---ダン---
そう言えば、ログアウトはどうやるんだ?まさか、デスゲームに迷い込んだのか?
『寝ることでログアウト出来るようです。しかし、ある程度進まないと、デンドロの世界には戻れないようです』
何?アズライトとレイレイを放置か…リアルレイレイが怖い。アイツ、クリスマスに店に来るんだぞ!
『それまでに、ここを卒業しましょう♪』
ある程度って、どのくらいだ?いや、ここにアズライトとレイレイが呼べれば問題は少ないか?そんな事を考えていたら、少女と九内がやってきた。
「お前なぁ!何も手がかりが残っていないじゃないか!」
まぁ閉鎖空間で、『炎帝』と『爆炎』を使ったからな。総ては灰になっただろうな。
「あの…これ、ありがとうございました」
少女が石けんとタオルを九内に返した。それを受け取ると、空間収納へと投げ込む九内。
「私…アクと言います」
「私は九内伯斗だ」
「俺はダンだよ」
自己紹介は簡潔に終わった。
「さて、どうする?」
「どこかの街へ向かうか」
「ここからだと、ヤホーの街が近いです。ボクも一緒に行っていいですか?ボク…グレゴールの生け贄だったんです。だから、村に戻る訳にいかないんです」
生け贄?許せないなぁ。灰にしてやろうかな。
「お前、村を焼き払う気か?止めておけ。揉めごとは避けろよな」
九内に心を読まれた。なんか、悔しい。
「アク、その街はここから、どのくらい掛かるんだ?」
「途中で野宿を一回です」
「そうか…」
野宿かぁ…それで寝れば、ログアウトは出来るのか。理沙に連絡して、レイレイとアズライトに伝言でも頼むか。
森を抜けると、谷間に出た。草木が生えない谷間。そこに九内が仮設拠点を造り出した。
「ここなら、ロケットランチャーでも耐えるぞ」
アクが不思議そうな表情を浮かべた。たぶん、この世界にはロケットランチャーが無いのだろう。
---白峯理沙---
正さんに呼び出された。何か気に障ることでも言ったかな?ドキドキしながら、待ち合わせ場所に急いだ。
「悪いなぁ、呼び出して」
今日は明日奈さんが一緒では無いようだ。少し安心である。が…あのカラオケボックスに連れ込まれた。あの時の恐怖がぶり返してきた。甚振られるのかな?生きて帰れるかな?
「レイレイとアズライトに伝言を頼みたい」
正さんから、昨晩の出来事を聞いた。違うゲームに招待されて、デンドロに戻れないらしい。
「寝ればログアウト出来るんだが、デンドロへの転移が出来無いんだよ。アリスによれば、バランスブレーカークラスのプレイヤーが召喚されたようなんだ。なんで、俺なんだ?メイプルとかレイと戦艦クマがいるだろうに…」
正さんは自覚が無いようだ。ダンさんもバランスブレーカークラスのプレイヤーなんだよ。あのラスボス、メイプル相手に未だに無敗って、ラスボス通り越してバケモノだよ、まったく…
「わかりました。しばらく遠征していて、デンドロに戻れないと伝えておきます」
「後、別件なんだけど、週末に一緒に行きたいところがあるんだよ」
えっ!中学生にはラブホの敷居は高いですよ~。
「どこですか…」
「医療関係を2箇所だ」
医療関係?ボコられて、緊急搬送か?それとも噂で聞く膣痙攣による緊急搬送か?
「どういった目的ですか?」
内心ではビクビクしながら、表面上はクールに接していく。
「1軒目は結城明日奈が一緒に行く」
妹の明日奈さんと区別する為、アスナのことはフルネームで呼ぶ正さん。
「もう1軒は理沙と二人だ。まぁ、俺の秘書のようなことをしてもらう」
タイトスカートにジャケットかな?妄想が広がっていく。
「そこはどこですか?」
「まだ先方から指示が無いんだよ。防衛省は無いと思うけど、厚生労働省の分室か、文部科学省関連施設かな?」
何故、政府機関にデートしに行くんだ?正さんって、ケーキ職人じゃないかったっけ?あれ?
---ダン---
目覚めた場所はソファの上だった。九内はロリ好き魔王らしく、アクと添い寝をしていた。その風景は仲の良い父と娘と言っても良い。アクはファザコンなのかもな。仮設拠点から外にでると、目の前には盗賊らしい集団が待ち構えていた。これは速効で『爆炎』だな。ヤローばかりの集団、灰になっても大丈夫だろう。
「おい!お前、有り金を出せ!」
『爆炎』
目の前にいた集団は消え、目の前にはクレーターが出来た。
「その魔法…アンタ、魔王ね!」
九内の好きそうなロリ娘が騎士達を率い連れて現れた。なんだ、コイツらは?
「魔王?まだ寝ているぞ」
「じゃ、アンタは魔王の手下ね!」
なんで俺が九内の手下にならないといけないんだ?
「違う。って、お前は誰だ?」
「えぇぇぇぇ~!私を知らないの?私は聖光国三聖女の三女のルナ・エレガントよ!おほほほ」
聖女?見えない。
「天使様に代わって、お仕置きをしてあげる」
彼女の持っている杖から金色の光が飛んで来た。だけど、俺に当たったその光は『フルカウンター』され、術者の元へ戻っていく。
「なんで?なんでよぉぉぉぉぉ~!」
自分の放った光に吹き飛ばされた自称聖女。
「き、き、貴様!聖女様に何を!」
騎士達が俺に迫ってくる。面倒だな。カエデを召喚してみた。目の前に現れたのはカエデが二人。はぁ?二人?
