---ダン---
翌朝…
「連れて来ちゃいました」
と、笑顔のメイプル。その後ろには、
「連れて来られちゃいました」
と、笑顔のアスナ。おぃおぃ…何をやっているんだ、この死神娘は…
「アスナの死因は?」
「たぶん、自然死かな」
首を傾けて返事をするメイプル。仕草と表情はかわいいが、やっていることは恐怖しか無いだろうに。
「この世界でも、よろしくお願いします」
まぁ、アスナは料理も戦闘も出来るので、即戦力である。が、しかし…健常者すらも、連れてくるメイプルには思うところがある。
「へ?てへへへへ」
笑ってもダメだ。問題は口で言っても理解出来無いメイプル、体罰がまるで効かないし。いや、殺すなら簡単なんだが、殺すことは出来無いよな。この世界はメイプルの願望で存在しているはずだから。困ったなぁ~。
「今日は、どうします?」
アズライトが訊いて来た。
「概ね、昨日と一緒で、レイとアスナは、付いてきてくれ」
今日はカニ漁をしよう。まず、汚水処理と汚物処理の状況を視察し、出来上がった培養土をダンジョンの外へ排出する。ゴキが分離してくれた金属や石を回収し種類ごとに分類して、魔石と宝石を公都で売り払う。手に入ったお金で、小麦、大豆をメインに、調味料なども購入。それから、迷宮都市のダンジョン中層へ転移して、漁業を開始した。
「なんだ?このカニは…」
ネメシスのいないレイはアカン。おい!そこ!毒攻撃なんかしたら、食えないだろうに…おいおい、火炎攻撃しても意味ないぞ、水辺だし…思っていた以上に使えない英雄くん。狩りには向かないのか。
「レイ、お前は漁業は向かない。明日から農業部門だ」
カエデには攻撃せずに、ガードに徹して貰っている。かに味噌がダメになるからである。アリスとアスナ、そして俺の剣技で、カニの手足を切り落としていく。ハチが切り落とし部位を口に咥え、安全地帯へと拾い集めてくれ、どうにかこうにか一杯分のカニは手に入れた。問題は巨大イカである。肝を無傷で手に入れたいが、身が薄く、肝に攻撃が到達しそうだ。
「足を切っていく?」
「切っても動くから、厄介だよ。一撃で締めないと…」
斬り落とした手足が蛇の様に襲い掛かり、ヒルのように吸血してくる。コイツって、吸血イカなのか?冷凍すると肝がダメになるし…どうするかな?
「目玉が硬い。剣が刺さらないわ」
「じゃ、目玉の周りの肉ごと抉るのは?」
無事、抉れたようだ。抉った部分から、脳への一刺しで無事締めることに成功した。タコの攻略もイカと同様で大丈夫なようだし、住処に戻って今夜は、海鮮バーベキューだな。
◇
調味料の作成を試みるが、ダンジョン内では、発酵に適した菌が、働いてくれないようだ。蔵を作らないと、味噌、醤油、酢、みりんは作れないのか。
「そうなると、ここじゃ難しいわね」
畑を作ると、保存蔵も必要になるし、ここでは土地が無い。岩山ダンジョンの為、地表が平らでは無いのだ。蔵よりも、田んぼを整地するのが先である。公都では米が売っていなかったのだ。
「王都ならあるかもねぇ」
あるかもしれないが、高そうである。さて、どうするかな。
「迷宮都市に家でも建てるか?」
「ご主人様、迷宮都市には館がありますが…」
ホムンクルスの一体が、情報をくれた。ここの先代マスターが、迷宮都市のダンジョンコアのダミーを自分の屋敷に置いたと言う情報である。コア部屋に一々行かないでも済むらしい。設定次第では、他のダンジョンコアも操作できるらしい。ならば、そこへ引っ越せばいいような。ホムンクルス1号ことイチカと共に、アリス、俺、アリサ、アスナで、迷宮都市の館へと転移した。しかし、門の前までである。結界で覆われており、門の中に入れない。
「イチカ、これはどうすれば良いんだ?」
「確か、呪文で開けていましたねぇ」
呪文?
「開け!ゴマ!」
ベタすぎて違うと思ったのだが、それで門の中に入れた。次に玄関扉が開かない。どうするかな。カギ穴は無いし。
「マスター、『魅了』してみるのは?」
アリスのアイデア、扉を『魅了』か?ダメ元で実行してみると扉が開いた。後で知ったのだが、扉タイプのゴーレムだったらしい。館の内部は、外観より広めに思える。空間系の術式で拡張しているのかもしれないな。家の中のチェックはイチカ、アスナ、アリサに任せ、俺とアリスはダミーコア部屋へと入った。
ダミーコア部屋は地下にあった。他のダンジョンのコアのステイタスや、操作盤が並んでいる。
「マスター、所有者未定のコア総てをマスター所有にしました」
俺が眺めている間に、アリスの仕事は早かった。手早く、ダンジョンマスターの設定を変えていた。
「後、どこのダンジョンだ?」
「公都の地下、王都の地下です。この二つは最近再起動したようです」
ダンジョンって、リセットするのか。アリスによると、ボロボロなダンジョンは、リセットしてから再成長させる方が、マナという魔素の節約になるようだ。
◇
翌日、みんなで引っ越して来た。揺り篭の維持管理要員であるホムンクルス2~6号は、揺り篭に残してある。
「うん。ここの畑はいい土だわ」
カタリナが喜んで、庭を早速耕している。後で、苗を買いに行くかな。
「キッチンも広いし、冷蔵庫もあるのね」
と、アリサ。昨日はキッチンを見なかったらしい。キッチンには魔導具である冷蔵庫、冷凍庫、オーブン、レンジなどが揃っている。これは、腕が鳴るなぁ。
「カレー食べたいなぁ~」
と、メイプル。
「カレー粉があれば良いんだが…まぁ、カレー粉自体を作ることは出来るから、スパイス次第だな」
モロボシ洋菓子店の喫茶コーナーで出していたカレーは、店でカレー粉から作っていたので、ノウハウはある。