除いて全員瀕死状態である。抱きかかえていた女性を降ろし、
「まぁ、その程度のヤツラってことだな。ミィ、大丈夫か?」
ミィに近寄る。
「ダンに捧げようと思ったのに、汚されたの。ごめんなさいなの」
ミィは【爆炎】で無く、ただの女の子になっていた。こうなると、宥めるしか手は無い。
「後は頼む。俺はミィを介抱してくるよ」
そう言って、ミィを抱きかかえ、下宿している部屋から、移動式ギルドホームへと転移した。
---桐ヶ谷和人---
カフェバー「ダイシー・カフェ」に向かった。そこはエギルがリアル世界で営んでいる喫茶店であり、俺達SAOサバイバーの集いの場になっていた。
「おぉ、キリの字、やっと来たか」
カウンター席には、クラインこと壷井 遼太郎が座って待っていた。
「アイツの情報を手に入れたって…」
クラインが、アスナとリーファを手に入れたアイツの情報を手に入れたと、俺を呼び出したのだ。
「アイツのメインゲームはNWOなんだが、相互乗り入れで、デンドロをメインにしているんだと」
相互乗り入れとは、違うプラットホームのゲーム間で、相互に行き来出来るシステムである。
「で、調べたんだが、新生ALOと神々の宴が、デンドロと相互乗り入れを開始していたんだよ」
「マジか?」
うん?情報通のエギルでも知らないのか。
「あぁ、特に告知は無いが、港から船で、新生ALOからデンドロとNWOと神々の宴へ行けるようだぞ。違うゲームは新大陸ってことらしく、移動時間はリアルタイムで24時間掛かるそうだ」
リーファはそれでアイツの元へ向かったのか。直葉の部屋にはALOのヘッドギアしか無かったし。
「どうする?乗り込むか?」
「そうしたいな」
しかしエギルは難しい顔をしている。
「どうしたんだ?」
「いや、アイツと一緒にいた黒い鎧の女の子なんだけどな」
「あぁ、やたらに固い防御力だったな。あの子が何か?」
「う~ん、あれって、メイプルじゃないか?楓の木のさぁ」
楓の木のメイプル?
「えっ!おいおい…あの楓の木か?」
クラインの顔から血の気が失せていく。そんなに恐怖の対象なのか?小学生の少女に見えていたけど。
「その楓の木だよ。うん?キリトは知らないのか?」
「知らない。その子がどうしたんだ?」
「お前、知らないのか?有名人だぞ。NWOのTVCMに出ていただろうに」
「俺、テレビ見ないから…」
ヒマがあれば、ネットにダイブしている。
「そうなると、ヤツは楓の木のメンバーの可能性が大だな」
「俺もそう思う」
エギルとクラインが難しい顔をしだした。
「その楓の木だと、何がどうなんだ?」
「楓の木は、NWOにおける最強ギルドだ。現在、デンドロに活動拠点を移して、最強クランになっている。アイツらのヤバさは個人個人が化け物クラスの強さってことだ」
「バケモノ?」
「メイプルは固さに特化している上、火力もバケモノだ」
エギルがメイプルの戦闘シーンを見せてくれた。再生回数が飛んでも無いことになっている。その戦闘ぶりは、まさにモンスターであった。
「キン●ギドラに変身出来るのか?」
「そのようだ。で、お前が倒そうとしているヤツは、このバケモノに連勝無敗のバケモノだと思う」
キン●ギドラに連勝無敗の男?
「あぁ、あの二つ名がレールガンのやつか?」
「そうだ。ラスボス級モンスターのメイプルを瞬殺出来る殺傷能力持ちだよ」
アイツの戦闘シーンも見せて貰った。う~ん…
次回は戦争遊戯を予定しております(^^;