デスを食らった男   作:もっち~!

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本日3本目


SS:王都の長い夜

 

---オーユゴック侯爵---

 

孫娘は二人が帰ってきた。一人は生死不明、一人は人質だった孫娘である。

 

「二人共無事だったのか?」

 

「はい、ご主人様に救われました」

 

「姉と生活出来るのはご主人様のおかげです。私達、ご主人様に恩返しがしたいので、お爺様協力していただけませんか?」

 

二人共真っ直ぐな視線で私を見据えていた。

 

「私に出来ることならば…」

 

「私達のもう一人のお爺様と謁見の機会が欲しいのです。ご主人様達の希望でございます」

 

ご主人様?洗脳されたのか?だが、二人の瞳は洗脳されたように見えない。

 

「ご主人様とは?」

 

「私達の使える方です。許可無く、お名前を口に出すわけにはいきません」

 

まさか、奴隷にでもされたのか?しかし胸元には奴隷紋の類いは無い。その手の魔具も無いようである。

 

「もし、戦争になれば、王都は今夜堕ちます」

 

何?!戦争だと…今夜…彼の戦力は王都にいるのか?

 

「話し合いで解決を望んでおります。受けてもらえますか?」

 

神託の巫女であったセーラが、脅すような言葉を紡いでいる。いくら巫女籍から外れたとは言え、この変わり身はどういうことだ?

 

「国王陛下に会われて、何を話し合うのだ?」

 

「税金問題と迷宮核の使用料についてです。次のステップに進む為に、シガ王国の問題を先に片付けたいのです」

 

次のステップ?勇者を送り込んだサガ帝国か?う~ん、どうする。

 

 

 

---セテラリック・シガ---

 

世直しに出られていたミト・ミツクニ公爵こと、王祖シガ・ヤマト様が戻られた。彼女は召喚勇者であり、この世界の者では無い。その為か、一切歳を重ねていないようだ。2代目の描かれた絵ソックリの姿を我々の前に現した。

 

ミツクニ公爵は生涯独身だったのだが、今伴侶を連れて戻られた。2代国王は彼女の養子であったが、王位を譲られたそうだ。2代国王こそ、我々の血脈の原点となる人物である。

 

王祖ヤマト様は、その2代国王を見いだして下さり、我が国の礎を築いて下さった方である。ミツクニ公爵の要望はなるべく叶えることが、我がシガ家の脈々たる思いである。

 

ミツクニ公爵の伴侶様からの要望は、毎朝の税の取り立ての禁止と、迷宮核の使用料の支払い、そして、王都にあるミツクニ公爵邸の使用許可であった。

 

「こちらが、前回の会談の後に作成しました当国の約定でこざいます」

 

宰相が書類を手渡した。書類に目を通すミツクニ公爵夫妻。

 

「これで良いんじゃ無いかな。ご主人様はいかがですか?」

 

「ミトが良いならいいぞ。この国関連はミト、セーラに任せる。以後、窓口を頼む」

 

「「はい」」

 

ミツクニ公爵と孫のセーラが、ミツクニ公爵の伴侶に跪いた。

 

「後、人質の問題だな。セーリュー市の市兵を数名預かっている。コイツらはどうすれば良い?」

 

「そのまま、ミツクニ公爵の騎士としてお使いください。宰相よ、辞令を書いてくれ」

 

「はっ!」

 

「約定通りにしてくれたら、1週間後に魔素の使用を許可しよう。迷宮都市の迷宮は営業を再開させる。王都、公都の迷宮は誰かが再起動させたせいで、現状階層が浅い。なので、当分は使用出来ない。セーリュー市のダンジョンは、国で運営をしてくれて良い」

 

「ありがとうございます。入場税、買い取り税、販売税の3%は計算をして、月末にお払いします」

 

「それでかまわない。滞納問題をチャラにしてくれたので、こちらも過去の使用に関しては問わないことにする。但し、問題の再燃時には、過去の使用分も貰うからな」

 

そして、彼らは目の前から消えた。これが高位魔法の転移術かぁ…

 

 

 

---アラン・スティアート---

 

カタリナ、メアリ、キースの次は、マリアが消えた。兄ジオルドとの結婚式を数日と控えた日にだ。あの自信の塊だった兄が、蒼い顔で凹んでいた。

 

「アランは、どうして、そんな元気そうなんだ?お前だって、婚約者のメアリ嬢が消えたのだろ」

 

兄に訊かれた。

 

