---カタリナ・クラエス---
幼い頃、額をパックリ割る大怪我をした際に、前世の記憶が蘇った。親友のあっちゃんに勧められた乙女恋愛ゲームの『FORTUNE・LOVER』。あっちゃんは隠れキャラまで攻略したらしいのだが、私は全然で、つい明け方までプレイしてしまった。そうだ…学校に遅刻すると思い、急いで学校へ向かう途中で事故に遭い…そして転生。だけど、この転生した世界は、私がプレイしていた乙女恋愛ゲームのFORTUNE・LOVER』の世界、その物であった。
このゲームは主人公である平民の娘マリアが、4人の攻略対象とハッピーエンドを目指すゲームであり、主人公のライバルキャラがあれこれとジャマをしてくる。そのライバルキャラの名前がカタリナ・クラエス…そう、私である。
ゲーム内のカタリナには、主人公のハッピーエンド、バッドエンドに関わらず、破滅する運命が訪れた。
私は破滅フラグを消し去るべき、ゲームでの主人公絡みのイベントを潰しつつ、破滅する未来に向けて、剣術、魔術などの他、農業を学んでいった。農業が出来れば、どこでも暮らせるはずである。そして、訪れた運命の日…
「マリア…結婚をしてくれ」
私の婚約者であるソルシエ王国の第三王子のジオルド・スティアートが、主人公である光の魔力持ちの少女マリア・キャンベルに告白をしていた。
「えっ!あの…カタリナ様は…」
「カタリナのことはいいんだ。今は君と…式の日程を考え無いとな」
婚約者が、私の親友にプロポーズしていた。結婚式は決定済みのようだ。気配を消して、自分の部屋へ戻り、前以て準備しておいた脱走用バックを手にして王都を脱出し、他の大陸へ逃げるべき、港町を目指した。まだ、死にたく無い…
マリアがハッピーエンドを迎えた後、ゲームではカタリナ・クラエスは裁判に掛けられ、死刑もしくは終身刑、年季明けには国外追放になる。それならば、自力で国外へ逃げるのがいい。無一文になっても、農業スキルで稼げるはずだ。農家へ嫁入りでもいいし。
港町に入ると、私の手配書を手にした憲兵達がいて、見つかってしまった。指名手配って、そんなに私を消したいのか?あの腹黒ドS王子のヤツは…追っ手から逃げる。逃げまくる…捕まってなるものか!
と、目の前に黄金色の装備に身を包んだ女性騎士が現れた。まるで転移してきたようだ。隣にいる男性はダサい服装であるが、彼女の主のようである。これは、神様が用意してくれた破滅回避フラグか?
「お願いです。助けてください」
彼に触れた瞬間、荒れ地にいた。確かに転移はしたけど…ここはどこだ?目の前で、黒い装備に身を包んだ少女が荒れ地に落書きをしているんだけど…
---ジオルド・スティアート---
私にはカタリナ・クラエスという婚約者がいる。一緒にいると飽きない上、私の予想を裏切る行動をすることが多々あり、私を楽しませてくれる。公爵家の長女なのだが、木に登り、畑を耕し、地面に落ちたお菓子などを食べ、蛇を手づかみするなど、淑女とはほど遠い行為をする。その一方で、社交界では注目の的になりやすく、礼儀正しい一面も持ち合わせているのだ。
カタリナは結婚には、まるで興味が無いのか、事あるごとに、婚約を解消しても良いと言う。この私は手放す気が無いのに…かと言って他に男がいることもなく、目の前のやりたいことを、全力で行っている。主に農業であるが…確かに収穫したばかりの野菜は美味しいのは認める。
そんな私に対して、世継ぎをせがむ声が高い。カタリナには今のままでいて欲しいので、側室を取ることにした。相手はカタリナの親友であり、光の魔力を持つ、マリア・キャンベルである。彼女の母親と話しが付き、彼女からも良い返事を貰ったのだが…返事を貰った日、カタリナが王都から消えた。
何故?
「あぁ~、多分、姉さんは王子とマリアさんのことを、誤解したのかもしれませんね」
カタリナの義弟のキースが、妙なことを言う。誤解?
「何をどう誤解したと言うんだ?」
「婚約者をマリアさんに乗り換えたとか…」
キースが悪い笑みを浮かべている。コイツ、まさか、誤解する方向へ持っていったのか?このシスコン男は…幼い頃から、コイツは私とカタリナの仲を邪魔立てしていたしな。
キースより早く見つけないと、誤解が深まりそうである。早速、配下の者達に、カタリナの似顔絵を配布し、誤解を解く為に追っ手を放った。
---キース・クラエス---
旅支度を済ませた。姉さんのいない家にいても、意味が無い。僕は姉さんの傍にいたいのだ。あの王子は独占欲が強すぎる。姉さんだけでなく、マリア・キャンベルさんまで手に入れるって。そんなことは姉さんは望んでいないと思う。あの王子は姉さんのことをまるで分かっていない。僕が姉さんを護らないといけない。その為に、この家で育てて貰ったのだから…
カタリナ・クラエス
ソルシエ王国のクラエス公爵夫妻の長女。
スキル
【土ボコ】地面の極狭い範囲を少しだけ盛り上げる
【農作業】美味しい野菜を育てることに情熱を傾ける
【人タラシ】相手の弱みに漬け込むような優しさを注入して、味方にする
【悪人顔】悪人のような顔を晒すことで、相手に恐怖を植え付ける