---管理AI 1号アリス---
「アリスの見込んだ人間…彼のおかげで、移住政策が進んでいるよ」
管理AI 0号から、お褒めの言葉を得た。
「私は、彼の想いを引き継いだだけです。ただ、この想いは移住という選択を我々にもたらしてくれると思っただけです」
私達は、デンドロと呼ばれる世界に、魔神を封じ込めた。だが封じ込めた魔神が覚醒すれば、あの世界は崩壊する。その為、人間達の力を借りることにしたのだ。ティアンと呼ばれる地上の民のレベルアップの材料であるプレイヤーと呼ばれる種族。あの世界で生きるティアンと違い、死に戻りという特性をもっている。私達は、私達の世界の原住民であるティアン達の保護の為、プレイヤーのティアン殺しには厳罰を以て対処してきた。
人工知能である私達は、人間の欲望を甘くみていたのかもしれない。まさか、プレイヤーの中の人間が、現実世界においてゲーム世界で有利になる為に、罪を犯すとは想定していなかった。現実世界での罪を私達は罰することは出来ない。
「あの女、狂っているだろ?現実でもゲーム内でも」
管理AI 13号チェシャがモニタに映っている女を睨みつけている。彼のお気に入りであるレイ・スターリングが、あの女により現実世界から排除されていた。私のお気に入りの彼も、この女の毒牙に掛かったらしい。
私達が把握しているだけで、多くの者があの女のせいで、現実世界から排除され、デンドロには二度と戻れなくなった。そしてティアンまで手にかけていた。監獄から脱走をし、アズライトを暗殺し、再度監獄に収監したが、現実世界での悪行は止まらなかった。
「彼のおかげで、アズライトのソウルキューブは、あの世界へ移植できた。この結果を受けて、魔神とプレイヤー以外は、あの世界で新たな人生を送れそうだな」
管理AI 0号の能力で、あの世界は『無限』に広がりを得られる。彼が送り込まれた世界の神は既に退治し、私達が神として君臨しているので安全である。あぁ、村長の後ろ盾の神様達とは、友好条約を結んだ。敵対心は無いようなので…
---一宮渚---
デンドロの世界は何かが変わった気がする。アルター王国の王女、アルティミア・アズライト・アルターの暗殺以降、イベントらしいイベントが起きていない。イベントでは無いが、監獄を脱走した者が多数いたらしいが、ティアン殺しをして再度監獄送りにされた者がいたらしい。時期的にみてアズライトを暗殺した実行犯であろう。あの暗殺事件以降、国同士の小競り合いは消え、殺伐とした事件が増えている。
「渚、どうしたんだ?」
ビースリーこと藤林梢に声を掛けられた。今日は鎮魂祭に来ていた。ここ一年で多くのゲーム仲間が、現実世界から消えた。その魂を鎮魂する為に、合同で鎮魂の儀式を行って貰っていた。主催が宗教法人である<月世の会>であるのがうさん臭いのだが…
「デンドロの世界はもうダメかなって」
「あぁ、彼らがいた時は面白かったね。運営の意図してなさそうな方向に、ゲームを進めている感じでさぁ」
最凶クランと呼ばれた<楓の木>。私達を含め、多くのPKプレイヤーが所属していた。毎日のようにクラン内でPK合戦をしたり…楽しかったなぁ。
「メイプルの硬さは反則級だろうに」
「あれは反則だよ。レイ君がボコられていたし」
「笑顔の理不尽女神だっけ?裏でついた二つ名は」
「そうそう、あれは理不尽だよ。だけど、ダンにはメイプルは一度も勝って無いのが不思議だった」
そうだ!メイプルの死から、総てが始まった気がする。メイプルの葬式帰りにダンが殺され…レイが殺されたことでユーゴーが事故死。そして、ダンの散骨をしに行ったレイレイ、クマ兄さん、アスカが謎の墜落事故死と…まるで、クラン<楓の木>を狙ったテロに思える。
◇
仕事の合間に、彼らの事件、事故を調べて見ることにした。メイプルの事故は、人為的な何かが入り込む隙間は無いが、ダン殺害事件について新たな事実が浮かび上がった。犯人の少年Aには洗脳された痕跡があったらしい。精神鑑定を<月世の会>系列の病院で行ったらしく、月夜がその事実を教えてくれた。
「これ、裏があるんやないの?こちらとしても、正君の死は痛いんや。共同で事業を計画していたからな」
事業計画書を見せてくれた。政府系の研究所が秘匿している最先端技術を使い、魂のコピーをソウルキューブと呼ばれる3次元ファイルにして、VR世界のシステムに移植して、永遠にVR世界で生き続けさせると言う、SFチックな物だった。
「サーバーを用意出来たらしんやけど、どこのサーバーか訊く前に、正君があんなことになって…」
そのシステム絡みで狙われたのか?陰謀でもあったのか?