「うん?カタリナと一緒にいると思えば、問題は無い。あの二人がカタリナと一緒であれば、妙な方向へは行かないだろうしな」

 

兄の婚約者のカタリナ・クラエスは、行動予測が難しい人物であった。令嬢なのに木に登り、令嬢なのに芝生に寝っ転がり、令嬢なのに畑をたがやしていたり…令嬢としてあり得ない行動を取ってきた。だけど、令嬢としてどうなのという問題よりも、新しい視点を切り開く勇気を俺は讃えたい。

 

独占欲の強い兄の鳥かごで飼われる人生より、行方不明でどこかで生きている人生の方が、カタリナには合っていると思う。なので俺は、心配などしない。

 

「港町からの足取りがまったく無い。港町に住んでいるのか?」

 

兄ジオルドがブツブツと言っている。まぁ、そのうち、地盤を固めれば、呼び出す気がするが…そういう女である。

 

 

 

---アン・シェリー---

 

カタリナ様専任のメイドである。婚約者であるジオルド王子が、カタリナ様に内緒で、カタリナ様のご友人のマリア・キャンベル嬢と、こっそり婚約し、結婚をすると聞いたカタリナ様は、ジオルド王子に消されると言って、家を出た。実際は、カタリナ様へのサプライズで、ジオルド王子が両手の花の結婚式を計画しているだけだったのだが…カタリナ様は、ジオルド王子との結婚はしないと意志表示していた。それに対し、ジオルド王子は、婚約破棄は認めないと断言しいた。

 

まぁ、脱走の口実だったのだろう。ジャマになった自分は王子に殺されるって…しかし、カタリナ様専任メイドである私は、旦那様、奥様に責められた。何故、カタリナ様を逃がしたのかって…奥様だって、ジオルド王子との結婚は反対していたのに…王族からの圧力に弱いのだろう。

 

カタリナ様がいなくなり、キース様はカタリナ様を探しに行かれて、音信不通になり…奥様は心の病に…私も…

 

寝たきり生活は、どの位しているかな。メイド長が、毎朝、毎晩、私の様子を見に来てくれる。庭師のトムさんもたまに見える。カタリナ様の思い出を話すことが、今の私の生き甲斐である。

 

心にぽっかりと空いた穴…これが埋まる日はあるのだろうか?

 

「おはよう、アン。ゴメンね、迎えに行くのが遅くなって…」

 

え…笑顔のカタリナ様の顔が目の前に…これは夢?

 

「漸く、人並みの家に住めるから、アンには来て貰ったのよ」

 

人並みの家?まさか、今まで野宿だったの?起き上がると、広い部屋に寝ていた。周囲を見回すと隣にもベッドがある。

 

「私と相部屋だけど、いいわよね?」

 

カタリナ様と相部屋?ここはどこ?

 

「さぁ、着替えて。部屋にあるシャワーは使ってもいいわよ。ここでは、同格でいいからね」

 

同格でいいって…ここって、宿?部屋にシャワールームって、高級宿のスイートルームなのかしら?

 

シャワーを浴びて、メイド服を着て…カタリナ様は作業服である。どこかのお屋敷の庭師にでもなったのか?

 

食堂へと連れて行かれると、そこには様々な種族、年齢の者達が、沢山いた。

 

「好きな料理をお皿に載せて、テーブルで食べるのよ」

 

見た事の無いパンや料理が並んでいる。

 

「本日の予定はどうしますか?」

 

青い装備を身に纏った女性騎士が、上席に座る男性に訊いた。

 

「カタリナ、メアリは農作業、キースはサトゥーと商店巡り、俺はミトと一回りしてから、メイプル達と狩り。後…カタリナの紹介のメイドさんは、セーラ、アリサ、ルルに任せる。家事を教えてやってくれ。ここと向こうの家のな」

 

お屋敷が2つ有るの?どこかの爵位持ちなのかしら。えっ…キース様だけでなく、メアリ様、マリア様もいらっしゃる。ここはどこなの?

 

「カタリナ様、ここはどこなんですか?」

 

「ここ?ここはシガ王国のミツクニ公爵邸よ。シガ王国は、私達の住んでいた国とは、違う大陸にあるの」

 

…それは、亡命してってことですか?見つけられない訳だ。海を渡って、違う大陸って…ジオルド様に知らせるにも、連絡手段も無い。そもそも、他の大陸と交易はしていない。

 

 




死者の魂を召喚するメイプルと、『強奪』による誘拐を繰り返すカタリナ…どちらが罪作りの女なのだろうか?
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