---ダン---
神のダンジョンには、幽霊エリアがあった。問題が発生である。メイプルの指揮官であるサリーが使い物にならないのだ。死後の世界でもサリーは幽霊、オバケの類いはダメなようだ。さて、どうするかな。取り敢えず、メイプルとマイルにはソロで潜って貰い、100階層一番乗りを目指して貰うか。このダンジョンなら、死んでも丸裸で排出されるだけだし。
そう言えば、サガ帝国の勇者はどうしたのだろうか?一向にダンジョンから出てきたって話を聞かないが。アリスと共にコア部屋に向かい、ダンジョン内を探査してみた。まだ、いた。中層階の底にある犯罪ギルドの拠点にだ。あの勇者は犯罪ギルドに取り込まれたのか?一緒に堕としたサガ帝国の皇女はどこだ?こちらはダンジョン内にはもういなかった。どういうことだ?勇者無しでダンジョンを脱出できたのか?お供の女性メンバー達もいないみたいだが…
「アリス、どう思う?」
「女性は奴隷として売られたのではないですか?犯罪ギルドのいる一帯は、麻薬系の草が栽培されているようです」
確かに…しかし、ダンジョンの出入り口から出た形跡はない。そうなると、隠し通路があり、外へ出られるのか?
「あっ!ここに、隠し通路のような物があります」
アリスが各階層の階層マップを見て、何かを見つけた。海のマップの海中に横穴があるようだ。横穴はダンジョン外に繋がっており、コア部屋から確認が出来ない。どこに繋がっているんだ?迷宮都市近辺の洞穴、廃屋などの怪しい場所をシラミ潰しに探すと、農園らしき廃墟にある小屋の地下に怪しい横穴を見つけた。ここか?コンコンに確認して貰うと、海水の詰まった縦穴があった。ここだな。そうなると、皇女達はどこかに、運び出されたのか。
サトゥーに連絡をすると、王都の娼館に皇女達がいたそうだ。いたそうだ?コイツ、知っていたのか…
『いやぁ~、気持ち良いテクニック持ちでさぁ~』
と、サトゥーからの報告。贔屓にしているらしい。居場所が確認出来ているなら、いいか。問題は、勇者は何をしているんだ?用心棒か?それとも、無断で居住している下層階層住民へのアタックか?う~ん、どうするかな。下手に犯罪ギルドを刺激すると、地上にアジトを作りそうだしなぁ。このまま地下にいる分には問題は少ない。ダンジョンの出入り口から出て、迷宮都市内で悪さをしないだろうし。
◇
ラビの村の露天風呂でまったり…温泉を引き込んでいるのか、日頃の疲れが抜けて行く。
「ダン、酒はいらんか?」
九内は桶に酒の入った徳利とツマミを乗せた皿を置き、風呂に浮かべて、手酌で飲んでいる。
「未成年だから、飲まない」
「そうか…」
ふと、脱衣所の方から音が聞こえ、そちらを見ると、全裸の女性が立っていた。ここって、混浴か?
「ま、ま、魔王!」
「えっ?なんで、ここに?」
九内が慌てている。その様子を見る限り、ここは混浴では無いらしい。目の前で全裸を披露している女性だが、ピンク色の髪の毛、乳首、アンダーヘア…未使用らしい。この国の女性は、タオルを身体に巻いて入る風習は無いのか?大きすぎず、小さすぎず、重力に負けない胸は、俺の好みかもしれない。
「魔王!謀ったのね!」
彼女の声に反応して、九内の潜望鏡が徐々に角度を上げている。コイツ、女性免疫が無いのか?
「その格好は目の毒だ。これを使いなさい」
亜空間からバスタオルを取り出し、女性に放り投げた。それを女性が見事にキャッチすると…
「きゃぁぁぁぁぁ~!私の全裸を…ガン見したのね」
したけど、全裸で無防備で入ってくる方が悪い。そもそも、ここは男湯である。
女性はタオルを手放し、巻かずに湯船に身を浸した。勇気あるなぁ~。目の前に男が二人いるのに。
「ここは男湯だけど…」
「えっ!」
俺の言葉で、顔が真っ赤になっていく。間違えて入ったのか?
