デスを食らった男   作:もっち~!

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バランスブレーカー

---ダン---

 

インすると、クランホームにシノンがいた。どうして?

 

「あぁ、リーファに頼まれて、回収しました」

 

マリーが説明してくれた。リーファの兄に、振り回されていたので、楽しいゲームライフが出来るように、連れてきたそうだ。

 

「なるほど、ゲームとリアルの区別がつかないのか、リーファの兄は…」

 

リアルはリアルだと思うんだけどな。現に、アイズとアズライトはリアルに連れ出せない。それは、彼女達はゲーム内でのみ存在するからだ。

 

「このクランはリアルとゲームは区別している。慣れるまで大変だろうけど、フォローはするよ」

 

シノンにそう伝えた。あの後味で行動する死神レイだって、リアルとの区別は出来ている。リーファの兄は重症なのか?SAOサバイバー症候群だっけ。フカが詳しかったから、後でレクチャーして貰おう。

 

「今、オラリオっていう迷宮都市を攻略中なんだが、シノンは遠距離狙撃だったよな?近接とか中距離は大丈夫か?」

 

「得物はライフルだから、難しいかな」

 

「じゃ、暫くは、ここでの守護業務に就いて貰う。マリーに任せたよ」

 

「うん。任されたよ」

 

 

 

---シノン---

 

「守護業務ってなんですか?」

 

マリーに訊いた。

 

「この街で悪さをしそうなヤツラが入った場合、問答無用にキルするんだよ」

 

PKリストと言う物を見せられた。そこには、キリト君、エギル、クラインが載っていた。

 

「そのリストにあるヤツラを見つけ次第、キルするのがお仕事だよ。王都の平和は、私達が守るんだよ」

 

「どうして?」

 

国に雇われているとは思えない。悪さしそうってだけで、銃殺刑をする国なんて、あり得ない。

 

「一番にPK専の腕を鈍らせない為、二番にダンが暴れると王都が無くなるから、三番に王女に平穏を届ける為かな」

 

「…」

 

PK専ってPK専門のプレイヤーってことか?それは、キリト君が嫌うプレイヤーである。が、今のキリト君はPK専になりかけている。

 

「理解出来無かったかな?そもそも、このデンドロってゲームはPKでの戦闘がメインだよ。キルされてもゲーム内時間で72時間イン出来無いデスペナだけだからね。あぁ、因みにこの国の王女は、ダンを大好きだからね。ダンを敵にすると、この国も敵に回るから注意してね」

 

うん?王女様がダンに惚れているの。

 

「ダンは市民レベルでは犯罪者扱いだけど、お城関係では英雄扱いだよ。ダンはどちらも否定はしない。興味が無いんだ。アイツのオツムは来月のケーキのことで一杯なのさ。で、煮詰まるとバトルジャンキーに変身すると言うか」

 

来月のケーキ…あぁ、リアルのことをゲーム内で考えているのか。なんで?

 

「何で、ゲーム内でリアルのことを考えられるの?」

 

「簡単なことだよ。ゲーム内の方が時間が多く稼げるからだよ。デンドロの世界だと、リアルでの24時間が、72時間になる。その分、考えられる時間が増えるのさ。これって、ダンのことを考える上で重要なことだからね」

 

思考時間を増やす為に、ゲームをしているのか。それは、思い至らなかったな。

 

「アイツほど、リアルを大切にするゲーマーはいない。だけど、ゲーム内でのことだって、真剣に考えているよ。この国の王女に惚れられても、リアル世界に駆け落ち出来無いことに悩んでいる。だからアイツは、この世界で王女のしたいようにさせているんだよ」

 

NPCのやりたいようにさせている。それは他のプレイヤーにも、したいようにさせていることか。だから悪く言う輩を放置し、弁明もしないのか?

 

「少しはアイツのことを分かってくれたかな?ダンはゲーム内でもリアルでも大切な仲間なんだ。だから、私達はダンのしたいようにさせるんだよ。その方が、楽しい場合が多いからね」

 

そうだ。ゲームなんだから楽しまないと。ゲーム内でウダウダしているのって、ナンセンスなんだろうな。

 

「シノンはライフルを撃つのが楽しいから、GGOにいたんだろ?ならば、この世界でも撃てば良い。但し、ジャマ者だけだよ」

 

何となく、<楓の木>の方針が分かった気がする。彼らはゲームを楽しんでいるんだ。自分達のルール内で…

 

 

 

---ダン---

 

インをすると、シノンがウェイトレスをしていた。何かが吹っ切れたのか、笑顔が良い感じである。

 

「マリー、サンキュー」

 

「何もしていないよ」

 

少し照れているマリー。

 

「オラリオの方はどうだ?」

 

