デスを食らった男   作:もっち~!

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えん罪

 

---朝田詩乃---

 

まさか…あのダンが、この店の看板パティシエだったとは…GGOでの知り合いであるフカ次郎から聞いた時、驚いたのなんのって…

 

「いや~、このケーキはザ北海道って感じですなぁ~」

 

トウモロコシケーキを頬張るフカ次郎。まさか、女子大生だったとは…しかも私よりも歳上だったとは。フカが上京すると聞き、人気洋菓子店でオフ会をすることになって…

 

「ライフル女ってJKだったのか」

 

レールガン女がパティシエって…想像も付かなかったな。って言うか、このお店ってリアル<楓の木>のクランホームで無いのか?フカの幼なじみのレンから聞いた情報…「殆どみんなゲーム仲間なんですよ」

 

キリト君に連れて行ってもらったSAOサバイバーの集いの場「ダイシーカフェ」と違い、ゲームの話をしている人は少ない。このオフ会テーブルくらいだな。それは新鮮に見えた。ゲーム仲間なのに、ゲームと切り離して、リアルを生きていることに。

 

キリト君も私も、たぶん依存症なのかもしれない。ゲーム世界にいないと落ち着かないと言うか。

 

「どうだ、フカ?」

 

ダンがやってきた。

 

「ネーミングをザ・北海道にして欲しいですな」

 

「ミルク感は無いんだけど」

 

「コーン感満載ですぞ」

 

「北海道と言えば。ミルク、チーズ、ジャガイモじゃないのか?」

 

「それもありますね」

 

「そっちの子は初めてかな?」

 

「リアルでは初めてかな?GGOのシノンさんですよ」

 

ピンクの悪魔ことレンに紹介された。

 

「あぁ、直葉の兄の彼女か?」

 

直葉って誰だっけ?ゲーム内の名前で無いと分からない。

 

「直葉はもう直ぐ来るよ。香蓮、ブドウのケーキ、大人バージョンを喰うか?」

 

「儂もそれをご所望だぞ」

 

「はいはい、美優もだな」

 

奥へと下がるダン。本名で呼び合えるのかぁ。なんか、新鮮である。キリト君は私を本名で呼んでくれることは少ないから。

 

「あっ!いらっしゃいませ、香蓮さん、美優さん…この方は?」

 

ブドウケーキをトレイに載せて来たウェイトレスの少女。この店、若いウェイトレスが多く無いか?

 

「シノンさんだよ。直葉ちゃんの義姉になるかもしれない方だよ」

 

義姉?まさか…キリト君の妹…リーファかっ。

 

「兄がいつも、ご迷惑をおかけしています。桐ヶ谷直葉です。ゲーム内ではリーファを名乗っています」

 

ブドウケーキの大人バージョンをレンとフカの二人の前に置き、一礼をして去って行く。

 

「この店、私くらいのウェイトレスが多いのは何故?」

 

疑問をレンに訊いた。

 

「あぁ、クラン<楓の木>のメンバーですよ。週末の昼間はここでバイトしているんですよ」

 

夜はゲームにインしているのか。

 

「それで、ブラッキー先生とは、どこまで関係が進んだのじゃ?」

 

フカに訊かれた。

 

「私なんか、目に入っていない。アスナさんがいいみたい」

 

「そうなのか?お~い!明日奈!あぁ、ソッチじゃ無くて、か弱い方の」

 

一瞬、レールガン女が振り向いたが、線の細い少女が近づいて来た。

 

「美優さん、何かようですか?」

 

「直葉の兄が、お前を諦めていない件だよ」

 

「あぁ、迷惑ですよね。リアルでは会ったことが無いのに…」

 

会った事が無い?

