デスを食らった男   作:もっち~!

5 / 132
VS鳥

転移の際の光が霧散していく。メイプルは大盾を構え、サリーはナイフを、俺は拳を握っている。だが、相手の先制攻撃は来なかった。周囲には敵の姿は無い。そうなると、上か下か?上を見上げて見回すと、そこは円形の広間であり、壁は空色、天井は吹き抜けなのか、白く靄っているようだ。

 

「サリー!」

 

俺は指で上を差し、サリーの注意を引いた。

 

「来ますよ」

 

サリーの危機探知にも、何かが捉えられているようだ。上から雪のような物が降っている。敵は、雪か氷属性だな。

 

「氷柱弾は注意だな。貫通攻撃かもしれない」

 

「はい!」

 

俺のつぶやきに、メイプルが返事を返してきた。斜め上の棚地には鳥の巣のような物が見える。敵はトリ系か?

 

「これ、絶対に鳥型のボスが来る。【大海】は使えないかも」

 

サリーが周囲を警戒しながら、呟いた。

 

「どうする?鳥の巣に近づいてみる?」

 

メイプルが提案してきた。

 

「……慎重にね。多分近づいたら来る」

 

俺もそう思う。俺はメイプルをカバー出来る距離でついていく。鳥の巣まで5メートル位に近づいた時、上から轟音がして、無数の氷の粒が、メイプルに向かって、撃ち出された。俺は直ぐさま、【カバームーブ】で、メイプルの前に立った。氷の粒が俺を貫通していく。激痛を感じ直ぐに【ヒール】を掛けていく。死になるか瀕死になるかは、時間との勝負である。サリーも俺にヒールを掛けてくれている。メイプルは無事だろうか?俺を貫通した貫通弾は、メイプルを襲っているのか?

 

戦闘開始の開幕弾を俺は受けきり、後方へ退避した。

 

「ダンさん、回復をしてください。私は大丈夫です」

 

メイプルはそう言うと、サリーの後を【カバームーブ】で付いていく。俺は、回復薬を飲んで、次の貫通弾の為に控える。

 

「サリー!貫通弾の前に溜めがある。無攻撃の時は注意しろ!」

 

「了解!」

 

俺は貫通弾攻撃のクールタイムを計測する。たぶん、5分か10分間隔だろうな。1、2分間隔だったら、炎上ものだ。プレイヤーには長めのクールタイムを押しつけて。プレイヤーの制約と同等では無いと、勝負にはならない。

 

「ダンさん、溜めのようです」

 

メイプルからの報告。俺は、【超加速】でメイプルの近くへと急ぎ、轟音と共に【カバームーブ】を発動した。

 

「相手のクールタイムは5分だ」

 

俺も報告をし、直ぐさま【ヒール】を連発する。ここで、死ぬ訳にはいかない。先ほどとは違い、粒では無く氷柱が撃ち出されて来た。先ほどと比べ物にならない速度でHPが低下していく。俺とサリーが俺にヒールを掛けまくる。HPの低下が収まるまで…が、敵が急降下してきた。

 

「サリー!来たぞ」

 

「早い…ワンパターンな攻撃でなくて、相手は人工知能かもね」

 

「あぁ、俺もそう思う」

 

ヒールよりも回復薬の方が、回復量は大きいが、即座に対応出来るのはヒールである。

 

「メイプル!悪食で、脚か、翼を喰らえ!」

 

「脚、行きます!」

 

片足を失った鳥。だけど、HPの減りが少ない。

 

「はぁい?」

 

それの意味することを、俺とサリーは気づいた。コイツ、防御力と生命力が化け物クラスなんだ。俺とメイプルの長所を併せ持ったモンスター…運営め、考えたな。サリーの攻撃で鳥のHPは減っていない。大技を連発する必要があるが、それが出来るのはメイプルだ。だけど、サリーのガードで忙しいメイプル。

 

「メイプル!悪食で喰った場所に、ヒドラだ!」

 

「了解!」

 

だけど、装備に付与しているので、発動を手間取るメイプル。その間に、傷口を凍らせて、毒の侵入を防いでいる。ヒドラの毒は凍り付き、鳥から剥がれ落ちていった。その上、脚が再生していく。が、再生時にHPは減っていった。HPを糧に再生か?少しではあるが、勝機が見えた気がする。

 

「ダメです。間に合いません…」

 

どうする。メイプルが手間取らない方法…う~ん…俺が、盾を借りるか?

