---オーユゴック公爵---
我々の前の前から消えた彼ら…勿論、孫のセーラも一緒である。これは高位魔術師が使える転移魔法術か?彼は何者なんだ?そして、あの少女は一体…ゾナ秘蔵品であるオリハルコンの槍を額で受けて破壊って…聖剣以外、傷つけられないのだろうか。
「ゾナはどう思う?」
「秘蔵していたオリハルコンの槍が木っ端微塵だぞ。なのに、あの小娘は無傷って…アイツらはバケモノ集団だな。一言で言い表すなら、戦ってはいけない相手だ」
衝撃的なシーンであった。額で受けてオリハルコンの槍が砕けるとは…勇者装備で無いと戦え無いかもしれない。それにあの青年の魔法技能…一体どれだけの火力があるのだろうか。
「それよりも、ダンジョンコアを4つも所有していることが脅威だぞ」
まさか、王都と公都のダンジョンも所有していたとは…確かに、ダンジョンがあったから、その恩恵狙いで街をあの場所に作ったのだ。どこにコア部屋があったんだ?探しても見つけられなかった我々に、落ち度があるのはわかっている。
「もし、恩恵をストップされたら、どうなる?」
万が一の事態の予想を訊いてみた。
「都市機能は麻痺する。上水下水は勿論、生活用魔導具も使えぬ。都市のセキュリティーも機能出来ぬ。魔法すら行使出来ないだろうな」
住民を人質に取られたということか。
「コアを我々が手にするには?」
「ヤツラの皆殺しだろうな。だが、殺せる自信は無い。勇者で勝てるかどうか…」
シガ王国には勇者はいない。昔はいた…王祖シガ・ヤマトが勇者だったそうだ。王位を譲り、ミト・ミツクニ卿になった後、世直し度に出たきり、行方知れずである。
「そうなると逆に味方に出来るかどうかだな」
「セーラ次第だな。籠絡出来るか…そもそも、生かして返しくれるかどうか…」
まず、王に相談だ。王都を含む住民達が人質と言う国家の一大事であるから。
---ジオルド・スティアート---
カタリナを探すと言って旅立ったキースとメアリの行方がわからなくなっていた。キースはカタリナの義弟で、メアリは私の弟の婚約者である。
「定期連絡を絶ったようだ」
弟のアランが荒れている。婚約者からの連絡が途絶えたのだからな。
「これって、お二人はカタリナ様に出会えたってことではないですか?」
マリアの一言で、はっとした私とアラン。あの二人なら、やりかねない。カタリナを独占したがっていたし。手を組んだのか?
「キースの最後の連絡は港町だ。アラン、メアリからの最後の連絡は?」
「同じだよ、港町だ!そこにいるんだな」
捜索隊を組織して、港町に乗り込んだ。しかし、三人の行方の手がかりがどこにも無かった。船に乗り込んだ形跡が無いのだ。定期船の乗客名簿に名前は無く、漁船をチャーターした形跡も無い。他の大陸や島などへは、泳いで渡れる程近くは無い。ここから、どこへ?馬車にも乗った形跡が無い。この町から忽然と姿を消したようだ。
---マリア・キャンベル---
ジオルド王子との結婚式の日が近づいて来た。本来であれば、カタリナ様も一緒に、二人花嫁の結婚式をするはずであったのだが…私が側室では気に入らなかったのであろうか?お菓子作りで気を紛らわせる日々…でも、誰も食べてくれない。美味しいと言って平らげてくれるカタリナ様は、もうここにはいない。どうして、こんなことになったのだろうか?
翌朝、目が醒めると、知らない部屋にいた。
「マリア、おはよう!」
えっ!目の前には笑顔のカタリナ様。ここは?
「あの…おはようございます。ここは、一体、どこなのですか?」
「あぁ、ご主人様に言って、マリアを攫って来て貰ったのよ」
ご主人様?えっ…えぇっと…それは駆け落ちですか?王子が婚約者なのに…
「これに着替えて、朝ご飯よ」
渡されたのは普段着である。カタリナ様は、農作業用の作業服を着ていらっしゃる。
「マリア、おはよう!」
行方不明になったメアリ様も作業服であった。ここはどこ?
食堂へ向かうと、執事姿のキース様がいらした。ご主人様って、どなただろうか?随分と賑やかな食卓である。亜人の方もいらっしゃるし、シスター服の方、騎士の方もだ。ここって、一体?
「ほら、食べて食べて。ご主人様の焼くパンは天下一品なのよ」
カタリナ様に渡されたのは四角いパン。枠は狐色であるが、枠の中は真っ白でふわふわである。
「ジャムは好きなのを使っていいのよ」
色々な色のジャムの瓶が並んでいる。
「カタリナ様…ここは一体?」
「ここは、私達の亡命先よ。ここなら、あの腹黒ドS王子の手は届かないから、安心よ」
亡命…他国に住んでいらっしゃったのですね。
「ご主人様がね、菓子作りの出来る人を探していて、私がマリアを紹介したのよ」
カタリナ様のお屋敷で働けるのですね。それは、とても嬉しいことです。
「ダン、今日の予定はどうするの?」
凜々しい騎士姿の女性が、青年に声を掛けた。
「今日は、屋敷での作業だな。税金問題で外は物騒だし。あぁ、俺とセーラとキースは、公都で買い出しに行く。カタリナ、培養土の具合はどうだ?」
「いい感じです。あの品質でオーケーですよ~」
あの青年が、カタリナ様のご主人様なのでしょうか。後の方達は、使用人でしょうか?それにしては人数が多い上、幼い子が多い気がする。
「カタリナ様、ご主人様は何をされている方なのですか?」
「元々パティシエらしいけど、ここじゃ雑用係かな?」
パティシエ?パラディンの上位かしら?
「パティシエじゃわからないかな。ケーキ職人のことよ。だけど、ケーキ以外にも料理の知識を満載しているのよ」
シェフってこと?日々の生活で謎が解明されるでしょうか?。