 

「確かに、ゲーム内では結婚をして…そのぉ…関係を持ちましたけど、あくまでゲーム内のことで…リアル世界では、私は正さんのアシストがしたいだけなんです。それなのに、戻って来いって…なんか、違う世界の人なのかなって」

 

違う世界…彼女は本当に、SAOサバイバーであるアスナなのか?私の知っているSAOサバイバー達は、リアル世界よりも、ネット世界の方が落ち着くと言っていたけど。

 

「確かにキリト君は、あちらの世界で英雄かもしれませんが、こっちでは違いますよね?正さんは、こっちの世界でも英雄だと思います。ユウキの問題に真っ向から立ち向かっているし…向こうの世界では、問題児かもしれないですけどね」

 

彼女の笑顔…輝くように見えた。こちらの世界で生きていけると、こうなれるのかな。

 

「香蓮さん、こんど勉強を見てもらっていいですか?」

 

「うん?正君は?」

 

「楓ちゃんと理沙ちゃんとユーリちゃんで手一杯みたいなんです。ほら、ケーキのこともあるし」

 

「そうなんだ。いいわよ」

 

ゲームで知り合い、リアルを語れる仲間…なんか羨ましい。

 

 

 

---ダン---

 

久しぶりにNWOのイベントに駆り出された。どうするんだ?<楓の木>無双が始まりそうだが…久しぶりのギルド対抗戦なのだが。

 

「炎帝の国を勝たせましょう。参加賞だけで良いと思います」

 

メイプルが方針を決めた。それは、炎帝の国以外を殲滅すれば良いのか?一番下っ端のレイが、既にペインを一刀両断している時点で、勝負あっただろうに、まだやるのか?

 

「では、今日中にイベントを終わらせますよ」

 

それは1日目で炎帝の国以外のプレイヤーを5デスさせるってことか?

 

「ペインが弱くなった気がする」

 

いや、アスカが強くなりすぎたのだろ?ペインの2デス目は、アスカによる接近戦で終わった。スナイパーが接近戦しちゃダメだろ?アスナとフカが楽しそうにキルしているし。メイプル色に染まっていく女子たち。レンは元々メイプルと同じだったから代わり映えはしない。

 

メイプルとカエデがキングギ●ラになって、付近を蹂躙している。俺の隣にはアリスとアイズがいて、俺をガードしている。俺ってガード対象なのか?俺も暴れたいんだけど…敵が俺に近づく前にキルされていく。死神と死霊兵コンビは、集う聖剣担当らしく、アスカと共に、集う聖剣のリスポーン地点で待機してキルしまくっているし。

 

レイと共に新加入したルークは、ユーゴーと共に、キ●グギドラコンビの倒し損ねたヤツラをキルしているし。なんか、楽しそうなんですが…

 

遠くではキノコ雲が立ち昇っている。威力を更に高めたミィかフレデリカだろうか?いや、ミザリーかもしれない。NWOのレベルだと、あの魔法使い組でも接近戦で対処出来るのだろう。一応、護衛としてカスミとレンがいる筈だけど。

 

 

『しばらく来ないでください』

 

とNWOの管理AIからメッセージが届いた。あのイベントの参加には無理があったと思う。普段戦っているレベルが違うんだと思う。現在<楓の木>は、オラリオを活動拠点にしている。デンドロの世界は、アズライトの回復待ちである為だ。

 

「あと、少しで、遺跡にいけると思う」

 

俺とスキンシップ出来るまでには回復したアズライト。身体に傷跡は残っていないのは幸いだろうか。

 

「そんなにマジマジと見ないでください。恥ずかしいです」

 

「キズが無いかの確認だよ」

 

「あの…私の身体も観て下さい」

 

リリアーナが割り込んで来た。俺とのスキンシップタイムだと、アズライトと同格扱いだそうだ。

 

「鍛錬でキズでも作ったのか?」

 

「そんなドジは踏みませんよ。ダンさんにこの身を納めるまで綺麗な身体でいたいですからね」

 

いや、献上して欲しいと言ったつもりは無いんだけど…

 

「アズライト様がダンさんの元に行く時は、私も一緒について行きますから」

 

ティアンのお持ち帰りは無理だからな。システム的に…

 

 

デンドロの世界で稼ぎ、オラリオへ転移した俺達。稼ぎを両替して、オラリオで食材を買い込む作戦である。デンドロの世界よりも、ここの方が食材が豊富であり、大陸間の貿易をしている感じである。

 

「全額、食材にするなよ。ここのダンジョンの冒険資金を残しておけよ」

 

「大丈夫よ。経理は私とイズさんで管理しているから」

 