「いや、そろそろ、遺跡の方の計画をしようかなって。今日は城に行ってくるよ」

 

「じゃ、シノンを連れていってよ。王女様に顔を覚えてもらわないとね」

 

まぁ、それはそうだな。万が一、街中でシノンと歩いているのが見つかり、「どこの女よ」呼ばわりはマズいし。

 

 

戦闘用の装備で、シノン、アリス、メイプル、カエデ、アスナと共にお城へと向かった。戦闘用の装備は、戦士としての礼服みたいな物らしい。確かにリリアーナは玉間で騎士としての装備だしな。

 

玉間にはアズライトの妹のエリーことエリザベート・S・アルターがいた。現在、王女代行である。

 

「あのさぁ、考えたんだけど」

 

エリーの口調はため口である。エリー的には、俺は姉の彼氏ってことらしい。側近連中も、その崩れた口調を暖かい目で見ているし。

 

「婚約した黄河帝国第三皇子蒼龍人越様と私が、この国を治めるのも手かなって。黄河帝国的には、私達の子供が欲しい訳で、私達がどこに住もうが、関係無いでしょ?彼は3番目の王子様なんだし」

 

それは手であるが、俺はアズライトを連れ帰れないぞ。

 

「だから、お姉ちゃんをヨロシクなの!」

 

それで良いのか、この国は?

 

「で、アズライトは今どこに?」

 

「お姉ちゃんの部屋で悶々としているんじゃ無いの?今日、ダンが登城するって知っているから」

 

「じゃ、アズライトに会ってくるよ」

 

「うん。お姉ちゃんをよろしくね。今まで、辛いことを一杯させてきたから…」

 

 

アズライトの部屋に向かうと、部屋に入るなり、抱きついて来た王女様…

 

「毎日、見舞いに来てくれても良いのでは?」

 

頬を重ね、耳元でそのようなことをおっしゃる王女様。以前より身体の線が細くなったような気がする。

 

「リハビリはしているのか?」

 

「えっ!一人でですか?」

 

何か違うことを想像していないか?

 

「日常生活のだよ」

 

「あっ、そっち…」

 

「日常生活が出来るようになったら、次は剣のリハビリだ。せめて、自分の身は守れるようにならないと、遺跡調査には連れて行けないぞ」

 

絶対的な盾が2枚いるから移動中は良いが、遺跡に入るのはメイプル達で、俺達は地上の警護になる。そうなると絶対的な盾は1枚しか同行できない。死なない盾もいるが、あれはマイユイコンビのガードだしな。かと言って回避盾はガードには向かない。

 

<楓の木>は基本、要人警護には向かないのである。<楓の木>の良さは、その火力にあるので、ボスクラスモンスター相手なら、力が生かせると思う。

 

「剣ですか…まだ無理ですね。剣がこんなに重いとは…」

 

腕の筋肉と体幹が弱まっているのか。

 

「体力アップが課題だな」

 

「ダン…あなたと一緒なら体力アップの練習が出来そうだけど…」

 

俺と一緒?う~ん…コイツ、俺の上で踊る気なのか?まぁ、アレは体力を使うが、どうなんだろうか?

 

 

 

---サリー---

 

う~ん…また、ダンさんがどこかで経験値を稼いだのか、メイプルのレベルとVIT値が、トンでもないことになっていた。

 

「あれ?いつの間に、こんな値に?」

 

クマ兄さんの主砲を受けても問題無いレベルというか…メイプルを貫通出来るのは、もうダンさん以外いない気がする。そして、トンでも無い硬さを手にいれたメイプルの火力も、トンでも無いレベルになっている。体当たりだけで、イレギュラーモンスターを討伐って…シールドアタックすら使わないって…もうNWOには戻れない気がする。

 

「ダンさん、どこで稼いで来たんですか?」

 

オラリオで、あんなに稼げる場所は無い。

 

「あぁ、アレはソロプレイの『Infinity GAME』に転移して、ラスボスを倒したんだよ。そのラスボスが黒いスーツを着たおっさんだったんだよ」

 

「あぁ、あのゲームかぁ。大帝国がしかけるGAMEでしょ?確か、あのラスボスに400万のプレイヤーがタイマン張って散ったとか」

 

そうか、あのラスボスに勝ったのか。それなら、あの経験値も納得であるが、一人で他のゲームを遊ぶとは…むむむ!

