---ダン---
メイプルの元へ転移すると、グスングスン言いながら、荒れ地に落書きをしていた。何をしているんだ?
「なぁ、どういうことだ?」
メイプルに声を掛けた。
「あっ!ダンしゃぁぁぁぁ~ん!」
俺に気が付き、泣きながら、俺にダッシュしてきた。咄嗟に蒼い装備へとクイックチェンジした俺。メイプルのタックルは生身では危険であるからだ。ここで死んだら、ジエンドだろうし。
ドン!
俺とメイプルのインパクトの瞬間、衝撃波が発生した。感動の再会で衝撃波が起きるって、どんな事態だ?その悪気のない攻撃から、アリスが連れの女性をカバーしてくれた。あれ?連れの女性?アイツは誰だ?
「一人で寂しかったです」
涙目のメイプルが俺を見上げている。こうして見ると、かわいい妹枠であるが…
「お前、どうやって、俺をこの世界へ召喚したんだ?」
「うん?転生の神様が願いを三つ叶えてくれるって…」
3つ?予測が着くが訊いてみるか。
「3つとは?」
「ゲーム内のメイプルに転生したい。一人だと寂しいのでダンさんも一緒に。それでみんなと冒険の続きをしたいって…」
眩しい笑顔で説明するメイプル。そうなると、俺以外にも理不尽な死を迎える者が多数出る予感がする?この無邪気な死神様のせいで…
「あっ!ダンさんだぁぁぁぁ~!」
背後から名前を呼ばれ、声の主を見ると、ユウキが俺に抱きついて来た。こいつは、きっと寿命だな。救う手立てを考えていたが、それを実行する前に、俺は死んだからな。
「どうして、ここに来たんだ?」
一応、ユウキにも訊いてみた。
「転生の神様に、ダンさんと会いたいって、願ってみました。お見舞いに来てくれましたよね?私の為に、明日奈さんにお願いをしてくれましたよね?私、あの時反応出来ませんでしたが、ダンさんの行為が嬉しかったんですよ」
泣き笑い気味のユウキ。あぁ、そういうことか。しかし、一歩順番が違えば、俺はユウキに怒りを抱いたかもしれない。はぁ~、メイプル相手では怒りが湧かないか。悪気をまるで抱いていないしな。ほんと、無邪気なラスボスである。因みにこいつへの体罰は意味が無い。痛みを感じ無いからである。うん?実は不感症だったりして…まぁ、お子様体型には無茶はしない。
「で、この女性は誰ですか?」
落ち着いたのか、メイプルが俺の連れの正体不明の女性を指差した。
「俺も知らない。転移する瞬間に抱きつかれたんだよ。で、お前は誰だ?」
知らない女性に訊いてみた。メイプル、ユウキとは違い、お子様体型ではなく、見た目もかわいい大人の女性のようだけど…
「あっ…私はカタリナ・クラエスです。ソルシエ王国クラエス公爵家の長女になります」
貴族のようなお辞儀をするカタリナ。公爵家の娘なら貴族になるのかな?
「で、なんで逃げていたんだ?」
「第3王子の婚約者だったのですが、王子が他に婚約者を作り、ジャマになった私を消そうと、追っ手の者を差し向けて来たのです」
「じゃ、俺達と一緒にいるか?で、特技は?」
「特技は…農作業…」
「そうか。どこかに住処を作れば、食い物には困らないな。アリス、どこかに街は無いのか?」
「30分ほど歩いた処に、セーリュー市という街があります」
「そこへ向かうか」
「ねぇねぇ、移動式ギルドホームは?」
メイプルが強請る様に訊いて来た。あぁ、そうだな。異世界で初風呂でも浴びるか。俺は荒れ地に移動式ギルドホームを出した。
「えっ!プライベートジェット?!」
カタリナが発した言葉…コイツも転生者か?
「お前も転生者なのか?」
◇
移動式ギルドホームに移動して、お風呂に入り、飯を食う。
「トラックにはねられたのか?じゃ、メイプルと一緒だな」
「てへへへ」
メイプルが照れている。照れることでは無い。どこの現実世界で、学生カバンを盾代わりにして、トラックに向かって『悪食』を放つヤツがいるんだ?楓以外いないだろう。真面に正面からトラックとぶつかった為、楓の遺体は酷い状態だった。死体安置所で対面をしたのだが、スプラッターだったぞ。仰向けなのに、背骨の骨髄が見えるって、どんな遺体なんだ?まだ、ゾンビの方が見られると思う。そのせいで葬式の時、棺の中は見られない様になっていた。
「ボクは輸血でHIVに感染して、それが原因で命を落としました」
ユウキがカタリナに死亡原因を告げている。じゃ、俺も…とは言え、朧気な記憶であるが…
「俺はメイプルに召喚されて、デスしたようだ。ゲーム内を含めて、メイプルに2度デスされたことになる」
「あ…そうなりますね」
って、笑顔のメイプル。まさか、死者に召喚されて死ぬとは…一度目は初スポーンした瞬間に『悪食』を喰らったしなぁ。
「マスター、レーダーに赤点が表示されました」
アリスから敵出現の連絡。それは、迎撃だな。移動式ギルドホームを離陸させて、赤点表示の地点に向かうと、1台の馬車が見えた。あの馬車か?バンカーバスターの代わりにメイプルを投下して、自力飛行出来無いユウキを抱えて、俺はハンガーから飛び降りた。
地上に着くと、既に敵はメイプルに殲滅されていた。壊れた馬車の荷台を覗くと、3人の少女が、首輪をされ、怯えたように固まっていた。これって、奴隷ってことかな?少女達も一緒に、移動式ギルドホームへと転移した。
アリスに首輪と奴隷紋を解除して貰い、カタリナにお風呂で身体を洗って貰う。お風呂でリラックスしたのか、三人の少女達のおびえが消え、きれいな肌できれいな服を着て貰い、一息吐かせてから、名前を訊くと、
「トカゲ」
「犬です」
「猫?」
と…それって、種族名で無いのか?子供の奴隷だと、名付けが雑なのか。
「マスター。奴隷の名前はマスターが付けるものです」
と、アリスに言われたので、名前をつけてやる。
「じゃ、リザ、ポチ、タマにする。いいかな?」
三人の尻尾が嬉しそうに踊っている。あれって、嬉しいのかな?
「あっ!マスター、また赤点表示を見つけました」
レーダーに映る赤点は敵、青点は味方、緑点は中立である。この移動式ギルドホームのレーダーは優秀で、敵味方判定をしてくれる。先ほどと同様にメイプルバスターを投下して、新たに奴隷の娘を2名ゲットした。カタリナが風呂に入れてくれ、ゆったりをした服を着てもらった。
「お前らの名前は?」
「私はアリサ、この子は姉のルルよ」
カタリナが訊き出した情報によると、アリサも日本人の転生者だそうだ。
「同郷の転生者がこんなにいるなんて、嬉しいなぁ」
アリサは俺達と合流出来て、嬉しいようだ。仲間も増えてきたし、どこかに家でも買って、地上で生活したいかな。