サリーが自信を持っていいきった。ならいいか。ロキ・ファミリアは未だに退かない。代わりにアイズを代金代わりに差し出してきた。もう1名、緑の髪のエルフも希望しているのだが、本人が拒否しているそうだ。まぁ、副団長らしいから、無理強いはしないけど。

 

「ハイエルフをハイエロフにして、性奴隷にするの?」

 

イズに訊かれた。

 

「そんなことはしない。ただ、種族の違いを見たいんだよ」

 

<楓の木>のメンバーは、全員ヒューマンであるから。多種族とヒューマンの違いを知りたいだけと言うか。

 

現在、「豊饒の女主人」の空いている土地に、仮設ギルドホームを建てている処である。主神がいるので、いつまでの従業員宿舎に居候って訳にいかないらしい。人出は足りているので、2,3日で建築が終わると思う。厨房、風呂、トイレは移動式ギルドホームにあるが定員が20名なので、それを補う部分を仮設している。まぁ、移動式ギルドホームを、外から見えなくする為の偽装っていう側面もあるが。

 

食事は「豊饒の女主人」で食べたり、ギルドホームで食べたりである。ギルドホームで食べる場合は、ミアとシルが食べに来る。俺達の世界の料理を知るためらしい。

 

「これは、旨いなぁ。どうやって作るんだ?」

 

この世界にはマヨが無いみたいだ。そう言えば、ミアの料理で出たのを見た事が無いな。

 

「お酢と卵の黄身と塩を混ぜるんですよ。白身は泡立てて、別の料理で使います」

 

アスカがミアに教えている。あの落ちこぼれだった妹の成長ぶりに涙が…

 

 

お触り禁止の店「豊饒の女主人」に<楓の木>からウェイトレス要員以外に、ガード要員を雇ってもらった。借地代ってことで…タダで借りる訳にいかないと思う。ミアがお金を受け取らないので、労働力で支払うことにしたのだ。

 

ガード要員は魔界コンビである死神レイと死霊兵クロムである。見た目がヤバそうなのが良いと、ミアのご指名である。ダンジョン攻略要員として力不足だったので、渡りに船である。

 

レイの実力を分析した結果、ボスクラス戦には有効であるが、ちょっと強い感じのフロアボス程度だと、スキルに回数制限のあるレイは役立たずになり易い。言ってみれば、メイプルの劣化版である。

 

クロムはそれよりも良いが、火力が無いのだ。中々死なないしぶとさは、防御戦には生きるが、攻める場合だと、ちょっと…火力のデカイやつが多いこのチームに置いて、役割分担はほぼ決まってしまう。

いこのチームに置いて、役割分担はほぼ決まってしまう。

 

ダンジョン攻略チームは、前衛に経験者のアイズ、アスナ、カスミ、リーファ、サリーの他、シールドアタッカーとしてメイプルとカエデとアリスがいる。人数は多めであるが、疲労度を考えて4名ずつ2チームで交代させるフォーメーションを練習中である。

 

中段には遠距離対応が出来るフレデリカ、レン、フカ、アスカがいる。ミィは火力がデカ過ぎてダンジョン通路での戦闘向きでは無くなっていた。まぁ、所謂ボスクラス要員である。後衛は回復役のミザリーとガードヒーラーとして俺がミザリーを護る。で、ハイエルフの件なのだが、回復役にどうだろうかと考えていたのだ。アイズに訊いたら、回復魔法を持っているそうだから。

 

「中層まで行こう。17階のフロアボスの前まで行ければ、全員参加で18階まで行けるだろ?」

 

18階層の次のセーフティゾーンは50階層で、ロキ・ファミリアだと1週間で着けるそうだ。地上から50階層までの往復に2週間、50階層より下の探検の時間を考えると、1ヶ月の間潜る準備をしないとダメらしい。食材をダンジョン内で手に入れられるかが鍵だな。手に入らないと、荷物が増える。

 

「お兄ちゃんの転移術で、地上から持ち込めばいいと思う」

 

アスカから提案された。それは奥の手である。更に問題があるとすれば、この前のデカ物エネミーだ。あのクラスが現れた場合、どうするかだ。俺達は死んでも生き返るが、アイズは死んだら終わりである。プレイヤー以外からのキルはアイズには有効であるから。

 

「考えても始まらないと思う」

 

