---ダン---
「なんで、この姿なんですか?!」
レンがメイプルに掴み掛かっている。メイプルは小首をかしげて、レンの怒りの原因を考えているようだ。
香蓮的には香蓮姿で転生をしたかったようなのだが、レン姿で転生してきた。いや、多分、メイプルの要望がゲーム内アバター姿なのだろうけど。
「これじゃ、デキないじゃないですか。成長するのかな?」
ピンクの悪魔の中の人は、性欲が強いのだろうか?いや、あの姿は小学生だと思うので、デキないだろう。まして、アバター姿である。成長は見込めないと思うな。
しかし、ここに来てレンとは…確かに料理と戦闘は出来るが、レンの身長では、料理しづらいと思うのだよ。ここのキッチンは大人用だし。香蓮の意見に賛成である。香蓮では無いレンでは、料理出来ない組になる。野営とかなら、戦力にはなるかな。
しかし、メイプルの人選がよくわからない。欲しい人材から少しズレているんだよな。個人的にはミィとかミザリーとかが良いのだが…
「あの…私も仲間が欲しいんですが…連れて来ていただけますか?」
カタリナからリクエストが出た。
「婚約者か?」
「違います。あんなドS腹黒王子は、こちらから願い下げです。そうでは無くて、緑の手を持つ女性です。植物を育てるのが上手なんですよ」
それは即戦力だな。カタリナはこの世界の人間なので、転移術で攫ってくれば良いだけだし。
「名前と住処は?」
「メアリ・ハントです。ハント侯爵家のご令嬢です」
待てよ?固有な存在って、『強奪』出来るんじゃないのか?試しに『強奪』をしてみると、目の前に赤褐色の髪で貴族風ドレスの女性が現れた。
「メアリ…会いたかったわ」
カタリナがメアリと呼んだ女性に抱きついた。『強奪』という名の誘拐は成功したようだ。
「え…か、か、カタリナ様。これはどういうことですか?」
メアリにカタリナが事情と状況を説明した。
「このお屋敷の畑の管理ですね。わかりました。任せて下さい」
この世界の貴族の女性は、異常な状況でも動じないんだな。突然の『強奪』による連れ去り、動揺していないようだ。
「で、強制転移術はどなたが掛けたのですか?」
誰も名乗らない。強制転移術なんて掛けていないから…
「いないんですか?そうですか…私がカタリナ様をお慕う気持ちが、カタリナ様の元に引き寄せてくれたのですね」
大丈夫か?この女性…実は残念な女性なのか?
「で、今日はどうしますか?」
アズライトが訊いて来た。
「レイとカタリナとメアリは農業、残りの者はいつも通りで、レンは俺達と狩りだ」
と、今日の分担を決めたのだが、
「マスター、敵襲です」
アリスが声を上げた。敵襲?この街の住民とは接触していないんだけどな。
「敵は?」
「おい!出て来い!ここから立ち退き、この屋敷を渡せ!」
外から横暴な要求が飛んで来た。外に出て応対をする。
「何の権利があるんだ?」
「税金の支払いが全くない。税の滞納により、この屋敷を差し押さえ、アシネン家の別荘にする。速やかに立ち除け!」
この街を護る騎士団だろうか?フルアーマーの騎士が沢山いる。貰っておくか。『強奪』で、騎士団の装備、財布などを収納庫にしまった。目の前には下着姿の男達がいる。
「えっ!」「うそっ!」
後方から身に起きた悲劇に気づいた者達の声が聞こえてくる。最前列にいるヤツラは、未だに悲劇に気づいていない。
「そんな戦力で勝てると思っているのか?」
「なんだと!我らは迷宮方面軍で、私は将軍のアルエトン・エルタールだ!隣にいらっしゃる方は太守代理であるソーケル・ボナム殿である。頭が高いぞ!この、一般市民め!」
「将軍、こやつは税金を払わぬ、国賊である。今すぐに殲滅をすべきである」
殲滅?クラン<楓の木>を殲滅だと?面白いことを言うな。
「やってみろよ」
どうせ、門の結界が破れないだろう。
「なんだ、これは…」
漸く、最前列のヤツラも下着姿でいることに気づいたようだ。
「お前ら、露出狂集団か?」
「いつの間に…貴様がやったのか?」
「うん?最初から下着姿だぞ。太守代理、パンツが黄ばんでいますが、ちびりましたか?」
「貴様!怯むなぁ~!前へ進め!」
太守代理の掛け声に、誰も従わない。下着で手ぶらでは、どうしょうも無いだろうに。『仔羊の行進』で全軍をスリープさせて、公都のテニオン神殿の前に強制転移させてみる。家の前にあったゴミは総て、転移できたようだ。この門は俺達が入った1回しか開けていない。基本、転移術での移動をしているからだ。なので、結界の綻びすら無い。頻繁に開け閉めすると結界が綻ぶことがあるらしい。
この屋敷は高台にあり、迷宮都市を一望出来るのだが、見るからに治安が悪そうな街であり、みんなを外に出すのは危険があると思い、ダンジョンへはダイレクトで転移しているし。
俺は家の中に戻り、
「予定変更だ。収納庫に入れた強奪物を分類してくれ。売れる物は売って、タネと苗とか、食料を買ってくるよ」
ゾロゾロと収納庫へと向かうみんな。カタリナとメアリは、欲しいタネと苗を書き出している。俺も収納庫へ向かう。財布からお金を抜き取り、財布をエラそうな屋敷の屋根裏へと強制転移させた。あの家をゴミ箱にするか。あれって、太守もしくは太守代理の家だろうし。
「フルプレートが一杯ですね」
剣や盾、弓矢は使い道はあるが、フルプレートは使い道が無いなぁ。こんなのを装備したら、動きづらいだろうに。
「これ、材質は何かな?」
「ミスリルか?鉄では無いようだが…」
あれ?装備には紋章が刻まれている。これって、下手に売ると、足が付くヤツか。どうするかな…そうだ!
「アリス、ダンジョンの宝箱から、フルプレートを出すのは可能か?」
「可能です。では設定をしておきます」
アリスが、ダミーコア部屋へと向かった。そうだ!番頭というか金庫番みたいなヤツが欲しいかな。サリーがいれば…いや、あいつには長生きをして欲しい。どうするかな。
「カタリナ、誰か金庫番というか、番頭みたいなことが出来る信用できうヤツはいないか?」
この世界に産まれ育ち、教育を受けているのはカタリナ、メアリ、アリサ姉妹であるが、アリサ姉妹は奴隷堕ちしているので、コネは使えない。
「います。信用出来て、賢い義弟がね」
「名前と住処は?」
「キース・クラエス、私の義弟で、クラエス公爵家の養子です」
ここまで固有情報があれば、『強奪』できるだろう。『強奪』してみると、旅姿をしている知らない男性が現れた。
「カタリナ、コイツか?」
「そうです。キース、会いたかったわ」
カタリナがキースに抱きついている。
「え?どういうこと?何が起きたの?あれ?姉さん…どうして?」
カタリナが事情と状況をキースに話した。
「そうですか。姉さんを助けていただき、ありがとうございます。ダン様の信用を裏切らないように、役目を果たします」
まずはシガ王国について学んで貰うか。キースを書庫に案内して法律、経済を中心に学習して貰うことにした。さてと、タネと苗を買ってくるか。そうだ、培養土をここへ転送しておこう。その前にここの排水装置に転移装置を付けて、ダンジョンで汚物、汚水を処理させるか。