---ダン---
平民らしい暮らしってなんだろうか?迷宮都市の貴族エリアへの魔素の供給をストップさせた。恨むなら、アシネンって貴族を恨めよ!
今朝は新しい住民は増えなかった。メイプルのお目付役サリーのおかげかもしれない。久しぶりに、清々しい朝を迎えられる…
って、何故か大空がひび割れて、そこから飛行艇が現れた。この世界の空はひび割れる材質で空が出来ているのか?その出てきた飛行艇は、この屋敷を目指しているように見える。
貴族街辺りに差し掛かった頃、気球部分が破裂し火の玉が見えた。シノンの狙撃かな?飛行艇はゆっくりと貴族街へ墜落していく。貴族の屋敷と接触寸前、飛行艇から数名が飛び立ち、コチラに向かって飛び始めた。勇者出なくても飛べるのか?
「なぁ、あれは誰だ?」
捕虜のゼナに訊いたが、分からないらしい。
「あれは、サガ帝国の勇者チームよ」
アリサが声を上げた。
「私達姉妹を見捨てた口だけのロリ好き勇者…絶対にアイツは許さない」
悔しそうなアリサ。こんな表情のアリサは初めてである。余程悔しい思いをしてのだろう。それは許せないな。
「メイプル、迎撃するぞ」
「うん」
館の外に出て、俺は蒼い装備にクイックチェンジし、メイプルはシロップを召喚した。
「そうか…召喚すればいいのか。ネメシス、カモォォォォォォ~ン!」
レイが痛そうなコマンドで相棒を召喚していた。カエデが勝手に現れ、シロップに乗り込んでいる。アリスは天翔る馬を召喚し、それに既に載っている。
「主よ、その呼び出し方は恥ずかしい。ただでさえ見た目だけでも恥ずかしいのに」
相変わらず、レイは相棒からもバッシングを浴びている。レイはシルバーと言う空を飛べる馬も出し、俺達5人は空へと飛び出した。
◇
「おい!魔王よ!アリサ姫とリーングランデの妹のセーラさんを返せ!」
あぁ、公爵の娘の一人は勇者付きの騎士とか言っていたな。コイツのパーティーメンバーなのか。
まず、『子羊の行進』で様子を見る。勇者だけ寝込み、堕ちていく。勇者が一番弱いのか?
「貴様!妹を返せ!」
次に『妄想』だな。イメージはあの勇者の全裸で甘い言葉をギフトしてみた。顔を赤らめて、おどおどする勇者付きの仲間達。男に免疫は無いようだな。
『パラライズシャウト』
メイプルのスキルで、堕ちていく勇者の仲間達。呆気ないな…って、空気の刃が飛んで来た。セーラの姉は魔法使いだったようで、自傷して麻痺から脱出したようだ。
「メイプル、持ち帰る。捕縛してくれ」
「了解です。『ヴェノムカプセル』」
毒のカプセルに覆われるセーラの姉。大人しくしていても呼吸の度に、暴れる程に毒の回りが早くなる鬼畜スキルである。
◇
住処に戻って、セーラに彼女の姉を預けた。
「倒してくれた?」
アリサが訊いて来た。
「まぁ、墜落はさせたが、死んではいないだろう」
「そう…」
アリサによると、あの勇者はアリサに一目惚れし、プロポーズまでしたのだが、アリサの国が戦争に敗れ、アリサが奴隷堕ちすると、音信不通になったらしい。最低だな。プロポーズした女に、その仕打ちって…勇者なら、奴隷堕ちし無いように助けてやれば良いのに。
で今になって、奴隷では無いアリサを返せって…ゲスだな。俺もゲスではある…死に別れた妹との約束を叶えて上げられなかったし…
「ご主人様まで悲しそうな顔をしないでよ。ねぇ…」
「死に別れた妹のことを思い出しただけだ。死んだのは俺だけどな」
「生きていればいいことあるって。私はご主人様に会えた。そのおかげでルルの妹として普通に生活出来ているわよ」
見た目は幼女、精神年齢は歳上のアリサに言われると、少し嬉しい。
「お~い!アリサ姫を返せぇぇぇぇ~!」
外から勇者の声がする。全身ズタボロで門の前にいるんだが…罠を発動してみた。門の前の地面には、地面タイプのゴーレムがいて、普段は落とし穴を隠しているのだ。
勇者と仲間達が落とし穴に吸い込まれて行く。外気圧と内部圧を変えることにより、落とすだけでなく、吸引するようにしてあるのだ。逃げる事は出来ない。現在のゴールはここのダンジョンの犯罪ギルドの拠点である。退治してくれるといいなぁ。あの貴族の部隊を追い返すだけでは勿体ないので、ダンジョン内の排除して欲しい物がある地点に落とすことにしてみたのだった。
「あの勇者達って、武器を持っていた?」
サリーが訊いて来た。
「持っていないよ。だって、堕ちる瞬間に『強奪』しておいたもん」
高そうな武器である。闇オークションに出せば高く売れるであろう。
---オーユゴック公爵---
今度はサガ帝国の勇者チームが、越境して彼を倒しに来たそうだ。勇者チームの載っていた時空航海船は、迷宮都市の貴族街に墜落し、爆発炎上したそうだ。孫のリーンがいるのは、あの勇者チームだろうか?
「アリサを返せと喚いていたそうです」
と宰相。ゾナとの定時連絡で情報を得たらしい。
「調べてみたのですが、そのアリサというのは、滅亡したクボォーク王国の王女で奴隷堕ちしたアリサ姫のようです。あの勇者は以前プロポーズしたようですから」
「その奴隷堕ちした王女が、彼の元にいるのかね?」
「そのようですね」
国際問題になりそうだ。魔王認定をされた彼が奴隷堕ちした元王女を手に入れ、それを助けようと他国の勇者が来て、返り討ちに遭ったと…
「王よ、早急に彼との交渉をまとめないと、ハードルが高くなっていくばかりかと思います」
迷宮都市の貴族街の復旧作業で、彼に渡す物が少なくなりそうだ。
次回はVS元勇者かな…