デスを食らった男   作:もっち~!

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VSイカ

砂漠を抜けると海だった。魚でも釣って待っているかな?アイテムボックスから釣り竿を出そうとすると、未使用の巻物と卵があった。そうだ、卵を温めないと。砂浜の温かな砂を掛けて、暖めてみる。

 

で、巻物はどうしたんだっけ?さび付いた思考を無理矢理、動かす。そうだ、2階層へ行く時のフロアボスを一回目でクリアしたことで貰えたんだ。コイツを覚えておくか。

 

レアスキル【ウッドオクトパス】

8本の根っこを自由に操れる。先端から刺さると貫通攻撃になり、振り回せば鞭や投げ縄のようになるマルチウェポン。

取得条件:1層目のフロアボスに、ソロにて初戦で倒す

 

う~ん…さっきの鳥さんの時にあれば、役立ったかもしれない。手遅れか?いや、PKで使えそうだな。

 

 

 

---運営ルーム---

 

イベントにバグがないか、不正がないかを運営スタッフがモニタでチェックしていた。

 

「これって、今回のイベントでのベストバウトになるかな」

 

運営スタッフの一人が、モニタ画面を見て、呟いた。

 

「誰絡みだ?」

 

「結果から言うが、【銀翼】がやられた」

 

「何?【銀翼】がか?俺達の悪意の塊のアイツがか?」

 

【銀翼】というイベントモンスターは、あるプレイヤー対策で作られた運営の悪意の塊であった。殺傷能力の高いスキルを詰め込み、、HPを高く、MPも高く、とにかく、総てのステータスを高く設定してあった。

 

「あぁ、激闘の末にだ」

 

対【銀翼】戦の一部始終を観戦した彼は、どこか嬉しそうであった。一方、他のスタッフ達は、パニックに陥っていく。

 

「おいおい、あの反則級モンスターを倒す、反則級のプレイヤーがいるのか?」

 

「あり得ないだろ?メイプル対策で作ったんだぞ」

 

彼らの想定外は、メイプルのパーティーメンバーである二人の化け物プレイヤーだった。

 

「まぁ、見てみろ。手に汗握る攻防だったぞ」

 

メイプル達と【銀翼】との戦いをリプレイさせた。各人のモニタで流れる、あり得ない動きの回避盾の少女と、不屈な精神を持つ男、理不尽なまでに火力の高い盾の少女の三人組の戦い…

 

「まさか、ヴァンパイアロードがゲットされたのか…」

 

通常は100本飲めば泥酔状態になる回復薬を、酔いと戦いながら、自分よりも固い盾を護る男の姿…

 

「う~ん、ツートップの化け物が手を組んだのか…」

 

メイプルとダン…運営サイドから見たら、ボスモンスター以上の化け物であった。片やあり得ない防御力を誇り、毒を自在に操る対人戦最強の女。

 

もう片方は、不屈な精神で、どんな相手にも引かぬ、メイプルキラーの男。

 

「そうか、高HPを生かして、貫通攻撃に対する盾になったのか」

 

仲間を守る為、守備力が低いにもかかわらず、ゲーム中最高の防御力を持つ少女の盾になる男…その心意気に感動する者がちらほらと…

 

「そうなると、幻獣の卵…亀と狐と狼は持っていかれたのか。後は鳥…銀翼かぁ…」

 

「あれは、大丈夫だ。【海皇】のところにある。通常では行けないはずだし」

 

その言葉に安心する運営のリーダー。しかし、彼の見えないところで、一人のスタッフが、悪い笑みを浮かべていた。

 

 

 

---ダン---

 

釣り…遠浅なのか、まったく釣れない。どうするかな。空は夕焼け色に染まっている。長かった1日目が終わるようだ。どこか、安全に寝られる場所は無いかな?

 

砂から卵を回収し、移動を開始した。しかし、どういう訳だろうか。砂浜にいたのに、水中にいる。いや、水中の中にあるドームの中にいるようだ。

 

俺のいる場所は空気があり、水は無いが、ドームの外は海のようで、無数の魚たちが泳いでいる。落とし穴対応の転移陣があったのだろうか?

 

唐突に、鞭が空気をきり裂くような音が聞こえ、横に移動すると、俺のいた場所にはイカの脚が叩きつけられていた。脚のサイズから見て、巨大なイカのようだ。

 

巨大イカはドームの隔たりを透過して、攻撃が出来るみたいだ。どうするよ、これ…イカの脚のうち2本は先端が碇のように見える。あれって、貫通攻撃が出来るのか。

 

マズい。回復薬の残量が少ない。鳥さんの後、補充していない。マズい…脚が連発で飛んで来た。ホーリークロウで斬り裂くが、相手のHPがまるで減らない。再生しても減らない。脚は武器扱いか?そうなると、水中にいる本体を叩かないとダメなのか。

 

じゃ、覚え立てのウッドオクトパスを使ってみた。だが、使ってみて、分かった。このスキルの弱点…発動中に移動出来無い。そんなの説明画面になかったぞ。まさか、運営の罠か…

 

イカの貫通攻撃を避けられずに2発食らった。減り始めるHP。ダメ元で念じるHPドレイン。あれ?イカのHPが減っていく。コイツ、HPドレインが効くようだ。

 

