---ダン---
翌朝…泣いているユーゴーがいた。彼の近くで、メイプルの顔が青ざめている。ついにやらかしたな。ユーリという少女をこの世界に召喚すると、俺よりも歳上の男性ユーゴーになる。そして、デフォルト顔の俺よりもイケメンであるのだが、心は夢見る少女。もうユーリとして、乙女チックな恋は出来ないだろう。頼むから、俺にバラ心は抱かないでくれよ~。俺は男と抱き合う性癖は無い。
「うっ…男性に転生って…酷い…酷すぎる…目の前に、ダンさんがいるのに…」
まぁ、男性キャラをアバターにしたユーリが悪いと言えば悪いのだが。メイプルは彼女?彼?に掛ける言葉が浮かばないようだ。いや、誰にも浮かぶものか。こんなシチュエーションで、この悲劇の少女に言葉なぞ…
そうだ、カタリナ、メアリ、マリアに恋して貰えば良いか。まぁ、成り行き任せだな。因みに死因は、自殺らしい。詳しい事情がよく分からないが、レイをユーリの姉が殺して雲隠れ、捜査陣はその姉の行方と動機を、何も知らないユーリに連日事情聴取したそうだ。で、精神喪失状態で自殺というより、階段から落下して打ち所が悪くのようだ。クマ兄さんが来たらきいてみよう。って、エンブリオ無しだと戦力外か…ユーリはお菓子作りに役立つけど…
昨日、セーラを町娘姿にして、公都を案内して貰った。神殿の炊き出し担当らしく、安くて良い店を多く知っていた為、今後の参考にする。
「そうか…スパイスは薬局にあるのか」
この世界では、スパイスは漢方薬チックな扱いのようだった。道理で乾物屋さんに無かったんだな。グローブとヴァニラをゲットしておく。カレー粉の材料は高価な物が多いので、稼いでからにしよう。
魚屋さんに案内して貰った。そこでは小魚が一樽いくらで売っていた。これは買いだな。下処理を丁寧にすれば、じゃこ天に出来そうだ。試しに一樽買って、住処のキッチンへ転移させた。
「便利ですね、その魔法」
セーラに言われたのだが、
「これ、魔法じゃないから魔力は使わない。単なるスキルだよ」
体力は使うかな?いや、神通力か?確かなことは魔力は使わないってことだ。
「魔法では無くて、スキル…凄いです」
セーラが俺に跪いて祈っている。俺は信仰対象では無いんだけど…この世界では転移魔法として高位魔法使いが使えるらしいが、1日1回一人まで可能らしい。その為、俺みたいにポンポン使えないそうだ。
「今夜は刺身パーティーにするか?」
この世界では生魚を食べる習慣は無いらしい。って今朝、イカの塩辛を食べてなかったか?あれって、熱処理はしていないから生だぞ。あっ、鰹がある。燻製庫を作れば、鰹節に出来るかな?試しに数本買っておく。マグロも一本いっておくか。日本とは違い、マグロは高くなくて良かった。
「次は、どこを視察しますか?」
セーラは俺を案内したくて、ウズウズしているようだ。何が楽しいんだ?まさか、ホテルにでも案内する気なのか?そう言えば、デンドロではアズライトが、よりよい連れ込み宿を部下にリサーチさせていたらしい。
「豆問屋とかあるかな?」
「豆ですか?そんなに種類は無いですよ」
大豆が欲しい。あんこがあるから、砂糖、小豆はあるのだが、大豆の存在はまだ確認していない。
◇
住処に帰宅。今日も懲りずに税金の取り立て屋が来たが、門の結界を破れずに退散したそうだ。今日辺り、反撃をしておくかな。
キッチンに向かい、買った小魚の下処理をする。刃物でやっていると飽きるので、『強奪』を使う。内臓、頭、エラ、皮、骨を『強奪』し、ミミズ飼育部屋へ『強制転移』させるだけである。残った身の部分は、すりこぎ棒とすりこぎ鉢で、練っていく。潤滑油代わりに少し、ごま油をたらしておく。俺の作業が珍しいのか、リザ、ルル、セーラ、マリアがメモを取りながら、見ていた。
そうだ!ショウガの絞り汁も入れておくか。臭み取りと、ショウガの成分は、タンパク質を柔らかくする酵素だか、成分だかがあるそうだ。喫茶コーナーのランチで生姜焼きを作る際、豚肉をショウガ汁に漬け込んだ記憶がうっすらと蘇る。
練り上がった小魚の身をスプーンで掬って、油で揚げていく。一部は蒸し器に入れてある。こちらは板無しの蒲鉾になるはずだ。今夜はお試しなので、板を用意して無い。好評であれば、板を用意しておくかな。
次に豪快にマグロの頭を切り落とし、たき火にくべておく。オーブンで焼くと、朝の食パンに臭いが移るので、オーブンでの魚料理は使用禁止である。残った身は柵状にして分類しておき、布に包んで少し熟成させる。
「醤油はどうするの?」
アリサに訊かれた。
「まだ、醤油は無いから、塩か、マヨだな」
マヨは酢の代わりにワインビネガーで代用をした。穀物酢を作らないとな。醸造蔵は発酵をするため、ダンジョン内だと酸欠になりやすく、向かないみたいだ。どこかに蔵を作りたいなぁ。
そして、夕食…刺身をメインに、魚肉パーティーになった。じゃこ天が人気である。蒲鉾は醤油が欲しい感じだな。ワサビと塩の相性が悪いのだった。
「次の目標は板わさをおいしく食すですね」
カタリナは、ワサビの生育の勉強を始めたそうだ。でもあれって、沢で無いとダメじゃないのか?ここに沢を作ればいいのか?あぁ、揺り篭に作れそうか。鼠人達に管理して貰えば良いか。お礼は鼠だけにチーズかな?
夜間…この町の貴族の屋敷から、コインを『強奪』していく。金塊とか金品だと足が付きやすいが、コインならば足は付かないと思うので。あのアシネンとかいう貴族の家からは念入りに『強奪』していく。兵を雇わせない為である。公爵は王都に持ち帰って王に相談と言っていたので、税の取り立てはアシネンという貴族の独断なのだろう。
◇
朝、目覚めると、サリーが泣き縋っていた。ついに、サリーにまで毒牙が…
「ダンさん…会いたかったです…グス」
メイプルはサリーの号泣を見て、アタフタしている。しかしユーリの時よりは平和そうである。ユーリの時は知恵熱で倒れるのではと思う位固まっていたし。
「で、サリーの死因は?」
「うっ…過労死です。ダンさん…いえ、正さんが亡くなってから、睡眠が取れなくなって…周囲では不審死が増えていくし…怖かったんです」
あぁ、その恐怖の原因はメイプルだぞ~。メイプル本人は自覚が無いけどな。
カタリナを呼び出して、サリーをお風呂に入れて欲しいと頼んだ。心を落ち着かせるには、カタリナかマリアが適任みたいだ。セーラだと、どうして良いかって固まっちゃうようなのだ。巫女だと子守りは無理かな?
そして、朝食。今日はうどんきりにチャレンジしてみた。とは言う物の麺つゆは無い。醤油と鰹節、みりんが無い為だ。う~ん、どうするかな。アイデアの神様が降臨しないかな。降臨…降臨…降臨…した。そうか!
「これって、うどんを白玉に見立てたの?」
お汁粉にうどんを入れてみたら、アリサが親指をサムアップしながら、嬉しそうに食べていた。
ついに、サリーまで…
後は、「酒池肉林」とクマとアスカかな?ミィとミザリーも欲しているが…