 

「ダンさぁぁぁぁ~ん!溜めです」

 

超加速のクールタイム中の為、全力で走りメイプルに近づき、轟音と共に、【カバームーブ】を発動した。そして、ヒールの連発で耐える。このルーチンしか無いのか?可能性を考えなから、ヒールで凌ぐ。

 

「悪食、後3回です」

 

手立てが浮かばないまま、時間が経ち、回数制限のある悪食の危機である。貫通攻撃にクロスカウンターするとどうなるんだ?俺はドラゴンの翼を展開し、鳥に肉薄していく。鳥の攻撃目標がメイプルから、俺に移ったのか、通常攻撃が俺に飛んで来た。3回に1回、フルカウンターしている。俺よりもレベルが高いようだ。そして、鳥が溜めを作り始めた。チャンス!

 

「メイプル!今だ!」

 

「はい!悪食!…ヒドラ!」

 

鳥の左の翼が根元から食いちぎられ、傷口に毒が浸透していく。

 

「おぉ~、HPの減りが激しい。行けるかな?」

 

期待を持たして、地獄へか?轟音だっ!貫通攻撃は俺の方へ撃ち出されていた。先のとがった氷柱が俺を貫く。その氷柱に【ホーリークロウ】を叩き込んだ。真ん中から折れる氷柱。その結果、俺へのダメージは半減したようだ。しかしながら、瀕死では無いが、HPは半分近く削がれている。回復薬でHPを満たす。

 

「悪食…後1回です」

 

「メイプル!首を落とせ!そこにヒドラと毒の雨だ」

 

「了解!」

 

次の溜めで勝負だな。なんか、頭がぼぉっとしてきた。吐き気もする。毒は無効なはずだが…

 

「溜め!」

 

違和感のある俺、でも、勝たないとな。メイプルと俺が同時に動いた。俺は鳥の腹へ、メイプルは鳥の首へ、毒塗れになるので、サリーは後方へ退避をした。この攻撃を失敗すると、毒の為足場がなくなり、サリーが攻撃出来無くなる。

 

「悪食…ヒドラ、ヒドラ、ヒドラ、ヒドラ、ヒドラ、アシッドレイン、パラライズシャウト」

 

「32連打 ホーリークロウ…あっ!MPドレイン、ヒール、ヒール、ヒール」

 

蜂の一刺しが入ってくれれば…

 

「勝った!」

 

サリーの声。遠くから見ていた方が、戦況がわかりやすいのだろう。そうか、勝ったのか、気が緩んだ俺の意識は遠くと過ぎ去っていく。

 

 

意識が覚醒していく。まだ、鳥のエリアにいる俺。

 

「ダンさん、大丈夫ですか?」

 

メイプルの声が近い。メイプルの顔が近い。これは一体…サリーの説明によると、意識を飛ばした俺を、メイプルが膝枕して、休ませてくれたようだ。

 

「えっ…気持ち悪い…うげっ!」

 

跳ね起きて、毒の海へ嘔吐…なんだろう、船酔いみたいな感じだ。

 

「ゲーム内で嘔吐するんですねぇ~」

 

「するねぇ。船酔いみたいだよ」

 

「あぁ、わかったわ。回復薬の飲み過ぎよ」

 

サリーの声…薬の飲み過ぎ?