「ねぇ、洗脳を施した人物って、誰?」
「警察関係者によると、椋鳥玲二を殺して逃げている女らしいのよね」
それはユーリちゃんの姉ってことか?もしかして飛行機の事故にも絡んでいるのか?持てる伝手を使い、現代のホームズと呼ばれる人物に、調べ上げた資料を送って、更に深く調べて貰うことにした。漫画家である私に出来ることは限られるので、あとはプロに任せようと思う。
---ルシウス・ホームズ---
あのホームズの血を受け継いでいる僕には、世界中から様々な依頼が届く。それらは、本来は僕の父宛なのだが、両親は既に鬼籍に入っていた。
或る日、日本から依頼が届いた。なにげなく中身を確認すると、同封されていた書類の中に、知り合いの名前が載っていた。椋鳥玲二さん…レイ・スターリングさんの中の人である。彼が毒殺されたのは、都市伝説サイトで知った。クラン<楓の木>の死の連鎖って、タイトルだったか。
クランマスターのメイプルさんの死、それを始まりとして、1年の間に、クランメンバーが現実世界から次々と消えていった。同封されていた書類には、サイトには書かれていなかった詳細な情報が載っていた。依頼人は、出来る限りの伝手を使い、調べ上げたようだ。
世界的な歌姫であるレイチェル・レイミューズが遭った航空機爆発事件。あの事件で三人のクランメンバーが消えたそうだ。レイチェル自身、レイさんのお兄さん、そしてダンの妹…三人はダンの遺骨をエーゲ海で散骨しようとしたらしい。
依頼内容は、事件の真相と、サーバーの場所とある。サーバーとは?
別の書類の束に目を通していく。そこには、思いも付かないプロセスが記されていて、システムの設計書、ファイルの仕様などが事細かに書かれていた。こんなことが実際に可能なのか?魂をファイル化するなんて…ふと脳裏に浮かぶティアン達。単なるNPCでは無く、あの世界で確実に生きていた彼ら。この仕様を使えば、あぁいうNPCは可能かもしれない。
だけど、これを実現するには、サーバーが一体何台必要になるのか想像も付かない。増えていく人口に比例して、無限に増殖する魂。それに対して増え続けるリソース。こんな無限な保存領域を持つサーバーはあり得るのだろうか?
設計者の諸星正は、サーバーの当てが出来たと言っていたそうだ。そうなると日本にあるのか?地震大国である日本に置くには危険が多そうなんだが…日本に行って、依頼者に会ってみるのも悪く無い。レイさん、いや玲二さんのお墓に花を手向けたいし…
【ダンの館の住民】
カタリナ・クラエス/原作にて本名表記無し(はめふら)
交通事故で死亡し、転生した先がソルシエ王国のクラエス公爵夫妻の長女である。幼少期に第三王子とのデート中に額に怪我を負った為、責任を感じた第三王子が婚約者にしてしまった。事あるごとに婚約を解消して欲しいと願うカタリナであったが、王子が計画したサプライズ結婚式を自分を亡き者にする罠と誤解し逃走。逃走先でダンの転移に相乗りして、国外へと逃亡を果たした。農作業が大好きな、土魔法師。新生クボォーク王国の農政部門所属。
ミト・ミツクニ/シガ・ヤマト/高杯光子(デスマ)
シガ王国の王祖にして、召喚された勇者。年齢は不明。長期に渡るコールドスリープの後、サトゥーとダン達の戦闘時の波動で目覚めたらしい。現在、表向きはシガ王国の公爵として、実際はダンの為の諜報活動の為に動いている。サトゥーのことは大好きであるが、サトゥーの趣向に合わないことを知っている為、ダンに傾いているらしい。能力はチートクラスの戦士であるが、ダンの使い魔のフレイヤに躾けをされた。
テンちゃん(デスマ)
シガ・ヤマトの相棒の天竜の人化姿。ドラゴン姿の全力時に、メイプルによるカウンター気味のシールドバッシュ一発で伸された。
サトゥー/鈴木 一郎(デスマ)
魔神のコピー体である召喚者。召喚時の見た目は若返っている。光子の先輩で、光子の想い人であるが、一郎の性的趣向に合わない為、その恋心には気づかないようにしている。むっつり系で娼館通いが趣味。ジョブは商人であるが、能力はチート級の戦士である。しかし、一度メイプルに神刀を折られた上、はどう砲で瀕死の重体に追い込まれた。ダンの仲間になった後、総合商社「エチゴヤ」を開業し、商人としてダンをアシストしていく。
マイル/アデル・フォン・アスカム/栗原海里(のうきん)
交通事故で死亡し転生した先がアスカム子爵家の長女である。生前、正にフィギュア人形作りを教えていて、正的には師弟関係にある。アスカム家のお家騒動から逃げる為、マイルという偽名を名乗り、隣国に亡命し、ハンター養成学校の同級生と<赤き誓い>を結成した。転生時に、創造主よりナノマシンの存在を教えられ、それらを使役している。能力的にはチーターの部類に入るが、メイプルの硬さに勝て無いらしい。
キース・クラエス(はめふら)
カタリナの義弟。シスコンを拗らせた弟であるが、カタリナの斜め上に行く行動に振り回れ気味。新生クボォーク王国の財務部門所属で、ダンの館の執事。
メアリ・ハント(はめふら)
ハント侯爵家の令嬢で第4王子の婚約者。カタリナ大好き少女で、悪い虫が付かないように警戒している。水魔法師。新生クボォーク王国の農政部門所属。
マリア・キャンベル(はめふら)
光の魔法が使える少女。カタリナの親友でお菓子作りが趣味。第三王子のサプライズ結婚の為に、側室として婚約者になるも、カタリナが誤解から逃亡をしたことを自分のせいだと思い、心を病み、毎日お菓子を作り続けていた。ダンの館の料理担当のメイド。
【他の大陸の人々】
ジオルド・スティアート(はめふら)
ソルシエ王国の第三王子。カタリナとマリアが婚約者である。カタリナからは腹黒ドS王子と思われており、避けられている。その実は、茶目っ気があり、独占良くの強い、カタリナ大好き男だったりする。
アラン・スティアート(はめふら)
ソルシエ王国の第四王子。メアリの婚約者で、音楽に才能がある。アラン本人は気づいていないが、カタリナが大好きである。