---ダン---
朝、目が醒めると…何かが俺の上で踊っていた。何かが俺の上で唄っていた。はぁ?俺の右腕には何かが絡み付いていた。夜襲?所謂夜這いか?そんなことをするヤツは、まだ召喚されていないはずだが…眠っていた脳細胞が1つ、また1つと覚醒していく。
「おはよう…兄さん…はぁ~」
甘ったるい声の後に、生暖かい吐息が俺の右耳に襲い掛かってきた。兄さん?はぁぁぁぁ~?
「なんで、お前がいるんだ?」
俺の妹のアバターであるアスカに訊いてみた。
「兄さんの骨をエーゲ海に散骨するって、レイチェルが譲らなくて、三人で飛行機に載ったんだけど…堕ちて…」
飛行機の事故…まず助からないなぁ。うん?今三人って言わなかったか?レイレイとアスカと誰だ?
◇
レイレイが満足したようで、やっと解放された俺。アスカとシャワーを浴びて、食堂へ行くと…クマがいた。クマ…軍艦クマかぁぁぁぁ~!メイプルの後ろ盾になった転生神は、俺達を魔王軍団にしたいのか?戦力が過多だろう。俺達に何をさせたいんだ?
「レイが迷惑を掛けたかもクマ」
クマ兄さんが俺を見つけると、頭を下げてきた。
「あぁ、お前の弟は頭が豆腐か?隣人の手料理で死ぬって…」
レイに隣人との関係を訊くと、『隣に住んでいる異国の女性』って情報しかなかった。もっと疑えよな~!お前のせいで、ユーリは死んだに等しいのだから…
「クマ兄からも言って欲しい。主のセンスの無さをなぁ」
ネメシスがクマ兄さんに詰め寄っていた。使い魔から苦情が出るマスターって、どうなんだ?コンビ解消でもいいんじゃ無いのか?
そんな賑やかさが増した朝の風景に、場違いのヤツラが襲来してきた。
「おい!魔王!出て来いやぁぁぁぁ~!」
窓から外を見ると、ドラゴンに女性が載っていて、大声を張り上げていた。
「あれって、『ドラゴンに載った勇者さま』に出てくる勇者様かな?」
って、アリサが一冊の本を手にして来た。表紙に描かれた絵面は、窓から見える絵面に似て無くもない。
「あれって、勇者?」
「本の主人公であれば、シガ・ヤマト、シガ王国の王祖になるけど…大昔の人だよ」
「歳が変わらないってことは、転生チートスキルか?」
「なるほど…お話し合いで仲間に出来そうね」
すっかりサリーのポジションに居座って居るアリサ。サリーは時差ボケらしく、本調子では無いのかもしれない。
「メイプル、どっちとやる?」
「ドラゴンかな」
いにしえの勇者とドラゴン、メイプルと俺で、迷宮都市から遠くへ転移した。
◇
話し合いが終わり、元勇者ことミト・ミツクニ、本名高杯光子と、天竜ことテンちゃん、ホムンクルスが床で伸びていた。
「これ、どうするの?」
アリサがテンちゃんを杖でツンツンしている。
「うちで飼う。役立ちそうだろ?」
「そんなに強くないよ。シールドバッシュで戦闘意欲を放棄していたもん!」
初手のシールドバッシュで戦闘が終わってしまったメイプルは、不完全燃焼気味でプンプンしている。天竜にシールドバッシュ一発で勝つって、どんだけ強くなったんだ、お前は…
「シガ王国の生き字引が手に入ったし、次の作戦に向けて、準備をするかな」
「次の作戦って?」
「アリサの国の奪還、および報復だよ」
「えっ…いいの?一国を敵に回すんだよ。本当にいいの?あのロリ勇者でも出来なかったのに…」
ロリ勇者?あぁ、そう言えば、アイツ、ダンジョンから出てきた気配は無いけど、本当に勇者だったのか?
「戦力的には、問題は無い。敵の城はメイプルバスターとカエデバスターで、崩壊できそうだ。敵戦力は、クマ兄さん、俺、シノン、レンが要れば問題は少ないと思う」
この異世界で弾薬類の補給が見込めないことから、銃火器の弾薬類は無限カートリッジになったそうで、クマ兄さんはもうポップコーンを売らないでも戦力の維持が出来るらしい。だが、この世界でポップコーンを広めたいとクマ兄さんの野望が広がっているらしい。
「お願いです。お父様、お母様、家族、国民の無念を晴らしてください。「お願いします!」」
アリサ、ルル姉妹が俺達に頭を下げてきた。