 

「薬には微量だけどアルコールが入っているのよ」

 

あぁ、そうか。蓄積したアルコールの量が原因なのか…納得…

 

「それよりも、ダンさん。MPドレインって、いつ覚えたんですか?」

 

「この戦闘中だよ」

 

サリーとメイプルに見えるように、説明の画面を出した。

 

ユニークスキル【ヴァンパイアロード】

MPとHPは最大値までの足り無い分を補え、レベルは自分より相手のレベルが高い場合に1レベルだけドレインできる。クールタイムは、5分。

取得条件:ワンバトル中に回復薬を累計150本飲む

 

「このバトルで、回復薬を150本も飲んだの?」

 

サリーが呆れている。それは流石に酔うだろうって、言いたいようだ。

 

「飲んだ。あのタイミングで、取得画面がポップアップしてさぁ、早速使ってみたんだよ」

 

「メイプルもそうだけど、ダンさんも斜め上に進化していますよね」

 

「それは一般人のやらないことを、しすぎるってことかな?」

 

「それで、ですね」

 

俺の言葉がスルーされた…

 

「鳥の巣まで来てもらえますか?」

 

サリーに言われ、三人で鳥の巣へ行くと、卵が三つあった。

 

「ここのお宝は、これらしいです。孵化すると使い魔になるそうですよ」

 

「そうか…俺、あまり物でいいぞ。思考力が鈍っているから」

 

「そういうことなら、メイプルが緑で、私が白、ダンさんは茶色で決定しますよ」

 

「あぁ、了解だ」

 

 

転移陣で地上へ戻れた。そこは砂漠だった。メイプルを背負い、砂漠を歩く。2時間ほど歩くとオアシスを見つけた。これで休めるか?三人でオアシスに足を踏み入れると、先客がいた。和装姿の女性である。その女性が得物に手を掛けると、サリーが反応した。俺は思考力が低下していて、メイプルはお昼寝タイムだったので、反応は出来無かった。が、

 

「おい!少しでも動けば、レベルドレインするぞ」

 

と、脅してみた。

 

「レベルドレイン?そんな凶悪なスキルを持っているの?」

 

女性の言葉をスルーして、

 

「サリー、この女を拘束して、レベル1にしてから、殺すか?」

 

「ダンさん、それは鬼過ぎるでしょ?」

 

「ダン?まさか、レールガン?」

 

レールガンって言う名が定着しているのか?俺的には、そんなかっこ良いプレイスタイルでは無いと思うのだが。

 

「背負っているのは、メイプル…まさか、意識を刈り取って、レベルドレイン?」

 

メイプルはスヤスヤと寝ている。

 

「コイツは今、お昼寝タイムだよ。おい!起きろよ、メイプル。オアシスに着いたぞ」

 

「え…もう食べられないよ~」

 

何の夢を見ているんだ?メイプルを地面に降ろし、目の前の女性をサリーと共に牽制した。

 

「三対一じゃ、勝ち目が無いわね」

 

得物から手を放した女性。

 

「私はカスミ。前回のイベントでは六位だったわ」

 

「で?」

 

「えっ!六位?すごい!」

 

メイプルが起きて、カスミをキラキラした目で見つめていた。

 

「私、十位だったメイプルです」

 

「そこの鬼に倒されなかったら三位だったんでしょ?」

 

鬼…そうかもしれない。それは否定しない。

 

「ダンさんには、勝て無いよ。だって、鬼だもん」

 

メイプルにまで鬼って言われるとは…

 

 

カスミもパーティーに入れて、オアシスを後にした。

 

「ランカーが三人いれば、襲われないわね」

 

いや、四人全員がランカークラスだと思う。サリーは、未だに被ダメージがゼロだし。俺は先ほどの戦闘だけで、被ダメージがスゴイことになっているし。

 

などと考えていたら、メイプル達とはぐれ、俺一人が砂漠にいた。三六〇度地平線が見える状況で、ほんの数分考え込んだだけで、はぐれるものだろうか?急いで、サリーにメッセージを飛ばした。

 

『蟻地獄みたいなワナに嵌まって、三人一組で行動するダンジョンにいるの。脱出したら、合流するから、死なないようにね』

 

って、サリーから返信が来た。脱出って、アイツら、どこに出るんだ?山の頂上から砂漠に出たんだが…砂漠以外の地形を目指すかな。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。