そうなんだけど…「英雄召喚」で当たりが出ればいいけど、この前のデカ物戦のようにハズレを連発すると、マズいよな。

 

「げっ!固い」

 

昆虫系モンスターのエリアに入ったようだ。剣撃で倒すのが困難のようで、アイズがレンに弱点をレクチャーして、的確に倒していく。いざとなれば、フカのナパーム弾が飛んでいくが、風下にいると俺達が危険である。

 

 

 

---キリト---

 

決闘都市ギデオンに入った。決闘…コロシアムで行う決闘で死ぬことは無いそうだ。決闘結界内で瀕死状態になると、全回復して結界の外へ出されるシステムだそうだ。

 

「キリの字、いくのか?」

 

クラインに訊かれた。

 

「勿論だ」

 

公式の決闘ではランク戦が行われている。自分のランクよりも上の相手に勝つと、ランキングが上がり、上のランクの者と戦えるが、いきなり、上位の者とは戦え無い。戦えるのは、インをしている1つ上のランクの者だけだそうだ。アイツは10位以内の為、せめて15位以内にならないと、戦え無いらしい。

 

俺とクライン、シノンが決闘ランキング戦に申し込んだ。初めは1501位から2000位以内の者と戦い、1500位以内を目指すらしい。結果は…この世界の選手層は厚く、1500位が遠い。

 

「そうなると、アイツは無茶苦茶強いってことだな」

 

エギルが唸る。あっ!思い出したように、ランキングリストを見始めた俺。アスナとリーファの順位を知るためだが、リストにその名前は無かった。

 

「アスナとリーファの名前がない」

 

「それは、決闘ランキングに参加していないってことだよ」

 

見た事の無い、サングラスをした女性が声を掛けてきた。

 

「誰だ?」

 

「あぁ、ボクはマリー・アドラー。新聞社DINの記者だよ」

 

この世界の情報通か…

 

 

 

---シノン---

 

マリー・アドラーが声を掛けてきた。私はこの人を知っている。

 

「シノンちゃん、お久しぶり」

 

マリーも私を知っていた。ダンのクランメンバーだったはずだ。

 

「悪いようにはしないよ。リーファがお兄様にシノンが振り回されていないか、心配しているんだよ」

 

後半部分は、私にだけ聞こえる様に、私の耳元で囁いた。リーファが心配してくれたのか。

 

「で、この世界に来て、いきなりランキングが上がるほど、この世界は甘くないですよ」

 

「だが、アイツは短期間で上り詰めたんだろ?」

 

キリト君がマリーに詰め寄った。

 

「アイツとは、誰のことかな?」

 

「俺の彼女と妹を攫ったヤツだ」

 

「お名前は?」

 

知っているのに、キリト君に訊いているマリー。

 

「名前?たしか、ダンって言うやつだ」

 

ダンの名前を出すと、街の人々の視線が集まって来た気がする。

 

「この街で、その名前は出さない方が良いですよ。身の安全の為にね。この街には、その人物は出入り禁止なんですよ」

 

出入り禁止?何かしたのか?

 

「どうしてだ?ランキングにいるだろ?」

 

「対戦相手が指名した時だけ、この街に入ることを許される人物なんですよ」

 

「アイツ、何をやらかしたんだ?」

 

「何もしてない。えん罪を被って、否定せずに、この街を去った。まぁ、そんな感じですかね」

 

「えん罪?実際には罪を犯しているんだろ?事実、俺の彼女と妹を連れ去ったし」

 

「本当に被害者なんですかね?そうやって、被害者がいないのにねぇ、なんで彼は被害者なき罪を被せられるのかな?そこが記者として興味がありましてね」

 

「被害者はいるぞ!お前、アイツの仲間なのか?」

 

「だとしたら、どうしますか?」

 

街中で剣を抜いたキリト君。

 

「この世界では、デスペナはリアルで24時間、ゲーム内時間で72時間ですよ」

 

次の瞬間、キリト君、エギル、クライン、シリカ、リズベッドがドット落ちして消えていった。

 

「これで救助が成功しました。先に剣を抜いたのは向こうですし」

 

その後、私はマリーに王都へと連れて行かれ、クラン<楓の木>に入団させられた。

 

 

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