となると、攻略方法は、イカの攻撃を受けて、HPをドレインすることか?いや、クールタイムがあるから、クールタイムの間は避け続けないとダメだ。

 

貫通攻撃はドレイン出来るときだけ受け、それ以外は回避。それ以外の攻撃は回避または迎撃である。が、多足系相手には32連打は無駄撃ちすぎて、使いづらい。長丁場になりそうだ。

 

サリーからメッセージが来たが、直ぐに返信が打てない。イカの攻撃と攻撃の合間に、1文字、2文字打って、次の合間に打つって感じで、打ち終わった時には、イベント内時間で2時間も掛かっていた。

 

『海の中のドームで、イカと対戦中』

 

と、ようやく返信した。で、イカなんだが、HPが半分になると、墨を吐いてきた。海が真っ黒に染まっていくが、僅かな濃淡の違いで、イカの位置を特定し、貫通攻撃に備えていく。

 

戦い始めて3日経過した。後、1/4だ。後1日かかるかな?そうなるとイベント開始後5日目ってことか。メダルを集めに行かないと…

 

そして、翌日…漸くイカを退治出来た。直後、メダルを1枚ゲットし、海に放り出された。そこは珊瑚礁の綺麗な海底であった。しかも、息が出来る?息が出来るってことは、探索をさせる為か?隅々まで探すこと半日、漸く銀色の卵をゲットした。これも使い魔かな?脱出用の転移陣に急いだ。

 

地上に出て、サリーへ連絡をした。集合場所を訊く為である。サリーによると、洞窟でメイプルが待っているという。場所の説明が送られて来たので、そこへ向かって、移動を開始。そうだ、装備を初期装備にしておかないと。

 

移動を開始した直後、スキルを取得したと画面がポップアップした。

 

レアスキル【子羊の行進】

相手を眠らせることが出来る。持続時間5分。クールタイム10分。睡眠異常無効。麻痺無効、毒無効があれば、総ての状態異常が無効になる。

取得条件:ワンバトルを3日以上掛けて勝利すること

 

サリーに見せると、呆れられそうである。なんだ、この取得条件は…

 

 

メイプルの元に向かう途中で見かけたプレイヤー達を次々とPKしていく。メダルを集めないとなぁ。

 

イベント最終日に、漸くメイプルのいる洞穴に着いた。入り口が毒塗れなんだが…ヒドラをしたのか?そこを入って行くと…

 

「ダンさぁぁぁぁ~ん」

 

俺に気づいたメイプルが走り寄り、俺に抱きついた。

 

「ダンさんの背中が恋しくて…私、枕が変わると眠れないんです」

 

うん?俺の背中は、メイプルの枕なのか?

 

「どうだった?メダルは」

 

奥に行くと、サリーとカスミがいた。

 

「途中でPKしまくったよ」

 

ゲットしたメダルを15枚取り出した。ミィを倒したのが大きいな。

 

「これで、40枚達成です」

 

メイプルの嬉しそうな声。4人共なにかしら貰えるのか。

 

「そうだ!ダンさん、卵はどうしましたか?」

 

触れて欲しくない話題。ここまで来る間に、2つとも孵化したのだが…指輪から2匹を解放した。

 

「わぁ~、2匹も…いいなぁ。でも私のもかわいいんですよ」

 

亀を見せてくれたメイプル

 

「おい!これって…」

 

が、サリーはその姿に恐怖していた。そう、あの鳥さんが使い魔になっていた。鳥さんの名前をアナにし、狼、正確にはフェンリルの名前をポチにした俺。

 

「そうなんだよ。小さいながらも、貫通攻撃が出来るんだよ」

 

俺よりも強いかもしれない使い魔アナ…

 

 

イベントが終了して、スキルか装備を2つ手にいれることが出来る。さて、何にしようかな?メイプルはサイコキネシスを選び、亀を空に浮かべて、移動手段にするようだ。AGIがゼロのメイプルよりも、亀の方が速いそうだ。

 

で、俺…対魔法の対策だな。うん?これって、なんでも使えるのかな?以下の二つを手に入れた。

 

【強奪】

視界に入る物を1つだけ手に入れることが出来る。使用制限は1時間に1回。

 

【妄想】

敵に妄想を見せることが出来る。持続時間5分。クールタイム10分。

 

「なんか、戦闘に関係無さそうね」

 

サリーが嫌な顔をしている。

 

「時間稼ぎをする為の方策だよ」

 

試しにサリーで妄想してみた。俺の妄想した物がサリーへと送られていく。サリーと大人の行為をしている妄想である。このゲームでは、そういう行為は出来ない。そもそも全裸になることが出来無い。

 

だからこそ、妄想シーンは意外性があり、時間を稼げると思う。

 

「え…それは…」

 

顔を真っ赤にして、俯くサリー。かわいいぞ。これで5分間は無力化できるってことだ。次に、カスミから強奪してみた。

 

「えっ…ちょっと、ここでは…」

 

狼狽えるカスミ。カスミから道徳心を強奪してみたのだ。その結果、サリーの表情から、普段は考えもしないシーンを想像したようだ。

 

どうやら、形無い物でも奪えそうだ。

 

「どうしたの?二人共…」

 

そんな二人の声で、俺の背中で目覚めたメイプル。

 

 

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