 

「今度新しいゲームに行く時は、私も連れて行ってくださいね」

 

「中々、良さそうなMMOが無いんだって。アリスに探して貰っているけど…」

 

オラリオは飽きたのか?まぁ、ダンジョン戦は<楓の木>にとって、不向きである。売りである高火力が生かせない。ミィ、メイプル、ダンさん、フレデリカ辺りは、最近潜って居ない。

 

「みんなで遊びたいけど、地上戦で無いとなぁ。GGOは出入り禁止みたいだしなぁ」

 

GGOに限らず、ALOも出入り禁止にされたようだ。

 

「ここを出入り禁止にされると、マズいよな」

 

まぁ、アズライトの精神に影を落としそうだ。

 

「どうするかな」

 

強くなりすぎるのも問題だな。<楓の木>イコール<ゲームバランスブレーカー>と言われ始めているし…

 

 

 

---ダン---

 

インをすると見慣れない場所にいた。ここはどこだ?目の前には黒尽くめの者達がいた。

 

「コイツが魔王だと?あり得ないだろ?こんな弱々しいヤツは!」

 

俺を召喚でもしたのか?召喚しておいて、それは無いだろう。『爆炎』『炎帝』で目の前のヤツラを灰にしてやった。光が見えたので、そちらへと歩いて行くと外に出られた。俺は祠のような場所にいたようだ。ここって、どこだよ?

 

『「魔王様Re:TRY!」というゲームの世界のようです』

 

アリスの声が聞こえた。えぇっと…それって、MMOかな?

 

『招待制のゲームのようで、MMOでも可能なようです』

 

みんなを呼べるのか?

 

『方法を探ります』

 

招待制って、一体誰が俺を招待したんだ?アリスがシステムへダイブしたようだ。アリスが戻るまで、付近を探索するかな。取り敢えず、風上に向かって歩いて行くと湖が有り、その畔に見知ったヤツがいた。あのゲームの続編なのか?

 

「お前…あの時の…」

 

向こうも俺のことを覚えていたようだ。俺の目の前には、魔王である九内伯斗が、黒のスーツに黒ネクタイを締め、タバコを吸っていた。あんな格好で暑く無いの?

 

「お前が俺を招待したのか?」

 

「うん?何の事だ?俺も気づいたら、ここにいたんだよ」

 

こいつも誰かに招待されたのかよ。一体、誰が、何の為に?

 

『バランスブレーカー級の強さを持つ者を、ここの管理AIが呼び出したようです』

 

アリスが戻って来た。バランスブレーカー?なんで、俺なんだ?メイプルの方がバランスブレーカーだろうに。後、あの死神装束の聖騎士とか…心外である。

 

ガサガサ…

 

草をかき分けような音がした。俺と九内で音のした方を見ると、少女が森の奥の方から出てきた。

 

「早く、逃げて下さい!」

 

少女が俺達に叫んだ。その少女の斜め上の位置に、モンスターが出てきた。なんだ、あれは?取り敢えず、『ウッドオクトパス』で狙撃しておく。出てきて直ぐに退場していくモンスター。

 

「お前、相変わらず、相手に話させないな」

 

九内も長々と能書きを垂れていたので、ケツの穴目掛けての『ウッドオクトパス』の狙撃で倒した。ケツの穴って鍛えようが無いし、穴の中は内臓である為、貫通し易いのであった。

 

「えっ!悪魔王グレゴールを一撃で…」

 

あれが悪魔王?弱すぎるだろう。それよりも少女の足が気になった。片足を引きずるようにして歩いていたのだった。

 

『パーフェクトヒール』

 

少女に完全回復の魔法を掛けて上げた。

 

「えっ!痛くない。凄いです」

 

くすんでいた少女の顔が、輝くような笑顔に変化した…なんか可愛いな。俺の周辺だとメイプルに近い顔立ちである。天然系かな。それだと苦手ではある。俺の好みはアズライトやアイズのようなクール系で、中身はサリーのような的確で冷静な判断が出来るヤツである。アズライトは、直ぐにデレるので、ちょっと苦手である。

 

「おい、汚れているな。そこで水浴びでもしなさい」

 

九内が少女に石けんとタオルを手渡した。コイツ、魔王のくせにロリなのか?

 

「お前、なんか失礼なことを考えただろ?」

 

「いや、見たまんまを想像しただけだ。ゆっくり、水浴びをするといい。俺とコイツは向こうにいるから」

 

祠のある方向を指差した。そして、九内と共に、俺が呼び出された祠へと向かった。

 

「この祠か?」

 

「そうだ。ここで黒装束のヤツラに呼び出されたようだ」

 

「ソイツらは?」

 

「呼び出しておいて、弱そうだなどと言うから、灰にしてやったよ」

 

「そうか…お前の悪い癖だな。相手の話を聞けよな!」

 

あいにくと、俺は短気な方である。ヤローの話なんかウザいだけである。

 

九内は祠の中を調べに行き、俺は少女が来るのを祠の前で待った。

 

 




九内VSメイプルだと、たぶんメイプルが勝ちます(^^;
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