「ダンさん、敵ですね。ふふふ、『捕食者』」
久しぶりの共闘で、嬉しいらしいメイプル。騎士達は哀れにも喰われていった。
「これ、どうしますか?」
カエデは自称聖女を引きずって戻って来た。一応、『ハイヒール』を掛けてキズは癒やしておく。
「どうした?朝からお前何をしているんだ?」
戦闘音で九内とアクが目覚めたようだ。
「その双子は誰だ?」
「あっ!私はクラン<楓の木>のマスターのメイプルです」
「私はご主人様の使い魔のカエデです」
「はぁ…私は九内伯斗で、彼女はアクだ」
メイプルとカエデもロリ好き魔王のストライクゾーンなのか?あの自称聖女は確定だろう。
「うん?<楓の木>だと…そうか…君が【空飛ぶ不沈要塞】か…」
楓の木を知っているのか。そうなると九内もプレイヤーってことか。いや、あのゲームの開発、運営者の可能性は大だな。
「そうです♪いや~、久しぶりにダンさんのお供が出来るなんて、嬉しいです」
って、俺の背中に載るメイプルとカエデ。
「お前、幼女にもてるなぁ~」
「はぁ?ロリ好きな魔王には言われたくない」
「失礼な。私はロリ好きでは無いぞ」
仮設拠点を空間収納にしまい、ヤホーの街を目指す俺達。
◇
そういえば、金が無いのでは?
「ご主人様、両替をしておきました」
隣にアリスが現れた。
「じゃ、なんか喰うか」
露天での買い食い。この肉は何の肉だ?アクもメイプルもカエデもアリスも、旨そうに喰ってはいるが…
『魔物の肉です』
アリスから正解を得た。魔物肉か…臭みは感じられないが、筋繊維が固い。
「これから、どうする?」
九内に訊かれた。
「どこか宿を取る。この自称聖女に色々聞き出したいからな。で、九内はアクの服と靴を買いに行けよ」
九内に大金貨を1枚渡した。足を引きずっていた為、アクの靴は歩きにくそうだ。
「ほぉ~、気が利くな」
「まぁ、クランマスターが天然系なもので…」
メイプルは自称聖女、アクと共に屋台巡りをしている。喰わないでも大丈夫なカエデは、俺の背中に載っている。
自称聖女の定宿を紹介して貰い、部屋を1つ押さえ、九内とアクは買い物へ、俺達は部屋でマッタリしながら自称聖女に尋問をすることにした。
「で、お前、本当に聖女なのか?」
「そうだって言っているでしょ!」
見た目、魔女っ子である。
「アリス、実のところはどうなんだ?」
「本物の聖女です。元々は貧民の出でしたが、天賦の才を武器に教会に入り、わずか10歳にして聖女認定をされています」
天才聖女なのか?聖女に天才ってあるのかどうかは置いておいて、聖属性の欠片も見えない。まぁ、死神にしか見えない聖騎士もいるし、実際の聖女って、こんなものなのかもしれないな。
「で、お前は何しに来たんだ?」
「私の名前はお前じゃないわ!ルナって、呼びなさいよね!」
あぁ、めんどくさい女だな。
「で、ルナは何しに来たんだ?」
「魔王が復活したって聞いて、討伐しに来たのよ」
「魔王?あぁ、九内のことか」
「そもそも、アンタ達は何者なの?魔王の配下?」
「俺達は単なる冒険者だよ」
テーブルの上には屋台で買い込んだ食い物が置いてあり、ルナとメイプルが美味しそうに食べていた。
「聖光国って、どんな国だ?」
「智天使様に信仰を捧げている国…」
「国王とか居るのか?」
「いない。聖女が国のトップなの」
聖女が治める国かぁ。あの聖騎士をこの国に仕えさせようかな。
『たぶん、討伐対象に認定されるかと…』
アイツの見た目がなぁ…クロムは中身も腹黒だからいいけど。
「買ってきました。いかがですか?」
笑顔のアクが俺の目の前で回転して、ポーズを取って、甘えるような仕草をした。九内が調教したのか?俺は自然体が好きなんだが。
「で、街の様子はどうだった?」
「活気のある商人の街って感じだ」
俺の質問に九内が答えた。
---白峯理沙---
週末、正さんと明日奈と共に、病院を訪れた。誰が入院しているんだ?エアーシャワーを浴びて、加圧室を通り、白衣に着替えた。随分と厳重な場所だな。雑菌の持ち込み禁止とは。そして、ある病室に入っていく。入院している患者名は『紺野木綿季』と記されていた。病室の中は2部屋に分かれていた。窓から見える奥のスペースには、MRI装置の様な物に入った人が居る。
「あれはメディキュボイドって言う、医療用VRマシンの試作機だよ。彼女は3年間ずっと仮想世界で生きているんだ」
彼女?
「まさか…」
明日奈には心辺りがあるようだ。
「ユウキなんですか?」
えっ…ユウキって、あの16連撃のユウキなのか?
「あぁ…産まれた時に、輸血用血液製剤からHIVに感染したそうだ。既に末期だそうなんだ。もって後1週間くらい…」
まさか…昨晩もユウキと会ったけど、元気そうだったよ。
「明日奈、ユウキの傍に居て欲しい。手を握ったり、話し掛けて欲しいんだよ。これから毎日、通ってあげてくれないか?」
「…わかりました。あの…ユウキはもう助からないんですか?」
「誰かのセリフじゃ無いけど、このまま見ているだけじゃ、後味が悪いと思う。だから、足掻いているところだ。さて、理沙。次の場所へ行くぞ」
次の場所?ユウキに関係する場所なのかな?
ユウキの件を背負ったストレスで、ダンは短気気味です(^^;