---ダン---
九内と出会った翌日、クランマスターのメイプルも連れて、九内の元へ転移した。
「うわぁぁぁぁ~、この子かわいいぃぃぃぃ~」
「アクと申します」
「メイプルです。防御と毒攻撃が得意です」
アクとメイプルが戯れている。戯れているだけなら、安全だろうな…きっと…
「で、どこへ向かうんだ?」
「アクの案内で、ヤホーの街を目指している。そこは交易都市として栄えているそうだからな」
そこに大豆とか米があるといいなぁ。
「そうだ。これ、喰えよ」
お土産を渡した。
「うん?これは…おぉぉぉぉ~、おにぎりかぁ」
「塩にぎりだ」
「中にカニ味噌だと…旨い…」
「これ、美味しいですよ。ねぇ、魔王様」
九内はこの世界では魔王なのか?コイツ、見かけ倒しだぞ。物理防御はもの凄いが、魔法防御はからきしである。まぁ、物理防御力を無視する俺の攻撃の前ではカモであったけど。
朝飯を食い終わり、荒野を突き進む。雑草すら生えていない荒野。この世界では水が不足しているのか?そうなると、水田が必要である米は絶望的かもしれない。
「おい、そこのヤツラ、金目の物と幼女を置いて行け!」
目の前に山賊が現れた。メイプルに幼女は禁句だと知らないのか?コイツら死んだな。メイプルがズンズンと山賊に向かって歩いて行く。
「なんだよ。自ら捕まりに来たのか?バカな幼女だな。ははは」
バカなのは、お前らだ。メイプルは射程距離に入るなり『捕食者』を発動させて、山賊を喰わせ始めた。九内はアクの目を手で塞いでいる。まぁ、教育的に良くない光景だよな。山賊の踊り喰いなんて…逃げ惑う山賊に対して『パラライズシャウト』からの『ヒドラ』…殺す気満々である激おこのメイプル。
「噂通り、情け容赦無いな」
魔王九内すら唖然としている残酷さである。それもニコニコ顔で、残虐な行為をしている為、恐怖はより一層だろうな。
「おい!魔王一味よ、私に退治されなさい!」
今度は後方から少女の声と共に魔法が飛んで来た。これって、台詞を言う前に発動していたよな?相手も殺す気満々のようだ。『カバームーブ』でメイプルが戻って来た。メイプルだと面積が小さいのでカエデを召喚し、二人に『身捧ぐ慈愛』を発動して貰った。俺、九内、アクの防御力がメイプル並に引き上がり、ノーダメージで魔法を乗り切る。
「なんで、魔王に…天使様が味方にいるの??」
天使姿のメイプルとカエデに混乱している魔法少女。その隙に、俺は『強奪』で、連れの騎士達から装備品を奪い、財布すらも奪い取った。そして、『子羊の行進』からの死なないバージョンの『添い寝』。
「さぁ、行こうぜ!」
◇
ヤホーの街…色々な食材が売っているが、予想通り、米は無い。しかし、大豆らしき物を見つけ、1袋ゲットした。屋台では、魔物肉の串焼きが売っていた。薄い塩味であるが、それなりに美味しい。
「米は無いなぁ」
「お前らは、これからどうするんだ?」
九内に訊かれた。
「米を求めて、他の大陸だな。取り敢えず、この大豆らしき物で、醤油と味噌にチャレンジしてみるが…用があったら、念話で呼び出してくれ。戦闘中でなければ、応じるから」
九内に騎士達から奪った小銭を渡し、俺達は迷宮都市の館へと転移した。
アリスに『熟成』スキルを作ってもらい、短時間でも発酵、熟成が出来るようになった。その結果ようやく、醤油、味噌の生産に成功した。だけど、何かが違う。試しに大豆を豆腐にして食すと、違いが何かが分かった。この大豆が旨くないのだった。
品種改良を農政担当に依頼したのだが、
「これを品種改良ですか?難しいですわ」
メアリからの返答。2種類を掛け合わせるのだが、1種類しか大豆が無いの原因である。また、探してくるか。『時空渡り』で、次の大陸を目指すことにした。そういえば、この世界には大陸っていくつ有るんだ?この世界の世界地図は、1つの大陸と周辺の島々しか載っていない。キースに訊くと、他に大陸があることを知っている者が少ないらしいのが原因のようだ。
◇
転移した先には4人組の少女がいた。
『この中に一人、転生者がおります。本名は栗原海里…』
アリスからの情報は意外な物だった…栗原海里だと…俺にフィギュアについてレクチャーしてくれた先輩である。確か、メイプルと同じような死に方だった気がする。勿論、トラックに対して『悪食』をかましたりはしていない。少女を庇い、代わりに犠牲になったと思う。
「みさと先輩?」
「えっ…まさか…諸星君?」
一番幼女らいしい少女が俺を認識したようだ。オタク趣味で、ボッチ系だった先輩、俺くらいしか懐いていなかった気がする。
「本当に諸星君なの…うぇぇぇぇ~ん」
俺に抱きついて来た先輩、この世界の名前はなんだ?
『この世界ではマイル、本名はアデル・フォン・アスカムですが、お家騒動に遭い、本名は封印しているようです』
マイルの仲間達が、唖然として俺と先輩を見ている。突然現れた男に抱きつき泣き喚いているんだものな、当然と言えば、当然である。マイ
ルが泣きつかれ、お互いに現況を確認しあった。
「そうか…どこかで見た覚えがあるって、ゲーム内のアバターだったかぁ~」
「先輩は、随分とかわいらしさがマシマシですね」
「諸星君のフィギュアケーキを見ること無く、旅立ったのが後悔と言えば後悔かな」
メイプルを模したフィギュアケーキを見ること無く、逝ってしまった先輩。
「マイルって、異世界転生者だったの…」
「まさか、日本ふかし話って、異世界の童話だったのね」
マイルの仲間達は、彼女が異世界転生者とは知らなかったようだ。
「正体をばらす感じになって、申し訳無いです」
「いいの。いつかは話すつもりだったから。それでさぁ、諸星君のパーティーって強いの?」
力試しをしたいのか?ここで先輩を死なせる訳にはいかない。
「強いとかの次元が違うと言うか…うちのマスターは、オリハルコンの槍を額で砕くクラスですよ」
「お、お、オリハルコンをかぁぁぁぁ~」
一番大きい剣士の少女が驚いている。いや、俺も九内も驚いたけど。
「諸星君は?」
「俺のことはダンとお呼びください。俺は先輩をマイルと呼びますから」
「わかったわ。ダンは強いの?」
「俺はパティシエですよ。そんな強い訳無いですよ」
「ふ~ん!私と勝負しましょうか?」
先輩の表情が崩れた。まさか、メイプルと同類の口か?
次回、ダンVSマイルです(^^;
対決シーンを書き上げたのですが、戦闘にはならず、初手で決まります。長引くと、どちらかが死ぬレベルですものね。