「九内、この女は知り合いか?」
「あぁ、聖光国の聖女姉妹の長女、エンジェル・ホワイトだ」
聖女の長女?あのちんちくりんと大女の姉ってことか。
「九内、付き合っているのか?」
「まさか…ないない」
だよな。ちんちくりんとアクが大好きな九内は、たぶんロリだし。目の前にいる聖女は女子高生くらいかな。九内の守備範囲から外れるだろう。
「うっ…」
聖女様は、真っ赤な顔で俯いている。湯船の中で体育館座りをしているので、胸は見えないが、アソコは丸見えなんだが…コイツ、露出狂なのか?
「あっ!俺はジャマか」
湯船から出ようと立ち上がった俺。
「ジャマでは無い、ここにいてくれ」
九内が困ったような表情で、俺の足を掴んだ。
「え…男性の全裸…」
聖女様が小さな声で呟いた。あぁ、俺の全裸を聖女様に晒してしまった。まぁ、いいか。減る物でも無いし。
しばらくすると、ブクブク…て、聖女様が湯船に沈んでいく。のぼせたのか?
---エンジェル・ホワイト---
はぁ~。ここはどこだろうか?魔王の罠に嵌まり、魔王に全裸を見られてしまった。捕らわれてのかな?身体を弄ると、薄い毛布を掛けられているが、全裸のままである。既に魔王に喰われたのか…まさか、風呂で待ち伏せをしているとは…
「大丈夫ですか?」
女性の声…魔王の配下だろうか?声の主を見ると、素朴さを纏った少女だった。攫われて、配下にされてしまったのかな?私もかな?
「水分を取って下さいね。軽い脱水症状です、意識が飛んだようですよ」
ガラスの瓶に入った水を手渡した来た少女。あれ?これガラスじゃない。柔らかい。でも透明な瓶。中に入っている液体を口に含むと、全身に水分が行き渡るのが分かる。美味しい…何、この水は…
「この水はなんですか?」
「ライチジュースに塩を少し加えた物です」
ライチジュース?何だろうか?まさか、魔王の体液…あぁぁぁぁ~、もう聖女を名乗れないかもしれない。
「脱衣所から、お持ちしました。落ち着いたら、着衣してくださいね」
落ち着いてくると、目の前の少女が光のオーラを纏っているのが分かった。彼女も聖女なのか?
「ここから、一緒に逃げましょう」
魔王の城から逃げないとダメだ。
「まだ混乱しているんですか?逃げる意味が分かりませんわ」
洗脳されているの?着衣を済ませ、立ち上がろうとすると、目眩がして…
「大丈夫ですか?ここで、養生していってくださいね」
いや、しかし…
コンコン
「マリア、今いいか?」
ドアのノック音の後に、男性の声。魔王の声では無いようだが。
「はい、大丈夫ですよ」
ドアから、魔王と一緒にいた男が入って来た。魔王の右腕なのか?
「パンケーキを改良してみた。試食をしてくれ」
マリアと呼ばれと少女と、私にケーキの乗った皿を渡してきた男。目の前のケーキは、見た事の無い程にフワフワのように見える。
「美味しいです。一段とフワフワ感が増しましたね」
「お好み焼きを参考にして、自然薯を練った物を少し、メレンゲに加えてみた」
「なるほど…生クリームもフワフワですね」
「あぁ、パンケーキがフワフワなんだから、生クリームが固いと合わないだろ?」
私もケーキを一口…何?このフワフワ感は…クリームは甘すぎず、爽やかな感じがするし。こんな美味しい食べ物は初めてかもしれない。
◇
夕食…見た事の無い料理が並んでいた。どれも美味しい。魔王に餌付けされているのかな。こんな美味しい食事が毎日ならば、ここは悪く無いかな。
「元気になったようだな。城まで送ってやる」
魔王の右腕が、私に触れると、城の間にいた。これって、天使様にしか使えない転移術?
「あぁ、九内から君にプレゼントだそう」
魔王から?魔王の右腕が信じられない物を手にして、私の頭に乗せた。天使様の輪である。
「こんなアイテムを持っているとは、アイツも中々だな。じゃ、なぁ!」
目の前から消えた魔王の右腕。城の前に、天使様の輪を載せた私だけが残った。
天才パティシエは、女性相手だと無敵…かな?